「はいどうもこんにちわ~、ヒナナイクーです。
まず右の私が比那名居 天子で」
「左のわたくしが永江 衣玖でございます」
「今年も第二回東方M-1ぐらんぷり予選にやって参らせていただきました。
でまあ、二人の名前を合わせてヒナナイクーとか言うんですけど、この昭和臭がしちゃいそうなコンビ名って衣玖が考えたんですよ。ね?」
「昭和臭……? ええ、まあ、はい、フィーバーできる名前をと思いまして、ファンキー過ぎるかなとか思いつつも、大変気に入っております」
「まあ、フィーバーできるかどういかはどっかに置いて置いて、去年とかの私たちのネタとか見ていただけた方には、衣玖が考えたっていうのは、ちょっと意外に思う方も多いかもしれないですよね。
ネタ的に衣玖が私を素っぽく虐めるみたいな流れだったんで、衣玖はコンビに乗り気じゃないみたいなイメージもあると思うんですけど」
「ええ、いっぱいお手紙も頂きましたね。『二人は本当に仲が悪いのですか?』とか、『どこまでネタなのかわかりませんでした』とか、『衣玖さんのてんこ虐めって素でやってましたよね?』とかですね」
「そうそう、あと、『てんこかわいい』とかもね。
でも『衣玖かわいい』っていうのは無かったよね。一つも」
「……は? ええ、まあね。無かったですよ、ひ・と・つ・も、無かったですけど、それがどうかしたんですか。
よかったですね。ようござんしたねそりゃ。
そもそも、かわいいとか言われて喜ぶタイプじゃ無いですから私。自立した大人の女性ですから」
「そうそう、良いお姉さん的友達って感でね」
「ああ、まあ、そうですね。私から見れば、てんこはかわいい天然妹的なね。
たまにこいつの天然逆撫で発言&行動のせいでストレス溜まる時もありますけどね本気で」
「まーたまたー。なんだかんだ、こうやってコンビ初めてからは、プライベートでも前より合うこと多くなったじゃんよ。
呼び名も総領娘様じゃなくて普通に天子とかてんことかで呼んでくれるし、
ネタだって、全部、衣玖が考えてるんですよ実はね。衣玖って実はノリノリなんですよコンビ活動に」
「はい、絶賛フィーバーしておりました去年は。楽しんでやらせて頂ました。天子のせいで一年間溜まりに溜まったストレスを全幻想郷中継で晴らす機会を与えていただき、今年も誠に感謝しております」
「とまあ、一応、そういう、衣玖が一年かかって、うじうじ溜めたストレスを、小心者の無礼講っぽく晴らしているというフィーリングでね。去年はネタをやらせて頂いたわけですけど。
でもやっぱ衣玖さ、今振り返ると、ああいうネタって、けして気持いいものではないよね。人を貶すことで笑いを取ろうみたいな」
「そうですか?」
「うん、そうだよね? 私虐められ過ぎじゃなかったあれ?」
「私は個人的には楽しかったですが、とても」
「うん……ま、それは方向性として、ありだと思うけど。私もね。
去年の衣玖の台本読んだときは、こういうのもおもしろそうだな、やってみたいなとは思ったのよ。
でもなんていうの、いざ本番やってみるとさ。なんか違うの、感じが」
「ええまあ、私がアドリブもいっぱい入れましたしね。
予選本番に遅刻してみたり」
「そうそう、あれさあ、あり得ないじゃん。コンビ漫才なのに、どうしたの私ってば、
一人でステージ立ってるし、ばかなのー? しぬのー? みたいな」
「ええまあ、そこで、てんこ泣くかなと思ったんですけどね」
「え、泣かそうとしてたのあれやっぱ?」
「まあまあ、それが芸人という物ですよね。かわいい妹的相手でも、心を鬼にして笑いを取るといいますか」
「そうなの? なんか違う気もするけど、ていうかあれ、あんまおもしろくなかったじゃん。ぜんぜん笑えなかったよ?
