幻想郷の霧の湖と呼ばれる場所。
そこでは、今日も天狗と氷精が話をしていた。
だが、今日は取材ではないらしく、
逆に氷精のほうから天狗に話しかけていた。
「ねぇ、ぶんぶん」
「何ですか?チルノさん」
「あのね、今って、愛鳥週間って言うんだよね?」
「はい、そうですけど…」
「あたい、ぶんぶんに何かしてあげられることないかな?」
「!」
氷の妖精、チルノがそういうと、
ぶんぶんと呼ばれた天狗、射命丸 文は、顔を真っ赤にして鼻を押さえた。
「?どうしたの、ぶんぶん?」
「い…いえ…なんでもありません…」
文は、上を向いて鼻から溢れ出るものを必死に抑えようとしたが、
それでも赤い液体が一筋、文の顔を流れた。
「ってぶんぶん、血が出てるよ!?」
「あ、いえ、たいしたことはありません…っ
チルノさん、私はそのお気持ちだけで十分です…」
「そう?でも…それだとあたいの気がすまないの…」
(ああんもう、なんて可愛いのっ!!私のためにそんなことをいってくれるなんて!)
文は、今すぐチルノを抱きしめてしまいたい衝動を必死で抑えていた。
「ぶんぶんは、いつもあたいに面白い話をしてくれるし、
あたいが落ち込んだときには元気付けてくれるし…
でも、いっつもあたいは何かしてもらってばっかりだと思うの…
だから、今週ぐらいはあたいがぶんぶんに何かしてあげたい」
(落ち着け…落ち着くのよ…素数を数えるの…)
チルノの台詞に、文の感情はもう臨界点を超えそうだった。いろんな意味で。
「…えっと、じゃあ…私と一緒に空の散歩をしてくれませんか?」
昂ぶる感情(もちろん性(ry)を押さえつつ、ようやく文が返事を返した。
「え?…そんなので、いいの?」
「もちろんです!」
「えっと…あたい、ぶんぶんみたいに速く飛べないよ?」
「それは大丈夫です。チルノさんが速く飛べなくても、私がゆっくり飛ぶことはできますから」
「でも…ぶんぶんは速く飛ぶほうが好きでしょ?」
「いえ…チルノさん」
文がチルノの手を握って言う。
「好きな人と一緒なら、どんな速さで飛んでも楽しいものですよ」
その言葉を聞いて、今度はチルノの顔が赤くなった。
「それとも…私と一緒じゃ、お嫌ですか?」
「ううん、違うの!ぶんぶんが、またあたいのために無理してるんだったら、いやだなあって思って…」
「…じゃあ、問題はありませんね。では早速、行きましょう」
「…うん!」
霧の湖の湖畔から、二人はゆっくりと飛び立っていった。
「えへへ…やっぱりぶんぶんの言ったとおりだね…あたい、とっても幸せだよ♪」
「ええ…私もです」
二人はどちらからともなく、そっと手をつないだ。
そして、手をつないだ二つの影は、どこかへと飛び去っていった。
★★★
「ひえぇぇ…」
「大変なのだー…」
今日も幻想郷のどこかで営業中の屋台。
でも、今日はいつもと少し違うようだ。
「ミスティアって、いつもこんな大変なことしてたんだ…」
「みすちーすごいのだー…」
今週は愛鳥週間。
そんなわけで、リグルとルーミアのふたりは、ミスティアの屋台を手伝っていたのだった。
「二人ともありがとう。でも、最近特にお客さんが多いのよ…なんでかしら?」
「そりゃ店主、今は愛鳥週間だからだよ。」
その疑問に、客の一人が答えた。
「みんな…ってか俺らもそうなんだけど、愛鳥週間だからあんたのところへみんなで飲みに行こうかって話になってるみたいだ」
「そーなのねー、そりゃありがたいことで」
「あー、みすちー私の台詞とったー!」
ルーミアが抗議するが、ミスティアは軽くスルーした。
「でも、これはちょっと来すぎたかもな。大変だろう?」
男は他の客を見回して言った。
「いやいや、そんなことはないよ~?商売繁盛はいいことだし、それに、二人も手伝ってくれてるしね。
ありがとう、二人とも」
「えへへ~こちらこそ~」
「ミスティア、いつも私たちに串焼きをご馳走してくれてるじゃない、今日はそのお礼。
だから、お礼なんか言わなくてもいいよ」
「そうはいっても、やっぱりお礼は言わなくちゃ、私の気が済まないよ。まあもう言っちゃってるけど」
「そうそう、感謝の言葉は素直に受け取っとくもんだよ」
「んー、じゃあそうさせてもらうよ。さて、ルーミア、また頑張ろうか!」
「おー!」
そうして二人は仕事へ戻っていった。
「ところで店主、今日は歌わないのかい?」
「そうね、お客さんも集まってきたところだし、一曲歌わせてもらいましょうか」
ミスティアは、屋台の近くのステージに上がり、マイクを握った。
