「なんだこれ……マッチョマックスペレー?」
その日、霖之助は早朝の道端で怪しい薬を見つけた。
その薬のラベルは破かれていたが、マッチョマックスペレーと書かれているのだけ確認できた。
用途を調べると、どうやら肉体を増強できるというシロモノであることがわかった。
肉体増強。即ち鋼の体。彼は己が密に望んでいたものが手に入る千載一遇の好機と見て、思わず心の中で小踊りをする。
これでもう一日五分でマッチョバディーとの謳い文句の退屈な有酸素運動器具ともサヨナラできるのだ。
「ふ、ふむ、これはまた、けったいな物を見つけてしまったな。まぁいいか。せっかくだから持って帰ろう。うん、それがいい」
彼は用心深く周囲を見回しながら、その薬を素早く懐へとしまうと、某縮地使いも驚きの速度で香霖堂へと戻った。
店に入るとすぐさま彼は、窓のカーテンを全部締め、入口の扉を閉める。
高鳴る気持ちを抑えてその薬を懐から出すや否や、そいつをごくっと飲み干した。
すると体が熱くなったかと思うと体中の筋肉と言う筋肉が見る見るうちに、太く逞しくなっていくのがわかった。
当然、服は破れ、辛うじて一張羅の褌のみが申し訳なさ程度に残っていた。
身長は元の二倍近くまで伸びていた。更に顔は顎がしゃくれ上がり、輪郭は原形をとどめていなかった。
「これは、すばらしい……!」
彼は変わり果てた自分の姿を見て思わずため息を漏らす。
そして、何気に鏡の前でボディービルダー基本ポーズの一つ、サイドチェストの構えをとる。見事な肉の厚みだ。
その筋肉美は非の打ちどころがなかった。まさに完全体。この完璧なる肉体は、かのダビデ像さえもきっと、羨むであろう。
次に彼は外へと行く。外は北風が吹いていたが、その分厚い筋肉のコートが、寒さから守ってくれた。少なくとも彼はそう感じた。
彼は家の裏手にある縄文杉に勝るとも劣らない巨木の前へとやってくる。
この芸術的な肉体が見せかけのものでは示しが付かない。そう考えた彼はこの大木に向かってパンチを一つ放ってみた。
この時、彼はパンチを放ったつもりだったが、無意識にそれは豪快なアッパーになってしまった。そして、そのアッパーを浴びた木はいとも簡単に上空へと舞い上がったかと思うと、そのまま遠くの山へと吹っ飛んで行ってしまった。
「こ、これは、なんという……」
彼は思わず唖然としていたが、気を取り直してとなりの普通の木に向かって同じくアッパーを放ってみる。
その木は、先ほどの巨木よりもはるか遠くの妖怪の山の方まで吹っ飛んで行ってしまった。
彼は、えも言われぬ快感にうちふるえていた。この見た目に恥じぬこの筋力。これなのだ。彼が求めていた完全なる肉体とは。
これで明日からの人生がばら色になるのを確信した彼は、家の中に入ろうとドアを握ろうとした。
しかし何と言うことだろう、その手は無意識のうちにアッパーとなってそれを食らったドアは家もろとも遠くへ吹っ飛んでいってしまった。なんと恐るべしマッチョパワー。
などと言ってる場合ではない。慌てて飛んでいった家を追って森の中へと突進し始める。彼はあたりかまわずアッパーを放つ。
木が、石が、岩が、鳥が、魔理沙が、その拳に触れた物は皆遠くの方へ吹っ飛んでいく。まさに無敵。彼は己の肉体を謳歌するが如く手当たり次第に吹き飛ばしながら飛んでいった家を追い続けた。
その姿を見た者が怪物と間違え、襲いかかってきても彼はその拳一つで活路を開いた。その拳は、いかなる数多の弾幕すらもかき消した。
最早、彼を止めることができるものはもういない。
例え、いつの間にか飛んでいく家を追い抜かしてしまっていたとしても彼の突進は止まらない。
嗚呼、マッチョマンが行く……望まれることなく、浮き世から捨てられし彼を動かすもの。
それは、己の肉体を誇示する意志を持つ者の意地に他ならない。
その後、彼は某永遠亭の天才に実験体として捕えられ
すぐに捨てられ
その行方は 誰にももうわからない。
その日、霖之助は早朝の道端で怪しい薬を見つけた。
その薬のラベルは破かれていたが、マッチョマックスペレーと書かれているのだけ確認できた。
