「……それは、ある、夏の蒸し暑い夜のことでした。
寝苦しさから眠ることが出来ず、わたしは何度か寝返りを打って……その時でした。
わたしの体を、何かが、ふわっ、となでたのです。驚いて目を開けても、誰もいません。気のせいかなと思っていると、わたしの前に、誰かが座った感覚がありました。
……もちろん、誰もいません。
わたしは目を閉じて、無理矢理に眠りました。
……あとから聞いたのですが、その日の夜は、一晩中、窓から『ひたひた』という音が聞こえていたそうです」
……しん、と周囲が静まり返る。
「おおー……。
早苗、お前、なかなかうまい語り口じゃないか」
「あ、はい。ありがとうございます」
「雰囲気の出し方がうまいわねー。やるじゃん」
「あはは……。昔、諏訪子さまとかに散々怖がらせられましたから……」
それは苦い思い出だ、と言わんばかりに早苗は苦笑いを浮かべた。
――ここは博麗神社。しかも、なぜか社殿の中。
昨今の暑さに耐えかねて、『何か涼しくなる方法はないか』と魔理沙が言ったのが事の発端である。霊夢がそれに『なら、怪談なんてどう?』と日本古来の由緒正しき納涼を提案し、それなら、とメンツが集められた。
普段は、皆が智恵と趣向を凝らした怪談話を持って集まるのだが、『外の世界にも怪談ってあるの?』と、それに興味を持ったアリスによって、今回の語り口は早苗で固定となっている。
「もっとギャラリーがいたら、もっと楽しかったかもしれないけどね」
と、辺りを見回すアリスの視線の先には以下のメンツ。
「なかなか面白い話だったね。ね、お姉ちゃん」
「え、ええ、そ、そうです……ね。あ、だ、だけど、わたしは『覚り』ですから。お話のオチなんて読めてましたよ、あははははは」
「じゃ、何で私の服をがっしり掴んでるの?」
「あ、辺りが暗いから、こいしが転んで怪我をしないようにですよ!」
余裕綽々の笑みを浮かべる妹と、すでに顔面真っ青の姉のコンビ。
ちなみに、姉は『そんな下らない話に参加なんてしません。第一、わたしは地獄の管理人ですよお化けなんて怖いわけないじゃないですかリアルに怨霊とかと世間話するくらいですよさあ帰りますよこいし皆さんごきげんよう』と息継ぎなしでまくし立てたところで妹に連れ戻されていたりする。
その理由は『涙目になってがたがた震えているお姉ちゃんを見てみたいから』という、何とも病んだものだったりするのが気になるが。
「レミィ、怖いなら帰りましょうか?」
「……はっ!?
ば、馬鹿なことを言わないでちょうだい、パチェ! わ、わたしがいつ、そんな、怖がってなんて!」
「カリスマガード展開中の自分の姿を、一度、鏡でよく見てみなさい」
本日、その従者は『怪談』の話を聞いて、文字通り、脱兎している。知識人は『風流な催しごとに参加するのも悪くないわね』とその場に残り、自称夜の王は『フランがそろそろ寂しがってるわね!』と逃げ出そうとしたところを知識人に捕獲されていた。
以上が、今回のギャラリーである。
「じゃあ、早苗。次をお願い」
「あ、はい」
司会進行はアリスだ。
それでは、と早苗は一同を、一度、静かに一瞥する。
「……わたしは外の世界にいた頃、学校に通っていました。学校では、日直という仕事があるのですが、その日、わたしは日直の仕事で朝早くに学校に行ったのです。
そうして、教室について……ふと、外を見ました。
窓の外のグラウンド……サッカーのゴールの側に、白いボールが、ぽーん……、ぽーん……、とやまなりに行ったり来たりしていました。
もちろん、パスの練習をしたりする人の姿があるわけでもありません。わたしは、それを、何かのごみかと思いました。
けれど、思い直したんです」
にやり、と早苗は笑う。
「……ごみって、あんな風に、左右に跳ねたりするのかな、って……」
がたがたがたん!
「お姉ちゃん、どこ行くの?」
「ち、ちょっとサッカーをしに!」
「お姉ちゃん、サッカーのルール知らないじゃない。さ、ほら、座って?」
さとりは逃げ出せなかった!
