※注意!
この作品に出てくるお空は吃驚するぐらいの子供、恋愛感情皆無、友好感情多大、更に鳥頭です。あ、後作者の脳が暴走してます。
許容出来る方のみお進みください。無理な人は回れ右という名のブラウザバックをお勧めします。
冬へと近づくこの時期、外の気温は一気に下がる。それに伴い紅葉は散り、色鮮やかだった幻想郷の景色は山頂の方から冬の色へと染まってゆく。
窓の外では風がひゅうひゅうと音を立てながら冬の寒さを運んでいる。こんな日は店の中で大人しく本を読むに限る。
そんな考えの元、僕は何時もの様に店番という名の読書に耽っていた。
この寒さでは客の見込みはそう出来ないが、万一と言う事もある……が、大方来るのは此処のストーブ目当ての巫女と魔法使いぐらいだろう。
そのストーブはと言うと、今も店の一角でしゅんしゅんと音を立てながら僕に寒くない冬を提供してくれている。
――今日は本格的に冷え込むだろうし、上で外界の切餅でも焼こうか……
そんな事を考えながら本の頁をまた一枚捲る。
これを読み終わったら、餅を焼こう。
そう考え開かれた頁に視線を落とすと同時に、扉の鈴が来客を知らせた。
「いらっしゃい」
本から顔を上げ、訪れた者の姿を視界に入れる。
その姿は、長い黒髪を蓄えた少女。しかし目に付くのは、髪と同じ漆黒の大きな羽。それがこの少女は人外の存在であると言外に主張している。
更に目に飛び込んでくるのは胸元の赤い目の様な装飾に右手に取り付けられた長い棒状の物、それに土の様な物で固められた右足だ。
「うにゅ……ここがこーりんどー?」
「此処が香霖堂かって……看板を見なかったのかい?」
「真ん中の字読めなかった……」
「成程、故に中にいた僕に確認したという訳か」
「うん」
「君が聞いた様に、此処は香霖堂だよ」
「うにゅ、じゃあおにーさんがこーりん?」
「……まぁ、呼び名の一つではあるよ」
僕の事を香霖と呼ぶのは魔理沙だけだ。そしてその呼び名で僕を僕と確認した事から、目の前の少女は魔理沙の紹介で此処に来たと分かる。
客かどうかは怪しいが、まぁ魔理沙から聞いて来た様では収入は見込めないだろう。
「本当の名前は森近霖之助だよ。香霖は屋号だ」
「うにゅ、そーなの? あ、私は空。みんなはお空って呼ぶよ」
「そうかい」
「うん」
僕が名乗った後すぐに名乗り返した、か……どうやら、必要最低限の礼儀は弁えているらしい。この最低限すらなってない者よりは相手がしやすいだろう。
しかし、空……霊夢と魔理沙から一度だけ聞いた名だったが、彼女だったか。
確か彼女の話を聞いた時に興味をそそられるものがあった気がするが、何だったか……
「うにゅ……ここあったかい」
「ん? あぁ、そこのストーブが働いてくれているからね。外と比べれば別世界だろう」
「うにゅぅ……あったかいよぅ……」
「そこまで近くに行かなくてもいいだろうに」
「外は寒かったから……うにゅ……あったかい~」
「……一応言っておくが、非売品だよ」
「んー……いらない。私の核融合のほうがあったかいし」
「……核だって?」
「うん」
――核。そうだ核だ。
二人から空の話を聞いた時、核の力と聞いて年甲斐もなく興奮したんだった。どうも最近うっかりしてきたな。
まぁいい。今はそれよりも、核融合の力を使える少女が眼前にいるという事が重要だ。
「君は核融合の力が使えるのかい?」
「そーだよ。あ、嘘だとか思ってたら貴方もフュージョンよ?」
フュージョンが何を示すのかは不明だが、どうやら核融合の力を扱えるというのは間違いないらしい。
「成程、核か……」
「うにゅ……?」
――核融合。それは強大すぎるエネルギーであり、使い方次第で何十万もの人間を死に至らしめる事ができるという。
だが反面、同じく使い方次第では外界の万能エネルギー……所謂電気になると書物で目にした事がある。
電気を使用できる様になれば、外の世界の式神が動き、夏を涼しく快適に過ごせ、遠く離れた場所との意思疎通が可能になる。
――いや、何も無い内からあれこれ考えても仕方ない。
先ずは、電気を生み出す事が必要なのだから。
「空」
「うにゅ、なに?」
「君の力を……調べさせてはくれないだろうか?」
「核融合?」
「あぁ」
「んー……おにーさん悪い人じゃないっぽいし……いいよ」
「あぁ、有難う」
言って、空はストーブの傍からこっちに歩み寄る。
「……さて、核の力を調べる辺りで幾つか聞きたい事があるんだが、いいかい?」
「うん」
「じゃあ聞くが、君はどうやって核の力を手に入れたんだい?」
「うにゅ……にゅ?……忘れちゃった」
「………………」
……鳥頭か。
「出来る限りでいいから、思い出しておいてくれ」
この先の不安定さ加減を垣間見ながら、僕は茶を淹れに奥へと向かった。
***
「……成程、つまり君はその右腕の制御棒で強大な核融合の力を制御している……そういう事だね?」
「うにゅ?……うん」
