誰かが言っていた――神鬼「レミリアストーカー」と虚人「ウー」を組み合わせれば、レミリアウーになると
◆ ◇ ◆
その日、鴉天狗のブン屋少女・射命丸文は幻想郷の空を全力で飛行していた。
大切な会合の当日になって寝坊をしてしまい、大急ぎで会場へと向かっている――などではない。
文は逃げていたのだ。
自分の身に迫る、未知の恐怖から。
「……絶対、絶対に私は逃げきってやる……絶対にっ……!」
文の表情は、険しい。
幻想郷最速を自負する彼女をここまで追い詰めているのは何者なのか――それは、後に語るとしよう。
とにかく、文は逃げていた。
己の全力を尽くして飛行速度を亜音速にまで加速させ、自らの身に降りかかる災厄から逃れようとしていたのだ。
文がこうして逃げているのには理由がある。
全ての事の始まりは、今から二週間ほど前の宴会の日の事――……
◆ ◇ ◆
それは、博麗神社にて開かれた宴会での出来事である。
何時もの如く集まった暇な人妖達が酒や料理を楽しんでいた時の事。
魔法の森に住む魔法使いの霧雨魔理沙が、命蓮寺の妖怪・寅丸星にふとこんな事を呟いたのだ。
「なあ星。お前のスペルと私のスペルって、どことなく似ている気がしないか?」
「ふぇっ? そうでしょうか?」
「ああ。似ている似ている。そっくりだぜ。光が出る所とか」
「ははあ、成程。そう言う事ですか」
「ああ。そう言う事だ」
魔理沙が言うには『私のマスタースパークと星のアブソリュートジャスティスは凄い光が出るのが似ている』との事らしい。
恋符「マスタースパーク」
ミニ八卦炉から極太のレーザーを発射する、魔理沙を代表するスペルカードの一枚である。
光符「アブソリュートジャスティス」
毘沙門天の威光で相手の動きを制限し、そこに弾幕を叩き込む星のスペルカードである。
確かに、どちらのスペルも受けた側にとっては『目がチカチカする』と言う点では同じだった。
あえて相違点を挙げるならば、マスタースパークは光で相手を押し潰すスペル。
アブソリュートジャスティスは光で相手を縛るスペル、とでも言うべきか。
「確かに、光を発射すると言う点では似ていますね。そっくりかもしれません」
「だろ? そこで、私から提案があるんだが――」
星の同意の言葉を聞くと、魔理沙はにやりと笑い、そして提案したのだ。
「二人のスペルを合成したら、凄い事になると思わないか?」
「スペルを合成?」
魔理沙の考えはこうだ。
マスタースパークは極太レーザーを発射するスペルだが、その分大味な為に相手に回避をされやすい。
また、アブソリュートジャスティスは相手の行動を制限するものの肝心の弾幕の密度が薄く、回避を許してしまう。
ならば、両者の良い所を組み合わせればどうなるのだろうか?
相手の動きを制限した所に極太のレーザーを叩き込む――まさに、最強のレーザースペルが完成するのでは?