ほんとにちょっと泣きそうだったし私。でも我慢してがんばって一人で間繋いだし私」
「間を繋いだって、一人桃割りゲームですよね。
いきなり何やり出すんだと、しかも誰か一緒にやりませんかとか言い出してちゃいましてね~てんこちゃん。
桃をほじくるだけのゲームなんて、誰もやらないですよそんなって、
私はニヤニヤしちゃいましたが、やってましたよね~、
てんこ一人ステージ上で桃をほじほじ」
「そう、パカッと割ってほじほじほじほじ……ほじほじほじほじ……」
「どうしたんですか、てんこ涙ぐんじゃったりして」
「思い出したら涙出てきた」
「あ、そんなに利いてたんですかあれ。そう見えなかったですけどね。
やっぱ土壇場のやせ我慢は得意なんですかね」
「うん、ほんとはちょっとトラウマだし? 夢とか見るよ。一人で持ち時間いっぱい、ほじほじしてる夢、ずっと衣玖が来てくれないの」
「へえ、でもそれもおもしろそうですよね。今からやりませんかそれ?」
「残り七分ずっとほじほじ一人で? おもしろくないよ絶対それ?」
「はい、私、下がって見てますんで」
「じゃあ残り七分ずっと泣くよたぶんこれ?」
「いえ、あの、泣くのはオチに取って置いて貰いたいんですけど」
「え……最後に私が泣くとか台本にあったっけ? ていうかまた泣かないとダメなの私?」
「はい、本番始まってから三十秒後くらいに、追記しておきました。
『衣玖かわいいっていうのは無かったよね。一つも』とか調子こいたアドリブをてんこちゃんが入れた直後にですね」
「また私が大泣きフラグこれ?」
「はい、三十秒きっかりでしたね、フラグ立ちましたね。あの発言で、覚えてますからしっかりと」
「やめようよそういうことはー、もうこういうのやだし、こういうネタもうやだ」
「あのねえ。そういう涙声かつ涙が溜まった上目使いで言われちゃうと、
なんかずるいよねてんこ。
キュンてしちゃうでしょ? ずるいずるいお前、けしからんね。けしからん。
なら、てんこちゃんは、どういうネタが良いと思うんですか?」
「もっとこう、さわやかでね。ハッピーエンドなのが良い。みんながニコニコ出来るの。それでちょっと流行りネタも盛り込んでーみたいな」
「あー、トレンディー系みたいなね。ええ、わかりますわかります。百合カップリングネタコントですよね要するに。レイ×マリとかレミ×咲とか」
「え、なんでいきなりそうなるの」
「やっぱトレンディーといえばそうじゃないですか。それに私ちょっと乗り気ですよ今。そういうネタを、やってみたくなったんですついさっき。てんこもやりたくないですか?」
「ついさっきって何それっていうか、流行ってるのかも知れないけど、一般的には、さわやかっていうイメージじゃないよね」
「だから、さわやかでみんながニコニコ出来て、ハッピーエンドな百合ネタコントをやれば良いじゃないですか。間違って無いですよね?」
「ちょっと強引だけど、まあ理屈はね。でもさ練習してないよそんなの、またまたアドリブじゃん。
去年に続いて台本のネタほとんどやってない気がするんだけど、気のせいこれ?
なんかまた私が虐められたりするんじゃないの大丈夫?」
「はい、絶対私がマンモスハッピーにしますから、大丈夫ですよ。私を信じてください」
「うん、わかった。衣玖を信じるからね。あっさりと」
「では、最初は、てゐ×キスをやりましょうか」
「待った。ちょっと待って衣玖、あのさ。レイ×マリとかなら私もわかるけど、てゐ×キスって聞いたことないんだけど、てゐとキスメでしょ?
本当に流行ってるのそれ? 需要あるのその組み合わせ? グーグル先生でも検索かからなそうじゃないそれ?」
「これから流行るんですよこれから、いやもう、私の一押しで、てゐ×キスって言ったらバリバリ飛ぶ鳥落とします今後。
業界では猫も杓子も、てゐ×キス。次ぎのコミケとか壁際サークルの新刊全部てゐ×キス本とかになりますから間違いなく」
「あ、そうなんだ。なら良いけどさ。でも二人の接点がぱっと思い浮かばないんだけど、何か裏設定とかあるの?
