※ささやかですがKENZEN注意
うん、と伸びをして、さとりは首を鳴らした。机の上には片付けた書類が辞書のように分厚く積まれている。
さとりの前には数枚の紙が残っていた。たまった書類を気合を入れて朝から片付けていたのだがようやく終りが見えてきた。長時間の労働で肩は凝ってるし腰も痛い。肩を軽くもみながらさとりは立ち上がり、自分のためにコーヒーを入れた。エスプレッソに砂糖を溶け残るくらいに入れて静かに飲む。すると疲れた体に力が戻ってきた。
「さて、続き続き」
コーヒーで気分を入れ替えたさとりは再び机に戻って仕事を始めた。
しかし、なにか違和感がある。さとりは立ち上がり腰に手をやった。特に服に異常はない。
次に椅子に目をやった。これもいつもと変わらない自分の椅子だった。
「?」
違和感の正体はわからないまま、さとりは再び腰を下ろした。
そのさとりをずぞぞぞぞっと何かが皮膚を這う感覚が襲う。今度ははっきりした感覚にさとりは思わず「ひゃあっ」と声を上げてた。
慌てて周りを見るが別に普段と変わることはない。だが、そう見えているだけかもしれなかった。さとりはこういう時の犯人に、確信を持っていた。
「こいし! いたずらするのはやめなさい」
「ちぇ、バレるの早いなあ」
無意識を解いたのかあっさりと、さとりの後ろにこいしが現れた。つまりさとりは椅子に座ったこいしの上に腰掛けていた。
「やっぱりあなたなのね。一体どうしてこんなことを。早く降りなさい」
「お姉ちゃんが仕事にお疲れだったから癒してあげようと思って」
「むしろ疲れました。いいから早く降りなさい」
「や。」
言うとこいしは腕でがっちりとさとりの腰をホールドした。
「なんの真似ですか」
「だから、私が仕事の疲れを癒してあげるってゆったじゃない」
「仕事になりません。は、な、し、な、さ、い」
さとりは力を込めてこいしから逃れようとするが、こいしのほうが力が強いのかうまくいかない。足がしっかりと床についていないので踏ん張りもきかなかった。そこでさとりはガタガタと体を揺らし椅子を動かす。
「あー、だめだよ」
「ひゃはうっ」
こいしが耳元で息を吹きかけると、くたくたとさとりは力が抜けてしまった。なおもこいしは身元で囁くように語りかける。
「ね、かわいい妹がお手伝いするって言ってるんだから、おとなしくして♪」
「な、なにを……ひ、耳を噛まないで」
「はみはみ」
「あ……あ……」
こいしに耳をはまれてぐったりしたさとりは、一旦抵抗は諦めることにした。
「ふふ、お姉ちゃんも観念した?」
「もう、いいわ。好きにしなさい。でも仕事は続けさせてね。今日の夜までに出さないと、映姫に怒られてしまうの」
「もちろんだよ。最初から仕事を手伝うって言っているじゃない」
「では私の仕事が終わるまでこのままということかしら」
「そういうこと。さ、早く終わらせようお姉ちゃん」
さとりは一気に体がだるくなった気がした。仕方ない、と気を引き締める。どうせ仕事はもう数枚だ。これならこいしの妙ないたずらがあっても、何とか終わるだろうと思った。
一時間後、さとりは一枚目の半分ほどまでペンを走らせたところで止まっていた。
「ねえ、こいし」
「なあに? お姉ちゃん」
「っ、だ、だから耳元でささやくのはやめて」
先程からずっとさとりの耳や首筋、うなじなどにはこいしの吐息が当たっていたのだ。さらに腰に回されたこいしの手が軽くながらさとりの腹をなで、それが微妙なくすぐったさを感じさせる。
「あらら、お姉ちゃん顔が紅いよ。どうしたのカナ♪」
「な、なんでもないわ。それより耳元息をするのをやめて頂戴。集中できないの」
