Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

reconnaissance of wizards~椛・魔法使いたちを視る事~

2011/03/02 11:43:12
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※ このお話は、甘リアリシリーズの続きとなります。

 
「アリス・・・そろそろ、良いと思うんだぜ。」
「うん、じゃぁ・・・入れるわね。」

 魔理沙の頷きを、同意の合図と解釈したアリスは、魔理沙に見守られる中慎重に慎重に芳醇な香りを漂わせる、熱く煮えたぎるその場所に近づいていく。何度も経験はあったが、いざその時になるとちょびっと緊張してしまう自分のノミの心臓っぷりにアリスは内心、呆れていた。

「―いくわよ。」

 その一言で、自らを奮い立たせるアリスは一気に行動に移る。愛しの魔理沙が、驚いた顔を向け、視線を下に向けた瞬間に、アリスは自らの行いを悔いた。大切な魔理沙の期待に添える事が出来なかった・・・その事実が心の中にのしかかる。






 魔理沙の視線の先には、煮えたぎる鰹節と昆布の出汁の香りが食欲をそそる土鍋とその中を悠然と泳ぐ、くずきりの姿があった・・・


「おいおーい、いきなりよせ鍋にくずきりを入れるなよー」
「ご、ごめん、私くずきりが好きだから・・・つい・・・・・」
「謝らなくても良いぞ、アリスが作ってくれたご飯は何時だって美味しいんだぜ!」
「ありがと、魔理沙。」

 

 鍋を囲んでいる仲睦まじい魔法使いの声がした、冬の終わりある日の幻想郷のお話。




【或る魔法使いの行動観察に赴いた哨戒天狗と河童の通信ログ】 




● 7時00分 【通常通信】
 
 こちら椛、予定通り魔法使い達の監視を開始します。魔理沙の家には誰もいませんでしたので、アリスの家を見てみます。

 ・・・アリスの起床を確認、窓を開け放つ顔はとっても明るい。同性の私から見ても、なかなかにセクシーなネグリジェ姿のアリス、うーん、初めて見ましたがとっても可愛らしいですね。こんなの文様とか、はたて様に見られたら激写間違いなしだ。アリスが深呼吸をして、部屋に戻ったので少し移動して様子を見てみます・・・

 ―誰かいるようです。ダブルベッドが人の形に膨らんでいるのが確認できました。

 とりあえず経過を観察します。

● 7時30分 【緊急通信】

 こちら椛、たった今、ダブルベッドの膨らみが大きく伸びをしました。膨らみがもこもこと動いて、金色の美しいウエーブ髪が飛び出しました、魔理沙です!!既に朝チュンする関係にまで発展していたのでしょうか、確かに前から何かと噂は耐えませんでしたが・・・・・って、どうしてこの冬の終わりとは言え、まだ朝晩冷えるようなこの時期にドロワ一丁で寝てるんですか!?考えられる事はいくつかありますが、この段階で迂闊に結論を出す訳には行きません、偵察任務で変な思い込みから誤報を送ってはお話になりませんからね。

 ―経過を引き続き観察します、以上。


● 8時00分 【通常通信】

 こちら椛、にとり、かっぱ巻き、ご馳走様です。魔理沙とアリスも朝食を食べています、二人ともとっても幸せそうです。どうせなら私もにとりとご飯、食べたかったです・・・文様は天狗遣いが荒すぎますよねー。自分が別件の取材で動けないからって、何も私の千里眼であの二人が親密な関係にあるのではないかと言う事の裏付けをなさらなくとも・・・まぁ、仕方ありません。悲しいけどこれ、お仕事なのよね。


● 9時00分【定時通信】

 こちら椛、現在のところ異常はありません。アリスの物と思われる人形が、洗濯物を干してます。相変わらず服のセンスがいいですねぇ・・・。定時報告は二時間に一回ですよね、分かりました。

