「行くぜ!ダブルマスタースパ~ク!」
「夢想チョップ!」
魔理沙がお酒に酔いながらそう言って神社に八卦炉を向けたところを
霊夢のチョップの一撃で沈められた
今日も今日とて博麗神社の中で行なわれている大宴会
幻想郷の中でも化け物、神、悪魔と呼ばれる者達が集まり楽しむ
そんな宴会なのだが
「んふふっ…霊夢は何かやらないの?」
「宴会芸なんて何も出来ないわよ」
後ろから姿を現した八雲紫に、霊夢がため息を漏らしながら言葉を返した
「そう?宴会芸で一位になったら、あの商品から好きなの貰えるのに?」
霊夢の言葉に、紫が宴会の会場の一角に置かれている
大量のお酒を指差した
今回の宴会で、周りをあっと驚かせた者に
商品としておいてある物を持って行く権利があるのだ
「色々あるわよ?幻のお酒とか外の世界の珍味とか…」
「私が貰っても、どうせこの場で皆が開けちゃうんでしょ?」
毎度の事なので、霊夢が宴会芸をする事は殆どなかった
「そんな事よりも、何か面白い…」
霊夢がそう口に出した瞬間だった
(カシャン!)
博麗神社で行なわれていた宴会が
酒のビンが割れる音で一瞬止まった
宴会の席で酒のビンが割れることはよくあることではある
誰かが滑って手に持っていた酒ビンを割る事もある
余興として酒ビンをお手玉代わりにして落とす事もある
無論、そのような時には周りが止まる事は無いし
場合によっては気いらない者に対して投げつける事も宴会では多々ある
その時は、周りが囃し立てる
「…気に入りませんね…」
「…奇遇ですね、同族嫌悪と言う奴でしょうか?」
だが、酒ビンを割った者を見て辺りに居た者が目を疑う
皆の注目を集めているのがレミリアや萃香等なら
回りも何時もの事だと、気にしなかったであろう
しかし、お互いににらみ合っている人物が
「『空気をよむ程度の能力』なんて物ごときで
私に勝つ事が出来ると本気で思っているのですか?」
「…愚問ですね、そちらこそ『気を使う程度の能力』などと言う
曖昧なもので私を倒せると思っているんですか?」
真顔で酒瓶を片手で握りつぶしている紅美鈴と
いかにも不機嫌である事を顔に出している永江衣玖だったら
「侮辱しているんですか?この場で貴方を蹴り倒しますよ」
「侮辱と取ったのならどうぞ、後で恥をかいても宜しいのでしたら是非」
宴会の会場が静まり返らない方がおかしいだろう
普段が笑顔な二人だからこそ
二人が無表情で怒っているその姿は
辺りの動きを止めるには十分過ぎるほど怖かった
「め、美鈴待ちなさい!」
「い、衣玖?どうしたの?そんなに怖い顔して」
動きが止まっていた者達の中から
美鈴の主にあたるレミリア・スカーレットと
一応、衣玖の主にあたる比那名居天子の二人が
真っ先に動きだして、二人の傍に寄ってきた
「な、何があったかはわからないけど、皆が引いてるわよ」
「衣玖、お、落ち着いて…」
二人が怒っている雰囲気に押されて
レミリアと天子の二人が引き腰になりながらも
二人を落ち着けようとするが
「お嬢様は下がっていてください!(ピシッ!)」
「総領娘様…(ミシッ!)これは私達のアイデンティティの問題です」
『ひゃ、ひゃい!』
いかに力がある物でも、カリスマがある者でも
手にした酒ビンを砕きながら喋る
今の美鈴と衣玖の二人の迫力の前に
涙目になりながら後ろに下がらざるおえなかった
「竜宮の使いを気絶させて、この宴会の余興とさせて貰います!」
「面白い余興ですね…気絶するのは名も無き妖怪になりそうですけど!」
後ろに下がったレミリアと天子を無視して
美鈴と衣玖が立ち上がると、宴会の会場の真ん中を陣取って
「かかってこいや!緋衣の竜宮の使い!」
「上等です!この駄目門番の華人小娘!」
二人から、普段聞く事も出来ない罵声と共に決闘が始まった
「憤怒」
まず先に手を出したのは美鈴で
一歩の踏み込みの後に片腕を伸ばし
「螺光歩!」
相手に向かって突っ込んでいく
十分に体重とスピードの乗ったその技に対して衣玖は
「…怖い怖い…」
下手に迎撃する事も出来ず、ガードをするのも難しい
美鈴の技を、無言のまま緩やかに避わして
「次は此方ですね?」
避けると同時に、近接した美鈴に対して
腕に巻きつけた羽衣をドリルのように変化させると
「龍魚の一撃!」
美鈴に向かって叩きつける
高速で回転するその一撃に対して
美鈴は慌てずにドリルの先端を避けると
「…危ない技ですね」
ドリルの付け根、つまり衣玖の腕をつかみとり
「地面でも掘っててください」
そのまま地面に衣玖の片手を叩きつけ、ドリルの回転を止めると
「破山…!?」
スペルカードを発動しようとした美鈴が
唐突にその場から退く
そして、その一瞬後に
「エレキテルの竜宮!」
衣玖のスペルカードによる雷撃が辺りに轟いた
「…ドリルと電気…えげつない技ですね」
「その技を避けて、しかも追撃を入れようとした貴方が何を言いますか?」
美鈴と衣玖の二人が再び距離を取る頃には
「めーりん頑張れ~!」
「い、衣玖!負けるな~!」
「『竜宮の使いと門番の一戦!』明日の見出しはこれで決まりですね!」
「オッズは竜宮の使いが2・2倍で門番が1・8倍うさ!
