「レティ~♪」
「チルノちゃ~ん♪」
「フライングボディープレス!」
「甘い!」
本格的にやってきた冬の忘れ物に飛びつく氷の妖精と
喜びの余り、思わずそれを空中で掴み高速で回転を加えながら
空中で変形のパイルドライバーを仕掛けて
「シベリアンブリザード!」
氷の妖精を雪の中に頭から突っ込ませるのを横目で見つめながら
「大ナマズ先生、御餅が焼けましたよ」
「おお?待っておったぞ」
ワシと門番の御嬢ちゃんが年始からの雪掻きを終えて
門の傍に作られた大きなカマクラの中でその様子を見ておった
「しかし、新年も早々に雪が積もるとはのう」
新年に入るかどうかと言う時に大雪が降ってきた
そこで、紅魔館門番隊に雪掻き指令がでたんじゃが
「でも、大ナマズ先生のおかげで何時もよりも早く雪掻きが終わりましたよ」
「なにも、力だけが全てじゃないわい」
なに、ある程度巨大化して電熱線を巻いた特注のコートを着たまま
門の前から真正面に向かって突撃をすれば道が出来るからな
後は、門番隊の皆で残った雪をどかせば終わりじゃ
「それに門番隊の皆も大ナマズ先生に感謝してますしね」
「ふぉっふぉっふぉ、大した事じゃないわい」
赤い屋敷の中と違って、門番隊の居る宿舎は外に近いから寒い
御嬢ちゃんやワシも辛い事が多いのじゃから、他の門番隊は余計にじゃろう
と言う訳で、魔法の森にあるらしい御店から手に入れてきたらしい道具を
紅魔館門番隊でなんとか引き取りワシが電気を流す事で暖を取る事に成功した
今では紅魔館の中で一番暖かい場所になっておると言う訳じゃ
「『ほっとかあぺっと』って凄いですよね」
「まあ、ワシも疲れるからあんまり長い間は無理なんじゃが」
カマクラの中で火鉢の前で餅を焼くと
ワシと御嬢ちゃんが駄弁る
「大ナマズ先生もすっかり門番隊に馴染みましたね」
「そうかのう?……おっと、そこの餅そろそろ焦げるぞ?」
わしの言葉に穣ちゃんが少し慌てながら餅をひっくり返す
それを見ながら、ワシは先程焼かれた餅を頬張る
……うむ、砂糖醤油つけたのはうまい
・・・
「でも、今年は本当に色んな事がありましたよね」
「わしも、此処に来る事になるとは思って居らんかったわい」
思えば、わしが今この場に居る事自体が不思議な事じゃしな
「もし、私があの変な夢を見て大ナマズ先生と戦う事がなかったら」
うむ、まさかワシを目の前にして一人で立ち向かう猛者がいた事に驚きじゃわい
「私が勝ちましたしね~」
むぅ、正確に言えば引き分けじゃったと思うが
「ふっふっふ、たとえ誰であれ紅魔館や幻想郷を脅かす者は許しません」
まあ、これほど自慢げに胸を張られたらとてもそう言えんのう
「あ、大ナマズ先生、熱燗こぼれますよ?」
「おっとっと?」
む、いかんいかん、微笑ましく見ておったら火傷するところじゃったわい
・・・
次の餅が焼けあがり、御嬢ちゃんが餅を頬張りながら聞いてきた
「(ハグハグ)そういえば、大ナマズ先生が髭片方無くなった時もありましたよね」
「ああ、(ムグムグ)妖怪の山に喧嘩売った時の事じゃな」
あの時は、久しぶりに本気で山を駆けたからのう
この幻想郷は随分と気楽らしいが
古い体制が残っておる所は色々とシガラミがある事がわかったわい
うむ、詳しくは『大ナマズ妖怪山道中記』見てくれい
カッコイイわしの姿が見れると思うぞ?
「またまた~、いくら大ナマズ先生でも妖怪の山に喧嘩仕掛けたらやられちゃいますよ?」
……まあ、御嬢ちゃんは信じておらんみたいじゃがな
そういえば、あの時に知り合った御嬢ちゃん……
犬走殿にも年賀はがき送った方が良いかな?
