※この作品は誰得です。
※『霧雨書店業務日誌』と『記憶の花』を読まれていると若干分かりやすいかもしれません。
稗田文芸賞とは、幻想郷文芸振興会が主催する、優れた小説作品を対象とした文学賞。後援は稗田出版社。
概要
幻想郷における文芸の振興を目的として、第118季より創設。1月から12月までの間に発行された小説作品から候補作が選定される。なお、一度受賞した作家の重複受賞は不可。
12月中旬に候補作が発表され、下旬に行われる選考会において選考委員の合議により受賞作が決定する。受賞作の発表は文々。新聞紙上にて行われる。
現在の選考委員は稗田阿求、射命丸文、パチュリー・ノーレッジ、西行寺幽々子、八雲紫、上白沢慧音の6名。なお、八雲紫は毎回「冬眠中につき書面解答」という形で選考会を欠席している。
歴代受賞作
第1回(118季) パチュリー・ノーレッジ『魔法図書館は動かない』
第2回(119季) 西行寺幽々子『桜の下に沈む夢』
第3回(120季) 上白沢慧音『満月を喰らう獣』
第4回(121季) 白岩怜『雪桜の街』、虹川月音『レインボウ・シンフォニー』
第5回(122季) 八坂神奈子『天照戦記 蛙は口ゆえ蛇に呑まるる』
第6回(123季) 受賞作無し
(Mukyupedia - 稗田文芸賞の項より抜粋)
第7回稗田文芸賞候補作発表
幻想郷文芸振興会は15日、第7回稗田文芸賞の候補作を発表した。今回は6作がノミネート。初ノミネートが4作と、フレッシュな顔ぶれとなった。選考会は26日、稗田邸にて開かれる。
候補作品は以下の通り。
風見幽香『輪廻の花』(稗田出版)2回目
マーガレット・アイリス『人形の森』(博麗神社社務所)3回目
米井恋『インビジブル・ハート』(旧地獄堂出版)初
船水三波『幽霊客船はどこへ行く』(命蓮寺)初
小松町子『そして、死神は笑う。』(是非曲直庁出版部)初
厄井和音『不幸のシステム』(鴉天狗出版部)初
(文々。新聞 12月16日号1面より)
第7回稗田文芸賞メッタ斬り!
15日、第7回稗田文芸賞の候補作が発表された。これを受けて毎度おなじみ博麗霊夢&伊吹萃香のメッタ斬りコンビが、授賞レースの模様を徹底予想!
レース予想
霊 萃
◎ ◎ 風見幽香『輪廻の花』(稗田出版)2回目
- - マーガレット・アイリス『人形の森』(博麗神社)3回目
▲ ▲ 米井恋『インビジブル・ハート』(旧地獄堂出版)初
- ○ 船水三波『幽霊客船はどこへ行く』(命蓮寺)初
○ - 小松町子『そして、死神は笑う。』(是非曲直庁出版部)初
- - 厄井和音『不幸のシステム』(鴉天狗出版部)初
◆厄井和音『不幸のシステム』(鴉天狗出版部)初
◆小松町子『そして、死神は笑う。』(是非曲直庁出版部)初
霊夢 どう考えても幽香で決まり。以上おしまい。
萃香 それじゃ記事にならないじゃん。
霊夢 そんなこと言われたってねえ。他はアリス……じゃないアイリス以外全員初ノミネートで、幽香は後援の稗田出版から出てるわけだし、これで幽香にあげなかったら血を見るわよ。
萃香 まあまあ。前回受賞作無しだったから、二作受賞って線もあるじゃん。
霊夢 解ったわよ。で、どれから行く?
萃香 んじゃ『不幸のシステム』から行こうか。厄払いの神様が、人間たちの不幸を解体していく話。デビュー作で初ノミネート。
霊夢 まあ、悪くないわよね。それぞれの《不幸》を原因から解きほぐしていく場面はミステリっぽくて結構面白いし。新人でノミネートされるだけの作品ではあるわよね。票が割れたら伏兵的に上がってくるかしら。
萃香 ただちょっと、《不幸》な人間の書き方が一本調子なんだよねえ。どれもいい話なんだけど、ひとつぐらい苦い話があってもいいんじゃないかとかも言われそう。まあ、いい話だから賞は獲れなくても人気は出るんじゃない?
霊夢 というか、ね。何も『そして、死神は笑う。』と一緒に候補にすることは無いわよねえ。
萃香 だよねえ。どっちも短編連作、神が人間に手を貸すっていう構図も似てるし。『不幸』は割と重めで、『死神』は軽めだけど。こっちは死にゆく人間の未練に死神が手を貸す話。状況はこっちの方が重いのに、読み口はこっちの方が軽いんだよね。明るいし。
霊夢 『死神』は幽々子が「死神サボりすぎ」って文句言いそう。
萃香 うわ、ありそう(笑)。五話中ちゃんと魂回収したの二話だけだもんねえ。
霊夢 まあでも、『不幸』はあんまり推しそうな顔が浮かばないけど、『死神』の線はあるかもしれないわね。文なんかこういうライトなの好きそうだし、そうでなくても湿っぽいのよりはからっとしたのが好きなの多いし。真面目な慧音が反対するかしら。
萃香 慧音は人助け好きだからどっちも好きなんじゃん? 私はどっちでもいいけど(笑)。
◆マーガレット・アイリス『人形の森』(博麗神社)3回目
萃香 マーガレット・アイリスはこれで3回目。今回はストレートな恋愛小説で来たね。人形に囲まれて暮らす孤独な人形師と、魂を得た人形の悲恋話。前回ちょっと捻った話で落とされたからかな。
霊夢 人形ネタなのは相変わらずよね。他にネタも無いんだろうけど。
萃香 そんな身も蓋もない(笑)。まあしかし、ベタな話だよねえ。
霊夢 短いしさらっと読めるけど、それで終わっちゃうのよね。舞台もほとんど家から動かないし。また「心が描けていない」「世界が狭すぎる」とか言われて落とされそう。
萃香 心理描写を流す作風から踏み込まないと受賞は難しいのかな。
霊夢 解ってても踏み込まないと思うけどね。本気出さないのも作風だもの。
萃香 一度ぐらい本気出してみても罰は当たらないと思うけどねえ。恋愛ものは『輪廻の花』もあるから、今回も見送られるだろうね。ていうか自分ところで出してんだからもう少しプッシュしてやろうよ、霊夢。
霊夢 いいのよ、別に獲らなくたってもう売れてんだから。
◆船水三波『幽霊客船はどこへ行く』(命蓮寺)初
霊夢 『幽霊客船はどこへ行く』はこれ、どういうジャンル?
萃香 海洋冒険小説でいいんじゃない? 海底を彷徨う沈没船に潜水艦で宝探しに行く話。
霊夢 幻想郷には海が無いから、イメージし辛いのよねえ。
萃香 選考でもそこがネックになりそうだね。偶然が話を左右する部分が多いから、ご都合主義ってのも言われそう。潜水艦の艦長が探索チームのリーダー救出に向かうシーンは燃えるし、その後の脱出シーンもスリリングだし。天狗のテレビで映像化したら面白そう。
霊夢 海が無いのにどうやって映像化するのよ。個人的には割とどうでもいいし、獲る気もあんまりしないんだけど。にとりが選考委員なら可能性はあったのかしら?