―以上、定時報告終わり。


● 9時11分【緊急通信】
 
 こ、こちら椛。洗濯物の中に、魔理沙のいつもの服が何着か混入しているのを確認しました。アリスのコスプレ用かと思いましたが、ほんの少しサイズが小さいですね。恐らく本人の物だと思われます。・・・もしこれが本当なら、この二人は同棲している可能性が跳ね上がります。え、洗濯してもらっただけかもしれない?いや、何着もある段階でそれは少しおかしいような気がします。ですので、同棲の可能性はあると思われます。

―引き続き観察を続けます。


● 11時00分【定時通信】

 こちら椛、お腹が空いてきました。お昼、差し入れしてくれるんですか?やった!にとり、ありがとうございます。魔理沙とアリスの二人は何やら本を読みながら唸っているみたいですね。研究でもしているのでしょうか?この二人はこれまでもしばしば研究をしていたし、魔法使いの研究には膨大な時間がかかるとも聞いた事があります。

 もしかすると、単に泊まり込みで研究をしていただけかも知れませんね。

 とにかくここで判断するのは早計です、引き続き観察します。

―以上、定時報告終わり。



● 12時05分【通常通信】

 そろそろ、到着しますか?お待ちしています。


● 13時00分【定時通信】
 
 お弁当ご馳走様でした。にとりのお魚料理大好きなんだよねー。では、引き続き二人の動向に注意します。あの二人もお昼ご飯食べたみたいですね、ホント、魔理沙ったら嬉しそうな顔をしてる。なんか羨ましくなってきちゃいました。

 以上、定時報告終わり。


● 13時41分【緊急通信】

 あ、人形によってカーテンを閉められました!これでは見えません・・・お昼寝でもするんでしょうか?魔理沙はともかくとして、魔法使いのアリスが寝るとは思えませんね。
と、なると・・・食後のデザートはアリスだぜ、とか、今度は魔理沙を食べたいな・・・とかいう流れからこうなったのかも知れません!!いや、アリスは魔法使いでありながら人間と同じように過ごすクセがあるから・・・どうなんでしょうかねぇ。

 あの中で一体何が・・・?私の耳もあれ位遠くの音を拾えたら良いのにっ・・・!

 ・・・あれ、鼻血が出て来た、なんでだろ?


● 14時03分【通常通信】

 鼻血は止まりました、ご心配をかけました。あ、まだ、カーテンは開いてませんよ?物体を透視する道具とかは・・・現在開発中、ですか。文様のカメラに装着したら幻想郷中が混乱しちゃいますよね・・・それ。完成しても、内緒にしておいた方が良いかもしれません。


● 15時00分【定時通信】
 
 ようやくカーテンが空きました。ティーセットを持ったアリスとお茶菓子を嬉しそうに運ぶ魔理沙の姿が見えます、お茶の時間みたいですね。
私もにとりと大将棋やりながら、和菓子とお茶にしたい所ですが、そうもいきません。あーあー、あーんとかお互いにやっちゃって、一体何時の時代のバカップルごっこやってんだか・・・。え?私もやって欲しいのかって?い、いやー、にとりにしてもらえたら嬉しいけどさぁ・・・なんか恥ずかしいし・・・・おおっと。
 
 この話は仕事終わってからですね、にとり。

―以上、定時報告終わり。


● 17時00分【定時通信】

 魔理沙とアリスが夕飯の準備を始めたみたいです。どうやら二人はよせ鍋をするみたい、私も暖かいお鍋と美味しいお酒飲んでゆっくりしたいですね。こっちも用意してある?おお、それは嬉しいです!・・・にとり、ホントにありがとう。え?友達だからって・・・んもぅ、にとりったら。

―以上、定時報告終わり。

● 19時00分【定時通信】

 回りもすっかり暗くなりました。夜目が効くからにとりの機械無しでも、二人の様子が見えてますよ・・・あ、にとり拗ねないでね!通信機もそうですが、お夕飯までご馳走になるのに、そこまでしてもらうのは流石に遠慮します。ん、遠慮はいらない?そうですか、困った時は、お願いします。
二人は何かお話をしているみたいですね。表情?表情はとっても幸せそうです、お互いに笑いあっています。ああ、早く仕事終えて、帰りたいなぁ・・・。

