大好きよ、咲夜。
いつも私の目の前で目を細め、笑う。煙色の瞳が、銀色の睫毛に彩られる。そ
の様はたしかに綺麗よね、とは思うけれど。
スキマ妖怪とやらよりも彼女の表情と言葉はうさん臭い。本当にうさん臭い。いや、疑わしい。
幻想郷では年を重ねるとありがたみよりうさん臭さが増すのかしらね、なら私は
年をとりたくないわ。なんて毒づいてみせると、彼女は困ったような表情を顔に
貼り付けてそうかもしれないわね。なんて。
本当はどれもこれも上辺だけ。
きっと私だけが知っている。彼女は潔癖症で、手作りを嫌うことを。そのくせ
嬉しそうに私の作った物を受け取って、結局食べずに捨てること。
知っているわ。本当は誰も信じていないこと。本当は何者も好きじゃないこと。
医者として里に出向けばいいものを、竹林に引きこもって兎に薬の売買を任せ急
患しか引き受けたがらないことがその証拠。
だから、私も。
私も、彼女は好きじゃない。決して憎くはないけれど。好きだなんて言われたけ
れど、心は揺れない、ぶれない、波風も立たない。寧ろ嬉しくも、ない。
そうね、だからいつか言ってやるの、
私はあなたなんか嫌いよ、と。
大嫌いよ、永琳。
いつも私の目の前では険悪な表情。柳眉の下で紅の瞳が、銀色の睫毛に彩られる。その表情すらも彼女がするのならば酷く美しく、壊れ物みたいに儚く見える。
きらきらと陽に透けてきらめくナイフよりも鋭く、腰に提げている銀の懐中時
計よりも正確に、彼女の視線は私を射抜く。冷ややかな熱を点して、彼女は私を
見つめる。
ラズベリーのタルトをもらった。いつだったか分からないけれど、おすそ分け
だといって彼女が持ってきたのは覚えている。後で独り占めしてやろうとその場
では食べなかった。ちょうど一人分だったし、永遠亭の兎やら、ましてや姫様に
見つかってはきっと私の口には入らないだろうから、自分の部屋で密かに食べよ
うと思った。
きっと彼女は、それが不満だったに違いない。その場で食べて、その味を伝えて
ほしかったのだろうから。一瞬見せた裏切られたみたいな表情は、きっとそのせ
い。
そのあと自室で食べたタルトは、何故か孤独感だけををひたすらに募らせる材料にしか、なり得なかった。
いつも、いつもだ。
すれ違ってばかりで、ついぞ交わったためしがない。触れ合いそうで触れ合えな
くて、ただただ音叉のように感情の余波で干渉しあうだけ。
その余波に波風立たされているのは、私だけなのだろうか。彼女は揺らいではい
ないのだろうか。気づいたら考えている、乱されている。ああ、気に入らない。
……それでも、好きなのだろう。彼女のことが。
大嫌いなのか、大好きなのか、ないまぜになりすぎてもう、わからない。
キライだけど、スキ。スキだけど、キライ。
ごちゃまぜな気持ち。でも、相手のことを真剣に想っていることだけは変わらない。
良かったです。
大好きだけど全然見かけないカプーキター!
嬉しいです、そして2人のすれ違いっぷりが悲しい。
でもこの2人は一見仲悪そうなのがいいなぁと思います。
よいものをありがとうございました。
この距離感が堪らないです!
この最後の一文を、それまでの文章がよく引き立てていたと思います。
いやぁ、良かったです。
…えーさくも、いいな。
1のお方>
ごちゃごちゃしてるけれど、思っている、そういうのがスキです。えーさくは。
2のお方>
おお同志!
本当にえーさくは見かけないですよね。でも私も好きです。
表面上険悪ながら水面下良好。みたいな二人が好きです。
奇声を発する程度の能力さん>
やっぱり珍しいんでしょうか…。
距離感を感じていただけてよかったです。
けやっきーさん>
ありがとう御座います。
えーさくも、いいぞ。
皆さんコメントありがとう御座いました!