1
「メリー犬派猫派?」
「そうねえ……どちらかというと犬派かしらね。蓮子は?」
「どっちでもない」
「じゃあ鳥派とか?」
「メリー派」
「も、もう蓮子ったら」
2
「私達秘封倶楽部の活動目的は?」
「封じられた秘密を見ることよね」
「ということはメリー秘密を言うのも、活動と言えば活動な訳で」
「そ、そうかしら」
「例えば、メリーは右左のおっぱいの大きさが微妙に違う」
「ちょっとちょっとちょっと! いつ知ったの? 私も知らなかったんだけど!」
「え? まだ足りない? えっと太ももにほくろ……」
「もう止めて!!」
3
「ふえっくしょい!」
「あら蓮子花粉症?」
「分かんないけど……鼻がムズムズする。メリーそこのティッシュ取って」
「ええ。はっ!」
「メリー?」
「蓮子その表情……」
「顔がなによー」
「上気した頬に潤んだ瞳! ムラムラするから止めて!」
「春らしいわねメリー」
4
「素朴な疑問なんだけど」
「うん」
「猫カフェってあるじゃない」
「あるわね」
「ウサギカフェもあるわよね?」
「あるわね」
「ペットの代表格の犬カフェがないのはなんでなんだろう……」
「まあいいじゃない。今は猫を愛でましょう」
5
「誕生日おめでとうメリー」
「ありがとう」
「はいプレゼント」
「嬉しいわ。中身はなに?」
「それは見てのお楽しみね」
「……蓮子、これって」
「後はメリーの名前とか印鑑とか押せばいいだけ。結婚しましょメリー」
「うん!」
6
「好きなお味噌汁の具ある?私はワカメとネギかな」
「……ちゃ」
「え?」
「かぼちゃ」
「かぼちゃ?」
「かぼちゃの甘みとお味噌のしょっぱさの違いが美味しいの」
「さつまいもの味噌汁と同じってことメリー」
「ううんかぼちゃがいいの」
7
「結局メリー何人?」
「唐突ね」
「やっぱり金髪だしアメリカ? それともハーンといえば小泉八雲だからイギリス?」
「蓮子、小泉八雲って日本人と結婚したのよ」
「そうなんだ」
「お役所に行ってくるわね」
「待ってメリー話が見えない」
8
「この時期になると風で色々飛んでくるから床が汚いわねえ……モップかけようかしら」
「掃除機かけて濡れ雑巾で拭くのが一番よ蓮子」
「メリーって本当に日本人らしいよね」
9
「おはよメリー」
「おはよう蓮子。顔色悪いけどどうしたの?」
「ゼミの教授が甘いものがが好きで」
「ええ」
「ケーキとかよくおこぼれに預かるんだけど」
「それがその顔色となんの関係が」
「……胃もたれと体重が」
「胃薬……いる?」
「貰う」
10
「ふんふーん」
「ご機嫌ねメリー」
「こうでもしないと気が紛れなくてね」
「どうして?」
「新品の帽子に鳥のフンが落ちたのよ」
「メリーだからって今の鼻歌は頂けない」
11
「プレゼントの包装ってのは重要よね」
「そうね」
「だから私必死に考えてねメリー!」
「だからって新品のショーツを瓶に詰めなくても」
「結構おしゃれに見えない?」
「確かに」
12
「はい百八個目ね」
「煩悩の数は達成したわ」
「おめでたいのかなこれ」
「さあ? そんなことよりも蓮子、週末の神様の墓場探しどうしましょう」
「予算と相談ね。今回は近場がいいな」
「ならこの辺にしましょ」
「いいわね」
13
「ふああ……」
「ずいぶんと大きなあくびね。寝不足?」
「そんなことないと思うんだけど」
「そりゃあれだけ喘げば疲れるわよね」
「メリー私が寝てる間なんかした」
14
「なんかしっくりこないなあ」
「なんの話?」
「籍入れたら苗字って変わるじゃん」
「日本ではそうね」
「宇佐見マエベリーと蓮子・ハーンってどちらも語呂悪くない?」
