Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方波動拳9~黒幕~

2009/10/23 16:01:00
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目が覚めれば、そこには紅い天井があった
どこか遠くで食器を動かすような音がする
少しの間ぼんやりしていると、すぐ近くのドアが開く音がした

「あ! 起きましたね」

この声は・・・

「美鈴?」

レティはゆっくりと体を起こした
まだ視界がわずかにかすんでいる
まだ秋だというのに無茶をしすぎたかしら・・・

「大丈夫ですか? 冬はまだ先ですよ?」

秋姉妹にも同じことを言われたわ
全身が重くてうまくしゃべることが出来ない
ドアのほうに顔を向けると、そこにはメイド服の美鈴が立っていた

「見慣れない格好ね」

「咲夜さんの具合が悪いんですよ。だから代わりに私が」

レティはふっと笑った
どうもこの門番は照れているように見える
慣れない格好が恥ずかしいのかもしれない
意識がはっきりしてきた時、レティは重要なことを思い出した
何のためにここまで来たのよ!

「美鈴、あなたは冬に来いといったけど、やっぱり今すぐに伝えるわ」

レティの厳しい口調に、美鈴も表情をかたくした
そうよ、忘れるはずが無い
彼女は大きな責任を感じているのだから
レティはゆっくりとベッドから降り、重い口調で続けた

「今回の異変の黒幕・・・それは・・・」

背後に気配を感じた
本能的に振り返ったが、そこには何も無かった
おかしい・・・窓も無いのに

「続きはどうしたのかしら? 冬の忘れ物さん?」

強烈な戦慄にとらわれた
明らかに今までいなかった人物が真後ろにいる
そしてこの見下すような口調は間違えようが無い
なぜ・・・なぜここに・・・!?

「あ・・・あなたは・・・」

「お久しぶりね、華人小娘さん」

レティは震える手を必死に握り締めながら振り返った
美鈴と彼女の間に姿を現したのは、この異変の黒幕そのものだった

「八雲・・・紫!」

「あらあら、怖い顔ね。そんなに私が憎い?」

扇子を口元に添えたまま、紫はにやけた表情を変えない

「あなたが・・・この異変の黒幕というわけですか」

美鈴が押し殺すような声で言った
握り締められた拳は震えながら、今にも爆発しそうである
紫はそれに答えるように扇子をたたみ、ふわりと浮き上がった

「そう、私がちょっと境界をいじったの
 幻想と格闘界の境界をね」

紫は不気味に微笑んだ
何を企んでいる? 何がおかしい?
明らかに悪の表情だ

「でもそれだけ。後はみんな彼女たちが起こしたこと
 私はそれを見ていただけ」

「それだけ・・・?」

美鈴はすでに怒りがピークに達しているようだ
まだだめよ・・・あなたでは勝てない!

「あなたのその軽い気持ちで、
 どれだけの人が傷ついたと思ってるんですか!!」

部屋全体を揺るがすような叫びだった
美鈴は紫を鋭くにらんでいる
怒りに燃えた眼だ

「人が傷つき、悲しみや怒りが生まれる
 幻想郷では珍しいことじゃない」

「だからって・・・!」

門番は硬い拳を持ち上げ、一歩前に踏み出した
いけない! 今の彼女は万全じゃない!
その格好では自由に動けないはず・・・!

「私を倒すのかしら? 異変を解決するために
 門番風情が異変解決なんて、感心しないわね」

美鈴は重い空気を破るようにして突進した
腰に構えた両腕に力を込め、左から時間差で紫の顔面に向かって突き出した
しかし彼女の拳は宙を切っただけだった
スキマ妖怪はいつの間にか美鈴の後ろに回っていた

「え・・・?」

美鈴が驚愕の表情を貼り付けたまま振り返った
振り替えるや否や、強力な足払いが美鈴を襲った
彼女は何とか防御したようだが、圧倒的なパワーでバランスを崩した
よろけるように後退した美鈴は、レティを庇って立った

「瞬間移動・・・スキマ!?」

「悪いけど、その辺はフェアなつもりよ
 スキマなんか使わないわ」

とすると今の瞬間移動は彼女の格闘術の一つとなる
冗談じゃない・・・!