―以上、定時報告終わり。


● 20時32分【通常通信】

 あの二人が居間からいなくなりました、2人分のタオルと替えのパジャマを用意していたのが見えます。これからお風呂ですかねぇ。・・・かなり不本意なのですが、文様の命令でそこまで観察しろという命令になってます。まぁ、最近多忙の身とは思いますが、こんな悪い事を私にさせないで下さいよ、ねぇ。同情してくれるのですか、にとり?終わったら愚痴を聞いてくださいね・・・


● 20時41分【通常通信】

 湯煙の影響で、鮮明には見えませんが、二つの人影が動いているのが見えます。どうやら髪を洗いあってるみたいですね。私も、魔理沙みたいに伸ばしてみようかなー、そしたらにとり、洗ってくれますか?え、ホント?帰ってきたら洗ってくれるのですか?やったぁ!じゃあ、何が何でも無事に帰りませんと。

 ・・・ありがとう、にとり。私、頑張る!


● 午後21時00分 【緊急通信】

 こ、こちら椛。やっぱり二人は、一緒に寝ているみたいです。今朝、たまたま一緒に寝ていた訳ではなさそうですし・・・やっぱり一緒に暮らしているっぽいです!
 えっ、二人ともだ、抱き合ったままベッドに飛び込むとかってどんだけ器用なんですか?ああ、普通にキスしてます。え、ちょっと、そ・・・そんな、嘘ですよね!!ああっ、す、凄いです、既にここまでの関係だったなんて!
 も・・・もうこれ以上は、説明する事ができません!!そ、そんな、お二人はあんなに激し・・・・・ダメ・・・・・鼻血が、止まらないっ!!文様、どうか、この真相を・・・・・私に代わって突きとめてください、お願・・・・・・・・・



にとり・・・ごめん、約束守れませんでした―



ザザーッ、プツッ。
「・・・・これで全部ですね。椛は?」
「鼻血で失血死しそうになってたけど、とりあえず一命は取り留めたわ。」
「椛・・・貴女の犠牲は無駄にはしませんよ。」
「いやだから、死んで無いから。ってか友達を勝手に殺すなよ~」
「あやゃ・・・すみません。」
「それで、どうするんだい?」
「・・・これはもう、早急に突撃取材を敢行しませんと。ありがとうございます、にとり。」
「あんまり深入りするのは止めた方がいいと思うんだがなぁ・・・」
「この所、空中都市とかわらわらと出現した神霊のお話の取材に追われてましたから、たまにはこうした色恋沙汰も記事にしてみたくなりました。では、射命丸文、突撃取材に行ってきます!」

※reconnaissance of =~を偵察する。

 どうも、偵察活動はシュミレーションゲームの華、偵察不足の所は攻めないのがモットー、大胆な戦術を好む割に慎重な戦術を実行してしまうなんちゃって策士・タナバン=ダルサラームです。今回は、本編に「」の無いSSと言う特殊な形態を取ってみました。
 一人称で、雰囲気を実況中継するというシチュエーションを設定し状況描写の訓練をしたのですが・・・予測外の事態に困惑する椛と、仲睦まじい魔理沙とアリスの様子をきちんと書けているかは不安が大きいです。また、こうしたログっぽい物の纏めに際して、星新一の「セキストラ」から受けた影響がとても大きいです。

さて、次回はホワイトデー前後の更新にさせて貰います。バレンタインに負けない甘さのホワイトデーのお話にご期待下さい。
 
タナバン=ダルサラーム
http://atelierdarussalam.blog24.fc2.com/
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
電車内で読んでて、にやける顔を抑えるのに必死だった…
2.名前が無い程度の能力削除
甘ぁぁい…!!
3.名前が無い程度の能力削除
そういえば、椛は斥候・スパイユニットだったな。
しかし、甘い物の食べ過ぎで死ななくて良かったw
4.名前が無い程度の能力削除
二組の百合で二度美味しい いいですね
5.名前が無い程度の能力削除
にゃんにゃん