※こがアリ前提。死にネタ?苦手な人はご注意下さい。
ざあざあと雨が降る。
目の前には小さなお墓。
体に落ちる雨は、傘で防いであげられるけど
心に降る雨は、どうやって防ぐことができるんだろう。
「アリス……」
俯いた華奢な背中、彼女の体がどこか小さく感じられる。
彼女の背中は、こんなに頼りなかったかな。
私の傾けた傘で濡れてはいないはずなのに、雨雫が彼女を打ち続けているように見える。
アリスの前には、高さ50センチにも満たない小さなお墓。
黒く艶やかな石でできたそれに、雨は容赦なく降り続ける。
……ここにはアリスの大切なモノが眠っている。
―ごめんね、上海……
アリスの微かな声が聞こえた気がした。
昨日の夜、上海は死んでしまった。
そのときはまだ、雨は降っていなくて。綺麗な弓形月が笑ってたんだ。
アリスの話はよくわからなかったけれど、上海は度重なる弾幕ごっこのせいで、コアとなる部分の奥の奥が傷ついてしまっていたんだって。
アリスが気付いたときには、もう手遅れで。
それでも騙し騙し、少しでも長く一緒にいられるよう、アリスは頑張ったんだけど……
昨日、とうとう動かなくなってしまった。
アリスは眠らずに、動かない上海を修理し続けた。どうにもならないとわかっていても、諦めきれなくて。
陽が昇ってようやく手を置いたときに、暗い空から大きな雨粒が落ちてきたんだ。
まるで、涙を流さないアリスの代わりに泣いているみたいに。
磨かれて、てらてらと光る石を傷だらけの指がなぞる。
白くてすべすべで、あんなに綺麗だった指が、お墓を掘るために傷だらけになってしまった。
私はもう耐えられなくなって、覆いかぶさるようにアリスを抱きしめて、その手をぎゅっと握りこむ。
「アリス、上海は幸せだったよ。
モノにとっては、壊れるまで使ってもらえるのが一番幸せなの。
わちき、上海がうらやましいよ。
アリスに大切に大切に壊れるまで使ってもらえて、壊れてもこうして想ってもらえて…!
これ以上幸せなことなんてないよ。だから……」
続く言葉は、静かなアリスの声で塞がれる。
「……小傘も壊れるまで使ってもらえたら、幸せ?」
悲しみに濡れる、空色の瞳に見つめられて、息を呑む。
……幸せ。幸せなはずだ。幸せだけど……っ
「……私は壊れないよ。」
だって、私が壊れたらアリスはまた泣くでしょう?
きっと綺麗な空色の瞳から、ぽつぽつ雨粒が落ちるんだ。
心にも冷たい雨が降り続いて。
雨は大好きだけど、心に降る雨は嫌いだ。
アリスには、穏やかな春の日差しのように笑っていてほしい。
雨で濡れないように守るための傘が、大切な人を濡らしてどうするっていうの?
「わちきは、モノだけど妖怪だもん。アリスをずっとずーっと守ってあげるの!ずっと、アリスと一緒にいるんだから!」
もう、置いていかれるのは嫌だけど。
だけど、アリスを置いていくくらいなら、また置いていかれた方がいいや。
ずっとずっとそばにいるから。
だからもう、泣かないで。
「小傘……」
振り向いたアリスが強く私を抱きしめる。
雨ではない雫が、私の肩を濡らす。
あなたの心にも、傘をさせるようになりたいな。
どうにもならないと分かってなお諦めきれないアリスの気持ち、何となく分かります。
小傘の健気さにも何か感じるものがありました。
良かったと思います。
とっても良かったです。後アリスの日は一日遅れでも大丈夫です!
感じとっていただけたものがあるなら、幸いです。
人と妖怪の境は無くても、別れは訪れるものだと思っています。
人でも妖怪でも人形でも。
モノの想いや別れの辛さをわかっている小傘だから、健気になれるのかもです。
>2.様
やった!一日遅れでもセーフですか!
小傘とアリスは何気に七色・虹色コンビなんですよね。
これで、美鈴が揃えば完璧!
この3人の絡みはいまいち想像できませんがw
コメントありがとうございました。