幻想郷の空に鳥の声が響き、『東風谷 早苗』は顔を上げる。洗濯物を乾かすのに都合のいい青空はいつしか灰色に染まり、先程敬愛する神『八坂 神奈子』に取り込みを早く済ませるようにと理由はともかく言われたのも合点がいった。
神奈子が言ったとおりに取り込みを早く済ませたおかげで、降り出した雨に鳥居がそぞろ濡れる頃に取りこぼしもなく洗濯もきちんと畳んで直す所までいく。だが早苗の仕事はそれで終わりではなく、神様二人と自分の夕食の準備に取りかからなくてはいけない。
厨房には沢蟹、鶏の切り身、様々な野菜などがあって結構なバリエーションの料理ができそうだと早苗は頷く。長らくの主従関係に、取りも直さず早苗のおさんどんの腕前は上達の一途を辿っている。
やがて食卓に、とり飯と沢蟹の唐揚げ、野菜のサラダととみに取り合わせのよい皿が並び、神奈子ともう一人の祀られる神『洩矢 諏訪子』は満面の笑みを浮かべる。しかし、妖怪の山で鶏肉料理とは天狗にとりかこまれてどつき回されるかなぁ、などとぼんやり早苗は思った。いただきますの声の後に食を進めれば、やがて神様二人が沢蟹取り合ったり軽口言い合ったり、それを早苗がまぁまぁと窘めたりと楽しい場となる。
食事が終われば次は風呂にと、理の当然。風呂掃除を終え居間に戻る早苗の耳に、取り乱したのかと思うような神様の声。よくよく聞けば私が一番風呂、お前は二番、いいや私が一番でお前は二番、1、2、1、2と立派な神様とは思えないようなしょうもない口喧嘩。やれやれと肩をすくめて間に入った早苗は、二人の神様にとりあえず今日は3人水入らずで入りましょうと提案してその場は収まった。
幻想郷に取りも敢えずにやってきたとて、女ですもの美には気遣いますといったところか、食料などと一緒に衛生用品も買い込んでいた。今、早苗は諏訪子にもっと美しくあれとばかり髪にとリンスをだばぁとかけている。冷たい感触にきゃーと冗談交じりの叫びの諏訪子にとりゃーとか言いながら笑顔で髪をぐしぐしし始める早苗。その笑顔こそが今は湯船に浸かる神奈子にとり一番の幸せなのかもしれない。自らの信仰のためにと利に走り、最後の風祝として幻想郷に取り込んでしまった早苗だからこそ、悲しげでいられるとどこまでも辛いのだ。
楽しい風呂も終わり、早苗にトリートメントされた神たち二人は早々に寝床にトリップ決めていびきをかき始めた。早苗は縁側に出て空にと利休茶色の瞳を向けてぼうっとしていた。色々な物を神奈子に取り上げられたとは思っていない、むしろここに来たことは自分にとり大きな夢と希望を叶えるチャンスだったと信じている。しかし、幻想郷の守護者である巫女にとりつくしまもなくあしらわれ自分に失望したのも事実だ。
そんなことを考え始めていかんいかんと早苗、手鏡に顔を写し、に、と林檎のような頬染めて笑みを元気に取り戻す。そう、負けてられるかと気合を入れなおし、その手の親指と人差し指を伸ばして・・・ばぁん、と空にトリガー引くかのごとく一発、星型の弾を飛ばした。
それは幻想郷の星空に取り込まれるように、尾を引いてどこまでも、遠くに。
自室に戻った早苗は寝る前のいつもの習慣となった日記に、とりとめもない毎日の事を書き始めた。色々書いてその最後に、つ、と”今日はにとりが来なかったので少し寂しい。明日は来てくれるかな、大好きなにとり。”こう書き記してペンを置いた。その親友のことをぼんやりと考えながら寝床にとりあえず入った早苗は、いつしか安らかに寝息を立てていた。
今日一日、光学迷彩を張り親友をじっと観察していたその娘は、机の上の日記の最後に”私も早苗のことが大好きだよ 河城にとり”と、書き加えて、また姿を消した。
神奈子が言ったとおりに取り込みを早く済ませたおかげで、降り出した雨に鳥居がそぞろ濡れる頃に取りこぼしもなく洗濯もきちんと畳んで直す所までいく。だが早苗の仕事はそれで終わりではなく、神様二人と自分の夕食の準備に取りかからなくてはいけない。
厨房には沢蟹、鶏の切り身、様々な野菜などがあって結構なバリエーションの料理ができそうだと早苗は頷く。長らくの主従関係に、取りも直さず早苗のおさんどんの腕前は上達の一途を辿っている。
