「ふむ・・・これは・・・」
小さなカラクリ仕掛けの箱を手に取り、まじまじと調べる。
すると、僕の脳内にその物体の存在する理由・・・つまり何をするものなのかという情報が流れてくる。
「これはオルゴールというものだね。鈴仙さん、そのゼンマイをここに差して巻いて、箱を開けてみて」
僕がそう言って彼女にその箱を渡す。鈴仙さんがゼンマイを巻いて箱を開けると、柔らかい音楽が部屋に優しく響いた。
「わぁ・・・いい音色ですね」
「あまり価値のあるものではないけど、とても良い物ですよ」
そう言って僕は眼鏡を外し、常備している布でレンズを拭いてかけ直した。
僕の名前は森近霖之助、ここ幻想郷の辺境にひっそりと佇んだ店、香霖堂の店主をしている。
今日は永遠亭の主、蓬莱山輝夜さんの依頼で倉庫の物の鑑定を頼まれ、こうしてやっていたわけだ。
「さて、今のオルゴールで最後みたいだね。価値のある書物や骨董品はここ、価値のほとんどないまがい物は向こうに仕分けておいたよ」
「お疲れ様でした。随分と量もあったし、もっと大変かと思ったら案外早く終わりましたね」
「鈴仙さんが手伝ってくれたからね。僕が一人で作業していたら恐らく夜までかかっていたよ」
僕がそう言うと鈴仙さんは照れながら微笑んだ。なんだか微笑ましい。
などと思っていると、部屋の襖が開いた。
「もう終わったみたいですね。お疲れ様でした」
輝夜さんに仕える従者であり、この幻想郷の数少ない医者でもある八意永琳さんが部屋に入ってきた。
「向こうの部屋にお茶と菓子を用意したので召し上がってください。うどんげ、あなたも手伝いご苦労様、霖之助さんと一緒に休んでいいわよ」
「はい」
永琳さんに言われ、僕は鈴仙さんに奥の部屋へと連れて行かれた。
「さぁ、どうぞここへ」
そう言って鈴仙さんに座るように促され、僕は座布団の上に座った。
「どうやらこれみたいですね」
鈴仙さんが僕にお茶の入った湯のみと笹の葉に包まれた和菓子を出してくれた。
「それじゃ、遠慮なく頂くよ」
「はい、どうぞお召し上がりください。さて、私もいただきます」
湯のみに口をつけてゆっくりとお茶をすする・・・と。
「(これ・・・本当にお茶なのか・・・?)」
異様な苦味が口に広がった。さらに、喉ごしも悪く、何やらドロドロした感じで喉に引っかかる・・・
「どうかしましたか?」
「い、いや、何でもないよ。ちょっと珍しいお茶だと思ってね」
「そうですか?私には普通のお茶のように思いますけど」
鈴仙さんはきょとんとした様子で和菓子をつまんでいた。うーむ・・・味覚の違いなんだろうか。
幸い、和菓子の方はいたって普通の和菓子であったため、なんとかそれでお茶を全て飲み干した。
流石に厚意で出されたものをまずいからという理由で残すなんていうのは失礼にあたる。
「ふぅ・・・ご馳走様。それじゃ僕はそろそろ帰ろうかな。」
「そうですか。では竹林の出口まで御送りしますね。」
こうして僕は自分の店へと帰ってきた。先ほどのお茶のせいだろうか、さっきから胸焼けのような症状が身体を蝕んでいる。
「今日はもう寝よう・・・」
水を一杯飲み干し、布団を敷き、僕は倒れるように眠りについた。
このときはただ、その胸焼けに苦しんでいただけだったが、まさかこれからあんなことが起こるだなんて夢にも思わなかった。
時間は少し遡り、僕が帰途についた少し後。鈴仙さんが永琳さんに呼ばれていた。
「うどんげ、さっきあなた達に出したお茶の湯のみを持ってきなさい!」
どこか慌てている様子で鈴仙さんに強い口調で命令をしている。
「は、はい、これですよね?」
永琳さんがまじまじとその湯のみを見る。
「この湯のみはどっちが飲んだの?」
「えっと、それは霖之助さんですね。」
鈴仙さんがそう言うと永琳さんは、ハァ・・・とため息をついてうなだれた。
「私としたことが・・・なんてヘマを・・・」
「えっ・・・?」