「売れないお笑い芸人みたい」
「でしょだけど」
「うん」
「宇佐見メリーならしっくりこない?」
「籍も入れたら名前も変えるの」
15
「新しい入浴剤を買ったの」
「女子力高いわね」
「そうでもないわ蓮子」
「え?」
「だってジャスミンの香りって書かれてあっても、ジャスミンの香りを知らないんだもの」
「あれ?」
16
「はあ……」
「蓮子ため息ついてどうしたの?」
「チューハイとかじゃなくてリキュールとかカクテルとか飲んでみたいなって。大人な感じしない?」
「チューハイもリキュールの一種よ」
「焼酎の炭酸水割りじゃないの?」
「グレープフルーツとかの甘味はどこよ」
17
「肩凝った……」
「レポート作成でもしてたの?」
「いやジンギスカン鍋の汚れがとれなくてね」
「メリー、ジンギスカンはもういいから」
18
「いい天気ねえ。お布団も太陽の匂いがしていいわ」
「え、ええ……」
(言えない。太陽の匂いがダニとか皮脂が太陽光で化学変化した匂いだなんて言えない)
「お布団もふかふかで今日はよく寝れそう」
「良かったねメリー」
「ええ」
19
「なに食べてるの?」
「ん? ああ、駄菓子よ。コンビニで売っててつい」
「食べ過ぎないようにね」
「大丈夫よ。小さいからカロリーも少ないし」
「……蓮子この駄菓子百キロカロリー超えるけど」
「マジでか」
20
「出来た。ポニーテールメリー」
「もう勝手に髪の毛弄らないでよ」
「メリー髪の毛好きなんだもん。入院中は触れなかったし」
「蓮子私根性でロングに戻るわ」
21
「例え些細なことでもすれ違いを防ぐ為、人はコミュニケーションをとるべきだと思うの」
「そうね」
「だから蓮子」
「うん」
「ちゅっちゅっしたい」
「え?」
「蓮子とちゅっちゅっしたいの」
「め、メリー?」
「出来れば、いちゃいちゃちゅっちゅっがしたいの」
22
「ぷはー美味い」
「緑茶だけどね」
「最近コーヒーしか飲まなかったけど、たまには緑茶もいいわねえ」
「そうね」
「一口も飲んでないじゃん」
「私は蓮子が飲み終わったマグカップで飲むからいいの」
「いいから飲め」
「やん」
23
「メリーしりとりしよ」
「良いわよ」
「しりとりのりからね。りんご」
「ご、ご褒美」
「ビデオ」
「お仕置き」
「き……あ、キス!」
「する?」
「え? あ?」
「時間切れー蓮子キスしましょ」
「あ……う」
24
「蓮子は得意料理ってある?」
「うーんチャーハンとかパスタとかかな。簡単だしメリーは?」
「煮物……かな」
「へえ。家庭的」
「うん。この間失敗したから」
「あの筑前煮のことね」
「やっぱり女房ならお料理くらい出来ないとね」
「私も頑張るわメリー」
25
「新しい靴を買おうと思うの。革靴じゃないやつ」
「いいんじゃない。蓮子革靴多いし」
「うん。流石に真夏に革靴は辛い」
「春は新しいモノが欲しくなるよねー」
「物欲が増す季節ね」
「欲って……なんか嫌ねえ」
26
「お好み焼き食べたい」
「いいわねえ。行く?」
「うん」
「……メリー」
「冷めちゃうわよ蓮子」
「もんじゃ焼きよねこれ」
「似たような物でしょ」
27
「はあ……」
「蓮子ため息ついてどうしたの?」
「バイト先に新人が入ったのよ二人」
「へー覚えが悪いとか?」
「ううん。一回言えば直してくれるんだけど」
「うん」
「やけにボディタッチが多くてね困ってるのよ」
「よっしゃ任せろ」
「バールのようなモノを持ってどこにいくの」
「出る釘は叩かなきゃ」
「釘じゃなく杭よメリー」
28
「どうよ」
「似合うわ蓮子」
「パンツなんて久々だわ」