「ええ、でもこの体勢だと難しいよ」
「じゃあ、あ、あまり話しかけないで。それから、せめて腰に回した腕は解いてくれないかしら」
「やだよ、そしたらおねえちゃん逃げるでしょう」
「逃げないから、約束するから、お願い外して」
「ふふ、そこまで言うなら外してあげる」
こいしは腰に回した腕を離し、さとりはほっと息をつく。遅れた分を取り戻そうと、集中して書類に取り組んだ。
また新たなこいしのいたずらが来るのではないかと警戒したが、それはなかった。拍子抜けしつつ、さとりはこいしに座らされたまま一枚目の書類を何とか終わらせた。
そこでさとりはふと気づいてこいしに尋ねる。
「こいし、重くはないのですか」
「うん?」
「だってもうずいぶんこいしの膝の上に乗っているし、いたずらされている私が言うのも変だけど、つらくはないのかしら」
あるいは、それでこいしが離れてくれればという思いもあった。だがこいしは笑顔で否定する。
「ううん、全然。むしろお姉ちゃんのおしりが当たって気持ちいいよ」
「ぶっ!? な、何言ってるんですかこいし!」
「お姉ちゃんも背中に当たってるでしょ」
「…………」
「育ったでしょ」
「…………」
なにが、とは聞けなかった。
「仕事の続きをします」
無理やり話題をうち切ってさとりは二枚目の書類を出した。こいしが文句を言うが聞こえないふりをする。背中の感触やこいしの膝の感覚にも全力で意識に蓋をする。ああ、無意識が使えたらどんなにいいだろう。さとりはそう思った。
しかしさとりの不毛な努力はまたも簡単に壊されることになる。
「お姉ちゃん♪」
「ちょっ」
肩を急に掴まれてまた集中が途切れる。今度は何が起きたのか振り返ろうとすると、
「お姉ちゃんの肩もんであげるよ。疲れてるでしょ」
「こいし、気持ちは嬉しいけどそういう事はあとで……」
「いいからいいから」
「んっ! あ、でもたしかに気持ちいいかも……」
こいしに肩を揉まれ仕事ができなくなったのは事実だが、たしかに凝ってはいたのだった。
このまま任せてもいいかもしれないと、思ったさとりだった。
「どうお姉ちゃん」
「うん、気持ちいいわ。ありがとうこいし」
「ふふふ、そんなお礼なんて照れるよ。でもわたしも結構うまいでしょう」
「ええ」
こいしの言葉にうなずくさとり。
「そうだ、お姉ちゃん腰も凝ってるんじゃない」
「? え、ええ。まあね」
「そっちもしてあげるよ」
「ありがとう」
するするとこいしの手が背中を伝って腰に降りていく。不思議に思いながらもさとりは身をまかせる。
しばらくすると。
「ねえ、お姉ちゃん、背中も凝っているんじゃない?」
「え、ええ、ねえこいし、さっきから揉む範囲が広くなってないかしら」
「ここも凝ってるんじゃない?」
「え!? そ、そこは揉むところじゃ……。きゃあ!」
…………………………………………………………。
結局仕事は朝になっても終わらず、久しぶりにさとりは四季映姫の説教を受けることになった。
後日さとりはこいしに協力してもらって自分のされたことを閻魔にもしてやりうさを晴らしたという。
(おわり)
うん、と伸びをして、さとりは首を鳴らした。机の上には片付けた書類が辞書のように分厚く積まれている。
さとりの前には数枚の紙が残っていた。たまった書類を気合を入れて朝から片付けていたのだがようやく終りが見えてきた。長時間の労働で肩は凝ってるし腰も痛い。肩を軽くもみながらさとりは立ち上がり、自分のためにコーヒーを入れた。エスプレッソに砂糖を溶け残るくらいに入れて静かに飲む。すると疲れた体に力が戻ってきた。
「さて、続き続き」
