私が”視る”のは結果だけ。
“目”を視て、壊す。
その中に過程はない。
そんな単純なことに、気付いたのは意外と495年目だったりする。
そうすると私の好奇心はとどまることを知らない。
好奇心ネコをも殺すとはよく言ったことだが私の場合は好奇心で猫を殺す。
そんなことを繰り返しているから、お姉様に閉じ込められてしまうのだろう。
さて、そうときめたら早速始めよう。
普段は手のひらにきた”目”をそのまますぐにキュッとしてしまう。
そこを、少しづつすこしづつ、時間をかけてゆっくりと。
周りから少しづつ、締めて、握って、、軋ませて、ひび割れさせていくように。
最近館の雰囲気がおかしい。
上手く言えないが、妙に窮屈に感じるのだ。
運命は見えている。問題は無いはず。
けれども何とも言えない不安が胸をよぎる。
ふと気付けば歩の進みが速くなっている。
何をそんなに焦らないといけないのだ。
そう、優雅に、私らしくふるまわねば。
こんなにあくせくとしているのは私らしくないだろう、と自分にといかける。
何かを視落としているような気がするのだがそれが何か分からない。
心の霧は晴れぬままに、平穏な未来しか視えぬことに幾分かの不安を感じながら。
早速実験を開始する。
館の空気という概念的なものを実体化させ、それを締め付けていく。
経験から言えば、生卵をつぶさないように握る、そんな感覚に近い。
確かに力はいれているけれど握りつぶすとは行かない程度の、微妙なバランスを保つ。
「フランドール様、どちらに行かれるのですか。」
「何所にも。私は館の中にしかいないわ。」
そう咲夜に言って私は壊す何かを探して館の中を散策する。
昨日は花を壊した。少しずつ力を加えていくと、軋んで、ボロボロと崩れていった。
一昨日はネコを壊した。
すこしずつ元気が無くなって行って、生気が無くなっていって、そのあとに急に発狂して、叫びながら転げまわった後に、意味不明な泣き声を上げながら正体不明な”ナニカ”にかわりながら壊れていった。
例えばそう、一日の間に自分の中の1/30が入れ替わっていくとしよう。
一日たっただけだと、きっと私のことを変わって無いというだろう。
二日でも同じ答えが返ってくるだろう。
そう、けれど変わらないを30重ねたとして、はたして私はひと月前の私と変わってないといえるだろうか。
私が背徳的な遊びに没頭していることに、誰も気づいていない。
少しずつこの館は変わっていって、壊れていって、そのことに誰も気づいていない。
絶妙な力加減で、お姉様が視る運命を壊してしまっているから問題無いはずだ。
そんな遊びに没頭していたそんなとき、私の目に、お姉様からもらった人形が入った。
そう、大事なもの。壊したくないもの。ずっと持っていたいもの。
その時、私の心にふと、「コワシテシマエ」という感情が浮かんだ。
この大事なものを壊してしまうとどうなるんだろう。
何を感じるだろう。この一線を超えてみたい。
好奇心は人形を壊して、私を殺した。
私はできる限りゆっくりと、
まるで生まれたての赤子を抱くような力加減で、
手のひらに移した人形の”目”に力を入れた。
その瞬間の感情はどう表せばいいのだろう。
少しずつ心苦しさが増して、
それが少しずつ快感とまじりあって、
例えば気持ちよくなるために吐く、
そんな矛盾した、
初めて味わう、
満ち足りた幸福感を感じた。
大事な物を無くす、自分の手で無くす瞬間という魅力
に
取り憑かれたような気がした。
最近、館の様子がおかしい。
おかしいことはわかるのに何がおかしいのかわからない。
運命を視る。
この先、行きつく先を視る。
少しだけ変わっていくだけの、只の日常。
非日常を日常でサンドした、いつも通りの紅魔館が続くはずだ。
なのになんだ?