「ロングスカートの蓮子もいいけどパンツの蓮子を可愛いわね。素敵よ」
「ありがとうメリー」
「特に太ももとお尻のラインがいいわ」
「メリーシャラップ」
29
「うわちょ、鼻血」
「蓮子、鼻の付け根を押さえて。はいティシュ」
「う、うん」
「首を叩いても意味ないし、上向いても血が喉に流れるだけよ。大人しくしててね」
「ありがとう」
「蓮子……その目なに?」
「メリーお母さんみたい」
「私達同い年よ」
30
「メリー風邪どう」
「ええ、なんとか――はくしょん!」
「どこがよ。はい薬局で薬買ってきたから」
「うう゛……ありがとう蓮子」
「困った時はお互い様よ。メリー何して欲しい?」
「……ぎゅってして」
「へ」
「ダメ?」
「幾らでもしてやんよ!」
31
「田舎からなぜだか人参が大量に送られてきてさーメリー消化するの手伝って」
「いいわよ。じゃ人参しりしりでも作りましょうか」
「え?」
「汁物は……そうねえ人参のポタージュにしましょ。後は普通にサラダに入れて」
「メリーしりしりって?」
「沖縄料理よ」
「それにポタージュなの?」
「二つとも人参消費には向いてるわ」
「じゃそれにするわメリー作って」
「一緒に作るんじゃないの」
「面倒」
32
「想像力!」
「いきなりなに?」
「人が生きていく上で必要な力よ。なぜりんごは地面に落ちるのか、なぜ空は青いのか……色々考えたらキリが無いくらいに世界は不思議で溢れてる」
「そ、そうね」
「昔の人はそれを神様の力で説明した。だけど現代は科学がある」
「はあ」
「失われた神々を見つけてみたい。あわよくば話も聞きたい」
「うん」
「ってことでメリーパンツ何色?」
「最後の最後にそれ!?」
33
「眠いメリー膝枕して」
「え?」
「お邪魔ー」
「ちょっと蓮子」
「ぐー」
「……もう五分だけよ」
34
「親戚のおじさんが亡くなってお通夜に行くんだけど」
「それは……ご冥福をお祈り致します」
「これはご丁寧にって、違うのよ喪服」
「買ってないのね」
「リクルートスーツとか駄目? 駄目よねえ」
「うーん……あ、白いワイシャツに黒いネクタイとかどう?」
「メリーそれ男性の場合だから」
35
「じゃーん万歩計」
「買ったの?」
「ええ。最近おなか周りがアレだから普段自分がどれだけ歩いてるか見てみようと思って」
「いい心掛けね蓮子」
「あまりにも歩いてないから思わず振っちゃうんだけどねー」
「本末転倒ね」
36
「蓮子学食行きましょ」
「ごめんメリー今日はちょっと」
「そっか。それは残念」
「教授とご飯食べるのよ」
「あら例の甘味教授さんと?」
「うん……」
「因みになに食べるの?」
「ケーキバイキング」
「わあー」
37
「いつかやってみたいこと!」
「船の上でタイタニックごっことか」
「私はバスの止まりますボタンを押すことね」
「ちっさ……メリーもう少しグレード上げようよ」
「じゃあ、アイアンクローをやってみたいなあ」
「め、メリーさん?」
38
「蓮子どうしよう」
『こんな夜遅く電話してきて……なに欲求不満?』
「違う。家の前に子犬が居て、その」
『連れて帰っちゃったの?』
「そう……はあ可愛い」
『犬自慢なら切るわよ』
「違うの。えっとね、あー枕あぐあぐしちゃダメよ。お腹空いてまちゅか? いい子でちゅねー」
『切る』
「違うの蓮子。膝に来たちゃった……かわいいー!」
『おやすみメリー』
39
「もうこんな時間帰らなきゃ」
「いーじゃん泊まっていきなよ」
「でも昨日もお泊まりしたし」
「いいわよ気にしないから」
「……そー言って夕飯作らす気でしょ蓮子」
「てへ」
40
「きゃっ」