「さっき私の研究室にお茶の入った湯のみがあったからまさかとは思ったけど・・・調合していた薬を霖之助さんに飲ませてしまったわ・・・」
「えぇー!?」
鈴仙さんの声が部屋中に響いた。
場面は戻り香霖堂。
鳥のさえずりで僕は目が覚めた。
昨日はあれほどひどかった胸焼けが、まるで嘘だったように消えていた。
「結局原因はわからなかったけど・・・まぁ大事にならなくてよかった」
と、安堵し、店を開く準備をした。
カランカラン。
僕が商品を並べていると、ドアの開く音がした。まだ開店はしていない。こちらの都合お構いなしに一人の少女が入ってきた。
「おーいこーりん!起きているかー?」
いつもの常連客、霧雨魔理沙である。彼女とは結構古い付き合いで、彼女の実家の店で修行をさせてもらっていたこともあり、よく僕の店に出入りしている。
まぁ・・・大抵勝手に売り物を持っていく困ったお客さんなんだけどね。
「で、今日は一体なんの用なんだい?」
「なんか珍しいマジックアイテムを手に入れたからこーりんにその使い道を教えて・・・もらおう・・・と・・・」
僕が魔理沙の方へ振り向き、丁度魔理沙と視線が合った瞬間。急に魔理沙の様子がおかしくなった。
「ん・・・魔理沙?どうしたんだい?息があがってるけど具合でも悪いのかい?」
僕がそう言って魔理沙の額に手をあてて熱を測ろうと近づいた・・・次の瞬間。
「えっ・・・?」
いきなり魔理沙が僕に強く抱きついてきた。
「こーりん・・・好き・・・愛してるよぉ・・・」
「なっ!?」
突然の告白。魔理沙が僕のことを・・・?彼女とは長年の付き合いになるが今までそんな素振り一切見せてなかったのに・・・
「お願い・・・キス・・・してほしい・・・」
そう言って魔理沙は目を閉じて背伸びをして僕にキスをねだってきた。
ここでようやく、事態がおかしいことに気付いた。そもそも魔理沙は道具の鑑定に来たはずだ。それがいきなり僕の顔を見た瞬間こうなった・・・
「何か毒キノコでも食べたのか・・・?」
魔理沙はよく魔法の森に生えているキノコを食べている。あの森には様々なキノコが生えており、毒・・・というか変な効能のキノコも数多くある。
さしずめ、惚れ薬だの媚薬なんかの効能があるキノコを食べ、丁度うちに来たときその症状が発症した・・・ということではないだろうか。
そんな風に考えを巡らせていると、キスをねだって目を瞑っていた魔理沙が目を開いて泣き出しそうな顔で・・・
「どうして・・・してくれないんだ?私じゃ女の魅力がないのか・・・?」
上目遣いで悲しそうな瞳で僕を見つめてくる。不覚にもその表情に一瞬心を奪われた。・・・が、次の瞬間、一気に血の気が引いた。
「だったら・・・私の魅力を見せてやる!」
そう言って魔理沙は何のためらいも恥じらいもなく、服を脱ぎ始めた。
「う、うわぁあああああ!」
「こーりん!?」
僕は店から逃げるように飛び出した。そして振り返ることなくただがむしゃらに逃げ出したのだ。
もしあのまま魔理沙と一緒にいたらそれこそ超えてはいけない一線を越えてしまいそうな気がしたから。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
がむしゃらに走っているといつの間にか博霊神社の近くまで逃げてきていた。
「丁度いい、霊夢にかくまって貰おう・・・」
そう考え、神社に入ると、丁度霊夢が掃除をしていた。
「あら・・・?霖之助さん?そんなに慌ててどうしたの?」
「すまない、事情は後で話すから魔理沙からかくまって欲しい」
「え、えぇ?」
息を切らしてそう言った僕を霊夢が心配そうに覗き込んだ。
「霖之助・・・さん・・・?」
霊夢がジーっと僕の方を見つめてくる。
「霊夢?どうかしたのかい?」
僕が声をかけると霊夢はハッとして我に返った。