もとより魔法の研究が好きな魔理沙の事。
その一環として、自分以外の人妖が駆使するスペルに興味があったのだ。
「と、言うのが私の考えだ!」
「ふぅむ……魔理沙さんに毘沙門天の宝塔が使いこなせるかはやや疑問ではありますが、確かに面白そうですね」
「だろう? 見た目が派手で、性能も強い! これが完成すれば弾幕ごっこでは負け知らずになれるぜ!」
「ほうほう。それは私も興味深いです」
酒も入っていた二人の話はトントン拍子に進み、星は魔理沙に協力する事をその場で確約。
生真面目な星にしては珍しく、魔理沙の怪しげな話に対して乗り気だった。
げに恐ろしきは酒の力である。
そして、翌日。
魔理沙の実験は予想以上にはかどり、あっけなく合成スペルは完成していた。
相手の動きを正義で縛り、そこにレーザーを叩き込む超強力スペル――その名も恋光「ジャスティススパーク」である。
それが、全ての始まりだったのだ。
◆ ◇ ◆
魔理沙と星が完成させた合成スペルの話題は天狗の新聞によって幻想郷を駆け巡っていた。
もとより新しい物や面白い事が好きな幻想郷住人の事。
我も我もと合成スペルに手をだす者が出るのは、自然の流れだったのかもしれない。
「私のスペルとおねーさんのスペルを組み合わせれば、二つのお月様なのだー」
「ふむ……月と月か。確かに面白そうね」
「そうなのだー」
月符「ムーンライトレイ」に月符「サイレントセレナ」を組み合わせれば、二重月「サイレントムーン」が完成した。
ルーミアが足を引っ張ったせいであまり威力は高くなかったものの、パチュリーはこれをきっかけに新しい魔法の開発が出来そうだと喜んでいた。
「幻想郷を代表する数学者と歴史家の競演スペル。面白そうだと思うのですが、如何でしょうか」
「そうだな……藍殿が寺子屋で子供に算数を教えてくれるのなら、私は協力を約束しよう」
「ふふっ、了解です。橙の友達も増えそうですし、嬉しい限りです」
式神「十二神将の宴」に国体「三種の神器 郷」を組み合わせれば、式国「十二神将の神器 郷」が完成した。
十二の式神が戦場を舞い、国を形作ると言う壮大なスペルである。
こっそり橙が国を治めるお姫様の役をしていたのは、藍の遊び心だったのだろうか。
「合成スペル? 私と輝夜とで?」
「ええ。今までは殺しあっていたけれど、たまには一緒に協力するのも悪くはないでしょう?」
「……まあ、暇つぶしに付き合うのも悪くはないか」
「決まりね。足を引っ張らないでよ?」
「そっちこそ、私の足を引っ張ったりしないでよね」
新難題「金閣寺の一枚天井」に蓬莱「凱風快晴 ‐フジヤマヴォルケイノ‐」を組み合わせれば、蓬莱難題「金閣寺ヴォルケイノ」が完成した。
その名の通り、金閣寺が大噴火をすると言う前代未聞のスペルである。
ちなみに、妹紅と輝夜のチームワークは予想以上に良かったらしい。
「おーいっ! 西洋と東洋の鬼、ここは一つ協力してみてはどうだい?」
「ふむ。面白そうな提案ね……良いわ、協力してあげる」
「んじゃあ、行っくぞー!」
「蝙蝠の軍勢を交えた百鬼夜行の力、とくと思い知らせてあげるわ!」
「百万鬼夜行」に「紅色の幻想郷」を組み合わせれば、「紅色の百万鬼」が完成した。
吸血鬼と鬼による合成スペル。
召喚された鬼達は、相手の返り血を浴びてその身を紅に染めたとか染めないとか――……
幻想郷のあちこちで、スペルの合成が行われていた。
そして、ある日の事だ。
三途の河の水先案内人、小野塚小町が上司の四季映姫に囁いたのである
「四季様のスペルを組み合わせたら、凄いのが出来ますよね」
審判「浄頗梨審判 -射命丸文-」
嘘言「タン・オブ・ウルフ」
両者を組み合わせて完成するスペルの名は――「文タン」だったのだ。
◆ ◇ ◆
小町の思いつきから完成した新スペル「文タン」
これは画期的名スペルであった。
そのスペルに名を使われている文は、普段から新聞にある事無い事を書いては幻想郷の住人に顰蹙を買っていたのだ。
それ故に、「文タン」を改造してさらに酷いスペルの名を作る者が現れるのにも大して時間は掛からなかった。
皆、この機を利用して文に対する日頃の鬱憤を晴らそうとしていたのだ。
「文タン」に神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」を組み合わせれば、「文タンのオンバシラ」である。
文のどこにオンバシラが生えているのだろうか?