「そして、ふと、視線を外して……数秒もしないうちに、もう一度、視線をやると、そこには何もありませんでした。
跳ねていた『ボール』も、何も。
今でも、あれは何だったのか……わかりません」
「さっ、ささささサッカーって、以前、やったわね! 楽しかったわね、ねぇ、パチェ!」
「ええ、楽しかったわね。もう一回、やる?」
「や、やりましょうやりましょう! さあ、用意をしに行きましょう!」
「まだ終わってないわよ」
レミリアも逃げられない!
アリスが、「それじゃ、次、お願いね」と司会進行。こほん、と早苗は咳払いを一つ。
「……皆さんは、ポルターガイスト、というものをご存知でしょうか」
「ああ、プリズムリバーの」
聞きなれた単語が出てきたためか、幾分、ほっとした表情へと、さとりとレミリアの顔が変わる。
「わたしが、夜、家で勉強していたときのことでした。
突然、『ぎぃぃぃ……』と、ドアの開く音がしたのです」
がらっ。
「こんな風に?」
「お、驚かせないでちょうだい、霊夢!」
「そ、そそそそそうです! 黙って聞いていなさい、全く!」
二人そろって、その瞬間、メートル単位で飛び上がっていた奴らに言われたくないものだ。そんな視線を彼女達に向けながら、霊夢は内心で『くっくっく』と意地悪く笑う。
「変だな、と思って下に下りてみると……ドアは開いていませんでした。
気のせいかな、と思って部屋に戻って、また勉強していると……今度は、『がしゃーん!』と食器の崩れる音がしたのです。
がちゃんっ。
「こんな感じか?」
「まっ、まままままま魔理沙っ! あ、ああああなた、物は大事になさいなっ!」
「ま、全くその通りです! ものを大切にしない人は地獄で石積みですよっ!」
「お姉ちゃん、そういうの決めるの閻魔様だよ?」
二人そろって顔を引きつらせているのを確認して、にやにやする魔理沙。
「……わたしは、慌てて下に降りました。そして、食器棚を見たのですが……やっぱり、食器は崩れてなどいませんでした。
音の正体は……もちろん、不明です」
「ふ、不明とか、そんなわけありませんよ。大抵、そういうのは、ただの気のせいです。そう、気のせい。気のせいですよ? いいですね、気のせいですからね!」
「お姉ちゃん、汗、すごいよ?」
「あ、暑いからですよ!」
「そっかなー?」
「ね、ねぇ、パチェ。うちの食堂の食器棚、今度、買いなおしましょう」
「あんな立派なものを買い換えるなんてもったいないわ」
「だ、だけど、もう何十年も使ってるのよ! ぼろぼろなの! ぼろぼろなんだからね!」
「まぁ、アンティーク好きには高く売れそうね」
「じゃあ、早苗」
「はい」
すぅ……、と彼女は息を吸う。
もったいぶって……いや、雰囲気を出すために、わざと、たっぷりと間を空けてから口を開く。
「かつて、外の世界では、とても大きな戦争がありました。その戦争で、たくさんの人が死にました。
戦争が終わって平和になっても、その戦争のことを忘れまいと、あちこちに、戦争の爪あとを残した『記念施設』が存在します。
その中の一つ……爆弾によって焼け焦げた大地を象徴するように、あちこちが崩れた建物があります。
そこを訪れた時の事です。
……無残に壊れた建物。それを見ていて……ふと、感じたんです」
大きく、彼女は息を吸う。
「……息ができない」
びくぅっ! と約二名が飛び上がる。
「お姉ちゃん、痛い……」
「レミィ、服がしわになるわ」
約一名は迷惑そうに眉をひそめ、約一名はにやにや笑いを抑えきれない様子だった。
「まるで……当時の人々の気持ちを、そのまま体験しているようでした……。熱く燃え盛る世界では、息を吸うことなど、死と同じだったのでしょう……。だけど、息をしないと死んでしまう……。どっちにせよ、死んでしまう……。
わたしは……あまりの息苦しさに、建物に背を向けました。
すると、その息苦しさがすっと消えたのです。
……何だ、ただの気のせいか。そう思って、建物にもう一度向かいました」
そして。
「……すると、また、息ができなくなったのです」
どたばたがたんっ!