「あ、うぅん、なんでもないの。それより、私の勘だと多分魔理沙はここにも探しにくるわ。そこの部屋の中に隠れてて」
霊夢に促され、僕は神社の一室に身を潜めていた。すると僕が隠れるのとほとんど変わらないくらいのタイミングで魔理沙の声が聞こえた。
「霊夢!こーりんを見なかったか!?」
「いいえ?今日はまだ見てないけど・・・どうかしたの?」
「い、いや、何でもない。それじゃ私は他の場所を探すからもし見かけたら教えてくれよな」
そう言って魔理沙は飛んでいったようだ。
「ふぅ危なかった・・・」
僕がホッとしていると霊夢が入ってきた。
「魔理沙はもう行ったみたい」
「あぁ、そうみたいだ。おかげで助かったよ」
「これで・・・二人きりになったわ」
「うん、二人きり・・・?」
ん・・・?二人きり・・・?今自分が口にした言葉に妙な違和感を覚えた。そして霊夢の方へ顔を向けると・・・
「霖之助さん・・・」
顔を染めて切なそうに僕の名前を呼ぶ霊夢の姿があった。
「れ、霊夢?どうしたんだ?」
「あのね・・・私、霖之助さんが好きなの・・・だから・・・私を好きにして・・・」
そう言って霊夢は上着を脱ぎ、さらし一枚になった。
「よ、よすんだ霊夢・・・悪い冗談は・・・」
「冗談なんかじゃないわ・・・」
今度はスカートに手をかけた。
「(くっ・・・一体どうなってるんだ!?)」
僕は急いでこの場から逃げようと襖を開けようとした。しかし・・・
「開かない!?」
「この部屋に結界を張ったの・・・これなら誰にも邪魔されないでしょ?霖之助さん・・・」
まずい!逃げることが唯一僕の対抗できる手段だというのに。それができないとなるともう僕にできることは・・・
恋符「マスタースパーク」
そのとき、突然、僕と霊夢の間を縫うように、激しい閃光が走った。
部屋の一部に大きな穴が開き、その向こうには先ほど向こうに行ったはずの魔理沙の姿があった。
「・・・やっぱり、お前がこーりんを隠してたんだな霊夢」
「魔理沙・・・よくもうちの神社を壊してくれたわね」
「ふん、お前が結界なんか張ってるから悪いんだろ?しかも私のこーりんを独り占めしようとするなんて・・・」
「何が私の・・・よ。霖之助さんは私のものよ!」
いや、僕は二人のものじゃないんだけど。
「いいぜ、だったらどっちのものかきっちりさせようぜ」
「望むところよ!」
こうして二人の弾幕勝負が始まった。彼女達のスペルカード宣言の声やら弾幕の被弾音やらで辺りは轟音に包まれた。
「今がチャンス・・・!」
僕は気付かれないようにそっと神社を抜け出し、そのまま走って逃げ出した。
今の僕には状況がよくわからない。一先ず、気持ちの整理するために自分の店の帰ることにした。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「ふぅ・・・」
自分の店のところまで来ると、僕はすっかり息を切らしていた。
体力にはそれなりに自信はあったが、こうもずっと走りっぱなしだと流石にもう限界だ。
「丁度いいところに」
と、僕が息を整えていると急に前方から声が聞こえた。顔をあげるとそこにはメイド姿の少女が立っていた。
紅魔館のメイド長、十六夜咲夜さんだ。彼女もうちの常連客でよく紅茶だの珍しいものだの買いに来てくれる。
「紅茶の葉を切らしてしまって。買いに来たのだけどまだ店が閉まっていてどうしようかと思っていたところだったんですよ。」
「あぁ、すまない。すぐ用意するよ」
僕は慌てて店を開け、紅茶の葉を袋に詰め始めた。
「・・・よし。これでいいかな」
「ありがとうございます」
僕は咲夜さんに紅茶の袋を渡した。
「それでは代金はこちらに・・・」
お金を差し出した咲夜さんと目が合った。と、急に咲夜さんがまるで人形のように微動だにしなくなった。
「咲夜さん?」
僕が声をかけるとハッとして元の彼女に戻った。
あれ・・・さっきもこんなことあったような・・・?
