Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

素直になんてなれない

2009/03/31 23:25:08
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「なーアリスいい天気なんだから花見でもいこうぜー?」
「行くわよ、この子の整備が終わったらね」
「人形の整備なんかいつでもできるだろ?」
「あんたと違って人形は繊細なの。定期的に整備しないとだめなのよ。それに自分だってその魔法書は何よ?人の勝手に持ち出して」
「へへ、ちょっと拝借した」
「まったく…」

春は不思議な季節だ。
あったかくて、頭までぼんやりしてくる。
そのせいだろうか、魔理沙はなんとなくアリスの家を訪れていた。
今までも何度か来た事はあるが、そのときの魔理沙の目的はいつも本だった。
アリスの家には魔理沙の知らない本がたくさんある。だから、アリスの家に行くときはどの本を読もうか考えるのが楽しかった。
しかし、今日は違った。自分でも気づかないうちに、魔理沙はアリスの家の前に立っていた。
本が読みたかったわけじゃない。のんびり散歩でもしようかと思って家を出たはずだった。でも、気づいたらここにいた。
私はなんでここにいる?
私は何がしたかったんだろう――
――アリスに会いたかった、とでも言うのだろうか。
「…馬鹿な話だぜ。」
そう呟いて、魔理沙はドアをノックした。


突然の事で、アリスは思わず言葉を失った。
春眠がなんたらとはよく言ったものだ。アリスはこの日珍しく寝坊してしまった。
顔を洗い、髪を簡単に梳かしていると、不意にドアをノックする音が。
「まったく、誰よこんなときに…」
小言を吐きながらドアを開けたアリスの目に入ってきたのは、なぜか引きつった笑顔の魔理沙だった。
「へあっ!?」
思わず奇声をあげてしまった。無理もない、髪はぐしゃぐしゃ、どうみても寝起きの顔。止めにパジャマ姿まで見られて慌てない乙女などいるものか。
まして見られたのが密かに想いを寄せる人だったのだから、心臓が止まったって不思議じゃない。
「お?新しい呪文か?」
「ち、違うわよ!突然だからびっくりしただけ。今片付いてないからちょっと待っててくれる?」
「ああ、そんな気を使ってくれなくていいぜ。私は気にしないから…」
「あんたの問題じゃないわよ!そのくらいわかってよ、もう」
「ん?じゃあなんだかよくわかんないけど、待たせてもらうぜ」


時刻はほぼ正午。魔理沙がやってきてからもう二時間が経とうとしていた。
「なーまだかー?もう読み終わっちゃうぜ」
「もう少しだから黙っててよ!集中できないじゃない、まったく」
黙るとか、落ち着くとかいう行為は本来魔理沙向きではない。
それに加えて、窓からは暖かな木漏れ日が差し、木々はさぞ爽やかであろう春風と踊っている。この元気娘がこんな風景を目にして心をときめかせずにいられるはずはなかった。
「お、この人形すごいな。」
不意に目の前にあった人形に気がついた。
アリスの人形は何度も見ているが、何故かその人形からは特別惹きつけるような何かを感じた。手に取ろうとしたそのとき…
「それはだめ!!」
「え?あっ!?」
驚いた魔理沙は人形を取り落とし、床に落ちた人形はバラバラになってしまった。
「あ…アリス、ごめ」
「どうしてくれるのよ!最っ低!」
「はぁ!?なんだよ急に!謝ってるだろ!」
「あんたなんかもう知らない!帰って!帰りなさいよ!!」
「ああ、帰るとも!もう二度と来るもんか!!」
暖かい春の日差しは、少し哀しげな午後のそれに変わっていた。



なんでこうなっちゃったんだろう。
私のせい?私が謝れなかったから?
でもあいつも悪い。あんなふうに怒らなかったら…
魔理沙は筋金入りの意地っ張りだ。肝心なところで素直になれず、すれ違いになることもよくあった。
しかし、魔理沙はただ素直に謝れなかったのではない。
アリスにあんなふうに怒られたことがショックだった。
動揺した魔理沙の心は、アリスの言葉の棘に過敏に反応してしまったのだ。
そして、自分の心にも傷を負う羽目になった。
もう一度、謝りたい。
だけど、会いになんて行けない。
また傷つくのが怖いから。
それ程まで、魔理沙の心は傷を負っていたのだ。


