Ⅰ
お姉様はずるいわ。
何時でも咲夜と一緒なんだもの、朝も昼も夜も外出する時も。
それにパチュリーだって居るわ、図書館に行けば何時だって親友の彼女と会話出来るわ。
外に出たら知り合いだっていらっしゃる。
知り合いを作って交友の輪を広げれるんですもの。
弾幕ごっこをして、宴会に参加して…。
紅霧異変って言うんだったわよね、その異変の後のお姉様。
とってもとっても表情が柔らかくなって、とってもとっても楽しそう。
館の中は確かに出歩けるわ、でも一人なの。
お姉様みたいに咲夜が付き従ってる訳じゃないわ。
図書館に行ってもパチュリーが困った顔で対応して来るだけ。
お姉様みたいに楽しくお話出来る訳じゃないわ。
外に出たって知り合いはいないわ。
霊夢や魔理沙に会いに行っても必ず相手して貰える訳じゃない。
咲夜が居るからお姉様は霊夢や魔理沙に相手にされなくても、
外出してその際に見つける楽しみや喜びを共有出来る。
私には出来ない。楽しみや喜びを共有出来る相手がいない。
青い空や白い雲を、雨上がりの草や土の匂いを一緒に見て感じれる相手がいない。
その事を考えてると目頭が熱くなって、心がとっても痛いの。
心の中がもやもやしてずきずき痛んで気持ち悪いの。
寂しいわ、哀しいわ。
私は誰かと楽しみや喜びを共有したいだけなのに……。
「なら、私と共有しませんか?」
そう言って、私の話を聞いていた美鈴がにっこり笑ったわ。
「お嬢様にお願いして、門番兼フランドール様付きの従者にして貰うんです!
そうしたら咲夜さんみたいに朝昼晩ずっと一緒…は、無理でも、それでも長くフランドール様の傍に居られます。
一緒に外出して色んなものを見て感じて楽しんで…一緒に笑いあえたら、きっともう寂しくなったり
哀しくなったりしませんよ!」
良い案でしょう?って美鈴はやっぱり笑顔で言うの。
とっても良い案だと思うわ、お姉様、許可して下さるかしら……
……あれ、美鈴の顔ってこんなに滲んでたっけ…?
おかしいわ。哀しくも寂しくもないのに、目頭が熱いの……。
嬉しいのに、とってもとっても嬉しいのに、どうして涙が出るの?
私がそう聞くと、美鈴は私の涙を拭きながら答えてくれたわ。
「涙は哀しい時や寂しい時ばかりに出るんじゃないんです、嬉しくて涙が出る時は嬉し泣きって言うんですよ」
初めて知ったわ、そんな言葉。
これからはもっともっと沢山の『初めて』と出会えるのね、私。
とってもとっても楽しみだわ。
終
(紅い館の門番と悪魔の妹)
Ⅱ
美鈴は門番としてはあんまり有能じゃないわ。
万能型だからこれと言った弱点はないけれど、伸びるものもない。
しかも体術専門のようなものだから、弾幕ごっこが苦手みたいでさ。
よく負けてどっかの黒いの(※魔理沙)とか侵入させちゃうし。
立ちながら寝るとかどんだけ眠気ピークなのよって思うわ。
最早感心する域よ、あれ。パッと見起きてるように思えるから。
それでやっぱり黒いのとか侵入させちゃうのよね。
ちょっと雇って後悔を何度もしたし、解雇しようかって何度も考えたわ。
でも、今は雇って良かったと思うし、解雇しなくて良かったと思うわ。
美鈴は門番としてはあんまり有能じゃないわ。
けど、やる時はしっかりやるし、好戦的じゃなくて比較的穏やか。
律儀でなかなかに礼儀正しいし、ちょっと咲夜みたいに呆けたところがあるけれど…。
聞き上手で人の感情や心情に敏感。空気だって結構読める方だわ。
そんな美鈴だから、門番兼フラン付きの従者の案を許可したの。
フランは冷静に見えるけど内面は酷く情緒不安定だわ。
細い細い糸がぐっちゃぐちゃに絡まって、何が何だか分からなくなる位。
まあ良い方の表現で言えばとっても繊細なわけ。
私や咲夜、パチュリーはどうにもこうにも…自分で言うのもアレだけど心情を察するのは得意じゃないから。
だからあの子と接する時は神経使っちゃうのよ、硝子細工を壊さないように慎重に触ってる感覚と似てるわ。
『貴方』だって神経使って接されるの嫌でしょう?勿論、私も嫌だわ。
だけど美鈴は神経を使わずに素の状態で心情とか察せるから、フランと良い感じに交流出来ると思うのよ。
……今から、美鈴とフラン出かけるらしいの。
沢山美鈴と楽しみを共有して、新しい発見を見つけて欲しいわ。
ふぅ…って、あら、紅茶が無くなっちゃったわね。
「咲夜!お茶のお代わりを持って来て頂戴!」
終
(紅い館の主と誰かの対談)