早くしないと締め切るうさ~!」
周りで固まっていたギャラリーもすっかり観戦して楽しんでいた
・・・
「あら、意外とやるものね…あの二人も」
「こら~!誰が終った後の片付けすると思ってるのよ」
無論、霊夢と紫も二人の戦いを見ていた
「…ねえ、霊夢どっちが勝つと思う?」
「そんな事どうでもいいわ!私には関係ないから」
霊夢がそう言って、肩に手を回してこようとする
隙間妖怪の脇に肘打ちを決めた時に
観客からどよめきが上がった
・・・
「…まだやりますか?」
足払いを受けて倒れた衣玖に対して美鈴が声をかける
二人の戦いはほぼ互角であったが
ほんの少しだけ美鈴が圧倒した、その理由は一つ
「…随分と性質の悪い足癖ですね」
美鈴の足技のバリエーションの多さであった
ズボンを穿いてないのでかなりの制限はあるが
「このスリットが入った服は伊達じゃないんですよ」
それこそが美鈴がこの戦いに置いて有利である部分であった
倒れている衣玖に対して、美鈴が歩み寄り足を高く上げると
「黄震脚!」
思いっきり地面に振り下ろす
それと同時に、地面が軽く揺れるて土煙が舞い上がる
「…仕方ありませんね…」
その様子に衣玖が諦めとも取れる言葉に呟いてから
「螺光歩!」
美鈴が止めとなるべきの一撃を放った……はずだった
だが、確実に打ち抜いたと思われる一撃に一切の手ごたえが無く
更に、背中から殺気が迫ってくるのがわかっていた
・・・
「…やっと砂煙がおさまったぜ…」
観客として見ていた魔理沙が
土煙の中で立っている二人の姿を見て
「……畜生…」
おもわず悔しがった
(生足なんて…卑怯だぜ)
・・・
「…本気ですね」
「此処までしたんです、勝たないと割に合いません」
土埃がおさまった後、美鈴と衣玖は立ち尽くしていた
美鈴は肩を押さえて…そして衣玖は
「まさか…自らスリット入れるとは」
自らの長いスカートを自分の手で破って
その長い足をスリットから覗かせていた
「これなら、貴方と私のハンデーは殆どなくなります」
あの時、衣玖がため息をついたのは諦めではなく
自分のスカートを裂くことだったのだ
そして、美鈴の一撃のタイミング見計らい
空中に縦回転で飛び上がって
その踵を美鈴の肩に叩き込んだのだ
「お気に入りのスカートでしたからね…何枚もありますが」
衣玖がそう告げて、再び美鈴の前で構えを取る
「…なるほど、勝負はまだ終りませんか」
美鈴も両手を上げて、再び構えを取ると
お互いに次の攻撃を繰り出し始めた
「ぬぅりゃあああぁ!」
「はぁぁぁぁあああ!」
美鈴が拳と脚を混ぜた攻撃を加えると
衣玖がそれを紙一重で避わし
すれ違いざまに拳を美鈴に当てる
だが、お互いの攻撃は全て決定打にはならない
美鈴の攻撃はどういうわけか、衣玖には当らず
また、衣玖の攻撃は軽すぎて美鈴には決定打にはならない
その事を悟った美鈴が、距離を取ると
「華光玉!」
遠方から気の塊を衣玖に飛ばす
「雷鼓弾!」
その攻撃を察知した衣玖が気の塊に対して雷撃を叩き付けた
(これは想定道理…さあ、次は此方から)
華光玉と雷鼓弾がぶつかった衝撃で辺りに風圧が起きたので
思わず衣玖が攻撃を止めてガードを構えるのを見届けてから
美鈴が地面に脚を踏み込ませると、衣玖の斜め前に
相手にとっての死角に向かって飛んだ
それは人が見れば、唐突に人が見えなくなったように写る
「!?」
衣玖の目にも美鈴の姿が消えたように見えたらしく、一瞬だけ動揺を見せる
その姿を見た美鈴が真横から回し蹴りを放った瞬間