どうしてこうなったんだろう。
私のせい?私が魔理沙の話を聞かなかったから?
でもあいつも悪い。あの人形は、あいつの…
アリスは基本的に自分の本心を相手に見せない。
それが独りで生きることで身につけた、自分の心を守る術だ。
誰にもほんとうを見せなければ、心を傷つける心配はない。
辛くとも、哀しくない。
そんな彼女も、魔理沙には心を開きかけていた。というか開かされていた。
魔理沙といると、どうにも思ったことを隠せない。彼女はいつもまっすぐだから、それに影響されてしまうのかもしれない。
でも、もし完全に心を開いていたら、こんな思いをせずにすんだのかもしれない。
きっと話を聞いて、きちんと謝るのを待つことができただろう。
けれど、あのときはそんな余裕はなかった。
なんで?どうして貴女は壊してしまうの?
それは貴女を想って創った、特別な人形なのに。
ここで怒り出すのは間違いだ。そんなこと、わかってた。
でも、こみ上げてきた激情を抑えることはできなかった。
謝りたい。
だけど、会いになんていけない。
だって、魔理沙はもう私を許してくれないだろうから。
私は――もう二度と、魔理沙に会えない。



あれから何日経ったのだろう。
春の天気はよく変わる。先日の春の日差しは影を潜め、泣き出しそうな空が一面に広がっていた。
そんな中、このところ遊びに来なかった白黒を心配した紅白が、魔女の住処を訪ねた。
心配、というと語弊があるかもしれない。魔理沙がいないとどこぞの酔いどれ幼女やらスキマやらに絡まれて困るから遊びに来い、というわけだ。
もちろん気になってないわけではない。ただ、心配はあくまでも二の次だ。
「魔理沙ーいるんでしょー?…返事がないわね。入るわよー」
まさか死んでる?それはないか。あいつは殺しても死なないわね、たぶん。
そんなことを思いつつ、霊夢はドアを開けた。
意外と簡単に魔理沙は見つかった。がしかし、机に臥し、起きようとしない彼女を見て、
また面倒事か。
と霊夢は悟り、めんどくさそうにため息をついた。


「ほら、顔上げなさいよ…うわっ!?あんた目腫れまくってるわよ?どうせアリスと喧嘩したんでしょ?」
「ち、違うよ!」
「素直になんなさいよ。あんた達は変にまっすぐ過ぎるのよ。勝手に意地張ってぶつかってまったく…」
「だって、アリスが…」
「そんなもんねぇ、謝って好きだって言っとけばいいのよ」
「す、好き!?そんなこと軽々しく言えるわけないだろ!」
「好きなんでしょ?」
「…よくわかんないけど、たぶん…好き、なんだと思う…」
「ほんとあんた達は面倒ね。アリスもどうせ言い出せないでいるだけだから、言ってやりなさい。それで万事解決だから」
「ほんとか?ほんとにそれで…私、行ってくる!ありがとな、霊夢!」
「やれやれ…ほんとに手のかかる奴らだわ」


空はついに泣き出した。その滴の中を突っ走りながら、
この涙が…失恋の涙にならないことを祈るぜ。
などと柄にもない事を考え、そんな自分が馬鹿らしくて魔理沙は思わず吹き出した。
なるようになるさ。そう自分に言い聞かせ、風を切って魔理沙は飛んだ。

辺りはすっかり夜になっていた。
この夜、泣いていたのは空だけではない。
七色の人形遣いもまた、一人暗闇の中泣いていた。
おそらくずっと泣いていたのだろう。髪は乱れ、目は腫れ、声も枯れていた。
魔理沙に会いたい。
でも会えない。私には資格がない。
それでも、もう一度だけでも―
夜の静寂を、乱暴なノック音がかき消した。
それは聞き覚えのある、懐かしい叩き方だった。
「アリスー!開けてくれ、頼む!」
返事はない。
「頼むよ…謝りたいんだ。アリス…」
思わず開けてしまったアリスが目にしたのは、ずぶ濡れで、今にも泣き出しそうな顔をした、大好きな人だった。
「アリス…ごめん。私が悪かった。アリスの大事なもの壊して、謝らなくて…ほんとごめん。」
「ううん、私もいけなかったの。ついムキになって…あのとき、謝ろうとしてたんでしょ?わかってたのに私、あんなふうに…」
「アリス…あの、私…」
「ん?」
「…好きだ!」
「えぇ!?」
「私、まだ愛とかわからないけど、アリスと一緒にいると楽しくて…その…」
「…私もだよ。魔理沙といると、なんだか明るい気分になれるの。だから…」
「ああ、これからもよろしく…へっくし!!」
「だ、大丈夫!?」
「はは、やっぱ雨の中飛んだのは間違いだったかもな…さぶっ」
「風邪引いたら大変…お風呂貸してあげるから早く!」
「ああ、悪い。…見るなよ?」
「保障はできないわね」