「あ・・・すいません。なんだか急にボーッとしちゃって・・・それでは帰ります」
「はい、またの来店をお待ちしてます」
そう言って咲夜さんを見送ると、僕は店の置くの机に向かい、さっき起きたことの整理をはじめた。
最初は魔理沙の様子が急におかしくなった。・・・それはキノコかなにかの原因かと思っていたがどうやら違うようだ。
霊夢もまったく同じ状態になってしまったからだ。二人が一緒に食事をして、二人ともそういう症状になったのか・・・
いや、いくらよく交流のある二人でも、同時にキノコなんかの毒にやられるはずがない。
霊夢は勘のいい子だからそういう危機があった場合すぐ気がつくはずだし・・・
と、ここで僕は大事な部分に気がついた。
「原因は・・・僕なのか・・・?」
二人とも僕の顔を見た瞬間、急にあんな風になった。だとするとやはり原因は僕の方にあるのだろう。
と、そこまで考え、ふと、嫌な予感がした。
「・・・霖之助様・・・」
そして僕の予感は的中した。僕が顔をあげると、そこには顔を染めて僕を見つめてくる咲夜さんの姿があったのだ。
「咲夜さん・・・」
「私・・・霖之助様のことが好きです・・・だから、どうか私をあなたのものにしてください・・・」
そう言ってスカートの裾をゆっくりと持ち上げる・・・
「いっぱい・・・ご奉仕させてください・・・」
「ああもう・・・またか!!」
僕はまた走り出しこの場から逃げようとした・・・が、
「何処へ行くのですか・・・ご主人様。」
店を出た瞬間、すでに咲夜さんは僕の目の前にいた。
そして咲夜さんが逃がさないと言わんばかりに僕の首に腕を回し、ギュっと強く抱きしめてきた。
「さ、咲夜さん、やめるんだ・・・」
「霖之助様ぁ・・・」
本当にまずい・・・魔理沙や霊夢はまだ少女だったため何とか自分を保ってこれた。だが咲夜さんはほとんど大人の女性に近い。
その艶かしい身体で迫られたら、いくら僕でも理性が切れるのは時間の問題だ・・・
僕の頭の中で理性という天使と煩悩という悪魔が葛藤している。
「いいですか?例えどんなに迫られてもいたずらに女性を手篭めにしてはいけません!なんとしても耐える。それがあなたの善行です」
「何言ってるんですか、目の前の子はあなたを求めているのですよ?その期待に応えてあげるのがあなたの善行です!」
「「さぁ、白黒はっきりさせなさい!!」」
あれ?天使と悪魔じゃなくてどっちも閻魔様なんだけど・・・
「く・・・」
僕の手がゆっくりと咲夜さんの身体へと伸びていく・・・やはり僕も男なんだ、よくここまで我慢できたよ・・・
観念して咲夜さんの身体を触ろうとしたその瞬間!