「では、ミスティア、歌いまーす!」
屋台の客から、拍手と歓声が沸き起こった。
幻想郷のどこかで営業する夜雀の屋台。
そこには今日も客の笑顔と素敵な歌声が溢れていた。
★★★
「…おい輝夜、いきなりこんなところへ呼び出して一体なんの用だ」
いつもいつも殺しあう仲の二人。
だが、今日はそうではないようだ。
輝夜は正座で、壁際に座っていた。
そして妹紅はいま部屋にはいってきたところなのか、障子の前に立っていた。
「こんなところとは失礼ねー…まあそれはいいから、まあちょっとここに座りなさい」
そういうと輝夜は、自分の斜め前を指し示した。
「…なんでその位置?」
「座れば分かるわ」
「一体何を企んでるんだよ」
「それは座ってからのお楽しみ♪」
「…なんだそりゃ…」
輝夜のわけの分からない言動にあきれつつも、付き合いのいい妹紅は結局輝夜の指し示す場所に座った。
すると突然、輝夜が妹紅の頭をつかんで引き寄せ、自分のほうへと妹紅の体を倒した。
「…何のつもりだ?」
「膝枕だけど?」
倒された妹紅の頭は、正座した輝夜の膝の上に乗っていた。
「いやそりゃわかるけどさ、何で唐突に膝枕?」
「だって、今は愛鳥週間じゃない、だから不死鳥のもこたんを愛してみたの」
「…まあ突っ込みどころは山ほどあるが、とりあえずそれは置いといて…それと膝枕とどういう関係が?」
「愛って言ったら膝枕かなと」
「いやそのりくつはおかしい」
「まあまあ、とりあえず素直に私の愛を受けなさい」
輝夜が、自分のひざの上にある妹紅の頭をそっと撫でた。
妹紅はこの状況で自分はどうするべきか考えたが、
まあ輝夜にそれ以上何かしようって気はなさそうだし、いいか、と思い、
おとなしく撫でられておくことにした。
(しかし…なんというか…)
相変わらず輝夜の思考は分からないが、輝夜の膝枕は、意外にも自分にとって心地よいものであった。
そういえば、永く生きてきた中でも膝枕なんてされたことなかったかもしれない。
初めて膝枕されるのが輝夜なのが気に入らないが、この心地よさの前にはそんなことはどうでもよくなってしまう。
…そんなこと、か。
輝夜は父親の敵で、私が不老不死になった元凶で…とっても憎かった筈なのに。
いまや、『そんなこと』で片付けられてしまう程度のことになってしまった。
自分も年とともに丸くなったのだろうか。
いくら不老不死でも精神が老けていくのは止まらないようだ。
…もう、自分のほうから輝夜に歩み寄ってみるのもいいかもしれない。
「あのさ、輝夜…って」
妹紅は輝夜のほうを向いた。
しかし、そこには目を閉じ静かに規則正しい呼吸を行う輝夜しかいなかった。
「寝てるよ…」
なんてこった、自分のこれからの人生を変えるかもしれない行動に出ようってときに、その相手が寝てしまってるとは。
とんでもない肩透かしだ。
たたき起こそうかとも思ったが、気持ちよさそうに壁にもたれかかって寝る輝夜を見ると、それははばかられた。
「…しょうがない、私も寝るか…」
妹紅は輝夜の膝の上で目を瞑った。そして、すぐに妹紅は眠りについた。
「いやあ、妹紅も丸くなったものねぇ」
「そうですね…最初にこの二人を仲良くさせようって言ったときはどうなることかと思いましたが…
長く見守ってきた甲斐がありましたね」
「…ところでうどんげ、私にも膝枕してくれない?」
「え…あぅ…師匠、それはちょっと、恥ずかしいです…」
「大丈夫よ、誰も見てないわ」
「そういう問題だけどもないですけど…まあ、いいか……はい、どうぞ」
「ありがと、うどんげ」
「う~…やっぱりなんか恥ずかし…って何でうつ伏せでしかもスカートの中に顔をいれ」
(省略されました…続きを読むには『えーりん!えーりん!』と(ry)
個人的には文チルごちでした。
いや、もこてるも良かったですよ。
チルノは良い子、リグルとルーミアは友達想い、輝夜は膝枕ときたもんだ。
みんなかわいいです!そして私も・・・こんな鳥たちを愛でたい!w
そして『えーりん!えーりん!』と言わざるを得ない。
・・・もう何回でも言いたくなるほど良い愛鳥週間でした!
つまり、うどんげやてゐにも愛をですね!
さて えーりん!えーりん!
屋台組が特にほのぼのとしていて良かったです。もこてるはドキドキした。
当然いい意味でw
えーりん!えーりん!
ところで最後は兎も鳥ってことすか?
ところで、最後に兎が出て来るのはやっぱり一羽二羽だからですか?
こういうアプローチも、ありだなぁ