萃香 河童は川じゃん(笑)。波瀾万丈のスペクタクルは文が好きだから推すかも。前々回も『天照戦記』推してるし。こういうの書く作家って幻想郷には居なかったから貴重だし、個人的にはこれに獲ってほしいかな。難しいだろうけど。
◆米井恋『インビジブル・ハート』(旧地獄堂出版)初
萃香 で、今回の問題作、『インビジブル・ハート』。
霊夢 紫がものすごく好きそうね、これ。
萃香 全く(笑)。心を閉ざした少女の一人称で始まったかと思ったら、いきなりその少女が死んじゃって、肉をついばみにきたカラスと友達になったと思ったら火葬されて、でも意識だけは残ってカラスに乗り移って――っていうとホラーなんだけど。
霊夢 なんでそこからカラスと猫のラブストーリーになるのかしら。しかもそれが叙述トリックでラストにひっくり返されるし。
萃香 そして最後はタライが落ちてきて爆発オチ(笑)。いやあ呆気に取られたね。
霊夢 そのくせ、姉のストーリーへの絡め方なんかはすごく上手いのよね。わざとやってるのか、それとも天然なのかしら。
萃香 いやあ、天然じゃないかなあこれは。
霊夢 展開がカオスだから紫はすごく好きそうだけど、慧音なんかは怒りそうね。紫以外が推すとも思えないし、どうせ紫は欠席なんだから受賞は無いだろうけど。
萃香 案外パチュリーなんか普通の小説は読み飽きてるだろうから、こういうの好きなんじゃない? 自分も移動型図書館都市を舞台にした幻想小説で獲ってるわけだし、ギャグとして読めばかなり笑えるし。
霊夢 ギャグなのこれ?
萃香 どう読むのもアリ、っていう意味じゃ一番面白いんじゃないかな。
◆風見幽香『輪廻の花』(稗田出版)2回目
霊夢 最後に風見幽香『輪廻の花』。
萃香 大本命だね。生まれ変わる人と生き続ける妖怪の愛を、繰り返し咲く花の姿に託して語る時を超えたラブストーリー。前回はガーデニング小説『優しい花を咲かせましょう』で落ちて、ほのぼのだけじゃ獲れないっていうんでこれを書いた。『雪桜の街』コースだね。
霊夢 でも結構ベタな話じゃない?
萃香 ベタだけど上手いよ。主人公は五度の人生でそれぞれ同じ女性と巡り会ってるのに、どの人生でもヒロインの印象が違う。花を愛する可憐な少女かと思えば、主人公をいたぶって楽しむ暴君だったり。だけど通して読むと、ヒロインの軸は一切ぶれてない。
霊夢 語り手の立場によって見え方が変わる、っていうのをきちんとヒロインの魅力に繋げてるわけだから、まあ達者よね。
萃香 テーマにしてる花のセレクトのセンスもいいし、花言葉の使い方も巧み。何より。
霊夢 何より?
萃香 4話目で向日葵畑の真ん中で酒を酌み交わすシーンが最高。
霊夢 そりゃ、あんただけでしょ。
萃香 いや、文にも同意して貰えると思うなあ。
霊夢 個人的にはこれも割とどうでもいいんだけど、受賞作が出るならこれでしょうね。
萃香 特に反対しそうな選考委員も居ないしね。阿求は特に身につまされるんじゃん? 何しろ転生ネタだしさ。声の大きい選考委員狙い打ちで傾向と対策もバッチリ(笑)。
霊夢 稗田出版だし。
萃香 そこは商売だから仕方ないじゃん(苦笑)。
まとめ
萃香 結局『輪廻の花』が当確で、もし二作受賞なら『死神』かな?
霊夢 『死神』に慧音や幽々子が文句言ったら『不幸』が伏兵的に上がってくるかもね。『幽霊客船』は文次第かしら。あとは『インビジブル・ハート』がどうなるかは読めないわね。
萃香 『不幸のシステム』と『人形の森』は被ってるわけだから外して良かったんじゃないかなあ。代わりに永月夜姫『満月はもう来ない』と富士原モコ『屍は二度よみがえる』でも入れればバランス取れたのにねえ。獲れるかどうかは別として。
霊夢 そのふたつ候補に入れたら冷静に評価出来なさそうな選考委員がいるじゃない。
萃香 それもそうか(笑)。
(文々。新聞 12月20日号4面文化欄より)
第7回稗田文芸賞に風見幽香さんの『輪廻の花』
第7回稗田文芸賞は26日、人間の里・稗田邸にて選考会が行われ、風見幽香さんの『輪廻の花』が受賞作に決まった。授賞式は1月5日、太陽の畑にて行われる。
『輪廻の花』は、何度も生まれ変わる人間と、長い時間を生き続ける妖怪の出会いと別れを、花の姿に託して紡ぎ上げる連作長編形式の恋愛小説。
風見さん「授賞は光栄。この本は、スターチスの花束とともに、ある人に捧げるわ」
選評
異才の出現 パチュリー・ノーレッジ
前回の選考会も揉めに揉めたが、今回も揉めるだろうという予感があった。自分自身、その火種を撒くつもりで選考会に臨んだのである。火種とはすなわち、米井恋『インビジブル・ハート』のことだ。票が割れるだろうというのは覚悟していたが、案の定ふたりが強く推し、ふたりが強硬に反対する形になった。
私は推した。「そもそも小説として破綻している」という他の選考委員の指摘はもっともである。一般的な小説の作法からは著しく逸脱した作品だ。ストーリーに整合性は無いに等しく、結末は脱力という他無い。それでも私は推した。推さざるを得なかった。
受賞作となった風見幽香『輪廻の花』に不満は無い。受賞作として恥じるところのない秀作であり、世間にも受け入れられるであろう。しかし文芸の価値が多数決で決まるのであれば、それは書店のベストセラーランキングに任せておけば良い。稗田文芸賞の価値とは、幻想郷の文芸に新たな可能性を見いだす異才を発掘するところにあると私は信ずる。
それ故に私は『インビジブル・ハート』を推した。ここにあるのは、幼子のような原初的な言語の混沌であり、野蛮な空想の氾濫である。凝り固まった文芸の価値観に風穴を開けるに足るものである。だがいかんせん、もうひとりの推薦者である八雲紫委員の欠席もあり、態度を保留したふたりの委員の賛同も得られなかった。彼女がいてくれれば、と思ったのは初めてのことである。今後ももう無いだろうとは思うが。
その他の作品には簡単に触れる。『そして、死神は笑う。』は生死を題材としながらの軽さが焦点となったが、評者はそれ以前に死神の死神らしからぬ態度に疑問を覚えた。『不幸のシステム』と『人形の森』の二作は、登場人物の描き方に小説的なふくらみに欠けた感は否めない。『幽霊客船はどこへ行く』は大変面白い娯楽小説だが、ストーリーの展開が作者の都合に左右されている感が端々に見え隠れした。
繰り返すが『輪廻の花』に不満は無い。本作が賞を受けること自体は喜ばしいことである。しかし『インビジブル・ハート』をなぜ推し切れなかったのか、今は評者の力不足を嘆くばかりである。
美味しいことば 西行寺幽々子
執筆は料理に、読書は食事に似ている。たとえば目の前に白いご飯を用意したとしても、それをお茶漬けにするか、おにぎりにするか、チャーハンにするか、オムライスにするかは料理する者しだい。もちろん、店でお茶漬けを頼んでチャーハンを出されたのならば文句を言って然るべきだけれど、チャーハンですよ、と言われて出されたものに対して、チャーハンであることに文句を言っても仕方ないではないの。チャーハンとしての出来不出来を論ずるべきであって、それがおにぎりでないことに文句を付けても何も始まらない。今回の選考会ではそのようなことを感じさせる議論が多かったように思う。文学観の違いと言ってしまえばそれまでではあるけれど……。
好感を持ったのは、『そして、死神は笑う。』。五つの短編からなる連作だけど、内容はたいしたことではない。漬物のような話。生と死を扱いながら、たくあんをポリポリと囓るような読感を与える筆致は素朴かつ軽妙でいい。死神が仕事をきちんとしないことに不満があるが、受賞作として推した。しかし、生と死を扱いながら軽すぎるとする他の委員の反対があり、最終投票で授賞を逃すことになってしまった。美味しいたくあんだっただけに、残念な心持ちがする。
