これで人形は何体目かしら
暇さえあれば一体作り、何かを忘れたくても一体作る
整理は得意な方だけど、山のように溜まってるわね、たぶん
そんな私にもこだわりがある
同じ人形は基本的には作らないことだ
弾幕用の人形は消費が激しいので複数作るが、
こういう観賞用の人形が同じ顔をしていてもつまらない
「オンドゥル~♪ オンドゥルドゥル~♪」
アリスは変な歌を歌いながらまた新しい人形を作っていた
今度のものは実在の人物をモデルにした人形ではない
騎士の鎧とカブトムシをモチーフにしたいわゆるヒーローのようなものだ
特に何かあったわけでもない
なんとなく思いついたのがいい感じだったから
人里とかに持っていけば子供が喜ぶかもと思ったから
ただそれだけである
「フフ~ン♪」
もうすぐ出来上がる
魔力がどうこうしない人形はやはり簡単に作れる
その代わり何かに憑かれる可能性も大きいが
「できたぁー」
たった一人の部屋で満足げに人形を持ち上げる
うん、なかなか安定してていい感じ
せっかくのヒーローだから、何か設定も考えなきゃね
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幻想郷から少し離れた惑星、『オンドゥル星』
その星は、色々な昆虫戦士たちが日々体を鍛え、その強さを競い合う元気な星でした
そこに住む王子様は毎日退屈していました
『あの幻想郷はもっと楽しいところに違いない』
そう思った王子様は召使いたちの反対を押し切り、
一人幻想郷に旅立ってしまいました・・・
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うーん、イマイチね
やっぱりヒーローには仲間がいなくちゃね
そうと決まればもう一体作らねば
カブトムシといったらクワガタムシね・・・
そして青といったら赤、うん、決まり~♪
アリスの鼻歌は夕方まで続いた
その楽しげな歌声はとある魔法使いの耳にも入った
「ん? この声はアリスだな?
なに楽しそうにしてるんだか」
魔理沙はアリスの家の裏庭に降り立つと、窓からアリスの姿を探した
おっ、いたいた
アリスはこちらに背を向けて何かをしている
また人形作りか。今度は何を作ってるんだ?
背伸びをしてアリスの手元を何とか覗くことが出来た
なんだかかっこよさげな人形だなぁ
後でちょいと借りてみるかな?
一方アリスはそんな魔理沙に気付くこともなく、もう一体を完成させた
ふふーん、これもいい感じ
さてこの人形は・・・
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一人幻想郷へ旅立ってしまった王子のことが心配でならない王様は、
王子の親友であり、腕も立つ戦士のダディに、
『幻想郷へ向かってオンドゥル王子を無事に満足させて連れ帰ってくれ』
と命じました
ダディも王子のことが心配だったので、すぐに幻想郷へ飛び立ちました
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なんかヒーロー性が足りないような・・・
そうだわ、悪役がいないもの
悪役は幻想郷の誰かにしましょう
アリスは人形をしまってある棚へ行き、数々の人形を取り出した
うーん、第一印象が悪役っぽいのは・・・
やっぱり・・・
アリスは魔理沙の人形を選んだ
ちょうどいいわね。チョイ悪な悪役に最適だわ
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幻想郷にたどり着いた王子は、まず豊かな自然に驚きました
こんなに緑が深いところなんて初めてだったのです
嬉しくなった王子は仲間を探しました
戦士じゃなくても昆虫はいるはず
すると、なにやら虫が集まって話しているのが聞こえました
そこへ行くと、そこにはマントを羽織った緑色の髪をした
その子は虫と話せるようです
ますます嬉しくなった王子は思い切って話しかけました
『アンダーハダルェナンディス?』
王子は驚きました
言葉がうまく話せないのです
『え? 今なんて? え?』
王子はちょっぴり悲しくなりました
この幻想郷では自分の言葉は通じないようです
王子は首を振ってとぼとぼと歩いていきました
『んん? 今のは誰だろう?』
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アリスがやたらニヤニヤしている
妄想癖でもついたのかな? アリスのやつ
私が予測するに、あれはヒーローかなんかだな
となるとそのストーリーでも考えてるに違いない
そうなれば私は確実にヒーローを手助けするヒロインに違いない
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王子があてもなく森を歩いていると、後ろから笑い声がしました
誰かが猛スピードで向かってきます
『今日も大漁だぜ』
白と黒の服をした女の子が箒に乗って飛んできます
王子は直感で思いました
この子は泥棒で、悪いやつだ! と
王子は女の子に体当たりをしました
『ウェーィ!!』
『うおっ』
女の子は箒から落ち、担いでいた袋を落としました
その中には本や人形がたくさん入っています
なんと、人形の中には自分と親友のダディのものまでありました
王子は嬉しくて泣きそうになりました
『ボグノコトヲシテウィルヒドガーウィル』
そう思うとすぐさまその人に会いたくなりました
でも女の子は許してくれそうにありません
『何だお前、人を転ばせといてとっとと逃げる気か?』
女の子はとても強そうです
あぁ、僕は戦士じゃないからうまく戦えない
こんなとき、ダディがいてくれたら・・・
そう思ったとき、ダディの声がしました
『オバエハヒドゥリジャアイ!』
言葉は分かりませんでしたが、それは確かにダディの声です
ダディが駆けつけてくれたのです
王子はダディと一緒に・・・・・・
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ちょっと待て、私の人形がフルボッコにされてるぞ
まさか私は悪役なのか?
正義の味方じゃなかったのか?
魔理沙はひどく裏切られた気分だった
アリス・・・お前・・・!
魔理沙は力任せに叫んでしまった
「オンドゥルルラギッタンディスカー!?」
突然の大声に驚愕したアリスは窓の外にいる魔理沙に、
また力任せに叫んでしまった
「ウェ!? ナズェミテルンディス!!」
この数秒後、二人は死ぬほど笑ったそうだ
ちなみに、王子の話は紅魔館で大うけだったらしい
そして和んだ
あの作品は滑舌の悪さも含めて好きだったな
オデハクソマヲムッコロスッ
俺は知ってるんで大好物ですがw
( ;0H0) オデガサイギョウノガメンライダーダァァァッーーー!!
こんなに受けるなんて・・・
ありがとうございます!
まさかとは思ったがやっぱりwww
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