彼女から力について聞き出す事数分……茶菓子の大福を食べながらの質問だった為か時々聞き返される時があったものの、大体の事は聞く事が出来た。自分が出した大福の所為で少し苦戦したが……あれだけ美味しそうに口一杯に頬張られては、出して良かったとも思えるから何とも不思議な事だ。
……考察点がずれたな。
話を聞く限りだと、どうやら空は核融合の力を完全に使える訳ではなく、右手の制御棒なる物体で制御をしているらしい。
神の力を制御する程の力を持つ道具……それにも興味がある。
「……なら、その制御棒を見せてはくれないか?」
「これ?」
「あぁ」
「んー……おにーさん美味しい物くれたから悪い人じゃないし、別にいーよ」
言って、空は右手から制御棒を取り外した。身体に組み込まれた様な物かと思っていたが、下から現れた腕を見る限りではそうじゃないらしい。
というか、何だその善悪の判断方法は。「お菓子あげるからこっちおいで」と言われたら二つ返事でついて行きそうな子だな。
後々、美味しい物をくれる人がいい人ばかりではないと教えておこう。無論、僕はいい人だと念を押して。
……尤も、鳥頭の彼女に覚えていられるかどうかは不明だが。
「ねーおにーさん」
「うん?」
「今からそれ調べるんでしょ?」
「あぁ」
「その間私何すればいい?」
「……適当にしていればいいさ。商品は壊さないように気をつけてくれれば何も言う事は無いよ。あぁ、その大福は全部食べてもいいよ」
「ホント!?」
「あぁ」
「わーい! おにーさん大好き!」
やれやれ……大人の様に思ったが、何とも子供らしい。
そう思いながら、制御棒を調べようとした時だ。
『むにゅ』
「……?」
そんな擬音が聞こえてきそうなぐらい柔らかい物が、背中に当たった。
そして後ろから首に回された腕……。先程までは制御棒で隠れていた右手が、僕の顎を撫でている。
「……何をしている」
そう、後ろに問う。
「えへへ~」
後ろからそう答えとは思えない様な答えが返ってくる。声の主は言わずもがな空だ。
そう。僕は今空に背後から抱きつかれている。今から作業をしようという時にこれは結構きつい。
「うにゅ……おにーさんあったかい」
「放してくれないか」
「ヤダー」
「何故」
「おにーさんがあったかいから」
「理由になってないね。それに暖をとりたいならストーブに行けばいいだろうに」
「商品壊してないよ? だったら何も言わないんでしょー」
「ム……」
――鳥頭の割に、こういう所は頭が働くんだな。
それを彼女の知能の高さと見るべきか、僕の軽率な発言が原因と見るべきか……恐らく後者なのだろうが。
「おにーさん、お日様の匂いがする……」
「地底にいるのに太陽の匂いがわかるのかい?」
「うにゅ……たぶん」
「そうかい……ってこら、顎を頭に乗せないでくれないか。痛いだろう」
「うーにゅー」
「やれやれ……」
――魔理沙も昔はこんな風に甘えてきたか。
……まぁ、言ってしまったものはしょうがない。
半ば諦めて制御棒の内部構造の把握の為の分解に取り掛かろうとした時だった。
――カランカラン。
扉の鈴が、本日二度目の来客を知らせた。
***
「……ふぅ、そろそろ冷え込んできましたねー」
空を飛びながらそんな事を呟いてみる。風が虚しく空を切るだけで、ひゅうひゅうという音以外の返答は無い。
「うぅ、寒い」
そしてその風が身に凍み、冬の寒さをこれでもかと言う程実感させてくれる。
「あや?」
そして、魔法の森上空を飛んでいる時に目に入った、無愛想な店主が営む古道具屋。
「あやや、丁度良いですね」
ストーブで温まるついでに、何かネタを仕入れるとしましょうか。
そう思い、翼を畳んで高度を下げる。
「よっと」
着地直前で翼を開き地面との衝突を避け、無事着地する。
――カランカラン。
聞きなれた鈴の音と共に目に入るのは、無愛想な店主森近霖之助。
「霖之助さん、ちょっと温まらせて下さ――」
……目に入ってきた姿は、今日に限って別の影が重なっていた。
「ん……やぁ、文か。いらっしゃい」
「うにゅ?」
帰って来た声色は、重なった影と同じく二つ。
「あ……あやや……」
重なった影の片方は、人の好意に気付く気配すら無い朴念仁。もう片方は地底から怨霊が湧き出た異変の時に暴走していた地獄鴉。
何故この二人が一緒にいるのか疑問だが、一番疑問なのは空さんが彼に抱きついているという事だ。
「新聞の配達にしては遅いから……今日は取材かい?」
「え、えぇそうですね。何か新しい商品でも入荷していればと思ったんですが」
そう返すが、目線は彼の後ろに張り付いている空さんから離れない。
「あの~……霖之助さん?」
「ん、何だい?」
「その、後ろの方は何故貴方に抱きついているんですか?」
「ん……あぁ、空の事かい?」
「えぇ」
「初めから話すと長くなるから、掻い摘んで説明するがいいかい?」
「はい」
取り敢えず、現状の把握が最優先だろう。
そう思い、私は彼の話に耳を傾けた。
***
「――という訳でね」
「……成程」
暖を取りにやって来たと告げる文に事情を説明している間、空はずっと僕の背中に抱きついていた。時折腕の力を強めた際に、文が何か言いたそうな顔をしていたが、何なのだろうか?
