今日は、絶好のお出かけ日和。
「……すごいわね」
「だから言ったろ?すごい所に連れてってやるって」
アリスに想いを告げてから、約二週間。
つまりは、恋人になってから二週間。
進展なんてなんもない。
ただ毎日アリスの家に行って、お茶をして、本読んで。
そう、今までと何も変わらない。
これはその、なんというか……私としてはあまり良くないと思った。
きっといつもと違う刺激があればいいんじゃないかとか考えて。
『アリス!』
『あら、いらっしゃい……ってちょっと?!』
『今日はすごい所に連れていってやるぜ!さあ行こう!』
『ま、魔理沙!ちょっとはこっちの都合ってもんも──』
まあ、そんな風に連れ出した。
緊張してたんだ。しょうがない。
道中機嫌の悪かったアリスをなんとか宥め、やっと到着したとっておきの場所。
森の中にある、ちょっとした広場みたいなとこで、花畑がある。そんな場所。
いつだったかきのこ狩りの最中に見つけた場所だった。
上海や蓬莱達と共に楽しそうに笑うアリスの姿を見ていると、自然と頬が緩む。
本当、連れてきて良かった。
「魔理沙?」
「ん?ああ、なんでもない」
私の様子を不思議に思ったのか、アリスが声をかけてくれた。
いけないいけない。
折角のデートなんだ。こんな事で満足してちゃあいけない。
「なあ、アリス。あっちの方がもっとすごいんだぜ?」
「そうなの?」
「ああ。いってみようぜ?」
「ええ、是非」
よしいけ、魔理沙。
ここでさりげなく手を取ればミッションコンプリート。
アリスの手はすぐそこ。
さあ、いけ!
「こっちだぜー」
……なぁんて思ったところで、そう簡単に手を取る勇気が出るはずなく。
結局いつの間にかアリスより前に出て、歩き出している自分。
ああ、本当自分が情けなくなる。
ていうかこれ、不自然じゃないか?
隣歩けよ、自分。なんで前にいるんだよ。
かといってわざわざ隣に行けるわけもなく。
つくづく、自分に嫌気が差してきたりする。
そうこうしている間にあっという間に目的地。
まあ、先程の場所から少し移動しただけなのだから当たり前なのだが。
「これ、博麗神社にも負けないんじゃない?」
「私もそう思う。まあ、こっちは知ってる奴少なそうだからな。本当に絶好の花見ポイントだぜ」
目の前に広がるは、一面の満開の桜。
本当、博麗神社の桜には負けないと思う。
白玉楼には負けるけど。
「こんなことならお弁当でも持ってくるべきだったわね……」
「それいいな。来年はそうしよう」
「ええ、きっと来年は。今日みたいに急に連れ出すのはなしよ?」
「わかってるわかってる。悪かったって」
そう言って笑いあう。
あ、なんか幸せかもしれない。
アリスもそう思ってくれてるかな?
「なぁ、アリス」
「何かしら?」
「こういうのが幸せっていうのかもしれない」
「もう、大げさね」
そう言って微笑む彼女の笑顔に、心がキューってなる。
そしてまた、私はこいつに惚れてしまうんだ。
全く、一体何回惚れさせる気なんだか。
「さて、帰るか。腹が減った」
「そうね。早く帰ってお昼ご飯にしましょ」
そうやってまた先程の開けた場所に引き返す。
ここじゃあ木が多すぎて飛び立てないし。
連れ出してみてよかった。
いっぱいアリスの笑顔が見れたし。来年の約束も出来たし。
なんとなく、気分がいい。
後ろにいるアリスからも、なんとなくだけれどそんな雰囲気を感じる気がした。
なんか今、すっごく手が繋げる気がする。
「なぁ、アリス」
立ち止まって、声をかける。
「なに?」
アリスも立ち止まったようで、隣に来る事はなく。
まあ、それはある意味好都合でもあって。
「ん」
ただそれだけ言って、振り向かぬままに手を後ろに差し出した。
少しして、クスって笑い声と、手に触れる体温を感じる。
本当、来てよかった。
正しく春です!!!春真っ盛りです!!!
これはちょっとした甘さが実にいいです!
ごちそうさまでした。