「大丈夫メリー気をつけて」
「う、うん。まさか段差があるなんて気付かったわ」
「ちゃんと下見なきゃね」
「でも首だけ下にしても下見えないわよ」
「……私は見える」
41
「メリー映画見に行かない?」
「いいわね。どんなやつ」
「小夜子3D」
「行かない」
「なんでー?」
「オカルトはいいけどホラーは怖いからや!」
「何の差があるのよ」
42
「うちの電子レンジが壊れちゃった」
「安いのでいいから買って来たら?」
「蓮子、レンジの仕組みってようは振動で温めているのよね?」
「そうみたいね」
「頑張ってみるわ」
「無理だと思う」
43
「メリー」
「なあに?」
「なんでもない」
「そう」
「ねえメリー」
「なあに?」
「なんでもない」
「変な蓮子」
「えへへ」
44
「今日のお夕飯はカップめんです」
「この待ち時間が辛いわねえ」
「メリーうどんじゃない」
「食べたかったのよ」
45
「蓮子将棋やらない?」
「メリー将棋するの?」
「最近ハマってね」
「いいわよやろう」
「蓮子負けたら一枚脱いでね」
「え?」
「脱いでね」
46
「大学生活も折り返し地点ね」
「折り返し……蓮子」
「ん?」
「私達、卒業しても、一緒に居られる?」
「いきなり真面目な話ね。んー居るんじゃない」
「……私は蓮子にとってのなに不思議発見器みたいな便利道具?」
「メリー……」
47
「メメ、メリー! 助けて!」
『深夜に電話してきて……なによお』
「取り込んだ洗濯物から複数の羽音が聞こえるの」
『なにそれ怖っ』
48
「四八個目よメリー」
「そうね蓮子」
「この間メリーが言ったことの返事なんだけど」
「え?」
「私達は確かに違う存在だわだけど」
「蓮子?」
「信じて。今更、なくなるような関係じゃないわ」
「れんこお……」
「はいはい」
エンド
「メリー犬派猫派?」
「そうねえ……どちらかというと犬派かしらね。蓮子は?」
「どっちでもない」
「じゃあ鳥派とか?」
「メリー派」
「も、もう蓮子ったら」
2
「私達秘封倶楽部の活動目的は?」
「封じられた秘密を見ることよね」
「ということはメリー秘密を言うのも、活動と言えば活動な訳で」
「そ、そうかしら」
「例えば、メリーは右左のおっぱいの大きさが微妙に違う」
「ちょっとちょっとちょっと! いつ知ったの? 私も知らなかったんだけど!」
「え? まだ足りない? えっと太ももにほくろ……」
「もう止めて!!」
3
「ふえっくしょい!」
「あら蓮子花粉症?」
「分かんないけど……鼻がムズムズする。メリーそこのティッシュ取って」
「ええ。はっ!」
「メリー?」
「蓮子その表情……」
「顔がなによー」
「上気した頬に潤んだ瞳! ムラムラするから止めて!」
「春らしいわねメリー」
4
「素朴な疑問なんだけど」
「うん」
「猫カフェってあるじゃない」
「あるわね」
「ウサギカフェもあるわよね?」
「あるわね」
「ペットの代表格の犬カフェがないのはなんでなんだろう……」
「まあいいじゃない。今は猫を愛でましょう」
5
「誕生日おめでとうメリー」
「ありがとう」
「はいプレゼント」
「嬉しいわ。中身はなに?」
「それは見てのお楽しみね」
「……蓮子、これって」
「後はメリーの名前とか印鑑とか押せばいいだけ。結婚しましょメリー」
「うん!」
6
「好きなお味噌汁の具ある?私はワカメとネギかな」
「……ちゃ」
「え?」
「かぼちゃ」
「かぼちゃ?」
「かぼちゃの甘みとお味噌のしょっぱさの違いが美味しいの」
「さつまいもの味噌汁と同じってことメリー」
「ううんかぼちゃがいいの」
7
「結局メリー何人?」
「唐突ね」