やがて食卓に、とり飯と沢蟹の唐揚げ、野菜のサラダととみに取り合わせのよい皿が並び、神奈子ともう一人の祀られる神『洩矢 諏訪子』は満面の笑みを浮かべる。しかし、妖怪の山で鶏肉料理とは天狗にとりかこまれてどつき回されるかなぁ、などとぼんやり早苗は思った。いただきますの声の後に食を進めれば、やがて神様二人が沢蟹取り合ったり軽口言い合ったり、それを早苗がまぁまぁと窘めたりと楽しい場となる。
食事が終われば次は風呂にと、理の当然。風呂掃除を終え居間に戻る早苗の耳に、取り乱したのかと思うような神様の声。よくよく聞けば私が一番風呂、お前は二番、いいや私が一番でお前は二番、1、2、1、2と立派な神様とは思えないようなしょうもない口喧嘩。やれやれと肩をすくめて間に入った早苗は、二人の神様にとりあえず今日は3人水入らずで入りましょうと提案してその場は収まった。
幻想郷に取りも敢えずにやってきたとて、女ですもの美には気遣いますといったところか、食料などと一緒に衛生用品も買い込んでいた。今、早苗は諏訪子にもっと美しくあれとばかり髪にとリンスをだばぁとかけている。冷たい感触にきゃーと冗談交じりの叫びの諏訪子にとりゃーとか言いながら笑顔で髪をぐしぐしし始める早苗。その笑顔こそが今は湯船に浸かる神奈子にとり一番の幸せなのかもしれない。自らの信仰のためにと利に走り、最後の風祝として幻想郷に取り込んでしまった早苗だからこそ、悲しげでいられるとどこまでも辛いのだ。
楽しい風呂も終わり、早苗にトリートメントされた神たち二人は早々に寝床にトリップ決めていびきをかき始めた。早苗は縁側に出て空にと利休茶色の瞳を向けてぼうっとしていた。色々な物を神奈子に取り上げられたとは思っていない、むしろここに来たことは自分にとり大きな夢と希望を叶えるチャンスだったと信じている。しかし、幻想郷の守護者である巫女にとりつくしまもなくあしらわれ自分に失望したのも事実だ。
そんなことを考え始めていかんいかんと早苗、手鏡に顔を写し、に、と林檎のような頬染めて笑みを元気に取り戻す。そう、負けてられるかと気合を入れなおし、その手の親指と人差し指を伸ばして・・・ばぁん、と空にトリガー引くかのごとく一発、星型の弾を飛ばした。
それは幻想郷の星空に取り込まれるように、尾を引いてどこまでも、遠くに。
自室に戻った早苗は寝る前のいつもの習慣となった日記に、とりとめもない毎日の事を書き始めた。色々書いてその最後に、つ、と”今日はにとりが来なかったので少し寂しい。明日は来てくれるかな、大好きなにとり。”こう書き記してペンを置いた。その親友のことをぼんやりと考えながら寝床にとりあえず入った早苗は、いつしか安らかに寝息を立てていた。
今日一日、光学迷彩を張り親友をじっと観察していたその娘は、机の上の日記の最後に”私も早苗のことが大好きだよ 河城にとり”と、書き加えて、また姿を消した。
>神奈子にとり
神奈子×にとりもお願いします
この作品に、鳥肌を禁じえない
一度で二度おいしい作品ですね。すげぇ。
漢字混じりだと捜索難度が上がるけども、それはそれとしてにとり何やってんだよww
取りが不自然に多かったから……
とにかく豊富なにとりっぷりにトリッキーさを感じました。
理解もしやすいこの作品に、とりあえずの賞賛を贈ります。
とりにとりかこまれるを普通に「とり にとり かこまれる」と読んだ俺は最低の馬鹿野郎wwww
見事に取り込まれてしまいました。
細かなところなのに鳥肌か立つ作品でした。
・・・・・このコメントもにとりが紛れ込んだようですが。
というか風呂覗いてんじゃねぇよにとりw
2度読み直してやっと分かったわ~ww。
コメントで遊んでくださった方にも多謝(w
どんだけにとり好きなんだw
神様の数え方は「人」より「柱」の方が良いかも
この一文読んだ瞬間うまいなあと思いました。
辺りで「ん?」と思いましたが……これはすごい!
あと、関係無いけど光学迷彩に、塗料がついたらばれるのかなぁ。