受賞作となった『輪廻の花』は、素材そのものはありふれているけれど、細部まで気の配られた職人の仕事。非常に美味しいラーメン、カレーという類のもので、やっぱりこういうものを食べると安心するのね。少しぐらい未熟なところがある方が、個人的にはかわいげがあっていいと思うけれど。
その他の作品は、まあ他の人に任せましょう。どれも愛情がこもっていて美味しかったけれど、愛情が一番の調味料、が通用するのは親しい同士の間だけ。皆に読ませる作品は、愛情以上の素材と技術が必要なのね。
文章の作法 上白沢慧音
背筋の伸びる文章、というものがある。読んでいる側に、これは読み流していいものではない、と居ずまいを正させる、そういう力のある文章だ。受賞作となった風見幽香『輪廻の花』は、まさしくそのような文章で綴られる、姿勢の良い文芸作品である。
作者が読者の心を揺さぶろうと企図したとき、文章は過剰になり、表現は幾重もの衣を纏って重くなる。その重さはかえって心を萎えさせ、揺さぶられてなるものかと身構えさせてしまう。それが『輪廻の花』の抑制の利いた筆致はどうだろう。「薄紅の花弁は、ただ、風に流れていく。」――あるがままの花が、生を彩るように、あるがままの言葉が、物語を彩る。優雅にして可憐、されど端正。過不足の無い匠の筆である。何の迷いもなく推した。
その文章を読んでしまうと、他の作品はやはりいかにも見劣りする感は否めなかった。特に、強く推す委員のあった『インビジブル・ハート』は読むに耐えない。破綻した文章、破綻した構成、小説作品として成立し得ていないものを《既成の枠組に収まらぬ異才》などと持ち上げる風潮を私は良しとしない。言葉を書き、読み、教える立場にある者として、そのような作品が商品として流通していること自体に懸念をおぼえる。
『不幸のシステム』は題材に好感を持って読んだが、好感と評価は別である。人間の弱さを描きつつも、人間を庇護の対象としてしか見ない人間観察の浅さを感じた。作者はもっと人間に寄り添った視点を持つべきである。『そして、死神は笑う。』も、人間の生と死を扱いながらいかにも軽いその内容は、やはり人間側から遠い者が人間を描こうとする限界であろうか。『人形の森』も同様である。
『幽霊客船はどこへ行く』は娯楽小説としては上出来だが、過剰にして不足の多い、『輪廻の花』とは対極の粗雑な文章が鼻についた。ストーリーを語るだけならば小説である必要はない。小説であることに意味のある文章を読ませてほしい。
執筆とは、最適な言葉を己の中から選び抜いていく作業である。その作業にどれほどのコストを支払っているか、どれほどの言葉を己の中に蓄積しているか。それが文章の価値を決める。そのようなことを強く感じさせる選考であった。子供たちに読ませたい文章、という点でやはり『輪廻の花』は頭ひとつ抜けている。文句のない受賞に賛辞を送りたい。
エンターテインメントであるということ 射命丸文
第一回から選考に参加していますが、毎年ワンシッティング、読み始めたら止まらない一級の娯楽作品に出会えるこの選考はひそかな楽しみでもあります。今回、そのような幸福な出会いとなった作品は、船水三波『幽霊客船はどこへ行く』でした。海洋、深海という幻想郷では馴染みのない世界を舞台としながら、波瀾万丈、一気通読のエンターテインメントに仕上げた作者の腕前は並みのものではありません。丹念に描かれた探索チームと潜水艦スタッフの絆、そしてハラハラドキドキの脱出劇。「ああ、面白かった!」と本を閉じる幸福に浸ることのできる、まさに娯楽小説の鑑というべき作品でありました。文章が粗雑である、展開がご都合主義であるという批判の多さから残念ながら落選となりましたが、エンターテインメント性ではやはり本作が随一でしょう。本の価値とは、読者を楽しませる娯楽であることです。出鱈目であろうとも、眉唾であろうとも、楽しいものが正義です。娯楽としての価値は、今回の候補作で本作に勝るものは無かったと私は信じています。
しかし、今回の選考は今まで以上に紛糾しました。第一回の投票では、『輪廻の花』に二票、『インビジブル・ハート』に二票、『そして、死神は笑う。』に一票、『幽霊客船』に一票(これは私です)と票が割れることとなりました。特に『インビジブル・ハート』を巡る肯定派のパチュリー委員と、反対派の阿求・慧音委員との二時間以上に及ぶ論戦はそれだけで一本記事が書けてしまいそうですが、紙幅が足りないのが残念です。慧音委員とパチュリー委員が互いにスペルカードを取り出すところまで行った、とだけは書いておきましょう。
結局議論は平行線となり、反対票の最も少ない『輪廻の花』が受賞作に決まりましたが、私はこの作品には消極的に反対しました。確かによくまとまった達者な作品であり、反対すべき点は特に無いのですが、何かこう、他人宛のラブレターを読んでしまったような、居心地の悪さと気恥ずかしさを覚えるのです。第4回の『雪桜の街』も推せなかった私は恋愛小説とは相性が悪いのかもしれませんので、同じ恋愛小説の『人形の森』も合わせてこれ以上の論評は差し控えることにします。
私は『幽霊客船』は推しても無理そうだと判断し、幽々子委員とともに『そして、死神は笑う。』支持に回ったのですが、こちらも他の三名の同意は得られませんでした。生死の扱いの軽さが焦点となりましたが、軽いから良くない、という批判はいささか表層的に過ぎる気はします。『不幸のシステム』は不幸を重く書きすぎた感がありましたし、生も死も酒の肴に笑い飛ばすぐらいが幻想郷らしいと思うのですけれどね。
生と死と、愛 稗田阿求
人の生は、あまりに短い。永い時を生きる妖怪たちが見守るこの幻想郷において、たかだか数十年の歳月など、刹那の光芒に等しいに違いないだろう。それでも、人は生きる。生まれ、育ち、誰かを愛し、子を為し、己の生の証を残す為に生きる。それを繰り返し、繰り返し、人はこの幻想郷でも生き続ける。
御阿礼の子である私の生は、その人の中にあっても歪である。短い人の生よりもさらに短く、その魂だけが輪廻を繰り返す。されど、その理由は変わらない。私に与えられた意義は、この幻想郷の全てを記録し綴ること。それはしかし、同時に私自身の生を、この幻想郷に刻みつけることでもある。
記録する為に、私は生きる。記憶する為に、私は生きている。その記憶は、記録は、私の為のものであり、――私に触れあう誰かの為のものでありたい。私を知る誰かが、いつか私の身体が朽ち果て土塊に還った後に、私の刻んだ記録、記憶に触れて――稗田阿求という存在を思い返してくれれば、それに勝ることはない。
『輪廻の花』である。敢えて自惚れるならば、これは私のための物語であると確信した。推さねばならぬと声がした。繰り返される人の生と、繰り返される花の生、それを見守る者、愛する者。刻みつけた記録、記憶の儚さと、その強さが、記された一文字一文字から、書を捲る指に伝わり、震えた。記される言葉は有限である。されど、目に見えぬ心に刻まれる言葉は無限である。この作品は、その無限の言葉を、有限の言葉で語り尽くした。選考委員という立場を忘れ、ただ涙した。愛おしいと思った。それが全てである。
私は恋愛至上主義者ではないつもりだ。愛、という言葉はあまりに包括的に過ぎ、焦点をぼかしてしまう。されど――痛い程に純粋なそれは、何よりも強く刻まれる言葉なのだ。心に刻まれる言葉、目に見えぬ文字。記録する者、記憶する者として、何よりもそれを愛おしみ、慈しみたい。それ以外の言葉は無い。
私の歪な生と死の狭間にも、刻まれる言葉はあるだろうか?
