Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

春を伝えて、紐

2008/12/30 22:51:46
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 冬。
 外に出るとまだうすら寒い。たまに吹く冷たい風がマフラーをなびかせる。
 それでも随分と暖かくなったと思う。
 幻想郷は多くの雪を蓄えていたが、緩い日差しは凍えをゆっくりと奪っていく。

 ――そう、もうすぐ冬が終わるのだ。

 ミスティア・ローレライはルーミア、リグル・ナイトバグを引き連れ、木々の開けた場所に来ていた。
 ルーミアは冬眠から目覚めた熊だろうか、眠そうに目をこすり。
 リグルは仲間たちの覚醒に心躍らせている。

 生き物たちに渇望される季節が訪れるのだ。

 ミスティアたちは待っている。
 春を告げる妖精――リリーホワイトを待っている。
 その妖精は毎年その広場の上空を通る。
 ミスティアたちは春の訪れの瞬間をそこで待っているのだ。

 そのとき、遠くで木々がざわめく。
 一番の風が、生き物たちを揺らしている。

「……リリーだ!」

 リグルが指で差した空に、白の影。
 風が揺らす。
 胸が騒ぐ。
 ――。


 春が、来る――。


 春一番は雪を飛ばし、葉を薙ぎ、地を削ぎ――幻想郷を征く。
 桜の花びらが舞い上がる。芽吹きは荒々しい。
 木の葉だけに留まらず枝も巻き上げる暴風の中では、まともに目を開けていることができないほどだ。
 風に飛ばされないよう、お互い抱き合う。
 目をつむり、通過を待つ。

 だが、その中で、ミスティアは目を凝らす。
 リリーホワイトは、彼女はどこから来て、どこへ行くのだろうか?
 幻想郷の春を告げる彼女の役目を見届けたい――そう考え、見上げる。
 そして、刮目する。

 その光景に、

「えっ――?」

 思わず、声を上げた。



「……どうしたの、ミスティア?」

 空を見上げたまま静止している彼女を疑問に思い、ルーミアが声をかける。
 ミスティアの顔は、まさにおぞましいものを見たように蒼白だ。
 リグルも彼女の異変に気がついたようだ。
 視線の先を追っても、何もない。彼女は一体何を見たのか――二人に言いようのない不安が襲う。

「ねぇっ、どうしたのミスティア! 答えてよっ!」

 声に反応して、ミスティアは、ゆっくりと二人の顔を見る。
 その間に溜まらず、ごく、と固唾を飲む。

「……見、た……」

 ミスティアはゆっくりと指を差す。
 その先には、空を飛ぶリリーホワイトの後姿。
 リリーホワイトの何を見たのか。がたがたと震えて、口は言葉をうまく紡げない。

「言って、言ってよ! ミスティアっ!!」

 溜まらなくなってリグルが叫ぶ。
 ミスティアは意を決したのか、強く瞼を閉じる。

「リ、リリーホワイトの……」

 それを、言う――!







「――リリーホワイトの下着が紐パンだったんだよっ!!」



「な、なんだってーっ!?」







 その事実は瞬く間に広がり、幻想郷を震撼させた。
 幻想郷の少女の、下着のトレンドはドロワーズ。それはトレンド、定石、常識だ。
 妖精も例に漏れず、ほとんどがドロワを愛用している。

 だというのに、あろうことか、リリーホワイトは紐パンを履いていたのだ!
 しかも幻想郷に春を伝えるその日に! 紐のパンティを! チョイスした! のだ!



 春の訪れと共に、新しい下着の選択を告げられた妖怪たちはとてもそわそわした。


 紅魔館では、

「咲夜ぁー! その"ひもぱん"ていうのを買ってきなさいっ!」
「レミィ、レミィ。落ち着きなさい。すでに咲夜は出ているわ。――そして、あなたはもう"履いている"わ」
「なんとぉ! すでにぴったりフィットでしたぁー!」


 白玉楼では、

「ようむー、今日からこれを履きなさい」
「あー、ええ?」
「でもこれじゃあ動いてもあんまり見えないわー。スカートの裾も短くしないと」
「いや、あの、とりあえずハサミを置いてくれませんか」


 永遠亭では、

「ほら、鈴仙。新しい下着よー!」
「いや、輝夜様、投げても履き変わりませんて」
「でもほら、前見たテレビではすぽーんて」
「その擬音だとなんだかいかがわしく聞こえますが、輝夜様の想像はきっとグロテスクなものなんでしょう」


 地霊殿では、

「ほら、さとり様ー。紐パンですよー」
「えへへー」
「こら、お燐、おくう。スカートをたくしあげないの。はしたないわよ。あとほらここ、うまく結べてないわよ」
「お姉ちゃん、楽しい? にやにやしてるけど」
「それは、楽し……ねえ、こいしいつからいたの」
「いいよ、お姉ちゃんは。私がいない方がそういうこともっと出来るんじゃないかな」
「ま、待ちなさいこいし。こ、これは……そうっ! 地霊殿では当然のスキンシップなのよ! あなたも輪に入ればわかっ……」



 こうして幻想郷中に紐パンが広まることになる。
 一大ムーブメントは、まさに"異変"と呼ぶに相応しかった。
 しかし、同時に異変と呼ぶには相応しくないほど、受け入れられていた。
 それは春と共にやってきたから、それは春そのものだったからだった。

 そして、その季節は魔法の森にも訪れていた。

 霧雨魔理沙はゆったりとしたドロワーズを脱ぎ捨て、しっかりとした紐パンに履き替えていた。
 当然のように、魔理沙は博麗神社に向かう。それが魔理沙の日常だ。
 その日常という枠の中に、紐パンを見せびらかしたいという、ほんの一握りの自己顕示欲を携えて、魔理沙は博麗神社に飛んだ。