紫×幽々子の過去の繋がりみたいな。ストーリー的な」
「合コン?」
「あ、普通だね。地霊殿と永遠亭のメンバーで? どっちも女しか居ないじゃんて事を抜かせば、すんごい普通だよねそれ。
猫も杓子も納得して流行るんだそれで?」
「あのね、そういう事にしておきませんかもう。しつこいな桃てん」
「なんでそこで半ギレになるの。まあいいけどそれで、ていうか桃てんって始めて言われたわ」
「とりあえず私が、てゐ役やるんで、てんこはキスメやってくださいね」
「うんでも、その二人の事、私あんま知らないんだけど、大丈夫?」
「大丈夫ですよ。私も少ししか、てゐの事知らないですし。
キスメ役はもう、ずっとこう、桶の中でユラユラ揺れながら、顔だしてる振りだけでいいウサ」
「なんかいいのそれで? それで絶対流行るとか言ってるの? 説得力無くない?」
「いいから、早くやりましょうよ」
「あ、またここで半ギレなんだ、何をそんなせっついてんのよ。
とりあえず、ユラユラすればいいのね。いいよやるよ」
「うさうさうさ、ねえキスメ」
「……ユラユラ……ユラユラ」
「明日の朝にあたいが出撃したら、もう会えなくなるかもしれないぴょん。二人で最後の思い出が作りたいぴょん」
「……ユラユラ……じゃなくてあのちょっと待って、てゐが出撃って、どういうシチュエーションか、いまいちわからないんだけど、永夜異変の前夜か何かこれ?」
「お花がいっぱい咲いてるから、明日出撃するウサ」
「ああ、六十周年周期の結界異変なんだ。でもあの時ってさ。てゐって永遠亭の手伝いほっぽって、ほっつき歩いてただけだよね。出撃とかそういうノリじゃないよ絶対? それ以前にウサウサぴょんぴょん言う人だったっけ?」
「黙れウサ、他人のカップリング設定に、ケチ付ける奴は馬に蹴られて死ぬのが業界の掟ウサ。話し進まないから静かにしてるウサ」
「あそうごめんごめん、じゃあ好きなだけウサウサ言ってていいよ。
私揺れてるから……ユラユラ……ユラユラ」
「うさうさうさー、さーて、レッツフィーバーうさ、桶の中で共にサタデーナイトを明かすウサ。ごそごそごそごそ」
「……ユラユラ……ユラユラちょちょちょっと待った待った狭い狭い狭いから桶狭いっていうか衣玖ひっつき過ぎ触ってるから色々もろに触っちゃってるしそれなんか手つきが色々不味い気がするからそれ離して離して離してって」
「衣玖ってだれうさ? 恥ずかしがることないうさ。
あとキスメは喋らないぴょんよ? さあまずは口づけを交わすうさ。桃のいいかほりがするウサ」
「……って顔をマジで近づけるなーなんか涎でてるし!」
「あ! もう。離れないでください。まじめにやりましょうよ天子」
「いやあの、引くよこれ、まじめっていうかさ、唇くっつくとこだったよ今マジで」
「私はまじめに芸をやってますから、くっつけますよそりゃ。芸人たるもの、たかがコントの演技でアガってどうするんですか」
「言ってる事はわかるんだけど、とりあえずその涎だけでも拭いてくれない? キモイからそれ生理的に無理」
「きもかったんですかさっき?」
「うん、すごくきもかった」
「そうですか……」
「え、うん、まあ……そりゃね? キモイでしょ普通ね女同士で、って、あれなんか変な空気じゃないこれ……ってどうしたの衣玖つうむいて?」
「なんでもないですよ?」
「とかいって泣きそうになってるしー、あ、私言い過ぎたよねごめんごめん。衣玖はがんばって演技してたんだもんね。
キモイは言い過ぎた。キモイじゃなくて、ちょっとびっくりしただけよー、びっくりね」
「本当ですか? 生理的にもOKですか?」
「う、うんうん、ちょっとそれはまた別の話かなって感じもするけど、もう心の準備は出来たから、別のカップリングのコントやろうよ。
さっきのはなんか設定とか演技に無理あったし、出来れば良く知ってる人同士の組み合わせがいいな。演技もしやすいし」
「わかりました。では次は、てん×いく、で」
「ちょちょ待ってそれ、一応聞くけどそれ、私×衣玖だよね。本人二人じゃないのこれ。
良く知ってるどころか、演技しやすいってレベルじゃないけどさ確かに」
「ただのコントですよコント、それとも嫌ですか私とじゃ……?」
「う……まあ、なんていうか、この空気でそのネタをやるんだあえて、みたいな?
やり難いのは確かだよねすごく」
「仲直りということで一つやりましょうよ。是非」
「仲直りと言われちゃうと仕方ない、よね。衣玖は大事な友達だし。いいよ一回、やるだけやってみようよ。
最初にシチュエーションだけ説明してくれる?」
「はい。では私が天子の家を突然訪問するので、天子はいつものように三角木馬に跨っていてください。もちろん亀甲縛り状態で」
「うんわかった。いやわかんねえよ、
仲直りするつもりあるのこれ? 宣戦布告? ポツダム宣言?
だいたい、いつものようにって何。私がいつやってたそんな変態行為」
「毎日、私の頭の中でですが?」
「うわキモっ衣玖超キモっ!」
「ええ……きもいですか?」
「……じゃなくて、ああ、うん、ごめんね、キモくないキモくない、私の良いお姉さんだよお姉さん。
だからちょっとびっくりしただけね。なーんていうのかな、身近な友達が毎日そういう妄想してるってちょっと、複雑な気分ていうの?