(八雲紫委員は冬眠中につき選考会を欠席)
(文々。新聞 12月27日号4面文化欄より)
受賞作発表と選評を読んで、メッタ斬りコンビの感想
霊夢 予想通り過ぎてつまんないわねえ。選考自体は割れたみたいだけど。
萃香 阿求の選評が凄いよ。ほとんど自分のことしか語ってない(笑)。選評なのに、選評する気ゼロ。ここまでくると潔いというか。
霊夢 文の選評がいかしてるわね。《他人宛のラブレター》って、要するに『輪廻の花』って幽香が阿求へ向けて書いたごく私的な作品なんじゃないかってことでしょ? まあ、阿求以外が読んでも良い作品になってるから他の面々も強く反対はしなかったんだろうけど。
萃香 慧音が完全に味方についたのが大きかったかな。相変わらずくそ真面目な選評だよねえ。でも《子供にたちに読ませたい文章》って、寺子屋の子供たちは『輪廻の花』読んでも解らないと思うけど(苦笑)。
霊夢 パチュリーが《彼女がいてくれれば、と思ったのは初めてのことである。》なんて言ってるけど、紫が選考会に居たらどうなってたのかしらね?
萃香 大勢は変わらなかったんじゃない? 紫の場合、推す推さないはあっても強硬に主張することも反対することもまあ無いだろうし。文はやっぱり『幽霊客船』と『死神』支持だったね。でも《出鱈目であろうとも、眉唾であろうとも、楽しいものが正義です。》って、そりゃあんたの新聞作りのポリシーだろう(笑)。
霊夢 幽々子だけは相変わらず我が道を行ってるわねえ。選評読んでたらお腹空いてきたわ。
萃香 じゃあ呑む?
霊夢 空きっ腹を酒で満たすのは鬼だけよ。
(文々。新聞 12月29日号4面文化欄より)
稗田阿求氏が結婚
稗田家は28日、稗田家現当主、稗田阿求氏が結婚すると発表した。お相手は風見幽香氏。風見氏は太陽の畑に住む妖怪で、作家として『輪廻の花』で第7回稗田文芸賞を受賞している。既に入籍は済ませ、式は内々で済ませる予定とのこと。
稗田阿求氏は本紙の取材に対し、「贈られ続けていた花に、ようやく相応しい言葉を返すことが出来ました」と笑顔でコメントした。
(文々。新聞 3月1日号1面より)
※『霧雨書店業務日誌』と『記憶の花』を読まれていると若干分かりやすいかもしれません。
稗田文芸賞とは、幻想郷文芸振興会が主催する、優れた小説作品を対象とした文学賞。後援は稗田出版社。
概要
幻想郷における文芸の振興を目的として、第118季より創設。1月から12月までの間に発行された小説作品から候補作が選定される。なお、一度受賞した作家の重複受賞は不可。
12月中旬に候補作が発表され、下旬に行われる選考会において選考委員の合議により受賞作が決定する。受賞作の発表は文々。新聞紙上にて行われる。
現在の選考委員は稗田阿求、射命丸文、パチュリー・ノーレッジ、西行寺幽々子、八雲紫、上白沢慧音の6名。なお、八雲紫は毎回「冬眠中につき書面解答」という形で選考会を欠席している。
歴代受賞作
第1回(118季) パチュリー・ノーレッジ『魔法図書館は動かない』
第2回(119季) 西行寺幽々子『桜の下に沈む夢』
第3回(120季) 上白沢慧音『満月を喰らう獣』
第4回(121季) 白岩怜『雪桜の街』、虹川月音『レインボウ・シンフォニー』
第5回(122季) 八坂神奈子『天照戦記 蛙は口ゆえ蛇に呑まるる』
第6回(123季) 受賞作無し
(Mukyupedia - 稗田文芸賞の項より抜粋)
第7回稗田文芸賞候補作発表
幻想郷文芸振興会は15日、第7回稗田文芸賞の候補作を発表した。今回は6作がノミネート。初ノミネートが4作と、フレッシュな顔ぶれとなった。選考会は26日、稗田邸にて開かれる。
候補作品は以下の通り。
風見幽香『輪廻の花』(稗田出版)2回目
マーガレット・アイリス『人形の森』(博麗神社社務所)3回目
米井恋『インビジブル・ハート』(旧地獄堂出版)初
船水三波『幽霊客船はどこへ行く』(命蓮寺)初
小松町子『そして、死神は笑う。』(是非曲直庁出版部)初
厄井和音『不幸のシステム』(鴉天狗出版部)初
(文々。新聞 12月16日号1面より)
第7回稗田文芸賞メッタ斬り!
15日、第7回稗田文芸賞の候補作が発表された。これを受けて毎度おなじみ博麗霊夢&伊吹萃香のメッタ斬りコンビが、授賞レースの模様を徹底予想!
レース予想
霊 萃
◎ ◎ 風見幽香『輪廻の花』(稗田出版)2回目
- - マーガレット・アイリス『人形の森』(博麗神社)3回目
▲ ▲ 米井恋『インビジブル・ハート』(旧地獄堂出版)初
- ○ 船水三波『幽霊客船はどこへ行く』(命蓮寺)初
○ - 小松町子『そして、死神は笑う。』(是非曲直庁出版部)初
- - 厄井和音『不幸のシステム』(鴉天狗出版部)初
◆厄井和音『不幸のシステム』(鴉天狗出版部)初
◆小松町子『そして、死神は笑う。』(是非曲直庁出版部)初
霊夢 どう考えても幽香で決まり。以上おしまい。
萃香 それじゃ記事にならないじゃん。
霊夢 そんなこと言われたってねえ。他はアリス……じゃないアイリス以外全員初ノミネートで、幽香は後援の稗田出版から出てるわけだし、これで幽香にあげなかったら血を見るわよ。
萃香 まあまあ。前回受賞作無しだったから、二作受賞って線もあるじゃん。
霊夢 解ったわよ。で、どれから行く?