「そっちがその気なら、こっちもそれなりに対抗させてもらうわよ?」

紫が典型的なファイティングポーズを取った
美鈴も自然と身構えた
紫が微笑んだかと思うと、彼女から三つの影が飛び出し、猛スピードで向かってきた
自分の分身と式神・・・!
三つの影は上から下へ三方向に飛んで来る
内一体は真っ直ぐにこちらへ向かってくる
今よけたらレティに当たることは確かだった
季節が合わない今のレティには危険すぎる!

「くぅっ!!」

美鈴は緑のオーラを放つ式神を全身で受け止めた
あまりの衝撃に足が悲鳴を上げた
相当なパワーだ! こんなのがレティに当たってしまったら・・・!
彼女のすぐ後ろには、まだ弱りきっているレティがやっとの思いで立っている
守るんだ・・・!
それが私の仕事だ!

「ハアァァァァッッ!!!」

猛烈な雄叫びとともに式神を押し返し、横に弾き飛ばした
標的を失った式神は空気に溶けていった

「ハァ・・・ハァッ・・・」

「まさかあれを正面から受け止めるなんて
 少し見直したわよ」

「あなたに見直されても・・・ッ!」

さっきの弾き飛ばしで相当な体力を使った
それにこの格好では思うように動けない
何とか時間を稼いで元の服に・・・!

「・・・いいわ、着替えてきなさい」

「え?」

紫の突然の言葉に困惑してしまった
何を言い出すんだ?

「言ったでしょう? これでもフェアなつもり
 それにあなたがどういう心情で私に立ち向かっているのか分かったわ
 せめてベストで挑んできなさい」

何か企んでいるかもしれない
でも凛とした表情で言われたこの言葉に嘘は見受けられなかった

「・・・分かりました
 あと、レティさんには手を出さないと約束してください
 あくまでもあなたに挑んでいるのは私だけです」

「大丈夫、私はそこまで悪い妖怪じゃないわよ」

この言葉には大いに安堵した
これ以上無関係者が傷つかなくて済む
レティが何か言いたげに口を開いたが、
美鈴の強い覚悟を含んだ眼を見た瞬間、口を閉じた
もう何を言っても無駄だろう

「さて、私は庭で待ちましょう
 無いとは思うけど、逃げたりしないようにね?」

「分かっています。もう覚悟は・・・」

そこまで言ったとき、何かが紫につかみかかり、
瞬きをする間もなく彼女は負けた
紫は美鈴の顔のすぐ横を吹き飛び、壁を突き壊して庭に落ちていった
その出来事に驚愕する前に、紫を襲った者の顔を見て訳が分からなくなった

「咲夜・・・さん?」

メイド長は静かに立っていた
つい前までの弱々しさはもう微塵も無い
それと同時に、以前のような人間らしさも失われていた

「我こそは・・・拳を極めし者・・・!」

人を失った十六夜咲夜は、殺意に満ちていた




                      つづく・・・
相方がインフルにやられました

何とか次回かその次ぐらいには終われそうです
そして注意書きよく見たら続き物ダメって書いてあるし\(^o^)/
とりあえず始めたことは終わらせます
軽率な判断で始めてすみませんでした


元ネタ

紫 :瞬間移動、三方向射撃
   『カイザーナックル』より
    ジェネラルの必殺技

咲夜:我こそは・・・
   『CAPCOM VS. SNK 2』より
    神・豪鬼のキメ台詞
OB-24800
コメント



1.脇役削除
続き待ってますよ!
しかし咲夜さんが豪鬼ですか…恐ろしいw
2.OB-24800削除
>>脇役様
すっかり失踪してしまいました。すみません

咲夜さんはひそかなラスボスだと思います
輝夜にとっての永琳のような(笑)