美鈴の全身にピリピリとした違和感が走って
「くっ!?」
死角にいて見えないはずの美鈴に気がついた衣玖が
美鈴の回し蹴りを後ろに倒れるように回避すると
「…穿ちます」
「ぬっ!?」
倒れこんだ不自然な体勢から美鈴の方に向かって
手に巻いた羽衣を高速で回転させて
「龍魚ドリル!」
回し蹴りを回避されて隙が出来た美鈴に叩きつけようとする
その一撃に対して、美鈴が取った方法は
「…随分と痛いですね」
「りょ、両腕で止めた!?」
両腕でそのドリルの一撃を受けつつ後方に引く事だった
渾身の一撃を唯の両腕で止められた事に流石の衣玖も驚く
無論、不自然な体勢で放たれたおかげでかなり威力は弱まっているが
障壁や結界も無いはずの両腕位なら、簡単に貫けるはず
だが、目の前の人物の両腕は多少の怪我はあるが殆ど怪我を負っていない、
その姿を見て衣玖が美鈴に対しての攻撃が効かない理由を悟る
「…そうか、硬気功ですね?」
「ばれちゃいましたか?」
魚竜ドリルの一撃でも貫通できないものとなれば
鋼鉄か鋼以上の強度の代物、それを可能にする事が出来る物が
目の前の妖怪には出来るのだ
「でも、私もわかりましたよ…攻撃が避けられる訳が」
驚く衣玖とは対照的に両腕を削られて流血している美鈴が笑みをこぼす
「…常に微量の静電気を放って、空気の動きを読み
相手の動きを察知する事が出来るのが貴方の技の謎です」
「お見事…」
美鈴の謎解きに衣玖は静かに頷いた
「どうやらお互いに…」
「相手に当てる方法を考えないと勝負はつかないみたいですね」
二人がそう伝えると、最後の技を放つために距離を取り構える
「ですが、私には秘奥義『態透氣』があります」
「むっ『態透氣』?」
美鈴の秘密兵器の名前を聞いていた者の中で
「ぶっ!?た、態透氣だって!?」
「ら、藍様?何か知ってるんですか?」
少し離れた所に居た八雲藍が飲んでいたお酒を噴出しかける
「い、いや…だが…しかし」
藍が少しだけ困っていると衣玖が更に声をかける
「…ならば、此方も同じく秘奥義『須転流趨』にてお相手します」
「むっ!?『須転流趨』ですか!」
「す、須転流趨!?ま、待て!二人ともそれはまずい!」
思わず、藍が叫ぶ
「なんだよ、どんな技か知ってるのかよ?」
「あやや、何か知ってるのなら是非情報を…」
その声を聞きつけてきた野次馬が藍の周りに集まる
「…二つとも、大昔に少しだけ聞いた事がある
門番が言っていた態透気は、大量の気を放つことによって
自分の意識だけを残して自らの体の細胞を、自然と一体化させる技だ」
「どういうことだ?」
「当たり判定が完全に無くなる!」
思わぬ技に群集がざわめく
「で、でしたら…あの竜宮の使いの技はなんですか?」
文の質問に対して藍が答える
「…須転流趨…詳しい事はわからないが
鍛錬によって自らの体の色素細胞を自在に変えて
あたかも、その場から消えたように見えるという技だ」
だが、藍がこの二つの技の注意点を話す
「この二つの技を発動させる為の条件は一つ…」
観客達が藍の方に集中する
「…奥義の性質上…着ている物を脱がないといけない…つまり裸だ」
『うぉぉぉぉぉぉおおおおお!?』
その言葉を聞いた全員が、急いで藍の方から美鈴と衣玖の方に振り返った
藍の説明がすむまでの間に、衣玖と美鈴が
「…そろそろですね?」
「…はい…」
奥義を放つための一撃を溜めていた
「『光龍の吐息』!」
「『華厳明星』!」
先ほどとは比べ物にならないぐらいの雷光が衣玖から発せられて
