前回の反省点──子供っぽい自分。
よって私は大人の女性らしい嗜みを手に入れるため特訓をする事にしたの。
……そう、したのだけど……。
ずずー
「どうですか? 新茶のお味は? 人里に降りた時に買ったんですよ。」
自称空気を読む女、永江衣玖は私の決意など露ほどにも知らず、呑気にお茶を啜っている。
「うん、おいしい……って、老夫婦か! 私達は!?」
もちろんそんな緩い空気を認めるわけにはいかないわ。
そう、既に試練は始まっているのだから。
何事かと目を丸くする衣玖に構わず私は続けざまに叫んだ。
「特訓よ! 衣玖……!」
「特訓…………ですか?」
まさか忘れたとか言わないわよね?
…………初デートであれだけ恥ずかしい思いをしたというのに。
「やっぱり……するんですね。」
どうやら忘れた訳ではなかったようね。
ただ信じたく無かった……そんな感じみたい。
「なによ……私とキス、したくないの?」
あんまり乗り気じゃない様子の衣玖。わざとらしく目を逸らされ、私はちょっとだけムッとしてしまった。
「そ、そんな事は……無いのですよ?」
「……どうして最後に疑問符が付くのよ……。」
俯いてもじもじと肩を揺らす衣玖。
相当恥ずかしいらしい。
(そ、そんなの私だって一緒よ!)
ウルウルと瞳を潤ませ、ねだるようにして私を見つめる衣玖……そ、そんな顔したって無駄なんだからっ!
「兎に角! これは急務なの必須なの運命なの! 衣玖がなんと言ったところで覆らないんだからっ!」
勝負を挑むつもりで衣玖の顔を真っ正面から睨んでやる。
ここで根負けする訳にはいかないのだから。
「…………分かりました。私も覚悟を決めましょう。」
やった……! いよいよこの時を迎える事ができた……!
私の熱意が伝わったのか、ついに衣玖の口からGOサインが出た。
そうと決まれば早速実行!──と、今すぐ衣玖を押し倒したくなる気持ちを抑えながら私は目を閉じて差し出すようにして唇を向けた。
やっぱりここは衣玖の方からしてもらうべきだと思うから。
「あっ……あのぉ~……天子? 何をしているのですか?」
すぐにでもキスが返ってくるものと思いきや、代わりに聞こえてきたのはなんだか弱弱しい衣玖の声。
…………この期に及んで何を言い出すの?
そう思い私は片目だけ開けて衣玖を見た。
「何って……キスでしょう?」
「まさかとは思うのですが……私から?」
「当然じゃない! 衣玖がリードしてくれなくてどうするの?」
「し、しかし……! いきなり唇はハードルが高すぎるというか……。」
「もう! この間いきなり頬にキスしてきたのは衣玖の方でしょう!?」
「あ、あれはものの弾みというか、何というか……。」
「弾みでも何でも良いから、早くしてよ!」
ついつい怒鳴り声になってしまうのは、それだけ私が期待しているってことで……。
煮え切らない衣玖の態度に私の怒りは沸点を容易く越えてしまっていた。
「だいたい覚悟はどうしたのよ!? 衣玖の意気地なし!」
──言ってしまった……!
ついには痺れを切らしてしまい、勢いに任せて酷い事を言ってしまった。
これは流石に衣玖だって怒るだろう……。
私は恐くなって、すぐに顔を伏せた。
「天子…………。」
ビクッ!
掛けられた衣玖の声に思わず肩が震えてしまった。
──どうしよう……怖い……!
衣玖に嫌われてしまったかもしれない──そう思うだけで、胸が引き千切られそうになった。
トンっ
だけど私の肩に置かれた衣玖の手はとても優しく、怒りなんて微塵も感じられなかった。
「天子…………貴女の言うとおりです。」
「……………………え?」
それじゃあ……!