どうしてこう、不安に駆られるのだろう。
どうしてこう、胸が苦しくなるのだろう。
どうしてこう息苦しくなるのだろう。
どうしてからだが、痛むのだろう。
何かが軋む音がする。
メインディッシュは最後まで楽しまないと。とはお姉様の言。
もちろんもったいないと思うよ。
でも私は、一番美味しいものを先に食べないというのはすごく失礼だと思うの。
そう、あの瀟洒な咲夜が崩れる様子を見てみたい。
あの物静かなバチュリーが叫びまわる姿をみてみたい。
あのにこやかな小悪魔が悲鳴をあげる姿をみてみたい。
あの美しい美鈴が狂う姿をみてみたい。
あまりに大切であまりに愛しいみんなを壊す。
そんな背徳的、そんな絶望的な行為に胸が焼かれる。
けれども、それでも、あの永年に幼き紅き月と形容されたお姉様を、
月を黒く堕とすように、壊しつくしてしまいたいというこの思いを超える熱を、快楽を、超えはしないのだ。
さあ、本格的に壊してみよう。
お姉様はどう叫ぶのだろう。
何て声をあげるのだろう。
どう崩れるのだろう。
どう狂うのだろう。
なんて悲鳴をあげるのだろう。
想像するだけでものすごい快楽がうまれ、突き抜けておわらない絶頂を迎える。
ああ、わが麗しのお姉様。
愛しい愛しいお姉様。
貴方の妹は、正しく正常に狂っています。
姉を愛し、そしてその愛を確かめ、確固たるものへと昇華させようとしています。
貴方への愛を実感したい。
お姉様への愛を実感し、確かめ、私を愛してください。
憎んでください。
そして私が壊し、私を壊し、二人で一つになりましょう。
お姉様が視る運命はすでに壊れています。ほかならぬ最愛の妹の手によって。
さぁお姉様を壊しましょう。直接触れる必要は無けれども、メインディッシュは楽しまなければ。
「お姉様。」
「どうしたのフラン?」
「愛してる。」
そういって私はお姉様を押し倒し首に手をかけた。
「えっ、ちょっとフラン何を。」
すこしづつ力を入れていく。
絹のようなお姉様の首を絞める手に。
お姉様の目を壊す手に。
「あっ…うぁ…っ…フ…フランッ…」
きっと私は今すごい顔をしているだろう。
自分が泣いているのも自覚している。
そして湧き上がるこの不器用な笑みを、私は消す方法を知らない。
少しずつ、そして少しずつ、力を加える。
ギリギリ我慢できない絶妙の力加減で、
痛みに慣れるその瞬間の半瞬前にもう一段階痛みを加えて、
何故蝙蝠と化すことができないのかと疑問を募らせているであろうお姉様の、
今まで感じることが無かったであろう首を絞められることの息苦しさを感じているであろうお姉様の、
目、
を愛おしく、いと惜しく壊しながら、私は力を加え続ける。
「ぁっ……ふぁっ……」
涙目になるお姉様。シーツに私の涙とお姉様の涙とが水玉模様を作りだし、そしてお姉様は笑んだ。
想像を絶する苦痛だったろう。今にも狂いそうだったろう。
そのなかで気丈に笑んだお姉様の笑顔のなんと美しかったことか。
その笑顔で私は絶頂を超え、虚無感と幸福感の入り混じったなんともいえない快感にみたされ、
「「愛してる」」
重なったハーモニーは露と消え、お姉様は事切れた。
冷たいお姉様に口づける。
私は満たされて、そして私自身の"目"を締めた。
ああお姉様はこの感覚を感じながら私に愛を囁いたのね。
地下にいる間はついに感じることの無かった生がすごく近くにあり、漠然と生み、望んできた死がこんなにも遠くにある。
自分の首を絞めてみる。
こんなにも私は生きている。
世界が黒く染まる。
“目”を視て、壊す。
その中に過程はない。
そんな単純なことに、気付いたのは意外と495年目だったりする。
