「が、はっ……ぎ、ぎ」
苦しい。
苦しい苦しい。
体が軋み、心が磨耗して行くようだ。
一体いつになったら、この責苦は終に至るのか。
朦朧とする意識がかろうじて捉える太陽は真上に輝く。蹲り、ただ耐えるしかない私を嘲うように。
「んぐ……! ぐう、げ、え……」
人間とはこうも脆いモノだっただろうか。
百鬼が昼夜問わず行き交うような幻想郷に屹立する、博麗の巫女とはこんなにも。
「お、おい霊夢! 大丈夫か?! クソッ、こんな物ぉ!」
……魔理沙? ああ、そうだ。確か霖之助さんと作ったと言ってコレを持ってきて……
いけないっ!
「は、離せよ霊夢! 私がこんなモノを持ってきたばっかりにっ!」
違う! ソレは罪じゃない。貴方は冬に芽吹いた蒲公英を罪だと思うの? 思わないでしょう。例え万人が時期尚早と笑ったとしても、力強い命を持った黄金の花弁を踏みにじるなんて誰もしないでしょう!
でも、今の貴方はそれをしようとしている。それは私が弱いから。私が弱いばかりに、紫紺の天恵に罪を被せようとしている。
ねえ魔理沙、それではいけないの。
これは私だけの罪。
私の弱さが、甘く優美な誘いを辛く鞭打つ痛みに変えてしまっているだけなの だから。
だから――ね。
「も、もうやめてくれ! 誰でも、誰でも良いから霊夢を助けてくれぇ!」
だんだんと。
だんだんと魔理沙の悲痛な叫びが遠くなっていく。
体の力が抜け、私の体は糸の切れた人形のように背中から畳に打ち付けられた。
もう私は蹲って痛みに耐えることすらかなわない。あとはただ蹂躙され、暴虐の限りを尽くす激痛に身を任せる事しか出来ないのだ。
でも、不思議と嫌じゃない。
それは魔理沙が傍にいるから? 多分、それもあると思う。だから安心していられる。
だけどもっともっと大事なのは――。
「おはぎ、美味しかったわ……がくっ」
「れ、霊夢! 胃腸風邪なら早く言えっ!」
魔理沙の悲痛な叫びを読み返して笑ってしまった、ごめん魔理沙。