コーヒーで気分を入れ替えたさとりは再び机に戻って仕事を始めた。
しかし、なにか違和感がある。さとりは立ち上がり腰に手をやった。特に服に異常はない。
次に椅子に目をやった。これもいつもと変わらない自分の椅子だった。
「?」
違和感の正体はわからないまま、さとりは再び腰を下ろした。
そのさとりをずぞぞぞぞっと何かが皮膚を這う感覚が襲う。今度ははっきりした感覚にさとりは思わず「ひゃあっ」と声を上げてた。
慌てて周りを見るが別に普段と変わることはない。だが、そう見えているだけかもしれなかった。さとりはこういう時の犯人に、確信を持っていた。
「こいし! いたずらするのはやめなさい」
「ちぇ、バレるの早いなあ」
無意識を解いたのかあっさりと、さとりの後ろにこいしが現れた。つまりさとりは椅子に座ったこいしの上に腰掛けていた。
「やっぱりあなたなのね。一体どうしてこんなことを。早く降りなさい」
「お姉ちゃんが仕事にお疲れだったから癒してあげようと思って」
「むしろ疲れました。いいから早く降りなさい」
「や。」
言うとこいしは腕でがっちりとさとりの腰をホールドした。
「なんの真似ですか」
「だから、私が仕事の疲れを癒してあげるってゆったじゃない」
「仕事になりません。は、な、し、な、さ、い」
さとりは力を込めてこいしから逃れようとするが、こいしのほうが力が強いのかうまくいかない。足がしっかりと床についていないので踏ん張りもきかなかった。そこでさとりはガタガタと体を揺らし椅子を動かす。
「あー、だめだよ」
「ひゃはうっ」
こいしが耳元で息を吹きかけると、くたくたとさとりは力が抜けてしまった。なおもこいしは身元で囁くように語りかける。
「ね、かわいい妹がお手伝いするって言ってるんだから、おとなしくして♪」
「な、なにを……ひ、耳を噛まないで」
「はみはみ」
「あ……あ……」
こいしに耳をはまれてぐったりしたさとりは、一旦抵抗は諦めることにした。
「ふふ、お姉ちゃんも観念した?」
「もう、いいわ。好きにしなさい。でも仕事は続けさせてね。今日の夜までに出さないと、映姫に怒られてしまうの」
「もちろんだよ。最初から仕事を手伝うって言っているじゃない」
「では私の仕事が終わるまでこのままということかしら」
「そういうこと。さ、早く終わらせようお姉ちゃん」
さとりは一気に体がだるくなった気がした。仕方ない、と気を引き締める。どうせ仕事はもう数枚だ。これならこいしの妙ないたずらがあっても、何とか終わるだろうと思った。
一時間後、さとりは一枚目の半分ほどまでペンを走らせたところで止まっていた。
「ねえ、こいし」
「なあに? お姉ちゃん」
「っ、だ、だから耳元でささやくのはやめて」
先程からずっとさとりの耳や首筋、うなじなどにはこいしの吐息が当たっていたのだ。さらに腰に回されたこいしの手が軽くながらさとりの腹をなで、それが微妙なくすぐったさを感じさせる。
「あらら、お姉ちゃん顔が紅いよ。どうしたのカナ♪」
「な、なんでもないわ。それより耳元息をするのをやめて頂戴。集中できないの」
「ええ、でもこの体勢だと難しいよ」
「じゃあ、あ、あまり話しかけないで。それから、せめて腰に回した腕は解いてくれないかしら」
「やだよ、そしたらおねえちゃん逃げるでしょう」
「逃げないから、約束するから、お願い外して」
「ふふ、そこまで言うなら外してあげる」
こいしは腰に回した腕を離し、さとりはほっと息をつく。遅れた分を取り戻そうと、集中して書類に取り組んだ。
また新たなこいしのいたずらが来るのではないかと警戒したが、それはなかった。拍子抜けしつつ、さとりはこいしに座らされたまま一枚目の書類を何とか終わらせた。