そうすると私の好奇心はとどまることを知らない。
好奇心ネコをも殺すとはよく言ったことだが私の場合は好奇心で猫を殺す。
そんなことを繰り返しているから、お姉様に閉じ込められてしまうのだろう。
さて、そうときめたら早速始めよう。
普段は手のひらにきた”目”をそのまますぐにキュッとしてしまう。
そこを、少しづつすこしづつ、時間をかけてゆっくりと。
周りから少しづつ、締めて、握って、、軋ませて、ひび割れさせていくように。
最近館の雰囲気がおかしい。
上手く言えないが、妙に窮屈に感じるのだ。
運命は見えている。問題は無いはず。
けれども何とも言えない不安が胸をよぎる。
ふと気付けば歩の進みが速くなっている。
何をそんなに焦らないといけないのだ。
そう、優雅に、私らしくふるまわねば。
こんなにあくせくとしているのは私らしくないだろう、と自分にといかける。
何かを視落としているような気がするのだがそれが何か分からない。
心の霧は晴れぬままに、平穏な未来しか視えぬことに幾分かの不安を感じながら。
早速実験を開始する。
館の空気という概念的なものを実体化させ、それを締め付けていく。
経験から言えば、生卵をつぶさないように握る、そんな感覚に近い。
確かに力はいれているけれど握りつぶすとは行かない程度の、微妙なバランスを保つ。
「フランドール様、どちらに行かれるのですか。」
「何所にも。私は館の中にしかいないわ。」
そう咲夜に言って私は壊す何かを探して館の中を散策する。
昨日は花を壊した。少しずつ力を加えていくと、軋んで、ボロボロと崩れていった。
一昨日はネコを壊した。
すこしずつ元気が無くなって行って、生気が無くなっていって、そのあとに急に発狂して、叫びながら転げまわった後に、意味不明な泣き声を上げながら正体不明な”ナニカ”にかわりながら壊れていった。
例えばそう、一日の間に自分の中の1/30が入れ替わっていくとしよう。
一日たっただけだと、きっと私のことを変わって無いというだろう。
二日でも同じ答えが返ってくるだろう。
そう、けれど変わらないを30重ねたとして、はたして私はひと月前の私と変わってないといえるだろうか。
私が背徳的な遊びに没頭していることに、誰も気づいていない。
少しずつこの館は変わっていって、壊れていって、そのことに誰も気づいていない。
絶妙な力加減で、お姉様が視る運命を壊してしまっているから問題無いはずだ。
そんな遊びに没頭していたそんなとき、私の目に、お姉様からもらった人形が入った。
そう、大事なもの。壊したくないもの。ずっと持っていたいもの。
その時、私の心にふと、「コワシテシマエ」という感情が浮かんだ。
この大事なものを壊してしまうとどうなるんだろう。
何を感じるだろう。この一線を超えてみたい。
好奇心は人形を壊して、私を殺した。
私はできる限りゆっくりと、
まるで生まれたての赤子を抱くような力加減で、
手のひらに移した人形の”目”に力を入れた。
その瞬間の感情はどう表せばいいのだろう。
少しずつ心苦しさが増して、
それが少しずつ快感とまじりあって、
例えば気持ちよくなるために吐く、
そんな矛盾した、
初めて味わう、
満ち足りた幸福感を感じた。
大事な物を無くす、自分の手で無くす瞬間という魅力
に
取り憑かれたような気がした。
最近、館の様子がおかしい。
おかしいことはわかるのに何がおかしいのかわからない。
運命を視る。
この先、行きつく先を視る。
少しだけ変わっていくだけの、只の日常。
非日常を日常でサンドした、いつも通りの紅魔館が続くはずだ。
なのになんだ?
