『拝啓、毘沙門天様』
その日、珍しく届いた手紙に私は驚いた
手紙が届く事自体が珍しいのだが
何より、長らく連絡が無かった弟子からだから余計である
普段からしかめっ面である事を自他共に認めているが
思わず口元がにやけてしまう
…そんな事は今は置いておくとして
手紙の内容を読む事にした
『初夏も過ぎて暑くなって来ましたが、御体は大丈夫でしょうか?』
少し目が潤んだ…最近は私の体の事など誰も心配してくれない
他の七福神の奴らも私が風邪をひいたと言っても
『毘沙門天?ああ、あいつは体が頑丈な事が取り柄だから心配ない!』
とばっさり切り落とすのに…おっと、続き続き…
『大変情けなく思いますが、沢山居た信徒は時と共にほとんど無くなり
今は、最後まで着いて来てくれたナズーリンと一緒に
幻想郷と言う場所で暮らしています』
まあ、今の世の中で毘沙門天の使いだ!とか言えないしなあ…
むしろ、良く私の事覚えていてくれたなあ、おい
てっきり忘れ去られたか、それとも弟子を勝手に辞めて居たと思ってたぞ?
『此処からが重要なお話でありますが…
幻想郷で色々とごたごたが続いて、
妖怪達と一部の壊れた人間達のおかげで
聖白蓮の封印がやっと解かれました』
なんと!?あいつの封印解かれたのか?
そうかそうか…人間達の恐怖で封印されていたのが
ようやく許されたのだな…
『今では、幻想郷で命蓮寺なる御寺を作って
人と妖怪の架け橋になるようにと日々ゴミ拾いや、
御腹がすいている妖怪の子に御飯を作ってあげたり
頑張っておられるところです』
か、変わらないな聖!
やってる事昔と同じじゃないか!
…しかし、それが聖に取って一番なんだろうな
『聖が封印から解かれたと言う一報と喜びを伝える為
毘沙門天様に今一度、筆を取らせて貰いました』
おいおい、一報は良いが喜びを伝える為かよ…
まあ、聖が封印される時一番悲しんでいたのが星だったしなあ
私も気楽に御酒飲みながら話が出来る聖が復活した事は嬉しいしな…
『それとこれは個人的にですが、聖が復活したおかげで最近別の問題に悩んでいます』
なんだ?続きがあるのか?
『まず聖を見殺しにした事による罪悪感の事』
ふむふむ…まあ、仕方がないんじゃない?
お前まで地下に封印されてしまったら
今回の復活も無かっただろうし
『まあ、これは聖が気にしてなかったので構わないとして』
こ、こらこら!構わないのなら書くな!
フォローを考える時間無駄になったじゃないか
『ナズーリンが可愛くて仕方ありません!どうしましょう!?
昔から可愛かったのですけど最近ホッとした時間が多くなったおかげで
ナズーリンを目で追うのに忙しくなりましたこの前もついつい…
(前略)思わずこうむぎゅっと…(中略)でこう頬を染めて…(後略)
と言う訳です、何か良い方法ないでしょうか?』
OK馬鹿寅(ばかでし)
惚気話だけで手紙の三分の二埋めるお前の才能を褒めてやる
まあいいか…とりあえず聖が甦ったと言う事はわかった、良い事だ
しかしナズーリンをねぇ…
これはあれか?母性本能ってやつか?
……そういえば、最近のナズーリンの奴の手紙も
『星が可愛くて仕方がない』
『泣き顔に萌えた、これが悪と言うのなら喜んで悪になる!』
とか書かれていたから「壊れてきたか?」と思ったが…
どうやら、これがあいつ等にとって正常のようだな
ふむ…そうだな此方も少し悪戯で手紙を返すとするか
えーと…
『聖の復活おめでとう、実に喜ばしい事だ
あと寅丸星とナズーリン、お前らはもう結婚しろ』
ふふっ、こんな物で良いかな?
どんな反応するのか楽しみだ…
・・・
一ヶ月後、再び私の下に手紙と写真が一枚送られた
写真には弟子が泣いている私の部下を抱き上げている姿
そして、手紙には短く一言簡潔に訳が書いてあった
『私達結婚します
BY寅丸星・寅丸ナズーリン』
(…変な事書くの止めておけばよかったかな?)
思わず額に手を当てて悩みこむ毘沙門天の姿が見られた
ナズーリンをお祝いしてあげたいのに、なぜか涙が溢れて何も言葉が出てこないんだ……
誤字? 最後まで着いて来てくれているあるナズーリン「ある」が余計?
いずれにせよ毘沙門天gj
さすが毘沙門天様ですねw
(;゚д゚)
もし外の世界だったら喜んで案内するよ
たったの一件で変えられそうになるとは
実は暇なのか七福神