「やっぱり金髪だしアメリカ? それともハーンといえば小泉八雲だからイギリス?」
「蓮子、小泉八雲って日本人と結婚したのよ」
「そうなんだ」
「お役所に行ってくるわね」
「待ってメリー話が見えない」
8
「この時期になると風で色々飛んでくるから床が汚いわねえ……モップかけようかしら」
「掃除機かけて濡れ雑巾で拭くのが一番よ蓮子」
「メリーって本当に日本人らしいよね」
9
「おはよメリー」
「おはよう蓮子。顔色悪いけどどうしたの?」
「ゼミの教授が甘いものがが好きで」
「ええ」
「ケーキとかよくおこぼれに預かるんだけど」
「それがその顔色となんの関係が」
「……胃もたれと体重が」
「胃薬……いる?」
「貰う」
10
「ふんふーん」
「ご機嫌ねメリー」
「こうでもしないと気が紛れなくてね」
「どうして?」
「新品の帽子に鳥のフンが落ちたのよ」
「メリーだからって今の鼻歌は頂けない」
11
「プレゼントの包装ってのは重要よね」
「そうね」
「だから私必死に考えてねメリー!」
「だからって新品のショーツを瓶に詰めなくても」
「結構おしゃれに見えない?」
「確かに」
12
「はい百八個目ね」
「煩悩の数は達成したわ」
「おめでたいのかなこれ」
「さあ? そんなことよりも蓮子、週末の神様の墓場探しどうしましょう」
「予算と相談ね。今回は近場がいいな」
「ならこの辺にしましょ」
「いいわね」
13
「ふああ……」
「ずいぶんと大きなあくびね。寝不足?」
「そんなことないと思うんだけど」
「そりゃあれだけ喘げば疲れるわよね」
「メリー私が寝てる間なんかした」
14
「なんかしっくりこないなあ」
「なんの話?」
「籍入れたら苗字って変わるじゃん」
「日本ではそうね」
「宇佐見マエベリーと蓮子・ハーンってどちらも語呂悪くない?」
「売れないお笑い芸人みたい」
「でしょだけど」
「うん」
「宇佐見メリーならしっくりこない?」
「籍も入れたら名前も変えるの」
15
「新しい入浴剤を買ったの」
「女子力高いわね」
「そうでもないわ蓮子」
「え?」
「だってジャスミンの香りって書かれてあっても、ジャスミンの香りを知らないんだもの」
「あれ?」
16
「はあ……」
「蓮子ため息ついてどうしたの?」
「チューハイとかじゃなくてリキュールとかカクテルとか飲んでみたいなって。大人な感じしない?」
「チューハイもリキュールの一種よ」
「焼酎の炭酸水割りじゃないの?」
「グレープフルーツとかの甘味はどこよ」
17
「肩凝った……」
「レポート作成でもしてたの?」
「いやジンギスカン鍋の汚れがとれなくてね」
「メリー、ジンギスカンはもういいから」
18
「いい天気ねえ。お布団も太陽の匂いがしていいわ」
「え、ええ……」
(言えない。太陽の匂いがダニとか皮脂が太陽光で化学変化した匂いだなんて言えない)
「お布団もふかふかで今日はよく寝れそう」
「良かったねメリー」
「ええ」
19
「なに食べてるの?」
「ん? ああ、駄菓子よ。コンビニで売っててつい」
「食べ過ぎないようにね」
「大丈夫よ。小さいからカロリーも少ないし」
「……蓮子この駄菓子百キロカロリー超えるけど」
「マジでか」
20
「出来た。ポニーテールメリー」
「もう勝手に髪の毛弄らないでよ」
「メリー髪の毛好きなんだもん。入院中は触れなかったし」
「蓮子私根性でロングに戻るわ」
21
「例え些細なことでもすれ違いを防ぐ為、人はコミュニケーションをとるべきだと思うの」
「そうね」
「だから蓮子」
「うん」
「ちゅっちゅっしたい」
「え?」
「蓮子とちゅっちゅっしたいの」
「め、メリー?」