「あんた達、タンスの中には、いくらあんた達が小柄でも入れないわよ」
「な、何でもないわよ霊夢! た、ただ、タンスの中に異次元があったから運命を覗いただけよ!」
「タンスの中の生き物が『そんな怖い話するなよ』って訴えてきてるのが聞こえたから諌めただけです勘違いしないように!」
「……何度も言いますが、原因はわかりませんでした。
一緒に現地を訪れた友達も、『そんな感じはしなかった』と言っていました。……そう、原因不明、なのです……」
タンスの中から戻ってきた二人が、ぷるぷる震えながら隣にいる相手の服を掴む。パチュリーは迷惑そうな顔を、こいしは、何やらにやけた顔を浮かべている。
「……また、ある夜のことです。
ふと、わたしは夜中に目が覚めました。何となく眠れずに、寝返りを打っていると、突然、背中に何かが『がばっ!』と抱きついてきたのです!」
がばぁっ!
「ぴぃっ!?」
「にゃあっ!?」
「こっ、ここここいし! い、いきなり何ですか!」
「パ、パチェッ! あ、危ないじゃない! おでこぶつけたらどうしてくれるつもり!?」
「ううん、なーんでも」
「ええ、何でもないわ」
にやにやにやにやにや。
「――それから数日後、また、夜、眠っていると……カーテンが『しゃっ』と開く音がしました。
わたしは思いました。これは、目を開けてはいけない……寝たふりをしていなければだめだ、と」
がたがたっ。
「なっ、ななななななぜ障子を開けるのですかこいし!」
「パチェっ! ふすまを開けるなら、開けると言いなさいっ!」
「なんでもないよー」
「ええ。本当に、何でもないのよ」
にやにやにやにやにやにやにや。
「……これは日常的に起きていることですが、ふと、服を引っ張られることがあります。後ろに誰もいないのに」
どたばたがたっ!
「な、何でいきなり引っ張るんですかこいし!」
「危ないじゃないパチェ!」
『なんでもないよー』
にやにやにや×エンドレス。
――そんな感じで、博麗神社での怪談は続いたのだった。
さて。
「さ、咲夜!」
「はい、お嬢様?」
「ち、ちょっと、その……あ、あなた、おトイレ行きたくない?」
「え? あ、いえ、私は別に……」
「そ、そう。行きたいのね、仕方ないわね、わたしがついていってあげるわ。さあ、行きましょう」
「……はあ」
こちらが、その後の紅魔館の夜である。
「お、お空! ちょうどいいところに!」
「へ?」
「もう夜ですね。今日は一緒に寝ませんか?」
「え? 私と?」
「ええ、そうです。
やはり、地霊殿の主として、あなた達、みんなと交友を深めておかないといけないでしょう? 近頃は、こうやって枕を隣に並べることも少なくなりましたし」
「ああ、確かに!
はい、一緒に寝ましょう!」
「そうですよね! さあさあ!」
「……何、あの小動物系お姉ちゃん……かーわいい~……」
そして、こちらが、その後の地霊殿の夜である。
誠、幻想郷は、今日も平和であった。
寝苦しさから眠ることが出来ず、わたしは何度か寝返りを打って……その時でした。
わたしの体を、何かが、ふわっ、となでたのです。驚いて目を開けても、誰もいません。気のせいかなと思っていると、わたしの前に、誰かが座った感覚がありました。
……もちろん、誰もいません。
わたしは目を閉じて、無理矢理に眠りました。
……あとから聞いたのですが、その日の夜は、一晩中、窓から『ひたひた』という音が聞こえていたそうです」
……しん、と周囲が静まり返る。
「おおー……。
早苗、お前、なかなかうまい語り口じゃないか」
「あ、はい。ありがとうございます」
「雰囲気の出し方がうまいわねー。やるじゃん」
「あはは……。昔、諏訪子さまとかに散々怖がらせられましたから……」
