「…頼む!紫様を…この異変を解決してくれ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
博麗神社にたどり着いた八雲藍が
霊夢に土下座をして告げた言葉がそれだった
普段からめんどくさい事はやりたがらない霊夢であったが
いきなり土下座されたのでは流石にそうも言ってられない
「頼む!大異変なんだ…」
頭を上げるように伝える霊夢を無視して
藍が頭を下げ続ける
「と、とりあえず、何があったのか言って見なさいよ」
「わかった…ちょっと耳を貸してくれ」
霊夢の提案に藍が頭を上げると
霊夢の耳に小さく異変の内容を伝えた
「…紫様が…」
「紫が?どうしたの」
その言葉を聞いて、霊夢のやる気ゲージが半分の修正を受ける
普段から迷惑な行為をしているのだから
また何か面倒な事でも起したのかと思っていて
「…紫様が…老けた…」
「ホワッツ?」
その言葉に霊夢が思わず呟いた
「だから…ゆ、紫様が…」
「あほらしい…心配して損したわ」
そんな事など、境界を操る事の出来る隙間妖怪にとっては
簡単なことである、きっとまた何か馬鹿らしいことでも考えたのだろう
霊夢がそう思って、再び縁側でお茶を飲もうとする
「ぐっ!紫様の意思でなったのでは無いんだ!」
だが、藍のその絶叫に霊夢の手が止まる
「今朝起きたら…」
何時ものように八雲藍が朝ご飯を作っていたら
「きゃ、きゃああああああああっ!?」
「紫様!?」
滅多な事では悲鳴を上げない主の絶叫が聞こえて来た
何事かと思ってガスの元栓を締めてから
大急ぎで絶叫が聞こえた主の部屋にむかい
「どうなされたんですか!?」
その部屋のドアを開けた瞬間
「ゆ、紫…様?」
「ら、藍?…み、見ないで!…お願いだからこの顔を…」
弱弱しく涙を流す老けてしまった自分の主の姿を見て
その異変がとんでもない物だと判断せざる終えなかった
「…今朝の一件以降…紫様は自らの部屋から出ない」
「寝てるんじゃないのね?」
「恐怖で一睡も出来ないそうだ…」
その言葉に霊夢が立ち上がった
「とりあえず、紫の様子を見ない限りはどうしようもないわね」
「異変を…解決してくれるのか?」
霊夢の言葉に藍が目を輝かせる
「…面倒だけどね、それに老けた紫の姿見て笑いたいし」
それが霊夢なりの照れ隠しである事は藍にもわかっていた
だから、頭を下げて頼むとだけ伝えるのが精一杯であった
「この部屋に紫が居るのね?」
「…ああ」
霊夢が神社を出てからすぐにマヨヒガにたどり着いてから
八雲紫が居る部屋に案内されて部屋の前で藍が忠告してきた
「…それと、これはお願いなんだが…」
「なに?」
部屋のドアを開けようとした霊夢が手を止める
「頼む…紫様の顔を見る事だけは勘弁してあげてくれ」
老けた顔を見られる…女性にとってそれだけでも屈辱なはずなのだ
しかも、自分が好意を持っている相手となれば
いかに八雲紫と呼ばれる大妖怪でも
消滅しかねない程のダメージを受けかねない
「…わかったわ」
人と妖怪といえど同じ女性
そこには大切な慈悲や情けと言った物もある
藍の言葉に霊夢が頷いてから紫の部屋の中に入る
(暗いわね)
その部屋は光りが余り入らないようになっていた
そんな部屋の中を霊夢が歩いていくと
奥に静かにしている人影が見えた
「…藍?」
その声でその人物が八雲紫だと霊夢が気がつき
「私よ…紫」
少し離れた位置で足を止めて優しく声をかける
それと同時に、奥で静かにしていた人物が慌て始める
「れ、霊夢!?こ、来ないで!お願いだから!」
必死に霊夢から逃げようとする紫
そんな紫に対して一歩足を進める霊夢
「お願い…霊夢にこんな姿見せられないわ…」
「話はもう聞いているわよ」
「!?」
その言葉に紫が動きを止めてその場に座り込む
「…そう…笑いに来たのね」
小さく泣きそうな声で紫が呟く
それは普段とは違って余りにも弱弱しい声だった
「違うわよ、頼まれて異変を解決に来たの」
その言葉に紫が顔を上げる
「それと…女性としての情けよ…顔を見ない事にするから」