「出来れば、いちゃいちゃちゅっちゅっがしたいの」
22
「ぷはー美味い」
「緑茶だけどね」
「最近コーヒーしか飲まなかったけど、たまには緑茶もいいわねえ」
「そうね」
「一口も飲んでないじゃん」
「私は蓮子が飲み終わったマグカップで飲むからいいの」
「いいから飲め」
「やん」
23
「メリーしりとりしよ」
「良いわよ」
「しりとりのりからね。りんご」
「ご、ご褒美」
「ビデオ」
「お仕置き」
「き……あ、キス!」
「する?」
「え? あ?」
「時間切れー蓮子キスしましょ」
「あ……う」
24
「蓮子は得意料理ってある?」
「うーんチャーハンとかパスタとかかな。簡単だしメリーは?」
「煮物……かな」
「へえ。家庭的」
「うん。この間失敗したから」
「あの筑前煮のことね」
「やっぱり女房ならお料理くらい出来ないとね」
「私も頑張るわメリー」
25
「新しい靴を買おうと思うの。革靴じゃないやつ」
「いいんじゃない。蓮子革靴多いし」
「うん。流石に真夏に革靴は辛い」
「春は新しいモノが欲しくなるよねー」
「物欲が増す季節ね」
「欲って……なんか嫌ねえ」
26
「お好み焼き食べたい」
「いいわねえ。行く?」
「うん」
「……メリー」
「冷めちゃうわよ蓮子」
「もんじゃ焼きよねこれ」
「似たような物でしょ」
27
「はあ……」
「蓮子ため息ついてどうしたの?」
「バイト先に新人が入ったのよ二人」
「へー覚えが悪いとか?」
「ううん。一回言えば直してくれるんだけど」
「うん」
「やけにボディタッチが多くてね困ってるのよ」
「よっしゃ任せろ」
「バールのようなモノを持ってどこにいくの」
「出る釘は叩かなきゃ」
「釘じゃなく杭よメリー」
28
「どうよ」
「似合うわ蓮子」
「パンツなんて久々だわ」
「ロングスカートの蓮子もいいけどパンツの蓮子を可愛いわね。素敵よ」
「ありがとうメリー」
「特に太ももとお尻のラインがいいわ」
「メリーシャラップ」
29
「うわちょ、鼻血」
「蓮子、鼻の付け根を押さえて。はいティシュ」
「う、うん」
「首を叩いても意味ないし、上向いても血が喉に流れるだけよ。大人しくしててね」
「ありがとう」
「蓮子……その目なに?」
「メリーお母さんみたい」
「私達同い年よ」
30
「メリー風邪どう」
「ええ、なんとか――はくしょん!」
「どこがよ。はい薬局で薬買ってきたから」
「うう゛……ありがとう蓮子」
「困った時はお互い様よ。メリー何して欲しい?」
「……ぎゅってして」
「へ」
「ダメ?」
「幾らでもしてやんよ!」
31
「田舎からなぜだか人参が大量に送られてきてさーメリー消化するの手伝って」
「いいわよ。じゃ人参しりしりでも作りましょうか」
「え?」
「汁物は……そうねえ人参のポタージュにしましょ。後は普通にサラダに入れて」
「メリーしりしりって?」
「沖縄料理よ」
「それにポタージュなの?」
「二つとも人参消費には向いてるわ」
「じゃそれにするわメリー作って」
「一緒に作るんじゃないの」
「面倒」
32
「想像力!」
「いきなりなに?」
「人が生きていく上で必要な力よ。なぜりんごは地面に落ちるのか、なぜ空は青いのか……色々考えたらキリが無いくらいに世界は不思議で溢れてる」
「そ、そうね」
「昔の人はそれを神様の力で説明した。だけど現代は科学がある」
「はあ」
「失われた神々を見つけてみたい。あわよくば話も聞きたい」
「うん」
「ってことでメリーパンツ何色?」
「最後の最後にそれ!?」
33
「眠いメリー膝枕して」
「え?」
「お邪魔ー」
「ちょっと蓮子」
「ぐー」
「……もう五分だけよ」