「うーにゅー」
「こら、顎を頭に押し付けるな」
そう言っても空は止める気配すら見せず、逆に腕の力を強める。そうすると、必然的に更に体が密着する。
「う……うぅう……!」
「……文?」
まるで怨念の様な声が聞こえ何事かと目線を向けると、文が俯き唸っている。顔に出来た影で表情を察する事が出来ない所為か、一種の恐ろしさを孕んでいた。
「もう、我慢なりません……!」
「……何だって?」
我慢? 彼女が何を我慢していて、そして何故それが耐えられなくなったというのだろうか。
何故かを問おうとした時、僕の声は怒気を纏った文の声に遮られた。
「空さん! 今すぐ、大至急、早急に!!! 霖之助さんから離れて下さい!!!」
「うにゅ、何で?」
「な、何でって……そう、作業! 作業の邪魔だからです! さぁ早く!」
言って、文は空の横へと回り込み、僕から引き剥がそうとする。
「う、うにゅ! 痛い痛い! やめて!」
「じゃあ早く離れて下さい! 作業の邪魔でしょう!?」
「お、おにーさん! この人怖い!」
鬼気迫る文の表情に怯えたのか、空は抵抗して更に腕に力を入れる。
「だから引っ付かないで下さい! ほら、早く……離れて……下さいよ……ッ!!」
「にゅ~! 痛い~!」
「ム゙ぅ……」
文が引っ張り、空が腕に力を入れ抵抗する。そうすると、結果的に僕の首が絞まる。
さっきからいがみ合うこの少女達はその事に気付いているのだろうか。いや、気付いていない。
「く、苦し……」
苦しいから離してくれ。
そう言おうとしても、口から紡がれる言葉は蚊が鳴く様な弱弱しいものになってしまう。
そしてその声が怒りに染まる文と恐怖に染まる空には届くはずも無く、僕を置き去りにして事態は加速していく。
「あぁもう! 早く離れて下さいよ! 抱きつくなんて事、私ですらまだした事ないのに!」
「えぅ~……怖いよぅ、おにーさん……」
「………………」
空の目には涙が溜まり、僕の首を絞める腕の力は更に強くなる。
それが文の怒りを煽り、それが結果として空を怯えさせる。終わりの無い悪循環だ。
このままではいずれ気絶する事になるだろう。何か策を練らなければ……
「むぅ~!!!」
「にゅ~!!!」
「………………」
――駄目だ。
首を絞められている所為で頭に酸素が回らず、現状を打破する考えもロクに浮かばない。
今日の気候を考える限り、この二人以外の人妖が扉の鈴を鳴らす確率はほぼ皆無。
――嗚呼。現実とは、何処までも非情なものだ。
その思考を最後に、僕は意識を手放した。
…多分文霖だと思います…多分
次回唯さんの本気の文霖が読めるんですね、わか(ry
文可愛いよ文。
神と同じ漆黒の羽。
神→髪?
お空は特に何か考えがあってそうしているわけではないので、
文さんとしてもさぞ対処しにくいことでしょうw
いいものを見させて頂きました。感謝感謝です。
これ続きが出る終わり方ですが実際のところはいかがでしょう?
>>奇声を発する程度の能力 様
空はかわいいんです!
>>2 様
本気の文霖!?……いずれ、ですねw
>>俺式 様
なん……だと……?
>>投げ槍 様
な、何ですと!?
>>5 様
誤字報告有難うございます。修正しました。
>>淡色 様
こちらこそ、リクエストどうもです!
>>7 様
和んでくれて嬉しいです!
>>8 様
時間があれば、ですねw
読んでくれた全ての方に感謝!