萃香 んじゃ『不幸のシステム』から行こうか。厄払いの神様が、人間たちの不幸を解体していく話。デビュー作で初ノミネート。
霊夢 まあ、悪くないわよね。それぞれの《不幸》を原因から解きほぐしていく場面はミステリっぽくて結構面白いし。新人でノミネートされるだけの作品ではあるわよね。票が割れたら伏兵的に上がってくるかしら。
萃香 ただちょっと、《不幸》な人間の書き方が一本調子なんだよねえ。どれもいい話なんだけど、ひとつぐらい苦い話があってもいいんじゃないかとかも言われそう。まあ、いい話だから賞は獲れなくても人気は出るんじゃない?
霊夢 というか、ね。何も『そして、死神は笑う。』と一緒に候補にすることは無いわよねえ。
萃香 だよねえ。どっちも短編連作、神が人間に手を貸すっていう構図も似てるし。『不幸』は割と重めで、『死神』は軽めだけど。こっちは死にゆく人間の未練に死神が手を貸す話。状況はこっちの方が重いのに、読み口はこっちの方が軽いんだよね。明るいし。
霊夢 『死神』は幽々子が「死神サボりすぎ」って文句言いそう。
萃香 うわ、ありそう(笑)。五話中ちゃんと魂回収したの二話だけだもんねえ。
霊夢 まあでも、『不幸』はあんまり推しそうな顔が浮かばないけど、『死神』の線はあるかもしれないわね。文なんかこういうライトなの好きそうだし、そうでなくても湿っぽいのよりはからっとしたのが好きなの多いし。真面目な慧音が反対するかしら。
萃香 慧音は人助け好きだからどっちも好きなんじゃん? 私はどっちでもいいけど(笑)。
◆マーガレット・アイリス『人形の森』(博麗神社)3回目
萃香 マーガレット・アイリスはこれで3回目。今回はストレートな恋愛小説で来たね。人形に囲まれて暮らす孤独な人形師と、魂を得た人形の悲恋話。前回ちょっと捻った話で落とされたからかな。
霊夢 人形ネタなのは相変わらずよね。他にネタも無いんだろうけど。
萃香 そんな身も蓋もない(笑)。まあしかし、ベタな話だよねえ。
霊夢 短いしさらっと読めるけど、それで終わっちゃうのよね。舞台もほとんど家から動かないし。また「心が描けていない」「世界が狭すぎる」とか言われて落とされそう。
萃香 心理描写を流す作風から踏み込まないと受賞は難しいのかな。
霊夢 解ってても踏み込まないと思うけどね。本気出さないのも作風だもの。
萃香 一度ぐらい本気出してみても罰は当たらないと思うけどねえ。恋愛ものは『輪廻の花』もあるから、今回も見送られるだろうね。ていうか自分ところで出してんだからもう少しプッシュしてやろうよ、霊夢。
霊夢 いいのよ、別に獲らなくたってもう売れてんだから。
◆船水三波『幽霊客船はどこへ行く』(命蓮寺)初
霊夢 『幽霊客船はどこへ行く』はこれ、どういうジャンル?
萃香 海洋冒険小説でいいんじゃない? 海底を彷徨う沈没船に潜水艦で宝探しに行く話。
霊夢 幻想郷には海が無いから、イメージし辛いのよねえ。
萃香 選考でもそこがネックになりそうだね。偶然が話を左右する部分が多いから、ご都合主義ってのも言われそう。潜水艦の艦長が探索チームのリーダー救出に向かうシーンは燃えるし、その後の脱出シーンもスリリングだし。天狗のテレビで映像化したら面白そう。
霊夢 海が無いのにどうやって映像化するのよ。個人的には割とどうでもいいし、獲る気もあんまりしないんだけど。にとりが選考委員なら可能性はあったのかしら?
萃香 河童は川じゃん(笑)。波瀾万丈のスペクタクルは文が好きだから推すかも。前々回も『天照戦記』推してるし。こういうの書く作家って幻想郷には居なかったから貴重だし、個人的にはこれに獲ってほしいかな。難しいだろうけど。
◆米井恋『インビジブル・ハート』(旧地獄堂出版)初
萃香 で、今回の問題作、『インビジブル・ハート』。
霊夢 紫がものすごく好きそうね、これ。
萃香 全く(笑)。心を閉ざした少女の一人称で始まったかと思ったら、いきなりその少女が死んじゃって、肉をついばみにきたカラスと友達になったと思ったら火葬されて、でも意識だけは残ってカラスに乗り移って――っていうとホラーなんだけど。
霊夢 なんでそこからカラスと猫のラブストーリーになるのかしら。しかもそれが叙述トリックでラストにひっくり返されるし。
萃香 そして最後はタライが落ちてきて爆発オチ(笑)。いやあ呆気に取られたね。
霊夢 そのくせ、姉のストーリーへの絡め方なんかはすごく上手いのよね。わざとやってるのか、それとも天然なのかしら。
萃香 いやあ、天然じゃないかなあこれは。
霊夢 展開がカオスだから紫はすごく好きそうだけど、慧音なんかは怒りそうね。紫以外が推すとも思えないし、どうせ紫は欠席なんだから受賞は無いだろうけど。
萃香 案外パチュリーなんか普通の小説は読み飽きてるだろうから、こういうの好きなんじゃない? 自分も移動型図書館都市を舞台にした幻想小説で獲ってるわけだし、ギャグとして読めばかなり笑えるし。
霊夢 ギャグなのこれ?
萃香 どう読むのもアリ、っていう意味じゃ一番面白いんじゃないかな。
◆風見幽香『輪廻の花』(稗田出版)2回目
霊夢 最後に風見幽香『輪廻の花』。
萃香 大本命だね。生まれ変わる人と生き続ける妖怪の愛を、繰り返し咲く花の姿に託して語る時を超えたラブストーリー。前回はガーデニング小説『優しい花を咲かせましょう』で落ちて、ほのぼのだけじゃ獲れないっていうんでこれを書いた。『雪桜の街』コースだね。
霊夢 でも結構ベタな話じゃない?
萃香 ベタだけど上手いよ。主人公は五度の人生でそれぞれ同じ女性と巡り会ってるのに、どの人生でもヒロインの印象が違う。花を愛する可憐な少女かと思えば、主人公をいたぶって楽しむ暴君だったり。だけど通して読むと、ヒロインの軸は一切ぶれてない。
霊夢 語り手の立場によって見え方が変わる、っていうのをきちんとヒロインの魅力に繋げてるわけだから、まあ達者よね。
萃香 テーマにしてる花のセレクトのセンスもいいし、花言葉の使い方も巧み。何より。
霊夢 何より?