どうしてこう、不安に駆られるのだろう。
どうしてこう、胸が苦しくなるのだろう。
どうしてこう息苦しくなるのだろう。
どうしてからだが、痛むのだろう。
何かが軋む音がする。
メインディッシュは最後まで楽しまないと。とはお姉様の言。
もちろんもったいないと思うよ。
でも私は、一番美味しいものを先に食べないというのはすごく失礼だと思うの。
そう、あの瀟洒な咲夜が崩れる様子を見てみたい。
あの物静かなバチュリーが叫びまわる姿をみてみたい。
あのにこやかな小悪魔が悲鳴をあげる姿をみてみたい。
あの美しい美鈴が狂う姿をみてみたい。
あまりに大切であまりに愛しいみんなを壊す。
そんな背徳的、そんな絶望的な行為に胸が焼かれる。
けれども、それでも、あの永年に幼き紅き月と形容されたお姉様を、
月を黒く堕とすように、壊しつくしてしまいたいというこの思いを超える熱を、快楽を、超えはしないのだ。
さあ、本格的に壊してみよう。
お姉様はどう叫ぶのだろう。
何て声をあげるのだろう。
どう崩れるのだろう。
どう狂うのだろう。
なんて悲鳴をあげるのだろう。
想像するだけでものすごい快楽がうまれ、突き抜けておわらない絶頂を迎える。
ああ、わが麗しのお姉様。
愛しい愛しいお姉様。
貴方の妹は、正しく正常に狂っています。
姉を愛し、そしてその愛を確かめ、確固たるものへと昇華させようとしています。
貴方への愛を実感したい。
お姉様への愛を実感し、確かめ、私を愛してください。
憎んでください。
そして私が壊し、私を壊し、二人で一つになりましょう。
お姉様が視る運命はすでに壊れています。ほかならぬ最愛の妹の手によって。
さぁお姉様を壊しましょう。直接触れる必要は無けれども、メインディッシュは楽しまなければ。
「お姉様。」
「どうしたのフラン?」
「愛してる。」
そういって私はお姉様を押し倒し首に手をかけた。
「えっ、ちょっとフラン何を。」
すこしづつ力を入れていく。
絹のようなお姉様の首を絞める手に。
お姉様の目を壊す手に。
「あっ…うぁ…っ…フ…フランッ…」
きっと私は今すごい顔をしているだろう。
自分が泣いているのも自覚している。
そして湧き上がるこの不器用な笑みを、私は消す方法を知らない。
少しずつ、そして少しずつ、力を加える。
ギリギリ我慢できない絶妙の力加減で、
痛みに慣れるその瞬間の半瞬前にもう一段階痛みを加えて、
何故蝙蝠と化すことができないのかと疑問を募らせているであろうお姉様の、
今まで感じることが無かったであろう首を絞められることの息苦しさを感じているであろうお姉様の、
目、
を愛おしく、いと惜しく壊しながら、私は力を加え続ける。
「ぁっ……ふぁっ……」
涙目になるお姉様。シーツに私の涙とお姉様の涙とが水玉模様を作りだし、そしてお姉様は笑んだ。
想像を絶する苦痛だったろう。今にも狂いそうだったろう。
そのなかで気丈に笑んだお姉様の笑顔のなんと美しかったことか。
その笑顔で私は絶頂を超え、虚無感と幸福感の入り混じったなんともいえない快感にみたされ、
「「愛してる」」
重なったハーモニーは露と消え、お姉様は事切れた。
冷たいお姉様に口づける。
私は満たされて、そして私自身の"目"を締めた。
ああお姉様はこの感覚を感じながら私に愛を囁いたのね。
地下にいる間はついに感じることの無かった生がすごく近くにあり、漠然と生み、望んできた死がこんなにも遠くにある。
自分の首を絞めてみる。
こんなにも私は生きている。
世界が黒く染まる。
うん、実に面白いんだけどさ
タグに注意書きをつけた方がいいと思う
一応ここ健全な場所なので
それと、あんまし過激なのが過ぎるならば、適切な場所で投稿することも考えてくれ
何考えてんですかあなた?
まさに狂気だな
タグや注意書きはまた考慮していただくとして・・・どうも誤字が目立ちますね
もう少し推敲された方が良いかと思います。もっともフラン視点なのでそれもまた演出なのかもしれませんが
話としては面白かったです。次回も期待します
話は面白かったです
ご指摘ありがとうございます
タグ・注意書きを追加致しました
ご感想もありがとうございます
次回への反省点とさせていただきます
リョナと呼ぶにしつこさが足りなくて、まあ、ここに投稿するならこれぐらいでいいけれど。
レミリアの独白部分は明瞭に区切らないと、フランの語りの地続きだと思って読んでしまうかも。