真夜中の森は、ひっそりと静まり返っていた。
そんな中、アリスはうれしそうに紅茶を淹れていた。人間の里で買った高級品だ。
たしかにおいしいのだが、一人だともったいない気がしてあまり飲む機会がなかった。
でも、こんな特別な日にはぴったりだろう。
「あ、お風呂あがったのね。大丈夫?」
「ああ」
風呂からあがった魔理沙は不機嫌そうに答えた。
「何?もしかしてその着替え気に入らなかった?」
「いや、いいと思うぜ。ただ…」
「ただ?」
「…胸の辺りがこう、スースーするんだけど」
「…プッ!!」
「笑うな!私だって気にしてるんだぞ!」
「ごめん、だって魔理沙の顔真剣すぎ…あはははっ!!」
「ふんっ」
「ごめんごめん。はい、お茶」
「ありがと。…おお、いい香りだな」
「でしょ?これすごくおいしいんだけど、なんかもったいない気がしてね。あんまり飲んでないんだ」
「それこそもったいないぜ」
「でも…特別な時じゃないと」
「…だったら、私が毎日来るから、そのとき飲もうぜ」
「…うん。」
















「うへへ、魔理沙、まりさぁ…はっ!?ここは…まさか夢!?最低…」
アリスはこの日珍しく寝坊をした。顔を洗い、髪を梳いていると、唐突にノックが。
「まったく、誰よこんなときに…」
「よっ、遊びにきたぜ」
「へあっ!?」
二作目です。きっと暖かくなってきた日差しに私の頭がやられたんだと思います。唐突に二人の馴れ初めが書きたくなってしまったので勢いで書きました。ご指摘・ご感想などいただけたらでれすけは喜びます。
でれすけ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ちょっと・・・まて。
え・・・?
壊した人形の説明は「魔理沙を想いながら作った」だけ?
魔理沙はなんであそこまで強く怒られたのかを知らないまま?
てっきり何かの伏線だとばかり・・・。例えば「プレゼントにする予定で造ったが、渡す前に壊されて喧嘩してしまったから、本末転倒な話だった」とか、単純に「魔理沙に似せて造った人形で、大切にしていた」とか・・・。
いいマリアリでしたが、上記の箇所が気になりました。アリスが魔理沙に、なぜあんなに怒ったのかを話すかと思ってました。勝手な意見ですが、不快でしたらすみません。
2.名前が無い程度の能力削除
話に中身が無いなぁ
3.でれすけ削除
コメントありがとうございます。

>>1さん
すっかり人形の事忘れてました。

「ところでアリス、あの人形特別だったのか?」
「教えない」
「なんで?」
「…絶対引くもの。」
「引かないよ。なぁ、教えてくれよ」
「…貴女を想って創ってたら、なんか似ちゃったのよ。だから他の子とは別にして、大切にしてたの。ほら気持ち悪いでしょ?」
「それってつまり、私をそれだけ想ってくれたってことだろ?うれしいぜ、アリス」
「…ばか。」

というわけでした。


>>2さん
どうも構成を練るのが苦手でして、この作品も成り行きに任せ書いてしまいました。
そのせいで話に一貫性がなくなったのだと思います。今度機会があればしっかり構成を練り
作品を書けたらと思いますので、その時は是非また読んでいただけたら幸いです。
4.名前が無い程度の能力削除
<保障は出来ないわねってできないのかよwwwwww
5.名前が無い程度の能力削除
展開がはやい。