Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

紹興酒と子守唄

2008/09/14 14:27:25
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「はあ…」
 人の眠る深夜、紅魔館の門の前で
 紅美鈴はため息を着いていた

「…流石に…少し疲れました…」
 紅魔館の門番長としては、とても珍しい弱音であった
 それが、仕事をやり終えての達成感なら
 このような弱音ははかない
 むしろ、その場合この門番長は元気になる
 では、なぜ弱音をはいているのか…
 
「…はぁ…せめて…魔理沙さんだけでも、とめられたらな…」
 原因は、最近の侵入者率の高さであった
 元々、紅魔館に攻めてくる下級妖怪や
 退魔師やヴァンパイヤハンター等を打ち払っていたのだが
 今の幻想郷では、そのような奇特な人物は殆どいない
 その上、博麗の巫女が打ち出したスペルカードシステムによって
 接近戦主体の美鈴の攻撃力は激減した 
 それでも、ある程度の妖怪ぐらいなら美鈴は勝てるのだが

「…来る人、皆化け物ですし…」 
 博麗の巫女、白黒の魔法使い、七色の魔法使い
 鬼、天狗、隙間妖怪などやってくる者達の全てが
 並み以上、むしろ苛めに近い感覚で紅魔館の門の前にやってくる

「魔理沙さんにいたっては、屋敷のベル程度にしか思っていないですけどね」

 だが、流石に今日は凹んだ
 まさか、6人ともやってくるとは思っていなかった
 むしろそんな逃げ出したい状況でも
 門の前に立ったことを褒めてもらいたい位である
 だが、結局は今日は三回門を破壊された
 無論、メイド長である十六夜咲夜にお仕置きを受け
 今さっき、やっと門の修理が終ったところであった


「……ふぅ…」
 いつも笑っている美鈴だが、今日は珍しく気分が沈んでいた
 そんな時は、門の前に座り込み
「…飲みますか…」
 ワイン主体の紅魔館の中で、珍しい紹興酒を
 月を見ながらちびちびとやるのが常であった 
 
「最近は、頻度も上がってきてるな…」
 余り減る事はない紹興酒のはずであったが
 気がつけば、中身は半分以下になっていた
 つまり、それほど凹む機会が増えているという事だ

 月を見ながら酒を飲む…
 辺りに誰もいないことを確かめてから
 美鈴は小さく歌い始めた
「なんのため~に…うーまれて…」

 紅魔館にある図書館で見つけた本に書いてあった歌
 子供むけの本に書いてあったのだが
 美鈴はその歌が気に入っていた

「なーにをして~…生きるのか…」
 歌えば歌うほど、その意味を深く考えさせられる歌であった
 特に、長生きできる妖怪であるが故に
 その歌は深く心に残ったのである

「分からないまま~終る…」
 いっそのこと、寿命が短い人間になればその歌も分かるのだろうか

「そ~んなのは…いーやだ」
「…あら、何が嫌なのかしら?」
 歌を歌っている最中に、急に後ろから声をかけられて
 美鈴が慌てて振り向くと
「お、お嬢様!?」
 そこにいたのは、屋敷の主であるレミリア・スカーレット姿であった
「隣良いかしら?」
 驚く美鈴を他所に、レミリアは美鈴の隣に座る

 美鈴は驚きながらも、隣に主を座らせる
「お嬢様、咲夜さんは?」
「眠っているわ…だから抜け出して来たの」
 レミリアがそう言うと、無言で美鈴の持っている紹興酒を見つめる 
 それを見た美鈴が、自分のもっていたコップに紹興酒を少し入れると
「どうぞ…ワインじゃないですけど」
 それをレミリアに手渡した 
 渡されたコップを受け取ったレミリアがそれをぐいっと飲み干す

「…たまにはこういうお酒も悪くないわね…」
「あははっ、皆さんが宴会に持って行くお酒は、美味しい物ばかりですからね」

 美鈴が飲んでいるお酒は、美鈴が自分で作ったもの
 屋敷の皆はワイン派であるが、美鈴はお酒派…
 しかも、幻想郷では手に入らない紹興酒派であった
 故に、自分で作ったのだ