お姉様はずるいわ。
何時でも咲夜と一緒なんだもの、朝も昼も夜も外出する時も。
それにパチュリーだって居るわ、図書館に行けば何時だって親友の彼女と会話出来るわ。
外に出たら知り合いだっていらっしゃる。
知り合いを作って交友の輪を広げれるんですもの。
弾幕ごっこをして、宴会に参加して…。
紅霧異変って言うんだったわよね、その異変の後のお姉様。
とってもとっても表情が柔らかくなって、とってもとっても楽しそう。
館の中は確かに出歩けるわ、でも一人なの。
お姉様みたいに咲夜が付き従ってる訳じゃないわ。
図書館に行ってもパチュリーが困った顔で対応して来るだけ。
お姉様みたいに楽しくお話出来る訳じゃないわ。
外に出たって知り合いはいないわ。
霊夢や魔理沙に会いに行っても必ず相手して貰える訳じゃない。
咲夜が居るからお姉様は霊夢や魔理沙に相手にされなくても、
外出してその際に見つける楽しみや喜びを共有出来る。
私には出来ない。楽しみや喜びを共有出来る相手がいない。
青い空や白い雲を、雨上がりの草や土の匂いを一緒に見て感じれる相手がいない。
その事を考えてると目頭が熱くなって、心がとっても痛いの。
心の中がもやもやしてずきずき痛んで気持ち悪いの。
寂しいわ、哀しいわ。
私は誰かと楽しみや喜びを共有したいだけなのに……。
「なら、私と共有しませんか?」
そう言って、私の話を聞いていた美鈴がにっこり笑ったわ。
「お嬢様にお願いして、門番兼フランドール様付きの従者にして貰うんです!
そうしたら咲夜さんみたいに朝昼晩ずっと一緒…は、無理でも、それでも長くフランドール様の傍に居られます。
一緒に外出して色んなものを見て感じて楽しんで…一緒に笑いあえたら、きっともう寂しくなったり
哀しくなったりしませんよ!」
良い案でしょう?って美鈴はやっぱり笑顔で言うの。
とっても良い案だと思うわ、お姉様、許可して下さるかしら……
……あれ、美鈴の顔ってこんなに滲んでたっけ…?
おかしいわ。哀しくも寂しくもないのに、目頭が熱いの……。
嬉しいのに、とってもとっても嬉しいのに、どうして涙が出るの?
私がそう聞くと、美鈴は私の涙を拭きながら答えてくれたわ。
「涙は哀しい時や寂しい時ばかりに出るんじゃないんです、嬉しくて涙が出る時は嬉し泣きって言うんですよ」
初めて知ったわ、そんな言葉。
これからはもっともっと沢山の『初めて』と出会えるのね、私。
とってもとっても楽しみだわ。
終
(紅い館の門番と悪魔の妹)
Ⅱ
美鈴は門番としてはあんまり有能じゃないわ。
万能型だからこれと言った弱点はないけれど、伸びるものもない。
しかも体術専門のようなものだから、弾幕ごっこが苦手みたいでさ。
よく負けてどっかの黒いの(※魔理沙)とか侵入させちゃうし。
立ちながら寝るとかどんだけ眠気ピークなのよって思うわ。
最早感心する域よ、あれ。パッと見起きてるように思えるから。
それでやっぱり黒いのとか侵入させちゃうのよね。
ちょっと雇って後悔を何度もしたし、解雇しようかって何度も考えたわ。
でも、今は雇って良かったと思うし、解雇しなくて良かったと思うわ。
美鈴は門番としてはあんまり有能じゃないわ。
けど、やる時はしっかりやるし、好戦的じゃなくて比較的穏やか。
律儀でなかなかに礼儀正しいし、ちょっと咲夜みたいに呆けたところがあるけれど…。
聞き上手で人の感情や心情に敏感。空気だって結構読める方だわ。
そんな美鈴だから、門番兼フラン付きの従者の案を許可したの。
フランは冷静に見えるけど内面は酷く情緒不安定だわ。
細い細い糸がぐっちゃぐちゃに絡まって、何が何だか分からなくなる位。
まあ良い方の表現で言えばとっても繊細なわけ。
私や咲夜、パチュリーはどうにもこうにも…自分で言うのもアレだけど心情を察するのは得意じゃないから。
だからあの子と接する時は神経使っちゃうのよ、硝子細工を壊さないように慎重に触ってる感覚と似てるわ。
『貴方』だって神経使って接されるの嫌でしょう?勿論、私も嫌だわ。
だけど美鈴は神経を使わずに素の状態で心情とか察せるから、フランと良い感じに交流出来ると思うのよ。
……今から、美鈴とフラン出かけるらしいの。
沢山美鈴と楽しみを共有して、新しい発見を見つけて欲しいわ。
ふぅ…って、あら、紅茶が無くなっちゃったわね。
「咲夜!お茶のお代わりを持って来て頂戴!」
終
(紅い館の主と誰かの対談)