萃香 4話目で向日葵畑の真ん中で酒を酌み交わすシーンが最高。
霊夢 そりゃ、あんただけでしょ。
萃香 いや、文にも同意して貰えると思うなあ。
霊夢 個人的にはこれも割とどうでもいいんだけど、受賞作が出るならこれでしょうね。
萃香 特に反対しそうな選考委員も居ないしね。阿求は特に身につまされるんじゃん? 何しろ転生ネタだしさ。声の大きい選考委員狙い打ちで傾向と対策もバッチリ(笑)。
霊夢 稗田出版だし。
萃香 そこは商売だから仕方ないじゃん(苦笑)。
まとめ
萃香 結局『輪廻の花』が当確で、もし二作受賞なら『死神』かな?
霊夢 『死神』に慧音や幽々子が文句言ったら『不幸』が伏兵的に上がってくるかもね。『幽霊客船』は文次第かしら。あとは『インビジブル・ハート』がどうなるかは読めないわね。
萃香 『不幸のシステム』と『人形の森』は被ってるわけだから外して良かったんじゃないかなあ。代わりに永月夜姫『満月はもう来ない』と富士原モコ『屍は二度よみがえる』でも入れればバランス取れたのにねえ。獲れるかどうかは別として。
霊夢 そのふたつ候補に入れたら冷静に評価出来なさそうな選考委員がいるじゃない。
萃香 それもそうか(笑)。
(文々。新聞 12月20日号4面文化欄より)
第7回稗田文芸賞に風見幽香さんの『輪廻の花』
第7回稗田文芸賞は26日、人間の里・稗田邸にて選考会が行われ、風見幽香さんの『輪廻の花』が受賞作に決まった。授賞式は1月5日、太陽の畑にて行われる。
『輪廻の花』は、何度も生まれ変わる人間と、長い時間を生き続ける妖怪の出会いと別れを、花の姿に託して紡ぎ上げる連作長編形式の恋愛小説。
風見さん「授賞は光栄。この本は、スターチスの花束とともに、ある人に捧げるわ」
選評
異才の出現 パチュリー・ノーレッジ
前回の選考会も揉めに揉めたが、今回も揉めるだろうという予感があった。自分自身、その火種を撒くつもりで選考会に臨んだのである。火種とはすなわち、米井恋『インビジブル・ハート』のことだ。票が割れるだろうというのは覚悟していたが、案の定ふたりが強く推し、ふたりが強硬に反対する形になった。
私は推した。「そもそも小説として破綻している」という他の選考委員の指摘はもっともである。一般的な小説の作法からは著しく逸脱した作品だ。ストーリーに整合性は無いに等しく、結末は脱力という他無い。それでも私は推した。推さざるを得なかった。
受賞作となった風見幽香『輪廻の花』に不満は無い。受賞作として恥じるところのない秀作であり、世間にも受け入れられるであろう。しかし文芸の価値が多数決で決まるのであれば、それは書店のベストセラーランキングに任せておけば良い。稗田文芸賞の価値とは、幻想郷の文芸に新たな可能性を見いだす異才を発掘するところにあると私は信ずる。
それ故に私は『インビジブル・ハート』を推した。ここにあるのは、幼子のような原初的な言語の混沌であり、野蛮な空想の氾濫である。凝り固まった文芸の価値観に風穴を開けるに足るものである。だがいかんせん、もうひとりの推薦者である八雲紫委員の欠席もあり、態度を保留したふたりの委員の賛同も得られなかった。彼女がいてくれれば、と思ったのは初めてのことである。今後ももう無いだろうとは思うが。
その他の作品には簡単に触れる。『そして、死神は笑う。』は生死を題材としながらの軽さが焦点となったが、評者はそれ以前に死神の死神らしからぬ態度に疑問を覚えた。『不幸のシステム』と『人形の森』の二作は、登場人物の描き方に小説的なふくらみに欠けた感は否めない。『幽霊客船はどこへ行く』は大変面白い娯楽小説だが、ストーリーの展開が作者の都合に左右されている感が端々に見え隠れした。
繰り返すが『輪廻の花』に不満は無い。本作が賞を受けること自体は喜ばしいことである。しかし『インビジブル・ハート』をなぜ推し切れなかったのか、今は評者の力不足を嘆くばかりである。
美味しいことば 西行寺幽々子
執筆は料理に、読書は食事に似ている。たとえば目の前に白いご飯を用意したとしても、それをお茶漬けにするか、おにぎりにするか、チャーハンにするか、オムライスにするかは料理する者しだい。もちろん、店でお茶漬けを頼んでチャーハンを出されたのならば文句を言って然るべきだけれど、チャーハンですよ、と言われて出されたものに対して、チャーハンであることに文句を言っても仕方ないではないの。チャーハンとしての出来不出来を論ずるべきであって、それがおにぎりでないことに文句を付けても何も始まらない。今回の選考会ではそのようなことを感じさせる議論が多かったように思う。文学観の違いと言ってしまえばそれまでではあるけれど……。
好感を持ったのは、『そして、死神は笑う。』。五つの短編からなる連作だけど、内容はたいしたことではない。漬物のような話。生と死を扱いながら、たくあんをポリポリと囓るような読感を与える筆致は素朴かつ軽妙でいい。死神が仕事をきちんとしないことに不満があるが、受賞作として推した。しかし、生と死を扱いながら軽すぎるとする他の委員の反対があり、最終投票で授賞を逃すことになってしまった。美味しいたくあんだっただけに、残念な心持ちがする。
受賞作となった『輪廻の花』は、素材そのものはありふれているけれど、細部まで気の配られた職人の仕事。非常に美味しいラーメン、カレーという類のもので、やっぱりこういうものを食べると安心するのね。少しぐらい未熟なところがある方が、個人的にはかわいげがあっていいと思うけれど。
その他の作品は、まあ他の人に任せましょう。どれも愛情がこもっていて美味しかったけれど、愛情が一番の調味料、が通用するのは親しい同士の間だけ。皆に読ませる作品は、愛情以上の素材と技術が必要なのね。
文章の作法 上白沢慧音
背筋の伸びる文章、というものがある。読んでいる側に、これは読み流していいものではない、と居ずまいを正させる、そういう力のある文章だ。受賞作となった風見幽香『輪廻の花』は、まさしくそのような文章で綴られる、姿勢の良い文芸作品である。
作者が読者の心を揺さぶろうと企図したとき、文章は過剰になり、表現は幾重もの衣を纏って重くなる。その重さはかえって心を萎えさせ、揺さぶられてなるものかと身構えさせてしまう。それが『輪廻の花』の抑制の利いた筆致はどうだろう。「薄紅の花弁は、ただ、風に流れていく。」――あるがままの花が、生を彩るように、あるがままの言葉が、物語を彩る。優雅にして可憐、されど端正。過不足の無い匠の筆である。何の迷いもなく推した。
その文章を読んでしまうと、他の作品はやはりいかにも見劣りする感は否めなかった。特に、強く推す委員のあった『インビジブル・ハート』は読むに耐えない。破綻した文章、破綻した構成、小説作品として成立し得ていないものを《既成の枠組に収まらぬ異才》などと持ち上げる風潮を私は良しとしない。言葉を書き、読み、教える立場にある者として、そのような作品が商品として流通していること自体に懸念をおぼえる。