期待に顔を上げると、やわらかく微笑む衣玖の姿があった。
『しましょう……。』
静かにそう語る衣玖の瞳に誘導され、私はもう一度瞼を閉じてその時を待つ。
私の肩を掴む衣玖の手が僅かに強くなった。
「行きますよ……?」
気遣わしげに囁いた衣玖に、私は小さく頷いて答えた──覚悟は既に出来ている。
それに、いつの間にか先程の恐怖が嘘のように消えていた。
それどころか、目を閉じていても衣玖の顔が徐々に迫って来ているのが感じられ、胸がときめかずにはいられなかった。
そして──
ちゅっ
「──っ!?」
「あっ……。」
声を出したのは、果たしてどっちだったのだろう。
それすら分からなくなる程に、唇が触れた一瞬だけ私たちは一つになれた気がした。
ううん。まだ繋がってる。とろけた瞳を向ける衣玖に私はそう確信した。
だって私の瞳も同じようにとろけているのだろうから……。
「ねぇ……イクぅ……。」
だけど足りない……。
もっと深く繋がりたい……。
「はい……天子……。」
たった一言、それだけで私の気持ちを理解してくれた衣玖。
それはひょっとしたら、同じように衣玖も思ってくれたんじゃないかって……そう考えるのはちょっと虫が良すぎるかしら?
ちゅっ……
そんな雑念も二度目のキスに容易く霧散していった。
今度のは、さっきよりちょっと長かった。
「天子……次はその、舌を……。」
「うん……良いよ。衣玖の好きにして──ん。」
私の返事を最後まで聞かず、衣玖は直ぐに唇を重ねてきた。
そして強引に舌をねじ込んでくると、私の舌に絡み付いてきた。
──やだ……これ、すごくきもちいい。
一つになれただけで幸せが心の許容量を超えたのに、このうえ気持ちいいまで追加されては、いよいよ制御が利かなくなってきた。
ううん……ホントはとっくに壊れてたのかも。
私も衣玖も、最早相手を求める事しか頭に無いみたい。
くちゅ……
くちゅ……
舌を絡ませる音が絶え間なく耳に響く……。
いつの間にか衣玖の手が私の腰を引き寄せていた。
唇だけじゃない……衣玖の胸の音が聞こえるくらい、私たちは密着していた。
きっと同じように私の胸の音を衣玖が聞いているのだと思うと、それだけでまた幸せな気持ちになれた。
いつまで続くのかな……?
唐突にそんな考えが頭を過ぎる。
練習なんて言っておいて、今では夢中になって求めあってる事にちょっとだけ可笑しくなって……心のどこかで笑ってる自分がいた。
(あっ……!)
不意に衣玖の手が私の腰を離れた。
どこに行くのか、気になって意識がそちらへ向く。
離れないで──キスを中断してでも言おうか迷ったが、どうもそうでは無い事に直ぐに気が付いた。
衣玖の手は私の後頭部を抑え、もっと深くキスをしようとしているようだった。
それに応えるように、私も両手を衣玖の首に回した。
パサリ
その時、二人の帽子が同時に落ちた。
「「あ……。」」
それをきっかけに、二人同時に夢から覚めたように顔を離した。
衣玖の顔が赤い……きっと私も同じくらい赤いのだろう。
「天子……?」
「うん……。」
誘われるまま、私は畳の上に身を横にして、その上に跨るように衣玖が身を重ねる。
──衣玖の顔がまたすぐ近くになった。
優しく啄むように私の唇にそっとキスをする衣玖。
どうやらそれは合図のつもりみたいで。
一度顔を上げた衣玖の潤んだ瞳がもう待ちきれないと訴えていた。
「来て……イク。」
私だって……待ちきれない。
できる事なら、このままずっと……。
その後、私達は互いの気の済むまで互いを求め続けた。
どんどん求め合っていく二人の表現が素晴らしい。新たなちゅっちゅ作家の誕生で狂気乱舞。
ああ、俺もちゅっちゅしてぇ! 自重? そんなもの覚えなくてよろしい!
しかし出来ることならここではない所でここでは書けない続きが読めると更に嬉しかったり。でもこういう寸止めも大好きだ!
さあ、次はどのちゅっちゅだ! レイサナもこてるナズ星こまえーき。すわかなもいるな! ああ、あとさとこいすいかの3(ピー)もアリだな!
いろいろ想像してたらこれから一週間夜も眠れねえ!! 全く罪作りなお方だ!
>「ねぇ……イクぅ……」
衣玖をカタカナにしたのは狙いなんですねわかります。
自重?なにそれまずそう
レイサナマリパチェこまえーき、勇パルすいさとおりんくう、あやもみにとひな秋シスターまで、何でも来るがよいぞ!
ここにツボった私は異端
ちゅっちゅ万歳
糖尿になった上に不整脈の俺は何だろうと見てやるぞぉ!!
衣玖天いいよ、衣玖天