懶符「生神停止(アイドリングウェーブ)」
突如降り注いだ弾幕に、咲夜さんが反応し、僕から身体を離した。
それと同時に鈴仙さんが姿を現した。
「霖之助さん!こっちです!」
彼女は僕の手を握るとそのまま勢いよく空へ飛び上がった。
「すいません!ちょっと辛いかもしれませんが我慢してください!」
一気に速度が上がり、あっという間に咲夜さんを振り切った。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「ふぅ・・・とりあえずここまで来れば安心ですね」
迷いの竹林、丁度永遠亭に続く道の途中だろう。そこまで来て鈴仙さんは僕を地上に降ろしてくれた。
「とりあえず、手短に今置かれている状況を説明しますね。今の霖之助さんの眼はすごく強力な魅了の能力があるんです。異性がその眼と視線があえば、先ほどのメイド長のようにあなたの虜になってしまう・・・」
と、その説明を聞いて、一つ不安がでてきた。
「もしそれが本当なら・・・君も大変なんじゃ?さっきも何度か視線があったし・・・」
「あ、それならご心配なく。その眼に魅了されるのは人間の女性だけなので」
なるほど、だから彼女達三人には効いたのか。
「でも、どうしてこんなことに・・・」
「えーっと・・・」
鈴仙さんが複雑な表情をして目を逸らした。
「実は・・・昨日、霖之助さんに出したお茶が・・・」
・・・あ。・・・なるほど、それなら全部話が通る。
「それで、師匠が解毒剤を作っているので、それができるまではうちでかくまおうという話になったので」
「それは助かるよ」
「それじゃあ急いで帰りましょう」
と、鈴仙さんが駆け出そうとした瞬間。
神霊「夢想封印 瞬」
魔砲「ファイナルマスタースパーク」
空虚「インフレーションスクウェア」
「きゃああああああ!?」
三者三様の強力なスペルが鈴仙さんを吹き飛ばした。
「鈴仙さ・・・うわぁああああ!?」
あまりにもスペルが強力なため、すぐ近くにいた僕も直撃を受けた。
吹き飛ばされる中、だんだんと自分の意識が薄れていくのを感じた・・・
・・・ここはどこだろう。
ぼんやりとした意識の中、見慣れた天井が目の前にある。自分の店の寝室の天井だ。
まさか今までの出来事は全部夢だったのか・・・?
そう思って僕は身体を起こそうとした・・・が身体が動かない。まるで金縛りにあっているような、意識はあるのに身体がまったく動かせない状態だった。
そして、このときようやく、彼女達の存在に気がついた・・・
両脇には霊夢と咲夜さん。そして僕の上には魔理沙が乗っている状態で三人とも幸せそうに寝息を立てていた。
それだけでも問題だが、さらに衝撃的だったのが、彼女達は皆、下着姿でさらに僕は上半身裸という状態だったからだ。
「なっ!?」
思わず大きな声を出してしまった。すると、ほぼ同時に三人が目を覚ました。
「おはよう・・・こーりん」
「おはよう、霖之助さん・・・」
「おはようございます、霖之助様。」
そして、また彼女達は艶かしい表情を浮かべる。
「こーりんが気絶してる間、ずっとこうして添い寝してあげてたんだぜ」
「そ、そうなんだ・・・ところで三人ともどうして一緒に・・・?」
「えっと、それなんだけどね、私と魔理沙で争ってたら咲夜が、皆で霖之助さんを愛せばいいじゃない?って言ったから」
なんて極論を出してくれたんだ・・・咲夜さん。
「だって・・・私達が霖之助様を思う気持ちは同じでしょう?だったら皆で霖之助様に尽くせばいいじゃないかって・・・」
「まったく、いいアイディアだぜ、咲夜」
「じゃあ・・・なんで僕は動けなくなってるのかな?」
「それは私が結界を使って霖之助さんの動きを封じてるから。霖之助さんったら照れちゃってすぐ逃げ出そうとするんだもの・・・」
どうしたらこの状況から逃げ出せるんだろうか・・・
僕はただそれだけを考えていた・・・しかし、もうすでに僕の最後を告げるカウントダウンは始まっていた・・・
「それじゃ・・・こーりん・・・私達を貰ってくれ・・・」
「優しくして・・・ね?」
「一生懸命ご奉仕させてもらいますね・・・」
そう告げて彼女達は身に着けている最後の布に手をかけた・・・
「や、やめろぉおおおお!!」
バリンッ!!
と、僕が叫ぶのとほぼ同時に、窓が割れ、一本の矢が僕の寝室の壁に突き刺さった。
そして、その矢には何やら包みが結ばれていて、壁に刺さったのと同時に粉状の物質が部屋中に広がった。
すると、先ほどまで艶かしい様子で僕に迫っていた彼女達の様子が元に戻っていった。
「まさか・・・解毒剤・・・?」
「あれ・・・私は何を・・・?」
「何でこんなところにいるのかしら?」
「確か・・・紅茶を買いに来たはずだったのだけど・・・」
皆、元に戻ったようだ。これで一安心・・・?