・・・
「そういえば、一日だけ大ナマズ先生が門から離れて何処かに行っていた事ありましたっけ?」
「ん?そんなこと……」
わしが餅を食べえてホッとしていた時に
御嬢ちゃんが熱めのお茶を飲みながら問いかけてきた
「ほらほら、珍しく私が休暇で御嬢様と一緒に漫画を読んでいた日ですよ」
「……あったのう」
詳しくは『たまには門から離れてナマズ』だな?
「うふふっ……」
うむ?御嬢ちゃんがこっちを見ての楽しそうに見ておる
「な、なんじゃ?」
「……何があったんですか」
なにがあったのかと言われてものう
あの時は確か里に出て、
馴染みの果物屋の店長のオレンジ(通称)の所で
大量に買い物をしにいったのじゃが……
「里で買い物をしてきただけ……」
「でも、何も持って帰ってきませんでしたよね?」
「あ~、それはじゃな……」
そう、買い物をしに行ったのは良いのじゃが
「それは?」
「二人のネコに追いかけられて」
うむ、里で火炎猫と猫又の黒猫の二人に追いかけられたわい
全く、ワシを魚か何かと間違えて居るんじゃなかろうな?
……同じようなものじゃけど
「猫に追いかけられて?」
「……神社に逃げ込んで」
うむ、一回しか行っておらんし名前も良くわからないが
あれだけ不思議な空間をたもっておるのだから
きっと名のある神社に違いなかろう
……それに何よりも……
「それから?」
「……荷物を全部奉納してきた」
あの時の腹ペコじゃった巫女の嬢ちゃん元気にしておるかのう?
まあ、腹ペコでもあれだけの猛者じゃろうし
あれだけ奉納したんじゃから、冬位は越えることできるじゃろうけど……
「本当の所はどうなんですか?」
「じゃから、偶然見つけた神社に……」
「今の幻想郷にそんな奇特な人も可愛い巫女も居ませんって、ね?だから本当の事を」
「いや、本当に……」
「怒りませんから、可愛い子にちょっかいかけてたんでしょ?」
……今はこの嬢ちゃんの笑顔での問いかけが怖いわい
おーい?誰か助けてくれ~
・・・
「……ほらほら~、大ナマズ先生も飲んでくださいよ~」
「う~む、ワシもう無理……」
やれやれ、御酒飲ませまくってようやく御嬢ちゃんの追求を止めたのは良いが
うっぷ、少し飲みすぎた……
「ねぇ~、大ナマズ先生~」
「むぅ?……うっぷなんじゃ?」
む~、明日は二日酔いかのう……
「外、見てください」
「ん?外?」
言われて、カマクラの外を見てみると
既に空は暗くなっておるそれは良いのだが……
「ほう?雪か」
「綺麗ですよね~」
ちらほらと空から白い雪が降ってきていた
「大ナマズ先生クッキー作ってくれましたっけ」
「あ、あれはただ気分が乗っただけじゃ」
決してホワイトデーのお返しなんかじゃないぞ?
「昔話もしましてくれましたよね」
「……バイト話じゃがな」
嬢ちゃんに聞かれなかったらきっと話す事もなかったと思う
「雨の小屋の中で器用にセーター編みましたよね?」
「うむ、嬢ちゃんのヌイグルミと交換したのう」
今でもそのヌイグルミは御嬢ちゃんに身代わりにさせる時がある
……きがつかん物じゃな意外と……
「今年は大ナマズ先生が来て色々ありました」
「……そうじゃな」
(ごーん)
雪を見ながらしんみりと話を続けていると
不意に、外の方から鐘が鳴る音が聞こえてきた
「ほう?除夜の鐘か」
「ああ、そういえば里の方にお寺が出来ましたっけ」
鐘の音が鳴るなか、御嬢ちゃんと外の雪を見つめる
「今年は一年有り難うございました」
「此方こそ」
深々と頭を下げる御嬢ちゃんに
此方も深々と頭を下げる
(ごーん……)
頭を下げたまま108回目の除夜の鐘が鳴り響くのを聞いて
わしらがお互いに顔を上げた
「新年明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう御嬢ちゃん」
そして、今年も宜しくお願いしますね?大ナマズ先生
うむ、今年も一年よろしくお願いするわい御嬢ちゃん
このほのぼのとした感じが好きです。
ナマズ先生が家に欲しいです
なまずの親父!あんたの力はこんなものじゃないはずだ。本気をだして、美鈴に猫耳をかいてくれ!