「…美鈴、もう一杯御代わり…」
「結構きついですから、飲みすぎないようにしてくださいね?」
 レミリアも少し気に入ったのだろう
 その後も、美鈴とかわるがわるちびちびとお酒を飲んだ

 しばらくの間、美鈴とレミリアは無言のまま月を見ていた
「…ねえ、美鈴…」
「なんでしょうか?」
 そんな時、レミリアがふっと呟いた
「…私よりもフランの方が紅魔館の主にふさわしいかしら…」
「お、お嬢様?」
 いきなりそんな話をされて、美鈴が慌てる
 だが、レミリアは静かに美鈴に話を続けた

「運命を視てたのよ…」
『運命を操る能力』レミリア・スカーレットが持っている力であった
 それによって、レミリアは紅魔館を護ってきたのである
 その中に、様々な運命を見ることができるのだが

「私ではなく、フランが紅魔館の主になる運命が…」 
「……それは…」
 いくつもある運命の中で、そうなるという完全に決まったものはない
 あくまで、そうなるかもしれないと言うだけの物であるが

「…そういう可能性もあるという事ね…」
「……」
 そうなるかも知れないという、可能性があってできる物である
 つまり、そうなるだけの理由がどこかにあるのも事実である
 
「…確かに、フランの方が私よりも強いわ…」
「お嬢様、ですが…」
「それに、カリスマも…」
「!?」
 流石の美鈴も、プライドが高いレミリアが
 カリスマでの敗北を宣言するとは思ってもいなかった

「…大丈夫よ美鈴…もう皆が私にカリスマが無いと言っているのは
 わかって居るから…」
「……」
 美鈴は何も言わない、いや、何を言えば良いのかわからなかった
 そんな美鈴を見て、レミリアは少しだけ困った顔をして
 美鈴の紹興酒をコップに入れた

「…まあ、簡単にいえば、少し疲れたと言えばいいのかしら?」
 そう言うと、コップの中に入れたお酒をちびちびと飲み始めた

「あの、お嬢様…」
 そんな時、美鈴がレミリアに声をかけた
「ん?なにかしら…」
 レミリアが美鈴の方を向くと美鈴が話しかけた
「…なぜそのような話を私に?」
 美鈴の言葉に、レミリアはお酒を飲み干してから答えた
「…迂闊に甘えれる相手がいないのよ…貴方以外」

 その言葉を聞いて、美鈴は驚く
「えっと…咲夜さんは?」
「咲夜には、弱いところは余り見せないようにしているの…
 じゃないと、咲夜に無理をさせることになるから…」
 レミリアにとって、咲夜は娘…
 面倒を見てもらってはいるが、余り弱い姿は見せたくなかった

「パチュリー様は?」
「甘えたら最後、それをネタに色々脅されると思うわね」
 パチュリーは親友であるが悪友…
 お互いに弱点は見せたくないものでもある
 良い意味でも、悪い意味でも…

「霊夢さんとか…」
「馬鹿ね…外で話したら3時間で幻想郷中に知れ渡るわ」
 幻想郷は甘くない、小さな事でも
 尾ひれと背びれ、挙句に尻尾までついて噂が知れ渡るのだ

「だからね…美鈴…」
 レミリアはそう言うと、美鈴に抱きついた
「お、お嬢様?」
「…ごめん、少し甘えるわね」
 そういわれて、美鈴は無言のまま微笑んだ
 そして、レミリアをそのまま真正面から抱きしめると
「…どうぞ…しがない門番ですけど…
 お嬢様が甘えるぐらいの力は持っています」
 そう言って、己の主の頭を撫でて、子守唄代わりに
 先ほど歌を歌い始めた



 なんのため~に~うーまれて

 なーにをして~いきるのか~

(それは、未だに良くわかりません)

 わからないまま~終る

 そんなのは~嫌だ~

(探しているさいちゅうです)