いや、ちょっと待った、今正気に戻ったらすごくまずい状況じゃないか?これ・・・
「あ、あの・・・皆?」
僕が恐る恐る声をかけると三人は一斉に僕の方を見た。そして、自分達が下着姿だということにも同時に気がつき・・・
「「「・・・」」」
「まず、僕の話を聞いてほし・・・」
「「「きゃぁあああああああ!?」」」
こうして僕は、永琳さんが駆けつけて、誤解を解いてくれるまで、彼女達のスペルカードの餌食となった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
永遠亭の病室。そこに置かれているベッドに僕は寝かせられていた。
隣のベッドには僕と同じくらいボロボロになってる鈴仙さんが寝ていた。ある意味彼女が一番の今回の被害者かもしれない・・・
そして、僕のベッドのまわりには治療をしてくれた永琳さんと申し訳なさそうな顔で心配そうに僕の様子を見ている三人の姿があった。
「まったく、貴女達ったら、無抵抗な人に思いっきりスペルを撃ちこむなんてやりすぎよ。普通の人なら命を落としかねないわ」
永琳がやれやれといった様子で三人に言い聞かせた。三人ともシュン・・・となって俯いてしまう。
「師匠が諸悪の根源なんですけどね・・・」
鈴仙さんが皮肉をこめてポソッと僕に呟いた。
「あら?うどんげ、何か言ったかしら?」
「い、いいえ、何も」
鈴仙さんはビクッとして黙り込んでしまった。やはり永琳さんはどこか凄みがあるなぁ。
「まぁ・・・あまり彼女達を責めないでやってください。実際、あんな状況だったら誰だってこうしますよ」
「そうかもね・・・ところで、霖之助さんたら結局誰にも手をださなかったのよね?三人とも好みじゃなかったのかしら?」
何故こんなとこでそんな質問をするのだろうかこの医者は・・・なんか三人ともどこかムッとして怒っているような気がした。
「いえ・・・何度も危ないところまではいきましたよ・・・ただ、皆、薬のせいで無理矢理僕に惚れさせられてただけだし。
彼女達だって他に好きな人くらいいるだろうし、それなのに僕が彼女達の本心を無視してそんなことするのは許されないでしょう・・・?」
「おやおや、これは随分と紳士的な意見だこと・・・。まぁ、あまり喋っていると傷の治りも遅くなるでしょ、ゆっくり寝て傷を癒してね」
「ありがとうございます」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
それから数日後。
僕の怪我もほとんど完治して、またこうして店を再開することができた。
ただ、少し気に掛かることがある。
「ごめんください」
「はい、いらっしゃい・・・って永琳さんか」
「えぇ、近くまで来たものだから寄ってみました。怪我の具合はどうかしら?」
「おかげさまですごくいいですよ」
「それはよかった」
丁度よかったので永琳さんにこの場を借りて相談をしてみることにした。
「あの・・・例の薬のことなんですが・・・あれって本当に解毒されたんですか?」
「それはどういう・・・?」
不思議そうにそう答える永琳さんに僕は机の上に置いてあったものたちを持ってきて見せた。
「これ、さっき彼女達が代わるがわる僕のところに持ってきてくれたんですが・・・」
それぞれ、霊夢からお茶の入った水筒、魔理沙から弁当、咲夜さんからはクッキーを貰った。
「前よりも頻繁にここに来るし・・・たまに、あの時みたいなあからさまなものじゃないけれど僕の方を見て顔を染めたりするんです」
「ふむふむ・・・ちょっとその渡されたものを貰ってもいいかしら?」
そう言うと永琳さんはそれぞれ一口ずつ食べてみせた。
「うん。お茶には媚薬、弁当には惚れ薬、クッキーには興奮剤がそれぞれ入っているわ」
「えっ!?それってやっぱりまだ・・・」
例の薬の効果が残っているというのだろうか?と、深刻になって考えていると永琳さんが急に笑い出した。
「フフッ、ごめんなさい、冗談よ。あなたがあまりにも難しい顔してたからちょっとからかってみたの」
「まったく、脅かさないでくださいよ。・・・でも、それじゃ彼女達は一体・・・?」
すると、さっきとは別のニヤリとした笑みを浮かべ永琳さんは僕にこうささやいた。
「決まっているじゃない。薬なんかじゃなくて、本当にあなたのことを気になりだしたのよ」
えっ・・・?それじゃあつまり・・・あの彼女達の態度は・・・
急に自分の顔が真っ赤になっていくのがわかった。
「今度はきちんと応えてあげなきゃいけないみたいね?彼女達の本心に」
そう言い残すと面白いものが見れたと言わんばかりに楽しそうに永琳さんが出ていった。
一人残った僕はというと、これから先どう彼女達と接していけばいいのかと頭を抱えて悩んだ。
END
そんな所に行ったら搾り取られてミイラになるか男の天狗にやらないかされちゃうじゃないか!