その言葉に紫が静かに泣き始める
「…何か思い当たる節はあるの?」
「…御免なさい、何も無いのよ」
少々薄暗い部屋の中で紫がマスクをつけて霊夢と話をし始める
「隙間は開けるの?」
「ええ…でも、この姿だけはどうしても…」
紫の顔はマスクで見えない
だが、その手は目に見えるほどの皺が出来ていた
余りにも痛々しい姿である
「…今朝起きて鏡を見た時にはこの姿に…」
「もうそれ以上言わなくても良いわ紫」
思い出させることが苦痛になると判断した霊夢が
話すのを止めさせる
「でも、これだけじゃどう異変を解決すればいいか…」
霊夢が腕を組んで悩みこむ
そんな霊夢に紫が声をかける
「…待って、貴方の神社に人が集まって来ているわ」
「そんなの何時もの事じゃない」
博麗神社には妖怪だろうが人だろうが無遠慮に集まる
「でもね…どうも様子がおかしいみたいよ?」
紫が痩せて細くなった腕を右に伸ばすと
そこから隙間が開き、博麗神社の様子が映し出される
「…珍しい人達ね?」
守矢神社の風祝である東風谷早苗
永遠亭の月兎こと鈴仙・優曇華院・因幡
冥界の庭師である魂魄妖夢
そこに集まっていたのは普段忙しい人達であった
「…もしかしたら、何か手がかりがあるかもしれないわ」
紫の呟きに霊夢が頷くと、紫が無言で隙間を広げる
「ちょっと行って来るわね…」
「ええ…行ってらっしゃい霊夢…」
神社への直通の通路に霊夢が歩き出して
少し立ち止まると、紫に背中を向けたまま声をかけた
「絶対に異変を解決してあげるから…お賽銭を用意しておきなさいよ?」
答えを聞かないで、霊夢が隙間の中に入って行った
「あっ!霊夢さん!?」
「お願いします!」
「ゆ、幽々子様を…幽々子様をお助けください!」
博麗神社の前に戻った霊夢の元に早苗と鈴仙と妖夢の三人が集まる
「とりあえず、一人一人用件を言って見なさい」
霊夢が三人に声をかけると三人ともお互いの顔を見て無言になる
三人とも、人前では言いにくい事でこの場に集まったのだ
そんな三人に対して、霊夢が一言呟く
「…老けた」
その一言で三人とも霊夢の顔を驚いた顔になる
その三人の表情を見て霊夢が皆同じ問題で来た事を確信した
「…どうやら皆、同じ異変に悩まされているみたいね…」
その言葉に、三人とも頷いた
「はい、お茶が入ったわよ」
霊夢がお茶を入れて皆の前に置くと
神社の一室に結界を張って、声が漏れないようにして
一人一人がどういう事があったのかを告げて行く
「…神奈子様が…」
始めに話し始めたのは早苗であった
「朝起きて、神奈子様の様子を見に行ったら…」
「…老けていたのね」
霊夢の言葉に早苗が無言で頷く
「老けた姿になってから、神奈子様は
『こんな姿になってまで神を続けるつもりは無い』と
酒も絶ち食事も絶ってご自分の部屋の中に篭って座して居ます…」
神とて女性…そのような姿になったのなら
潔く死を選ぶ…八坂神奈子とはそのような武神でもあった
「…ねぇ、神の姿が老いるって事は良くあるの?」
悔しそうにそう伝える早苗に霊夢が質問する
その質問に対して早苗が首を振る
「いいえ、諏訪子様にも聞いてみましたけど
神の姿は一定の物が多いので、変身することはありますけど
神奈子様のように老けるという事はまず無いんです」
その言葉に霊夢が頷くと
「…師匠も…今朝起きてみたら…」
次に声を出したのは鈴仙であった
「今朝…師匠の研究室に起こしに行ったら…」
研究室で永琳が眠っている事はよくある
3日間続けて研究を続ける事もざらなので
そんなときには、研究室の机の上で眠るので
その度に鈴仙が朝ご飯を持って起こしに行くのだが
「…起こしに行ったら師匠が起きてて…」
「老けていたのね?」
「…自分の肩を抱いて震えていました」
その姿を見た鈴仙が驚くと同時に急いで部屋の鍵を閉め
事情を聞いてみると、小さな声で呟くように
永琳が今さっき起きたらこの姿になっていた事を告げた
「…今は、危険な研究があると周りに言ってありますから
3日間は研究施設に篭る事が出来ますけど…」