『不幸のシステム』は題材に好感を持って読んだが、好感と評価は別である。人間の弱さを描きつつも、人間を庇護の対象としてしか見ない人間観察の浅さを感じた。作者はもっと人間に寄り添った視点を持つべきである。『そして、死神は笑う。』も、人間の生と死を扱いながらいかにも軽いその内容は、やはり人間側から遠い者が人間を描こうとする限界であろうか。『人形の森』も同様である。
『幽霊客船はどこへ行く』は娯楽小説としては上出来だが、過剰にして不足の多い、『輪廻の花』とは対極の粗雑な文章が鼻についた。ストーリーを語るだけならば小説である必要はない。小説であることに意味のある文章を読ませてほしい。
執筆とは、最適な言葉を己の中から選び抜いていく作業である。その作業にどれほどのコストを支払っているか、どれほどの言葉を己の中に蓄積しているか。それが文章の価値を決める。そのようなことを強く感じさせる選考であった。子供たちに読ませたい文章、という点でやはり『輪廻の花』は頭ひとつ抜けている。文句のない受賞に賛辞を送りたい。
エンターテインメントであるということ 射命丸文
第一回から選考に参加していますが、毎年ワンシッティング、読み始めたら止まらない一級の娯楽作品に出会えるこの選考はひそかな楽しみでもあります。今回、そのような幸福な出会いとなった作品は、船水三波『幽霊客船はどこへ行く』でした。海洋、深海という幻想郷では馴染みのない世界を舞台としながら、波瀾万丈、一気通読のエンターテインメントに仕上げた作者の腕前は並みのものではありません。丹念に描かれた探索チームと潜水艦スタッフの絆、そしてハラハラドキドキの脱出劇。「ああ、面白かった!」と本を閉じる幸福に浸ることのできる、まさに娯楽小説の鑑というべき作品でありました。文章が粗雑である、展開がご都合主義であるという批判の多さから残念ながら落選となりましたが、エンターテインメント性ではやはり本作が随一でしょう。本の価値とは、読者を楽しませる娯楽であることです。出鱈目であろうとも、眉唾であろうとも、楽しいものが正義です。娯楽としての価値は、今回の候補作で本作に勝るものは無かったと私は信じています。
しかし、今回の選考は今まで以上に紛糾しました。第一回の投票では、『輪廻の花』に二票、『インビジブル・ハート』に二票、『そして、死神は笑う。』に一票、『幽霊客船』に一票(これは私です)と票が割れることとなりました。特に『インビジブル・ハート』を巡る肯定派のパチュリー委員と、反対派の阿求・慧音委員との二時間以上に及ぶ論戦はそれだけで一本記事が書けてしまいそうですが、紙幅が足りないのが残念です。慧音委員とパチュリー委員が互いにスペルカードを取り出すところまで行った、とだけは書いておきましょう。
結局議論は平行線となり、反対票の最も少ない『輪廻の花』が受賞作に決まりましたが、私はこの作品には消極的に反対しました。確かによくまとまった達者な作品であり、反対すべき点は特に無いのですが、何かこう、他人宛のラブレターを読んでしまったような、居心地の悪さと気恥ずかしさを覚えるのです。第4回の『雪桜の街』も推せなかった私は恋愛小説とは相性が悪いのかもしれませんので、同じ恋愛小説の『人形の森』も合わせてこれ以上の論評は差し控えることにします。
私は『幽霊客船』は推しても無理そうだと判断し、幽々子委員とともに『そして、死神は笑う。』支持に回ったのですが、こちらも他の三名の同意は得られませんでした。生死の扱いの軽さが焦点となりましたが、軽いから良くない、という批判はいささか表層的に過ぎる気はします。『不幸のシステム』は不幸を重く書きすぎた感がありましたし、生も死も酒の肴に笑い飛ばすぐらいが幻想郷らしいと思うのですけれどね。
生と死と、愛 稗田阿求
人の生は、あまりに短い。永い時を生きる妖怪たちが見守るこの幻想郷において、たかだか数十年の歳月など、刹那の光芒に等しいに違いないだろう。それでも、人は生きる。生まれ、育ち、誰かを愛し、子を為し、己の生の証を残す為に生きる。それを繰り返し、繰り返し、人はこの幻想郷でも生き続ける。
御阿礼の子である私の生は、その人の中にあっても歪である。短い人の生よりもさらに短く、その魂だけが輪廻を繰り返す。されど、その理由は変わらない。私に与えられた意義は、この幻想郷の全てを記録し綴ること。それはしかし、同時に私自身の生を、この幻想郷に刻みつけることでもある。
記録する為に、私は生きる。記憶する為に、私は生きている。その記憶は、記録は、私の為のものであり、――私に触れあう誰かの為のものでありたい。私を知る誰かが、いつか私の身体が朽ち果て土塊に還った後に、私の刻んだ記録、記憶に触れて――稗田阿求という存在を思い返してくれれば、それに勝ることはない。
『輪廻の花』である。敢えて自惚れるならば、これは私のための物語であると確信した。推さねばならぬと声がした。繰り返される人の生と、繰り返される花の生、それを見守る者、愛する者。刻みつけた記録、記憶の儚さと、その強さが、記された一文字一文字から、書を捲る指に伝わり、震えた。記される言葉は有限である。されど、目に見えぬ心に刻まれる言葉は無限である。この作品は、その無限の言葉を、有限の言葉で語り尽くした。選考委員という立場を忘れ、ただ涙した。愛おしいと思った。それが全てである。
私は恋愛至上主義者ではないつもりだ。愛、という言葉はあまりに包括的に過ぎ、焦点をぼかしてしまう。されど――痛い程に純粋なそれは、何よりも強く刻まれる言葉なのだ。心に刻まれる言葉、目に見えぬ文字。記録する者、記憶する者として、何よりもそれを愛おしみ、慈しみたい。それ以外の言葉は無い。
私の歪な生と死の狭間にも、刻まれる言葉はあるだろうか?
(八雲紫委員は冬眠中につき選考会を欠席)
(文々。新聞 12月27日号4面文化欄より)
受賞作発表と選評を読んで、メッタ斬りコンビの感想
霊夢 予想通り過ぎてつまんないわねえ。選考自体は割れたみたいだけど。
萃香 阿求の選評が凄いよ。ほとんど自分のことしか語ってない(笑)。選評なのに、選評する気ゼロ。ここまでくると潔いというか。
霊夢 文の選評がいかしてるわね。《他人宛のラブレター》って、要するに『輪廻の花』って幽香が阿求へ向けて書いたごく私的な作品なんじゃないかってことでしょ? まあ、阿求以外が読んでも良い作品になってるから他の面々も強く反対はしなかったんだろうけど。
萃香 慧音が完全に味方についたのが大きかったかな。相変わらずくそ真面目な選評だよねえ。でも《子供にたちに読ませたい文章》って、寺子屋の子供たちは『輪廻の花』読んでも解らないと思うけど(苦笑)。
霊夢 パチュリーが《彼女がいてくれれば、と思ったのは初めてのことである。》なんて言ってるけど、紫が選考会に居たらどうなってたのかしらね?