むしろ新聞を届けに来る時を狙って拉致監禁コースで(ry
それはそうと楽しませていただきました
個人的に霖之助は呼び捨てで言うのではないかと思います
しかし
神様用はないのですか?
どっちも好きだが…また新たなフラグ立てる気か…本人に自覚はないだろうが…
しかし、だいぶ楽しめる内容だった…最後に予想外の展開があったが・・・
個人的に霖之助はもっと枯れててもいいくらいw美少女?そんなの関係ねえ!
>男の天狗にやらないかされちゃう
噴いたwその発想は無かったわwww
どんだけ惚れてんだ!?
薬が効き始めてからの、3人娘の霖之助への誘い方にハァハァした俺は変態だw
ちなみに香霖は俺の嫁
唯、少し気になったのは、時間は少し遡り~から~部屋中に響いた。の件。
この話は霖之助視点なので、霖之助がいないここを彼の視点で語るのは違和感を感じました。
ここだけは鈴仙もしくは永琳の視点にすべきでは、と思いました。
あと、気になるところが二つ。
結の部分の「ただ、少し気になること…」は「気に掛かる」が良いかも(意味同じですが)
それと、その後すぐのモノローグにも「ただ」があるので、こちらは「なので」が良いかと思います。
えーりんとの会話後にこれは説得力なさすぎww
コメントに頂いた部分も含め、誤字脱字修正を加えました。
>13 情報ありがとうございます。香霖堂で書いてるなら間違いなさそうですね。
>14 鈴仙と永琳の会話は指摘されて読み返してみたら確かに違和感がありました。が、修正するとなると大幅に文章を直さなくてはならなくなるため、今回はこのままでご了承ください。
>15 霖×咲・・・そう言われると書いてみたくなりました。というか書きます。ただ投稿するかどうかはわかりません。また、指摘された部分が確かに少し違和感があったので修正しました。
>16 ありがとうございます。
>17 いやいや、これは変態的な行為ではないですよ。男性として健全な行動だと思います。モラルが無いだけです。
まさか霖之助自ら動くとは思いもしませんでしたねぇ…
そして永琳…奴は危険すぎるwww
それはそれとして椛は何があっても渡す気はありません……
と言いたいですが、霖之助と椛っていう話も見てみたいy(ry
こういう部分に粋なセンスを感じます。
面白かったです!
>>20 ありがとうございます。今更どうでもいい話ですが最初は天子と子悪魔で書いてました。映姫様に書き直したのは「白黒はっきり」を使いたかった。というただそれだけです。それに天子じゃ天使のイメージないですしね(酷
どちらもイイッ!!
ふむ、もっとだ。もっともっともっとカオスにできる! 収拾付かなくなるくらいのが見たい!
>>23 袴はいいものですよね。あと旧作も興味あってSSに出してみたいんですけどねぇ。いかんせん某サッカーゲーム程度しか旧作のキャラは知らないのでなかなか・・・
>>24,25 どうぞどうぞー。用法用量を守って正しくお使いください。ちなみに~リュウグウノツカイ用~は譲れませんのであしからず。
>>26 ありがとうございます。こうしてコメントいただけるのは嬉しいです。
>>27 もっとカオスで収拾つかなく~・・・正直このくらいが今の私の限度だと思っています。まだまだ未熟なもので・・・できるものなら、某4行SSの方のセンスを分けていただきたいものです。
ニヤニヤが止まらなかった