用途を調べると、どうやら肉体を増強できるというシロモノであることがわかった。
肉体増強。即ち鋼の体。彼は己が密に望んでいたものが手に入る千載一遇の好機と見て、思わず心の中で小踊りをする。
これでもう一日五分でマッチョバディーとの謳い文句の退屈な有酸素運動器具ともサヨナラできるのだ。
「ふ、ふむ、これはまた、けったいな物を見つけてしまったな。まぁいいか。せっかくだから持って帰ろう。うん、それがいい」
彼は用心深く周囲を見回しながら、その薬を素早く懐へとしまうと、某縮地使いも驚きの速度で香霖堂へと戻った。
店に入るとすぐさま彼は、窓のカーテンを全部締め、入口の扉を閉める。
高鳴る気持ちを抑えてその薬を懐から出すや否や、そいつをごくっと飲み干した。
すると体が熱くなったかと思うと体中の筋肉と言う筋肉が見る見るうちに、太く逞しくなっていくのがわかった。
当然、服は破れ、辛うじて一張羅の褌のみが申し訳なさ程度に残っていた。
身長は元の二倍近くまで伸びていた。更に顔は顎がしゃくれ上がり、輪郭は原形をとどめていなかった。
「これは、すばらしい……!」
彼は変わり果てた自分の姿を見て思わずため息を漏らす。
そして、何気に鏡の前でボディービルダー基本ポーズの一つ、サイドチェストの構えをとる。見事な肉の厚みだ。
その筋肉美は非の打ちどころがなかった。まさに完全体。この完璧なる肉体は、かのダビデ像さえもきっと、羨むであろう。
次に彼は外へと行く。外は北風が吹いていたが、その分厚い筋肉のコートが、寒さから守ってくれた。少なくとも彼はそう感じた。
彼は家の裏手にある縄文杉に勝るとも劣らない巨木の前へとやってくる。
この芸術的な肉体が見せかけのものでは示しが付かない。そう考えた彼はこの大木に向かってパンチを一つ放ってみた。
この時、彼はパンチを放ったつもりだったが、無意識にそれは豪快なアッパーになってしまった。そして、そのアッパーを浴びた木はいとも簡単に上空へと舞い上がったかと思うと、そのまま遠くの山へと吹っ飛んで行ってしまった。
「こ、これは、なんという……」
彼は思わず唖然としていたが、気を取り直してとなりの普通の木に向かって同じくアッパーを放ってみる。
その木は、先ほどの巨木よりもはるか遠くの妖怪の山の方まで吹っ飛んで行ってしまった。
彼は、えも言われぬ快感にうちふるえていた。この見た目に恥じぬこの筋力。これなのだ。彼が求めていた完全なる肉体とは。
これで明日からの人生がばら色になるのを確信した彼は、家の中に入ろうとドアを握ろうとした。
しかし何と言うことだろう、その手は無意識のうちにアッパーとなってそれを食らったドアは家もろとも遠くへ吹っ飛んでいってしまった。なんと恐るべしマッチョパワー。
などと言ってる場合ではない。慌てて飛んでいった家を追って森の中へと突進し始める。彼はあたりかまわずアッパーを放つ。
木が、石が、岩が、鳥が、魔理沙が、その拳に触れた物は皆遠くの方へ吹っ飛んでいく。まさに無敵。彼は己の肉体を謳歌するが如く手当たり次第に吹き飛ばしながら飛んでいった家を追い続けた。
その姿を見た者が怪物と間違え、襲いかかってきても彼はその拳一つで活路を開いた。その拳は、いかなる数多の弾幕すらもかき消した。
最早、彼を止めることができるものはもういない。
例え、いつの間にか飛んでいく家を追い抜かしてしまっていたとしても彼の突進は止まらない。
嗚呼、マッチョマンが行く……望まれることなく、浮き世から捨てられし彼を動かすもの。
それは、己の肉体を誇示する意志を持つ者の意地に他ならない。
その後、彼は某永遠亭の天才に実験体として捕えられ
すぐに捨てられ
その行方は 誰にももうわからない。
これが一年のしめかwwwww
すいません。もういいです。
何一つとして光るものがありませんでした。
変態ではないと思うけど……?
よく話読みましたか?
それにしてもネタがマニアックすぎです。
だれも付いていけませんよ。
アイスクリームにくっついたウエハースみたいな。こういう作品もあっていい。
私はそんな風に思いますね。