萃香 大勢は変わらなかったんじゃない? 紫の場合、推す推さないはあっても強硬に主張することも反対することもまあ無いだろうし。文はやっぱり『幽霊客船』と『死神』支持だったね。でも《出鱈目であろうとも、眉唾であろうとも、楽しいものが正義です。》って、そりゃあんたの新聞作りのポリシーだろう(笑)。
霊夢 幽々子だけは相変わらず我が道を行ってるわねえ。選評読んでたらお腹空いてきたわ。
萃香 じゃあ呑む?
霊夢 空きっ腹を酒で満たすのは鬼だけよ。
(文々。新聞 12月29日号4面文化欄より)
稗田阿求氏が結婚
稗田家は28日、稗田家現当主、稗田阿求氏が結婚すると発表した。お相手は風見幽香氏。風見氏は太陽の畑に住む妖怪で、作家として『輪廻の花』で第7回稗田文芸賞を受賞している。既に入籍は済ませ、式は内々で済ませる予定とのこと。
稗田阿求氏は本紙の取材に対し、「贈られ続けていた花に、ようやく相応しい言葉を返すことが出来ました」と笑顔でコメントした。
(文々。新聞 3月1日号1面より)
まず、選評者がいい、性格や文学感の違う選評者それぞれ独自の視点で候補作を語ることによって、
候補作が多角的に表現されていて、厚みができている、素直に「読んでみたい」と思わされた
特に、『輪廻の花』『不幸のシステム』そして『インビジブル・ハート』に関しては強くそう思った
そして、衝撃のオチ
ぶっ飛んでる、想定外だ、あまりにも卑怯、落差がひどい、いろいろ言いたいことがあるが、それも含めて面白かった
こういう珍しい作品は好きだし、なによりノミネート作が本当に読みたい
是非書いてほしい、と言いたい所ですが、読めないからこそ、想像の中だからこそ、というのもあるかもしれない
長くなりました、よければまたこういう作品も楽しみにしてます。では
個人的には『輪廻の花』が特に気になる…
誤字報告ですが、一箇所『輪廻の花』が『人形の花』になってます
個人的には『そして、死神は笑う。』が読みたいかな。
短編連作大好きなんで
こういう形式もいいなあと思いつつ、読んでみたい『輪廻の花』。
歴代の受賞作含め全部読んでみたい!
『輪廻の花』が受賞作品になったのはまあ、順当だと思う。
でも尖った作品が全くないのではつまらない。
米井恋先生にはこれからも我が道を行く作風で書き続けて欲しいです。
『輪廻の花』『そして、死神は笑う。』『幽霊客船はどこへ行く』辺りは是非とも読みたい。
個人的になのですが、『インビジブル・ハート』にだけは受賞してほしくないなぁ。
例えばですがこれが直木賞のようなものだとして、今年の受賞作品はどんなのだろうと思って買ったら、インビジブル・ハートのような内容だったら嫌ですね。
マジレスごめん。だけど、それだけのめり込めたということでここは見逃してください。
こういう形式でこういう風にキャラクタ性を描いてくるとは思わなかった。
私情挟みまくりな選評委員が最高でした。
しかしまあ、すごく面白かったぜ!
一人一人の個性が出ているだけでなく、本当の記事を読んでいるような錯覚にとらわれました。
オチも見事。全く予想できなかった。記憶の花を読んでいる身としてはよかったよかった。
非の打ち所のない作品でした。
ラブストーリーからどうやって爆発オチに繋げるんだwww
その手の評論を読んだこともないのにありそうも何もないですけど。
マーガレット・アイリスの人物描写は成程、原作設定を上手く活かしています。こういった取り入れ方は斬新で素敵ですね。
問題作インビジブル・ハートは読んでみたいと思うより先に挑戦してみたいなぁ、と思ってしまいました。書いててとても楽しそうですし。
いやまぁ、流石にもう既に存在している作品を書いてみようなんて、そんなことまでは思わないですが。
どれもこれも、紹介を読んでいて面白そうだと思うものばかり。そんな素敵なアイデアがぽんぽん生まれるあなたにパルパル。
上手い具合にそれぞれの作品にらしさと、選評の妙が光っていました。
正直、慧音先生の選評は身につまされます。
あと、誤字かと思われる部分が。
>皆に読ませる作品は、愛情異常の素材と技術が必要なのね。
愛情以上では?
実にうまい。作者の素材と技術の使い方を体感しました。
どれも読んでみたいなぁ。
《既成の枠組に収まらない》作品には、型にハマった物しか選考しない賞なんて相応しくない。
凄く面白かったです。
後、どこか一カ所気になったんだけど、携帯から読んでたから今思い出せない……
なんにせよどの作品も非常に面白そうで、各キャラクターの文芸観がなかなかしっくり来て面白かったです。
なんとなく慧音には賛同しづらい自分がいるw
殆ど触れられなかったアリスがかわいそうだw
後、厄井和音って「やくいわね」かw
メッタ切りコンビが嵌りすぎてるw選評者それぞれにしっかりとした色があるのがよかったです。
選考委員の論評が、このキャラなら本当にこう言いそうなのばかりで
キャラと小説双方に対する造詣の深さがうかがえました。
東方キャラが書いた物語……読んでみたいですねえ。
選評者それぞれがいかにもそのキャラらしい選評をしながら
作品の側面それぞれの紹介にもなっているというのは凄い。
本の内容は描かれていないのに、選評者の様々な角度からのコメントで読者に想像させるのも
面白い方法だと思う。
また選評者のそれぞれのコメントもらしくて良い。
特に慧音と文のコメントが面白かった。
そしてオチwなんぞこれw
稗田文芸賞ノミネート作品をすべて購入することを、先日の幹事会で決定しました。
凄く上手く書かれていて面白かった。
やっぱり、本は人によって読み方が違ったり沢山の解釈の仕方があったりと
一つの作品で多数の世界があるという事が面白い。
後、個人的には幽々子の批評が面白かったと思います
ぶよっぶよに伸びました。
個人的に一番それらしさが感じられない『レインボウ・シンフォニー』が気になったり
あなたは発想の鬼だな
ホントにそういう雑誌を読んでる気分になった
どれもこれも面白そうです。じゅるじゅる。
ごく個人的に、パチュリーさんの本が読んでみたいです。移動型図書館都市って!
慧音のコメント良いこと言うなぁ
ただ奇抜なだけで賞取る小説はどうにもニガテ
本当に全ての作品が読みたくなる。
( ゚д゚) >稗田阿求氏が結婚すると発表した。お相手は風見幽香氏。
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚) >稗田阿求氏が結婚すると発表した。お相手は風見幽香氏。
( >_< )b GJ!
こうした「常識」を打破するセンスこそが次世代の文学界を切り拓いて行くのですね!
真に脱帽するしかありませぬ!!
素敵な小説を読んだ後はまさにゆゆ様みたいな気持になれます。(あるいは某文芸部の部長)
そして落ち
結婚してたんかいっ!?
実際に各作品を読んでみたい。
「ああ、面白かった!」とブラウザ閉じる幸福に浸ることのできる、まさに二次SSの鑑というべき作品でありました。
至福の時間をありがとうございました。
そして幽香さんご結婚おめでとうございます!
後、あっきゅん自重w浮かれてる様が目に浮かぶ様ですねw
個人的に受賞作なしの第6回が気になる。ていうか第1回から今回までのノミネート作品を全部読みたい。
とても面白かったです。
どの作品も全部読んでみたいです。