 霊夢は普段どおり、縁側でお茶をすすっていた。普段の博麗の巫女は境内を掃除しているか、お茶を飲んでいるかのどちらかだ。
 霊夢は魔理沙が近づくと、つまらなそうな顔で問う。

「何しに来たの?」

 対照的に、魔理沙は得意そうな顔でスカートを捲くる。

「……どうだ、紐パンだぜ!」

 ふうん、と霊夢は一蹴。

「……恥ずかしくないの?」
「そう言われると、少し」

 魔理沙はスカートを下げる。
 霊夢はゆっくりと魔理沙に近づく。そして、魔理沙の腰に優しく手を添える。
 そっと触れた。ただ、それだけ。
 しかし、魔理沙は変化に気付き、咄嗟に後ろに飛ぶ。そして、自分の腰に手を添える。
 ――ない。
 さっきまであったはずのものが、なくなっていた。
 それは。

「ぱ、ぱんつがない!?」
「紐パンを結界のすきまに落とし込ませてもらったわ!」

 魔理沙は舌打ちする。彼女の眼前で、巫女は微笑んだ。

「紐パンって横で結んでいるだけだからねぇ。脱がしやすさではダントツよ」

 ない、とわかれば、異様にすーすーする。感触が気持ち悪い。
 魔理沙は、すでに戦意を喪失していた。

「……お、憶えてろよ!」
「んー、出直して来なさい」

 霊夢は魔理沙に目もくれず、縁側に戻っていった。



 そして、この決着がまたしても幻想郷を震撼させた。
 そう。紐パンはサイドからの攻撃に非常に脆かったのだ。

 各勢力は、いかに紐パンの耐久力を上げるか研究を重ねた。

 紐を接着剤で固定する者も現れた。
 パンツをサスペンダーで吊る者も現れた。
 履かずにボディペイントをする者も現れた。

 しかし、博麗霊夢はその全てを脱がして見せた。



「もう嫌だ! もう、紐は見たくない!」

 河童はついに愚痴を吐いた。

「上のわっかを引っ張ると固くなって、下の紐を引っ張ると緩くなるところなんて、もう見たくないんだ!」

 幻想郷最先端の技術力を持つ河童は、泣いた。
 だが、天狗は怒る。

「そんなこと言っても、巫女に脱がされてしまう! 貴方は……ノーパンで空を飛びたいの……?」

 語尾は弱い。
 研究者達は、弾幕撃ちは疲弊してしまった。新しい紐パンを開発することに疲れてしまった。

 やがてドロワーズの良さを認めなおし、履き替える者も現れ始めた。
 固持し続けた勢力と合わさり、総合ドロワ勢力は紐パン勢力を飲み込んだ。

 ――こうして、博麗の巫女を発端に紐パン異変は解決された。



 やがて夏が来て、秋が来て、冬が来て――その冬も終わる頃。
 幻想郷は、また一つ歳を取った。

 ミスティアは例年通り、リグルとルーミアの二人と春の訪れを待ちわびていた。
 幻想郷は、色づき始めている。

「……リリーだ!」

 リグルが指で差した空に、白の影。


 春が来る。


 春一番は幻想郷を征く。
 桜の花びらが舞い上げる。
 ミスティアたちは風に飛ばされないように寄り添いあう。
 目をつむり、風が通り過ぎるまで待つ。

 だが、その中で、ミスティアは見上げた。
 リリーホワイトが紐パンを履いているか、確かめたくなったのだ。
 刮目する。
 スカートの中が、視界に入る。

 その光景に、

「えっ――?」

 思わず、声を上げた。



「……どうしたの、ミスティア?」

 空を見上げたまま静止している彼女を疑問に思い、ルーミアが声をかける。
 顔は、まさにおぞましいものを見たように蒼白だ。
 リグルも彼女の異変に気付き、声をかける。
 視線の先を追っても、もう何もない。彼女は一体何を見たのか――二人に言いようのない不安が襲った。

「ねぇっ、どうしたのミスティア! 答えてよっ!」

 声に反応して、ミスティアはゆっくりと指を差す。
 その先には、空を飛ぶリリーホワイトの後姿。
 リリーホワイトの何を見たのか。がたがたと震えて、口は言葉をうまく紡げない。

「言って、言ってよ! ミスティアっ!!」

 溜まらなくなってリグルが叫ぶ。
 ミスティアは意を決したのか、強く瞼を閉じる。

「リ、リリーホワイトの下着が……」

 それを、言う――!







「下着が――ふんどしだったんだよっ!!」



「な、なんだってーっ!?」
 紐パンってかわいいですよね。

 ――いや、紐パンがかわいいわけではない。
 紐パンの紐は蝶結びだ。
 そして、幻想郷の閻魔様の制服にも多くの蝶結びのリボンがあしらわれている。
 つまり、紐パンは地獄の閻魔様が作った下着だろう。
 かわいいのは当然だ。
 四季様はかわいい。
じじじ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ごめん、オチで耐えられなくなって紅茶吹いたw
2.名前が無い程度の能力削除
春ですよー!
3.名前が無い程度の能力削除
地霊殿が出てて、守矢が出てないってことは……

はは、まさかな。俺の神奈子様は元から紐だから興味無し、出番無しって
…嘘…だろ……?
神奈子様は……フンドシ…なんだろ……?
4.名前が無い程度の能力削除
ぼ、ボディペイントは誰なんですか?!つーか、どうやって脱がせた!!
5.名前が無い程度の能力削除
脱がし易さではダントツって霊夢さんなんでそんなこと知ってるんですかw
6.七人目の名無し削除
さとり株は何時になったら上昇するのでしょう?投資家泣かせですね。
まあ、見てる分にはおもしろくて良いですけどw