それは苦い思い出だ、と言わんばかりに早苗は苦笑いを浮かべた。
――ここは博麗神社。しかも、なぜか社殿の中。
昨今の暑さに耐えかねて、『何か涼しくなる方法はないか』と魔理沙が言ったのが事の発端である。霊夢がそれに『なら、怪談なんてどう?』と日本古来の由緒正しき納涼を提案し、それなら、とメンツが集められた。
普段は、皆が智恵と趣向を凝らした怪談話を持って集まるのだが、『外の世界にも怪談ってあるの?』と、それに興味を持ったアリスによって、今回の語り口は早苗で固定となっている。
「もっとギャラリーがいたら、もっと楽しかったかもしれないけどね」
と、辺りを見回すアリスの視線の先には以下のメンツ。
「なかなか面白い話だったね。ね、お姉ちゃん」
「え、ええ、そ、そうです……ね。あ、だ、だけど、わたしは『覚り』ですから。お話のオチなんて読めてましたよ、あははははは」
「じゃ、何で私の服をがっしり掴んでるの?」
「あ、辺りが暗いから、こいしが転んで怪我をしないようにですよ!」
余裕綽々の笑みを浮かべる妹と、すでに顔面真っ青の姉のコンビ。
ちなみに、姉は『そんな下らない話に参加なんてしません。第一、わたしは地獄の管理人ですよお化けなんて怖いわけないじゃないですかリアルに怨霊とかと世間話するくらいですよさあ帰りますよこいし皆さんごきげんよう』と息継ぎなしでまくし立てたところで妹に連れ戻されていたりする。
その理由は『涙目になってがたがた震えているお姉ちゃんを見てみたいから』という、何とも病んだものだったりするのが気になるが。
「レミィ、怖いなら帰りましょうか?」
「……はっ!?
ば、馬鹿なことを言わないでちょうだい、パチェ! わ、わたしがいつ、そんな、怖がってなんて!」
「カリスマガード展開中の自分の姿を、一度、鏡でよく見てみなさい」
本日、その従者は『怪談』の話を聞いて、文字通り、脱兎している。知識人は『風流な催しごとに参加するのも悪くないわね』とその場に残り、自称夜の王は『フランがそろそろ寂しがってるわね!』と逃げ出そうとしたところを知識人に捕獲されていた。
以上が、今回のギャラリーである。
「じゃあ、早苗。次をお願い」
「あ、はい」
司会進行はアリスだ。
それでは、と早苗は一同を、一度、静かに一瞥する。
「……わたしは外の世界にいた頃、学校に通っていました。学校では、日直という仕事があるのですが、その日、わたしは日直の仕事で朝早くに学校に行ったのです。
そうして、教室について……ふと、外を見ました。
窓の外のグラウンド……サッカーのゴールの側に、白いボールが、ぽーん……、ぽーん……、とやまなりに行ったり来たりしていました。
もちろん、パスの練習をしたりする人の姿があるわけでもありません。わたしは、それを、何かのごみかと思いました。
けれど、思い直したんです」
にやり、と早苗は笑う。
「……ごみって、あんな風に、左右に跳ねたりするのかな、って……」
がたがたがたん!
「お姉ちゃん、どこ行くの?」
「ち、ちょっとサッカーをしに!」
「お姉ちゃん、サッカーのルール知らないじゃない。さ、ほら、座って?」
さとりは逃げ出せなかった!
「そして、ふと、視線を外して……数秒もしないうちに、もう一度、視線をやると、そこには何もありませんでした。
跳ねていた『ボール』も、何も。
今でも、あれは何だったのか……わかりません」
「さっ、ささささサッカーって、以前、やったわね! 楽しかったわね、ねぇ、パチェ!」
「ええ、楽しかったわね。もう一回、やる?」
「や、やりましょうやりましょう! さあ、用意をしに行きましょう!」
「まだ終わってないわよ」
レミリアも逃げられない!