 忘れないで夢を

 こぼさないで涙

(はい、涙はながしません)

 だから君は飛ぶんだどこまーでも

 そうだ、恐れないでみんなの為に
 
 愛と勇気だけがとーもだちさ~

(とりあえず、今はこの眠っている主を安心させて上げるのが第一です)


 気がつけば、もうすぐ夜明けが近い

「…とりあえず、私の部屋に運ぶとしますか…」

 主が起きたら、何時もの主に戻っているだろう
 
 だからそれまでは…

「…甘えてください、しがない門番ですけど甘えてもらう事ぐらいはできます」

 安心して眠ってください…
 
 どうも、脇役です…
 本当は美鈴に体育座りしてもらって
 延々とアンパンマンマーチを歌ってもらい
 魔理沙が謝りに来るという話のはずが
 何処で間違ったか
 レミ×めーになってしまいました、ごめんなさい
 
 でも、何かのトップになった時に、愚痴をこぼせて甘えることができる
 人って、いないよね…トップになることすら私にはないけど…
 
 この後、咲夜さんが美鈴に抱きついて眠っているレミリアを見て
 どうなったかは、皆さんの想像にお任せします


アリス「なんのために~う~まれて…」
美鈴「な~にをし~て生きるのか…」
パチェ「…分からないまま~終る…」

魔理沙「ご、ごめん…借りたもの返すしあやまるから
部屋の隅っこで体育座りして、延々とその歌を歌わないでくれ…」
脇役
コメント



1.地球人撲滅組合削除
本編を見ると、あのマーチが限りなく勇気をくれるッ!
後書き見ると、あのマーチが限りなく攻撃力増してるwww
普段聞いても、ただ平坦にしか聞こえないのに!
すごい、すごいよアンパンマンマーチ!すごいよ美鈴さん!
2.喚く狂人削除
急に美鈴に膝枕してもらいつつアンパンマンマーチを歌ってもらって寝たくなったので幻想郷に行ってきますね。

相変わらず美鈴はお母さんだなあ。
3.名前が無い程度の能力削除
おかぁさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。・゚・(つД`)・゚・。
4.名前が無い程度の能力削除
作品つまんないのに投稿しすぎだろお前
5.名前が無い程度の能力削除
アンパンマァァァァン!!!!
6.名前が無い程度の能力削除
お嬢様の方がフランより強いって言ってんだろこのダラズ!w

ってのは主観的な意見なので置いといて。


やっぱり貴方の書くお母さんめいりんは素晴らしいww
7.名前が無い程度の能力削除
いつも楽しく読ませてもらってます。
非生産的な事をいう者もいるようですが、頑張ってください。
8.シリアス大好き削除
流石は古参の重鎮の脇役殿、良い作品を拝ませて頂きました
…オマケの後書最後が、一番ツボにハマッタのはここだけの話
って、アリスとパチェなら分るけど、何でめいりんも一緒なんだろ?
物品的盗難被害は受けてないハズなのに??
9.名前が無い程度の能力削除
アンパンマンマーチは歌詞を見ていくと、本気で深いんだよねぇ。

そして、オマケがwww
10.てるる削除
アンパンマンマーチはいつの間に幻想入りしていたのか・・・
11.欠片の屑削除
優しいキミは
行け!みんなの夢護る為!
12.名前が無い程度の能力削除
あの歌の作者さんの家族が神風特攻したって事を考えるとさらに深く感じますよね。

お母さん美鈴ってやっぱいいわぁ
13.名前が無い程度の能力削除
普通のしみじみシリアスっぽい流れで、カリスマ不足を嘆かれても読んでるこっちが困ります。

それ以外はとても味わい深いSSでした。
後書きバージョンは見たかったような見るのが怖いようなw
14.名前が無い程度の能力削除
体操座りでえんえん歌われたら謝りたくもなるわw
それが三人すみっこで歌われた日にゃwww
15.名前が無い程度の能力削除
いつも思うのだが、こういうネタを見るたびに
ミニスカ偽装メイドがムカついてムカついてしょうがないのだが……