この作品は、相当量の百合成分を含みます。また、作者の拙作は全て世界観を共有していますが、別に単品でも問題は無い内容です。服用の際はこれらの点に注意し、もうやだ、おうちにかえりたいと感じた方はリレミトなりデジョンなりでブラウザバックをよろしくお願いします。
昨年最後の文々。新聞の一面を飾った現場に居合わせてはいたが、盗撮されていた事など露知らずに翌日の新聞を見てあられもない自分の後ろ姿が写っていたので、魔理沙と一緒に文を探し回って〆ようと飛び回ったが発見できず、諦めて二人で命蓮寺で除夜の鐘を聞いたりした慌ただしい年の瀬を過ごした後の事である。
―新年を迎えたばかりの幻想郷。
私は初夢を見た。
私の今年の初夢は、涙無くして見れない物であった。
いつもと変わらぬ日常。
いつもと変わらない光景。
いつもと変わらない幻想郷。
何故か・・・いつも瞳に映っていた、友人の魔法使いだけがいない。
変わりにベッドに横たわる目の前の老婆が、いつもと変わらない笑顔を見せている。
「魔理沙・・・」
いつものように彼女の名前を呼んで、細くなった手を握る。
しわくちゃになった笑顔のまましわがれた声で、いつものように彼女は答える。
「アリス・・・」
彼女が人間であれば、いつか訪れる最後の時。
いつか迎える永久の別れ。
いつか迎える独りの時。
いつの日か・・・
―怖くなって、目が覚めた。
窓の向こうからいつものように出てきた生まれたての太陽に照らされて、いつもの可愛らしい魔理沙の寝顔が私の目に飛び込んだ。
いつものように、無防備な表情だったけどすやすやと可愛い寝息を立てて眠る魔理沙。
永夜事変以降、こうやって一緒に寝る機会も増えた。
機会を重ねる毎に、魔理沙がどんどん大きくなって、女の子から女性へと変わって行くのが分かった。
それでも、がさつで粗野な所と、誰よりも乙女で純情な所は変わらなくて。
「・・・魔理沙。」
寝ぐせが入った美しい金色の髪を手ですくう。
今見ているこの髪も、今見ている無防備な寝顔も・・・
―いつかは記憶の中だけの存在になってしまうのだろうか?
「んぁ?ありす・・・起きてたのか?」
いつものように目を覚ました魔理沙。寝ぐせまみれの髪を振り回し、屈託の無い笑顔を向ける。
そしていつものように元気一杯、声を出して。
「おはよう!アリス。」
その声が、何故か嬉しかった。
いつもの事なのに、凄く嬉しかった。
今、目の前にある現実が凄く嬉しかった。
「・・・おはよう、魔理沙。」
いつものように返す私。
いつものように喜ぶ魔理沙。
でも、今日はお正月。言わなきゃいけない事がある。
「「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。」」
何故かハモって、恥ずかしくなって、赤くなって。
そのタイミングが、合わせ鏡のように正確にトレースされて。
―いつものように2人で笑った。
「今日はどうするの?」
「守矢神社に初詣行ってから、博麗神社に初詣してからその勢いで新年会だぜ!アリスも来るよな?」
「行かなきゃ、無理矢理にでも連れていくつもりでしょ?」
「当然!身支度したら、出ようぜー」
いつもの服に着替える私。
いつものように慌ただしい日が始まる。
今年という、当たり前のようにやってきた時が。
今日という、二度と還ってこないこの時が。
今という、たった一度しか訪れない、長い長い生における大切な人と過ごせるこの瞬間が。
―いつものように、始まる。
「アリス、置いて行くぜー」
「はいはい、そんなに急がなくても神社は逃げないわよ。」
「そんな事を言ってる間にも、時間はどんどん流れて行くんだ。じっとしてるのは勿体無いぜ、時は金なりって言葉もあるだろ?」
「・・・そうね。」
今年もいろんな事があるだろう。
辛い事もあるかもしれない。
悲しい事もあるかもしれない。
それでも
幸せな事もある。
楽しい事だってある。
「じゃぁ、行くか。しっかり捕まってるんだぞ。」
「スピードは控えめでお願いできるかしら?」
「おう、善処するぜー」
いつもと変わらぬ元気一杯の返事、お返し代わりにぎゅっと腰にしがみついた。
それも、いつもの事だ。
「今年も張り切るぞー!!」
「張り切りすぎて、無理しちゃダメよ。」
いつもと変わらぬ、大切な人と一緒に。
今という時を、生きて行こう。
そんな事を考えた、私のお正月。
今日も幻想郷は平和である。
ハプルポッカ?(細かくてすいません…
安心した気持ちになりました