アリスが、「それじゃ、次、お願いね」と司会進行。こほん、と早苗は咳払いを一つ。
「……皆さんは、ポルターガイスト、というものをご存知でしょうか」
「ああ、プリズムリバーの」
聞きなれた単語が出てきたためか、幾分、ほっとした表情へと、さとりとレミリアの顔が変わる。
「わたしが、夜、家で勉強していたときのことでした。
突然、『ぎぃぃぃ……』と、ドアの開く音がしたのです」
がらっ。
「こんな風に?」
「お、驚かせないでちょうだい、霊夢!」
「そ、そそそそそうです! 黙って聞いていなさい、全く!」
二人そろって、その瞬間、メートル単位で飛び上がっていた奴らに言われたくないものだ。そんな視線を彼女達に向けながら、霊夢は内心で『くっくっく』と意地悪く笑う。
「変だな、と思って下に下りてみると……ドアは開いていませんでした。
気のせいかな、と思って部屋に戻って、また勉強していると……今度は、『がしゃーん!』と食器の崩れる音がしたのです。
がちゃんっ。
「こんな感じか?」
「まっ、まままままま魔理沙っ! あ、ああああなた、物は大事になさいなっ!」
「ま、全くその通りです! ものを大切にしない人は地獄で石積みですよっ!」
「お姉ちゃん、そういうの決めるの閻魔様だよ?」
二人そろって顔を引きつらせているのを確認して、にやにやする魔理沙。
「……わたしは、慌てて下に降りました。そして、食器棚を見たのですが……やっぱり、食器は崩れてなどいませんでした。
音の正体は……もちろん、不明です」
「ふ、不明とか、そんなわけありませんよ。大抵、そういうのは、ただの気のせいです。そう、気のせい。気のせいですよ? いいですね、気のせいですからね!」
「お姉ちゃん、汗、すごいよ?」
「あ、暑いからですよ!」
「そっかなー?」
「ね、ねぇ、パチェ。うちの食堂の食器棚、今度、買いなおしましょう」
「あんな立派なものを買い換えるなんてもったいないわ」
「だ、だけど、もう何十年も使ってるのよ! ぼろぼろなの! ぼろぼろなんだからね!」
「まぁ、アンティーク好きには高く売れそうね」
「じゃあ、早苗」
「はい」
すぅ……、と彼女は息を吸う。
もったいぶって……いや、雰囲気を出すために、わざと、たっぷりと間を空けてから口を開く。
「かつて、外の世界では、とても大きな戦争がありました。その戦争で、たくさんの人が死にました。
戦争が終わって平和になっても、その戦争のことを忘れまいと、あちこちに、戦争の爪あとを残した『記念施設』が存在します。
その中の一つ……爆弾によって焼け焦げた大地を象徴するように、あちこちが崩れた建物があります。
そこを訪れた時の事です。
……無残に壊れた建物。それを見ていて……ふと、感じたんです」
大きく、彼女は息を吸う。
「……息ができない」
びくぅっ! と約二名が飛び上がる。
「お姉ちゃん、痛い……」
「レミィ、服がしわになるわ」
約一名は迷惑そうに眉をひそめ、約一名はにやにや笑いを抑えきれない様子だった。
「まるで……当時の人々の気持ちを、そのまま体験しているようでした……。熱く燃え盛る世界では、息を吸うことなど、死と同じだったのでしょう……。だけど、息をしないと死んでしまう……。どっちにせよ、死んでしまう……。
わたしは……あまりの息苦しさに、建物に背を向けました。
すると、その息苦しさがすっと消えたのです。
……何だ、ただの気のせいか。そう思って、建物にもう一度向かいました」
そして。
「……すると、また、息ができなくなったのです」
どたばたがたんっ!
「あんた達、タンスの中には、いくらあんた達が小柄でも入れないわよ」
「な、何でもないわよ霊夢! た、ただ、タンスの中に異次元があったから運命を覗いただけよ!」
「タンスの中の生き物が『そんな怖い話するなよ』って訴えてきてるのが聞こえたから諌めただけです勘違いしないように!」
「……何度も言いますが、原因はわかりませんでした。
一緒に現地を訪れた友達も、『そんな感じはしなかった』と言っていました。……そう、原因不明、なのです……」
タンスの中から戻ってきた二人が、ぷるぷる震えながら隣にいる相手の服を掴む。パチュリーは迷惑そうな顔を、こいしは、何やらにやけた顔を浮かべている。
「……また、ある夜のことです。
ふと、わたしは夜中に目が覚めました。何となく眠れずに、寝返りを打っていると、突然、背中に何かが『がばっ!』と抱きついてきたのです!」
がばぁっ!
「ぴぃっ!?」
「にゃあっ!?」
「こっ、ここここいし! い、いきなり何ですか!」
「パ、パチェッ! あ、危ないじゃない! おでこぶつけたらどうしてくれるつもり!?」
「ううん、なーんでも」
「ええ、何でもないわ」
にやにやにやにやにや。
「――それから数日後、また、夜、眠っていると……カーテンが『しゃっ』と開く音がしました。
わたしは思いました。これは、目を開けてはいけない……寝たふりをしていなければだめだ、と」
がたがたっ。
「なっ、ななななななぜ障子を開けるのですかこいし!」
「パチェっ! ふすまを開けるなら、開けると言いなさいっ!」
「なんでもないよー」
「ええ。本当に、何でもないのよ」
にやにやにやにやにやにやにや。
「……これは日常的に起きていることですが、ふと、服を引っ張られることがあります。後ろに誰もいないのに」
どたばたがたっ!