「文タン」に土着神「手長足長さま」を組み合わせれば、「手長足長文タンさま」である。
もはやそれはクリーチャーではなかろうか、と突っ込む者は居なかった。
以下、幻想郷の人妖が作り出した色々な意味で酷いスペルカードを羅列しておこう。
尚、前提として全ての合成スペルには「文タン」が含まれている事を此処に記しておこう。
・爆符「プチフレア」 → 「プチ文タン」
発動すれば、外見年齢が六歳の文が召喚されたらしい。
・「鬼縛りの術」 → 「文タン縛り」
発動すれば鎖や縄で縛られ、大変な事になっている文が召喚されたらしい。
・結界「魅力的な四重結界」 + 神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」 → 「魅力的な文タンのオンバシラ」
もはや突っ込み不要である。
さらに「全人類の緋想天」と騒符「ソウルゴーハッピー」を組み合わせれば「魅力的な文タンで全人類のオンバシラがハッピー」になったとか。
ここから先は、元のスペルカードが何かをあえて記さずに読者の皆様に推理をして頂こう。
一部、文タン以外が登場する物も存在しているが……まあ、ついでに羅列してしまえばそれで良い。
・文タン死して全て大団円
・道連れ文タン余命幾許も無し
・夢枕に文タン総立ち
・乱れ文タン口ゆえシャブル
・三種の神器 文タンの乙女の心
・ほらほら文タンが震えるぞ?
・液状化現象で文タンも泥のようじゃ!
・文タンだって頑張っちゃうぞ?
・オール電化でエロ文タンじゃ!
・これで文タンもおしまいじゃあ!!
・諏訪大戦 ~ 文タン vs 白蓮
・文タン天皇
・ほらほら文タンのオンバシラが震えているぞ?
・エキセントリック文タン天狗
・高感度文タン突きにも負けず
・高感度文タンオンバシラの突きにも負けず
・高感度文タン真夜中にオンバシラカーニバルにも負けず
・忍び寄る操り白蓮
・文タンは冬眠できます
・中毒性のある文タンのナイトカーニバル
・レミリアの禁じられた清水にメイド長熱狂
・文タンのお天水
・高感度レミリア空前絶後の虹色だいだらぼっち襲来
・プリンセス幼き白蓮の禁じられた遊び
・鵺的文タンショー
・夢想封印 文
・文タンゲーム
・禅寺に潜むレミリア
・チャーミング白蓮の網目
さて……ここまで語れば、もう皆様お分かりになられた頃だろうか。
物語の冒頭で、何故文が逃げていたのか――……
文は、幻想郷のあちこちで唱えられるセクハラスペルから必死に逃れようとしていたのだ。
今こうしている間にも、誰かが文にいかがわしい事をせんとスペルを合成しているのだから文にとってはたまらない状況である。
それ故に、文は飛び続けるのだろう。
幻想郷から合成スペルブームが去る、その日まで。
「プリンセス幼き白蓮の禁じられた遊び」ちょっと一緒に遊んできます。
ちなみに前回船長が発動させた回避不能の攻撃は
水符「禁じられた天女の清水で超高速乱れマシンガン」ですね。
あと、「高感度ナズーリンの魅力的なスネークショーでオンバシラ総立ち」張り付きで見てみたいです。
kwsk、激しくkwsk!!
(反魂蝶+季節外れのバタフライストーム→季節外れの反魂蝶ストーム。とか連想した。)
後半のスペカ名ラッシュで腹筋がwww
合成スペル五枚分を二回宣言すると指輪が頂けるのですね分かります。
「紫雲のオーメン」と「タン・オブ・ウルフ」で紫タン
なんかもできそうだw
サガフロの連携吹いたw
あれでも、「暴走触手巻き付きシルフ蹂躙」とか、「カオススープ三時間まわす」とか、カオスなものが多かったのにww
こんなのはいかが?
「中毒性のある超高密度ドリルに文タン撃沈」
「壺中の文タンの開花」
>>「高感度レミリア空前絶後の虹色だいだらぼっち襲来」
咲夜さん自重して下さいw
そしてコメのヴァジュイール吹いたwww
特に後半