そこでさとりはふと気づいてこいしに尋ねる。
「こいし、重くはないのですか」
「うん?」
「だってもうずいぶんこいしの膝の上に乗っているし、いたずらされている私が言うのも変だけど、つらくはないのかしら」
あるいは、それでこいしが離れてくれればという思いもあった。だがこいしは笑顔で否定する。
「ううん、全然。むしろお姉ちゃんのおしりが当たって気持ちいいよ」
「ぶっ!? な、何言ってるんですかこいし!」
「お姉ちゃんも背中に当たってるでしょ」
「…………」
「育ったでしょ」
「…………」
なにが、とは聞けなかった。
「仕事の続きをします」
無理やり話題をうち切ってさとりは二枚目の書類を出した。こいしが文句を言うが聞こえないふりをする。背中の感触やこいしの膝の感覚にも全力で意識に蓋をする。ああ、無意識が使えたらどんなにいいだろう。さとりはそう思った。
しかしさとりの不毛な努力はまたも簡単に壊されることになる。
「お姉ちゃん♪」
「ちょっ」
肩を急に掴まれてまた集中が途切れる。今度は何が起きたのか振り返ろうとすると、
「お姉ちゃんの肩もんであげるよ。疲れてるでしょ」
「こいし、気持ちは嬉しいけどそういう事はあとで……」
「いいからいいから」
「んっ! あ、でもたしかに気持ちいいかも……」
こいしに肩を揉まれ仕事ができなくなったのは事実だが、たしかに凝ってはいたのだった。
このまま任せてもいいかもしれないと、思ったさとりだった。
「どうお姉ちゃん」
「うん、気持ちいいわ。ありがとうこいし」
「ふふふ、そんなお礼なんて照れるよ。でもわたしも結構うまいでしょう」
「ええ」
こいしの言葉にうなずくさとり。
「そうだ、お姉ちゃん腰も凝ってるんじゃない」
「? え、ええ。まあね」
「そっちもしてあげるよ」
「ありがとう」
するするとこいしの手が背中を伝って腰に降りていく。不思議に思いながらもさとりは身をまかせる。
しばらくすると。
「ねえ、お姉ちゃん、背中も凝っているんじゃない?」
「え、ええ、ねえこいし、さっきから揉む範囲が広くなってないかしら」
「ここも凝ってるんじゃない?」
「え!? そ、そこは揉むところじゃ……。きゃあ!」
…………………………………………………………。
結局仕事は朝になっても終わらず、久しぶりにさとりは四季映姫の説教を受けることになった。
後日さとりはこいしに協力してもらって自分のされたことを閻魔にもしてやりうさを晴らしたという。
(おわり)
深夜なのにテンションがぐんぐん上がる!
さとりさんと仕事チェンジしたい
椅子というタグだけでKENZENだとわかってしまうのは
久々にジェネでちゃいなさんの作品見れて嬉しさがヤバい
イヤア イイシマイアイダナア
1. 名前が無い程度の能力さん
どこからどう見てもKENZENですよね。(キリッ
2. 名前が無い程度の能力さん
今は四季様が持っていらっしゃるようなので是非曲直庁へどうぞ。
3. 奇声を発する程度の能力さん
私も座りたい
4. 名前が無い程度の能力さん
マジですか!? すごい読解力。
でも、椅子ってHですよね。
5. 名前が無い程度の能力さん
ありがとうございます! まさか名前を覚えてくださっている方がいるとは思わなかったのでこちらもうれしさがやばいです。
本当にありがとうございます。また暇なときにでも読んでやってください
6. 名前が無い程度の能力さん
ものすごい弄られますがそれでもよければ。
7. 名前が無い程度の能力さん
これくらいならKENZENだと信じています。
皆様お読みいただきありがとうございました。