美鈴も先ほど以上に気を練りこんだ塊を両手から放ち
その二つがぶつかると同時に、凄まじい光りが辺りを照らした
その光りに、二人の戦いを見ていた全員が目を瞑り
『秘奥義!』
「須転流趨(すてるす)!」
「態透気(たいとうき)!」
衣玖と美鈴の二人が遂に秘奥義を放った
閃光が止み、皆が急いで衣玖と美鈴の姿があった場所を見つめると
「美鈴!?」
「い、衣玖!」
その場は電気と気のぶつかりによって起こった力で焦げていて
その中に居た二人が忽然と姿をけし、少しの布切れが焦げて落ちていた
「ぬっ!?」
「あ、あれは!」
そんな時、レミリアと天子が何かを二人が戦っていた場所で
何かを見つけて飛び出した
「こ、これは…間違いないわ」
「うん、間違いない…」
何かを手にしたレミリアと天子が頷いた
「なあ、何を見つけたんだよ?」
「何か面白い物ですか?」
周りに居た観客達もその場によってくる
そして、見つけた物をレミリアと天子が報告した
「…これ、美鈴のブラ…」
「…衣玖の下着…」
その報告を聞いた観客達が大急ぎで立ち上がると
『探せ!二人を探すんだ!』
「私はあっちの方を探すぜ!」
「あやや!これは早くお二人を探して確保しないと!」
「咲夜!誰よりも早く探しなさい」
「ひゃっはぁ~!美鈴狩りだ~♪」
「衣玖!何処に居るの!?衣玖~!」
「竜宮の使いの踊りぐい…じゅる」
「ゆ、幽々子様!?」
「神奈子様、諏訪子様!頑張って探しましょう」
「そうだねぇ…そっちの方が面白そうだしね」
「わかってるよ早苗!」
今までに無いぐらいの盛り上がりで
皆が宴会の会場から去って行った
最後に残されたのは…
「…誰もいなくなったわね」
「じゃあ、一緒に飲みましょう霊夢」
一歩引いた所で見ていた霊夢と紫だけだった
「飲むって…はぁ…後片付けするの私でしょ?」
「まあまあ…それに、あそこにお酒も残っているし…」
紫が指差した場所には、宴会で飲まれるはずだった商品の山
「皆行っちゃったから、あれは霊夢の物になるわけよね」
「…仕方ないわね、掃除の代金と場所代にしてはお釣りが来るほどだし」
霊夢が少しだけ上機嫌になったのを確認して
紫が隙間を開いて、商品を霊夢の前に置いた
「じゃあ飲みましょうか?紫」
「ええ…あら?」
お酒を飲もうとして、紫が何かに気がついた
「どうしたの?」
「…一本だけ足りないわね…」
「萃香でも飲んだんじゃない?」
「…ああ…なるほどね…」
何かに気がついて、紫が頷くと
「…一番の人が持っていったのね」
そう呟いて、霊夢のコップにお酒を注ぐ事にした
「見つけたか!?」
「あやや!何処にも見つかりません!」
霊夢と紫以外の皆は、全員神社の周りを探し回っていた
何時もとは違う、早めに終わった博麗神社の大宴会であった
スリット生足衣玖さんで僕はどうにかなってしまいそうです
主に色y(ry
スリット衣玖さんは正義ですね分かります。
>気を使う程度能力
気を使う程度の能力?
でも二人とも上手く騙したな~
さすが「空気を読む程度の能力」と「気を使う程度の能力」だ
この二人ならてゐを騙すのも夢じゃない!?
スリット最高!!!!
やばい興奮した。すてるすその他発想力に脱帽しました。
>「…一番の人が持っていったのね」
てっきり『姿消し勝負』みたいな感じで萃香が1位だったみたいに
考えてしまった、なるほどそーゆーことなのかー
そして残された美鈴の下着はいつの間にか咲夜さんが回収しているという(ry
そうか……奴は九頭竜……