34
「親戚のおじさんが亡くなってお通夜に行くんだけど」
「それは……ご冥福をお祈り致します」
「これはご丁寧にって、違うのよ喪服」
「買ってないのね」
「リクルートスーツとか駄目? 駄目よねえ」
「うーん……あ、白いワイシャツに黒いネクタイとかどう?」
「メリーそれ男性の場合だから」
35
「じゃーん万歩計」
「買ったの?」
「ええ。最近おなか周りがアレだから普段自分がどれだけ歩いてるか見てみようと思って」
「いい心掛けね蓮子」
「あまりにも歩いてないから思わず振っちゃうんだけどねー」
「本末転倒ね」
36
「蓮子学食行きましょ」
「ごめんメリー今日はちょっと」
「そっか。それは残念」
「教授とご飯食べるのよ」
「あら例の甘味教授さんと?」
「うん……」
「因みになに食べるの?」
「ケーキバイキング」
「わあー」
37
「いつかやってみたいこと!」
「船の上でタイタニックごっことか」
「私はバスの止まりますボタンを押すことね」
「ちっさ……メリーもう少しグレード上げようよ」
「じゃあ、アイアンクローをやってみたいなあ」
「め、メリーさん?」
38
「蓮子どうしよう」
『こんな夜遅く電話してきて……なに欲求不満?』
「違う。家の前に子犬が居て、その」
『連れて帰っちゃったの?』
「そう……はあ可愛い」
『犬自慢なら切るわよ』
「違うの。えっとね、あー枕あぐあぐしちゃダメよ。お腹空いてまちゅか? いい子でちゅねー」
『切る』
「違うの蓮子。膝に来たちゃった……かわいいー!」
『おやすみメリー』
39
「もうこんな時間帰らなきゃ」
「いーじゃん泊まっていきなよ」
「でも昨日もお泊まりしたし」
「いいわよ気にしないから」
「……そー言って夕飯作らす気でしょ蓮子」
「てへ」
40
「きゃっ」
「大丈夫メリー気をつけて」
「う、うん。まさか段差があるなんて気付かったわ」
「ちゃんと下見なきゃね」
「でも首だけ下にしても下見えないわよ」
「……私は見える」
41
「メリー映画見に行かない?」
「いいわね。どんなやつ」
「小夜子3D」
「行かない」
「なんでー?」
「オカルトはいいけどホラーは怖いからや!」
「何の差があるのよ」
42
「うちの電子レンジが壊れちゃった」
「安いのでいいから買って来たら?」
「蓮子、レンジの仕組みってようは振動で温めているのよね?」
「そうみたいね」
「頑張ってみるわ」
「無理だと思う」
43
「メリー」
「なあに?」
「なんでもない」
「そう」
「ねえメリー」
「なあに?」
「なんでもない」
「変な蓮子」
「えへへ」
44
「今日のお夕飯はカップめんです」
「この待ち時間が辛いわねえ」
「メリーうどんじゃない」
「食べたかったのよ」
45
「蓮子将棋やらない?」
「メリー将棋するの?」
「最近ハマってね」
「いいわよやろう」
「蓮子負けたら一枚脱いでね」
「え?」
「脱いでね」
46
「大学生活も折り返し地点ね」
「折り返し……蓮子」
「ん?」
「私達、卒業しても、一緒に居られる?」
「いきなり真面目な話ね。んー居るんじゃない」
「……私は蓮子にとってのなに不思議発見器みたいな便利道具?」
「メリー……」
47
「メメ、メリー! 助けて!」
『深夜に電話してきて……なによお』
「取り込んだ洗濯物から複数の羽音が聞こえるの」
『なにそれ怖っ』
48
「四八個目よメリー」
「そうね蓮子」
「この間メリーが言ったことの返事なんだけど」
「え?」
「私達は確かに違う存在だわだけど」
「蓮子?」
「信じて。今更、なくなるような関係じゃないわ」
「れんこお……」
「はいはい」
エンド