鈴仙の一計によって、その姿が回りにばれる事は当分はないようだった
「…貴方にも聞いてみるけど、薬でそうなったというのは?」
霊夢の質問に鈴仙が首を横に振る
「…師匠に薬は殆ど効きませんし、それに蓬莱の薬によって
何時もの姿が維持されるはずなのにその効果も無いんです」
「蓬莱の薬も効いてない…」
霊夢がその言葉を聞いて頭の中で形がつかめてきた
「…幽々子様が……」
最後に口を出したのは、魂魄妖夢であった
必死な表情で、何があったのかを説明し始める
「今朝、幽々子様が起きる前に朝餉の準備をしていたら」
唐突に聞こえて来た己の主の悲鳴に
妖夢がお急ぎで大根を切っていた楼観剣を構えて
大急ぎで主の声が聞こえた場所に向かうと
「…鏡を見て…放心している幽々子様のお姿が…」
「仕方ないわよね…」
女性が一番堪えるのは、年を取ったと実感した瞬間だ
しかも、それが顕著に現われたのを見せ付けられたら
精神ダメージは計り知れないものになる
「あの…綺麗だった御髪が…真っ白に…」
「神奈子様も…一回り小さくなられました」
「師匠も…老眼鏡をかけないと細かな文字が見えないって…」
妖夢の言葉に早苗と鈴仙が同意する
(そういえば…紫も…)
霊夢が先ほど会った紫の腕の細さとカサカサになった肌を思い出す
「…でも、おかしいんですよ…幽霊になった者は
死んだ姿のままで、姿が変わる事は絶対に無いはずなのに…」
妖夢の呟き声に霊夢が情報を整理する
(…本来姿が変わらないはずの妖怪と神…それに蓬莱人に幽霊…
人種がバラバラな奴らだけど…なんで?)
問題はそこだった、そして、何故このような事があるのに
他の組織からは誰も来ないのか…
(…待って?紅魔館…地霊殿……)
何かが引っかかる…マヨヒガ、冥界、守矢神社、永遠亭にあって
紅魔館や地霊殿に無いそんなもの…
(もっと小さく…紫と神奈子、永琳と幽々子に共通する物…)
その時、霊夢の頭に四人に対して一つの共通点が浮かぶ
「…そうよ…それなら…」
「あの…霊夢さん?どうしたんですか?」
ブツブツ呟き始める霊夢に早苗が声をかける
「…でも…それならなんで…」
そんな早苗を無視して霊夢が考え始める
「…誰かに呪いでもかけられたんでしょうか…」
妖夢が小さくそう呟く
(呪い?)
その言葉に霊夢が耳を向ける
「でも妖夢さん…誰がそんな事をするの?」
早苗がその言葉に反応する
「うん、それに師匠に呪いをかけるほどの人も居ないし
幻想郷のなかでそんな大それた事できる人居るかな?」
(幻想郷の中…!?)
「わかったわ!」
霊夢の中でピースが一つにまとまった
「れ、霊夢さん?」
「な、何かわかったんですか!?」
突然立ち上がった霊夢に対して
早苗と鈴仙も立ち上がる
「自信は無いけど、多分戻す事が出来ると思う」
その言葉に妖夢が起き上がる
「幽々子様を戻せることが出来るんですか?」
三人とも、霊夢の方を真剣に見つめる
「多分…でも私のカンが告げているから大丈夫」
そう言うと、霊夢が三人に思いついた方法を伝えると
「…それじゃあ、うまく言ったらまた明日此処に」
「わかりました…やってみます」
「そんな事で治るのでしたらすぐにでも」
「…幽々子様…お待ちください」
四人とも、自分の戻るべき場所に戻っていった
「…紫様」
「藍…どうだった?霊夢から何か情報は…」
「…他にも何人かが紫と同じ症状に…」
「そう…」
紫がマスクを被ったままそう呟いた
何か治るための手段があるのかと思っていたが
わかった事は、同じような人物が居ると言う事だけ
(…もう、戻れないのかしら…)
暗い感情が紫の心の中を侵食して行く
(…この姿を藍や霊夢に見せ続けるぐらいなら…いっその事)
「紫」
そんな事を思っていた紫に対して誰かが声をかける
声のするほうに紫が顔を向けるとそこに居たのは
「霊夢…」
「なに辛気臭い顔をしてるのよ…」
笑みを浮かべた霊夢の姿だった
その眩しい笑顔に紫が更にため息を着く
「ええ…ごめんなさいね、少し疲れてきたみたい」
そう言って紫が二人を部屋から出そうとした時