けどまあ人それぞれだしね、そういう趣味趣向は。それを種に友達に悪口とか言っちゃいけないよね」
「ですよね」
「う、うん、けろりと肯定されると、やっぱちょっと複雑なんだけどね」
「ではとりあえず続きをしましょう、次は、天子が毎朝するように天井から宙づりになってるところから開始で」
「ままま待って待って衣玖。あのそれも良いんだけど? いや良くないけどあんまり。
もっと、どうせ演じるなら、自分じゃなくて他人がいいよね。
出来ればロマンチックなストーリーがあったりするような感じのカップリングとかさ」
「それもそうですね。本人同士ならいつでも出来ますし」
「いやいやまあ……それはそれとしてね。
置いておいてー、なんか良い組み合わせない?」
「なら先ほど天子が言ってた、ゆかゆゆ、やりましょうか。現在進行形でとても人気もありますしね」
「ごめん無理それ。私あのスキマババァ嫌いだし100%無理」
「ああ、以前にギッタンギッタンにされたからですか?」
「あれはわざと負けてあげたの」
「と公式ではなってましたっけ一応? 私もうろ覚えですけど。でもだったらなんでそんなに嫌いなんですか。
負けた後で何かあったんですか、スペシャルなお灸据すえられて、あんな事とかこんな事とかそんな事とかやられちゃったり」
「そんな事どうでもいいし、っていうか、また衣玖の頭の中で、私が凄いことになってないそれ?
なってるんだよねきっと、ね、ほら何そのニヤニヤした目。
色々なってそうだねほんとにねその目は。
楽しそうでいいねえ。私は楽しくないよ? 割と不愉快なんだよ?」
「どうなってるか気になりますか? 私の脳内状況の実況を聞きたいですか?」
「いいいやいや遠慮しておくけどさ。やめようよその目。またキモイとか言っちゃいそうだし。それでとにかく、スキマババァは無しの方向でね」
「でも天子はそう八雲さんの事をなじりますけど、まだまだお綺麗じゃないですか八雲さん。ハクいですよねすごく。私も憧れたりしますしね」
「ああ、あれね。若作りなだけなのよー。
だってさ。この前もさ、温泉行ったのよ私、そしたら丁度あのスキマババァが居てさ。
さあいつの腰と背中にサロンパスべたべたでさ、温泉入る前に、剥がすのめっちゃ時間かかってたのよもう。
何そのはんぺん大盛りってくらいね。温泉でおでんでも作るつもりなのか? みたいなね。問いつめたかった小一時間くらい。
お前、『少女祈祷中』とかロード画面に出すくせに、少女臭(笑)の正体それかよみたいな。
もういい加減そろそろ『ババァサロンパス張り中』にロード画面直してもらうように神主に自己申告してろよみたいな」
「そういえばその八雲さんは、今日は審査員やるそうですよ決勝戦で。もう会場にも来てるかも知れませんね。っと思ったらもう居ませんね天子。
逃げちゃいましたか?
え、なんですかお客さん。ええ、ああ、はいはい、一瞬スキマが開いて天子を飲み込んだ。
で・す・よ・ね~。
どうして天子ったら、こうも他人の神経を逆撫でる生き方するのかしら。
なんてもう、それが天子だから、としか言いようが無いですけど、だからこそ。
たまにきついお灸を据えてあげないといけないですよね。一年に一回くらいは。
ところで、お灸を据えるって、なんだかドキドキする語感ですよね?
スキマの中で、どんなお灸を据えられてるのか見学したいですよね。
というわけで、八雲さん、スキマを開けて、私も中に入れていただけませんか~?
あ、どうも、開きました。ちょっとうっすら見えますねここからでも。
流石は八雲さん、想像より凄いことになってそうにも見えるようなようなような?
ありがとうございます。とっても中でじっくりが楽しみです。
まあ今回も例によってろくにオチてないどころか、物の見事に放送事故になりましたけど、一応は約束通りにハッピーエンドですよね。私的にはたぶん。
では、皆様ごきげんよう。」
東方M-1のパクリをするなら、出囃子のみゅみゅみゅんみゅん~とか、最後のほぼ必ず「いいかげんにしろ、どうもありがとうございましたー」で終わる、くらいは入れてみれば良いのに。
こんな酷いSSで宣伝されるいえぜぶがかわいそうだわ…らんてぃはネタちゃんとしてるからねぇ。
そしてタグはM-1三次創作では無く東方三次創作じゃねぇのコレ?
…あとは個人的な話になるけど。
正直、天子痛い子ネタはもうお腹一杯。
ご批判ありがとうございます。
タグはそういう風にすればよかったんですね。勉強になりました。
これは漫才なのか? とは自分でも書きながら思ってました。
焦点が芸そのものよりも、芸をしにきたらしい人たち、に向かってた気がします。