○月×日、今日も実験に失敗した。
材料がどんどん消えていく。
後悔の連続だ。いや、この失敗は成功の元となるに違いない。
きっといつかは素晴らしい魔法へと変化を遂げるのだ。
……でも、やってらんないな。
あーあ、失敗しない、後悔しない人生ならいいのに。
でも、そんなことはダメだって解ってる。
そんな事を望んでしまったわたしは廃業だ。
努力を怠った時点で魔法使いとして、『人間』の魔法使いとしては脱落だ。
ふと、机の上に置いてある花を見た。
霊夢からもらった花だ。
そういえば、あいつがなにか物をくれるなんて珍しいな。
花を贈ってきたってことはそれなりに何か意味があるのだろう。
その後、いきなりスペルカードバトルを挑んできたのには流石に驚いたが。
あの霊夢が自分から勝負を挑んでくるとは珍しい。
お前に勝負を挑むのは基本、わたしの役目なのにな。
そう思いながら、その名も知らぬ花を見る。
しかし、その花は今はもう枯れてしまっていた。
おっかしいな。水はしっかりあげていたのだが。
そうだ、幽香にでも訊いてみよう。
花に関しては詳しいからな、あいつ。
○月×日 幽香に、この花の状態について訊いてきた。
どうやら水の遣り過ぎらしい。
あの野郎、あんたが花を育てるなんて変なの、とか言いやがった。
わたしだって花ぐらい育てるぜ。まったく。
なんていう花なのか、も訊いてみたのだが教えてくれなかった。
教えてくれてもいいじゃないか。それは霊夢の役目よ、とか言ってはぐらかしやがってさ。
それにしても、実験が上手くいかない。
もう何回失敗しているだろう。
いっそ止めてしまいたい。
でも、ここで止めたらあいつに近づけない。
あいつを失望させたくない。
ま、あいつはきっと失望はしないけどな
弱いわたしでも受け入れてくれるだろうし、どんなわたしでも受け入れてくれるだろう。
でも、それじゃあわたしは納得いかないんだ。
あいつを越す。越せなくても、差は作らせない。
そう思えばやる気が出てくる。
よーし、やるぞ!
……とその前に昼寝でもしようか。
「霊夢!花、咲いたぞ!」
魔理沙は霊夢にふふん、と鼻を鳴らすようにその咲いた花を見せる。
「へぇ。あんたが律義にも育ててるとは思っていなかったわ」
それに、霊夢が驚いた顔をする。
「わたしは魔法使いだぞ?もしかしたら材料になるかもしれないじゃないか。植物には優しいのさ」
「植物以外には優しくないの?」
「お前と違ってわたしは基本何にでも優しいつもりだぜ?」
「失礼ね。私だって優しいわよ」
「どこがだよ」「どこがよ」
二人の言葉が綺麗に重なる。
ケラケラと笑う二人。
春の少女たちが笑いあう昼下がり……
そんな夢をみた。
これは夢だって気づいている。
そういえば、この頃、博麗神社に行っていない気がする。
だから、こんな夢を見たのだろうか。
まあ、無理もない。
だけど、私だって忙しいんだ。
起きてみると外は雨だった。
今何時だろ……。
咲夜からもらった懐中時計を手に取る。
が、時計の針は止まっているようで。
まあ、いいや。寝ちゃえ。
今の時刻が気になるものの、まだ少し眠り足りなかった私は再び目を閉じた。
「霊夢!ついに完成したぜ!わたしの新しい魔法が!」
魔理沙は博麗神社に着くなり、霊夢の顔と自分の顔がくっつくくらいの距離まで行く。
「ちょっと、魔理沙。近すぎるわよ」
「ああ、すまんすまん。つい興奮しちゃったんだ」
「……で、新しい魔法ができたってことは当然スペルカードバトルよね?」
霊夢が持っていた箒を鳥居に置き、針と御札を持つ。
よし、やってやろうじゃないか。
と、魔理沙は新しく調合した魔法を手に持つ。
「ああ、新しいわたしの力をお前にも思い知らせてやる!」
「楽しませてよね?」
魔理沙はそれに
「勿論だ!さっそく使わせてもらうぜ!***符「×××」!」
と、スペルカード宣言した。
そこで夢は終わってしまう。
折角、幸せな夢だったのに。
窓から外をのぞいてみるとさっきまでの雨が嘘のように晴れていた。
まあ、それでも魔法の森は薄い霧に包まれているのだが。
雀が鳴いている。
いつのまにか朝になっていたらしい。
時間を無駄にロスしてしまった。
これなら神社で暇を潰していた方がましだ。
「実験の続きをしないとな」
昨日、やらなかった分が原因で開発が遅れてしまったかもしれない。
それは非常にくやしい。
取り戻さなければ。
しかし、どうもやる気が出ない。
こんな頭が回らないときに何か良いものができるだろうか、いやできない。
「ま、たまには何もしない日があってもいいか。さっきの夢の続きも見たいしな」
そういうと、魔理沙はまたベッドの上に寝そべり、目を閉じた。
「……中々やるじゃない」
そういいながら、霊夢を息を整える。
「どうだ!わたしの新作は!」
「でも、私の弾幕ほどではないわ」
それに魔理沙は悔しそうにする。
「なにおお!まだこれだけじゃないからな!次の策だ!」
「まだ何かあるの……」
霊夢はげんなりとした様子を見せた後、また身構える。
「××符『○○○』!」
と、そこでまた目が覚めてしまう。
新魔法の開発を進めろということだろうか。
しかし、まったく巧くいきそうにない。
でも、夢の中なら失敗しない。花も枯れない。
ざまぁみろ。わたしは見つけたぜ。失敗しない人生を。
そうカッカっと愉快に笑って、もう一度目を閉じてみる。
が、中々寝付けない。
起き上がって外を見てみると、今度は曇っていた。
なんとなくカレンダーを見てみるが、今日の日付すら分からない。
今日は何月何日なのだろうか。そういえば食べ物さえまともに食べていないな。
ふと思う。
わたしは何をしているのだろうか。
実験が失敗し続け、それにふてくされていたら、いつのまにか一人取り残されていた。
霊夢は今頃どうしているだろうか。
どうせあいつのことだ。わたしがいようがいまいがいつも通り縁側でお茶でも啜っているのだろう。
……そう思うと無性に腹が立ってきた。
霊夢め、少しは心配してくれたっていいじゃないか。
ああ、あいつの顔が見たくてたまらない。
あいつを驚かせてやろう。
さっきまでの夢のように楽しませてやる。
じゃあ、外に出ないとな。
うん、いい加減外に出よう。
外に出たら、幽香のところに行って霊夢からもらった花をもらいに行こう。
そしてあの花に込められた意味とあの花の名前を教えてもらおう。
ついでに香霖堂に行ってボタン電池?とやらをもらって時計に入れよう。
そう考えながら、霧雨魔理沙は再び外の世界へと足を向けた。
お話はとっても良かったです!
やっぱレイマリ(マリレイ)はいいなー
あと何回寝返りしたら起きようか
思考する毎日です。
すぐに前を向けるからこその魔理沙だと思いました。