「ちょっと失礼しますね紫様」
紫を背中から藍が抱きしめた、突然の事で紫が驚くが
「ら、藍?や、止めなさい…こんな御婆ちゃんの姿になった私に…」
急いで藍にはなれるように指示をする
だが、藍がその指示に従う事は無くそのまま抱きしめつづける
「や…止めなさい…こんな姿の…」
「安心してください…紫様は紫様です…」
その言葉に紫が暴れるのやめる
暴れるのをやめた紫に対して今度は霊夢が真正面から抱きしめる
「ええ…紫は紫よ…胡散臭くて、飄々としていて…」
「れ…霊夢…」
驚くのを隠せない紫に対して霊夢と藍の二人掛かりで抱きしめる
「紫様は…私達にとって…」
「…御母さんだから…」
その言葉に紫の目から涙がこぼれる
そして、それが切欠になったかのように
紫の顔につけてあったマスクが取れる
「…藍…霊夢……」
その顔は普段と変わらない呪いの解けた
泣き顔の紫の顔であった
『良い?きっと四人は呪いをかけられているはず…だから
それを上回る呪いかければきっとその呪いを打ち破る事が出来るはずよ』
それが霊夢が四人に言った言葉であった
『ババア』を上回る呪い…それは
「神奈子…御母さん…」
「さ、早苗…こんな…こんな姿の私の事を…
御母さんと言ってくれるのかい?」
「はい!」
「ふっ…ふふっ…月の頭脳と呼ばれた私も…耄碌したかしら…」
「そんな事無いです!」
「…うどんげ…」
「師匠は……師匠は天才で…永遠亭の御母さんなんです!」
「御母さん…こんな姿になった私が?…まだ御母さんと…」
「御母さ~ん!」
「うどんげ~!」
「…あの…幽々子様?」
「うふふっ…駄目よ?今日一日私は妖夢の御母さんなんだから」
「…みょん」
娘達からの『御母さん』の一言
その一言があれば『ババア』と言う呪言など簡単に崩れ去る
マヨヒガで
「うふふっ…霊夢、藍~今日は稲荷寿司祭にしましょう♪久しぶりに腕を振るうわよ」
「「わ~い♪」」
守矢神社で
「よし!我が闘気は蘇った!早苗!宴会だ」
「わ、わかりました!」
永遠亭の中で
「うどんげ!今から実験よ!?」
「は、はい!」
白玉楼で
「妖夢、娘の成長を見ないといけないから一緒にお風呂に入りましょう♪」
「みょ、みょん!?」
此処に、たった一日の『婆異変』は終わりを迎えたのだ
おや?こんな夜分遅くに人が来たようだな…
>呪いをかけられている…だから、それを上回るかければ
それと
>こんな呪いを思う人は居ないはずなんだけど
何を伝えたいかはわかるのですが、少し言葉が変かと
くそ、藍様達が羨ましいぜ…
しかし紫母様は燈がいなくてよかったと思う
藍様から見てお母様なのだから燈から見れば…
外界から幽々子様達に呪いをかけた奴ら…
スキマ送りじゃなくて病院送りでよかったな
案外幻想郷では起こりうる事かもしれません。
チリも積もれば山と成るか・・・
怖い怖い。
ちなみに
『ヤクモユカリノ靴下ハァハァ騎兵隊…全195名参陣!』
私ここに参加してます。
とにかく、老衰は誰にでも起こる現象っ!それを顔も見れないとは何事ですか!・・・確かに実際に急な老けは嫌でしょうね。本人としては。しかし!私はあえて敬愛する脇役氏に異論を唱える!!老けは美徳だ!
でもバイト先のコンビニに仕入れてあった「五十路の人妻」とかいうエロ本は絶対買わねぇ!
多分病院送りな方々は
「白面が泣き出す程度の妖狐」
「全てを辻斬る程度の二振り」
「狂気を散布する程度の月兎」
「常識を不法投棄する程度の風祝」
こんな修羅達も目撃したんじゃないかなぁと。
姫さまと諏訪さまには内密だったのですね分かります。
ちょっと参加者募ってくる。
何故ババアに固執する!何故「老練した女性」と見ることができない!
お前らは曲げられたイメージに踊らされているんだよ!
と突っ込もうとして、彼が非公式キャラクターである事を今更ながら思い出しました。
しかし彼の秋姉妹を超える一騎当千ぶりは流石としか言いようが無い。
それを婆の一言で片付けるなんて!もっとやれ!
そういう真面目な理由を考えていたのに…犯人はお前らかwwwwww