「な、何でいきなり引っ張るんですかこいし!」
「危ないじゃないパチェ!」
『なんでもないよー』
にやにやにや×エンドレス。
――そんな感じで、博麗神社での怪談は続いたのだった。
さて。
「さ、咲夜!」
「はい、お嬢様?」
「ち、ちょっと、その……あ、あなた、おトイレ行きたくない?」
「え? あ、いえ、私は別に……」
「そ、そう。行きたいのね、仕方ないわね、わたしがついていってあげるわ。さあ、行きましょう」
「……はあ」
こちらが、その後の紅魔館の夜である。
「お、お空! ちょうどいいところに!」
「へ?」
「もう夜ですね。今日は一緒に寝ませんか?」
「え? 私と?」
「ええ、そうです。
やはり、地霊殿の主として、あなた達、みんなと交友を深めておかないといけないでしょう? 近頃は、こうやって枕を隣に並べることも少なくなりましたし」
「ああ、確かに!
はい、一緒に寝ましょう!」
「そうですよね! さあさあ!」
「……何、あの小動物系お姉ちゃん……かーわいい~……」
そして、こちらが、その後の地霊殿の夜である。
誠、幻想郷は、今日も平和であった。
…え。えぇえ!?
怖くなったので、お嬢様と一緒にトイレ、行ってきます。
その日は夜に肝試しがあってですね?私は一番手だったんです。
一班二三人だったので、仲のいい友達と一緒に班を作って、その友達と一緒にコースを迷う事無く歩いて無事に抜けました。後は他の生徒を待つだけでした。
ところが何時までたっても生徒が一人も来ないんです。
五分十分なら少し怖がってるんだろうと思いました。でも十五分もすると何かあったんじゃないかと思うのが普通です。
私も友達も、ゴール地点で待機していた先生も流石に心配になり一度戻ってみようかと考え始めた時です。
友達達がゴールに向かって歩いてきたのです。
ただ一つ奇妙な事に、数分の間をおいて出発した筈の数十組が一度にやってきたんです。
先生が何で遅れたのか聞くと、生徒の一人が言いました。
「だって何時まで歩いてもゴールが見えなかったんだもん」
ゴール付近には分かりやすい様に灯りが沢山ありました。そして時刻は夜八時。幾らなんでもおかしいです。
生徒達は全員で歌を歌いながら歩いたらゴールが見えたと言っていたんですが、歌なんて一切聞こえませんでした。
もし、誰も歌を歌わなかったら。生徒達は二度と返って来れなくなっていたかもしれません。
そして何故私は迷わなかったのか。それだけがいまだに謎のままです。
そしてその日の就寝時間。
私はすぐに寝たので詳しくは知りませんが、起きていた友達たちの話では
「窓に張り付く白い服を着た女性」と、「外の墓場を歩き回る青い服の女性」。
そして「廊下に立って無気味に笑う白い服の女性」がいたそうです……。
……とまぁ、実際にあった作者様の実体験に比べれば全然怖くない自身の霊体験を語ったわけですが。
このお話まじでメチャクチャ怖かったです。お燐と一緒に厠行ってきます。
あーみんな無邪気でかわいかったです、
原爆のと、服ひっぱりはこっちもありました!ナカーマ
原爆の方は嫌な感じがして、建物の影見たら、何かがいた・・・程度ですが。
今でも定時に歌が聞こえるスポットがあります。
人などいるはずのない場所から聞こえるので
観光に訪れた際は絶対に逃げましょう。
音源を捜すなりしてると連れて行かれます。
作者様はお寺での先祖供養をオススメします。
墓参りだけでも効果はあると思います。
9月ですが、怪談ゴチになりました。
俺一人の工場に、視界の端に俺以外の影が時たま見えるんだが・・・
こういう日の加工は上手くいくジンクスなんで、ありがたいんだけどネw