この作品と 八雲紫と橙の日向ぼっこ 昔話編 とは関連してはいますが読まなくてもおそらく問題ありません。
でも読むと少しわかりやすくなるかもしれません。
「はぁい、橙。いいお天気ね」
「ふにゃー」
「面白いお話をしてあげましょうか」
「藍さまのお話ですか?」
「そう。あなた興味あるでしょう?」
やわらかい太陽の日差しがさんさんと注ぐ縁側で、珍しくすきま妖怪八雲紫とその式の式、橙が日向ぼっこをしていた。
うとうととまどろみに沈むその式の意識は、八雲紫によって覚醒した。
紫は上々の反応を確認し、八雲藍の幼少期の話を始めた。
昔々の、ある日のこと。
私の家での生活に慣れてきたあの子にひとつ仕事を頼んだの。
まだまだ家事の手際は良くないんだけどね。
私は藍をおつかいに行かせることにしたの。
一応人間と同じ生活をしてるから、ね。今もあの子人里へ出かけるでしょう?
…そうねぇ、確かにあの子の姿を見て人間が手を出さないかは心配だったわ。
まぁ、何かあったら私が黙っていないんだけどね。
「藍、おつかいに行ってきてほしいの」
「おつかいってなんですか?」
「人里に必要なものを買いに行くことよ。
それで、買ってきてほしいものは、にんじん、じゃがいも、豚肉、マッシュルーム、チーズ。
この紙にメモしてあるから、この通り買ってきてほしいの。はい、お金。
余ったお金で好きなものを買ってもいいわよ」
「はい、わかりました!」
「知らない人に誘われてもついて行っちゃダメ。危ないと思ったらすぐに逃げなさい。
あとは転んだりしてケガをしないようにするのよ?」
「はい!いってきます!」
意気揚々と家を出て行ったあの子は玄関にもう財布を忘れてるのよ?おっちょこちょいよねぇ、うふふ。
ま、その程度はフォローしてあげてと。
あの子は無事人里へたどり着いた。
お店の場所がわからなくて辺りをきょろきょろ見回していたけど、何とか八百屋さんを見つけてくれた。
「えーっと、にんじんと、じゃがいもと、豚肉と、マッシュルームと、チーズください!これくらい!」
「あいよー!だけどお嬢ちゃん、うちには豚肉とチーズは置いてないんだ。向こうのお肉屋さんで買ってくれるかい?」
「えっ?あっ、はい…」
「はい、にんじんと、じゃがいもと、マッシュルームと、お釣りね!毎度あり!」
「(えーっと、次はお肉屋さん…すぐそこだ)」
「(狐の銭か。ニセモノじゃないよな…よし、本物か)」
「えーっと、豚肉とチーズください!」
「あいよー。どれくらいほしいの?」
「豚肉がこれくらいで、チーズはこれくらいください」
「はいはいー。300円だね」
「はい、これでいいですか?」
「まいど!落とさないようにね~。ところでお嬢ちゃん、油揚げは好きかい?」
「だいすきです!」
「ならよかった。今油揚げとか豆腐とか試売してるんだけど、よかったらどうだい?」
「うーん、お金も余ってるし…油揚げにしようかな」
「まいど!
よいしょ、お嬢ちゃんはかわいいから多めに入れておいてあげたよ。機会があったら感想を聞かせておくれ」
「ほんと?ありがとうおばちゃん!また来るよ!」
「うんと美味しい油揚げ用意して待ってるからまたおいでね」
「うん!さようなら~」
いいわよねぇ。こういう温かい人間好きよ。
この人間はとっくの昔にいなくなってしまったと思うけど…藍はどうしたのかしらね。
「おかえりなさい、藍。きちんとおつかいはできたかしら?」
「はい!にんじんと、じゃがいもと、豚肉と、マッシュルームと、チーズと、油揚げです!」
「あ、油揚げ?…ふふ、ふふふっ!あなたらしいわね。夜のごはんにそれも入れてみましょうか」
「はい。ところで夜のごはんはなんですか?」
「…『かれー』よ!」
「かれー?」
「煮込んだ野菜とお肉ととろとろした茶色い汁をご飯にかけて食べるものよ。美味しさの秘密は魔法の塊」
「う…それは美味しいんですか?」
「もちろんよ!お話だけじゃなくて『かれー』を作ってみないとね。藍、お手伝いよろしく」
「はーい」
「あの子、初めてカレーを見たときは怪訝な顔をして観察してたけど、一口食べたらもう花が咲いたように笑顔になって。
やっぱりカレーは美味しいわよねぇ」
「私はなんとも思わなかったんですけど…カレーってとっても美味しいですよね」
「そうだ、橙。おつかいに行ってきてくれる?」
「はーい、わかりました。何を買ってきたらいいんですか?」
「にんじんと、じゃがいもと、豚肉と、マッシュルームと、チーズを買ってきてくれる?はい、メモとお金」
「むむ…ということはぁ…」
「その通り、今晩はカレー。たまには作ってあげるのも悪くないでしょう」
「やったぁ!いってきまーす!」
「ああ、それと油揚げでも入れてあげようかしらね」
ほのぼのしてていいねえ…
温まりました!!!!
ほほぅ…!確かに美味しそう。これは作らざるを得ない。
今度のお休みにでも作ってみるとします。
ほのぼのを感じていただけたみたいでよかったです。ほのぼの大好きです。
>奇声を発する程度の能力さん
もふもふ!あぁっ、藍さまのしっぽに包まれてみたいです。
温まっていただけたようで何より!
藍さまってとても温かそう。
そしてお母さんゆかりんに愛を感じた。
式神は道具っていうけどやっぱり温かい家族みたいなのがいいね。
くっ、これが八雲さん家の「真っ」の力…………!
ゆかりんはあの後疑った店主さんに「ウチのっ!(もふっ)藍がっ!(わふっ)そんな事っ!(てふっ)する訳っ!(しゃふっ)無いでしょうっ!!(むにゅっ)」とか何とか。
ちっちゃい藍さまいいなあ…らんちゃんか…うふふ…
幼藍うふふ……
お母さんゆかりんと幼藍の組み合わせが僕の好物だったり。
藍様も好きですけどね。もふもふ。
>やっぱり温かい家族
ですよねー。
>謳魚さん
今日はおいなりさん食べましたよ。中身はドライカレーで。(関係ない
そんな効果音がするなら疑った店主さんになってみるのもいいかもしれない…!
>でれすけさん
素敵なお話だなんて、ありがとうございます。
何気ない一言にしても言ってもらえるはやっぱ嬉しいものですよね。頑張れます。
おやおやらんちゃんお口の周りにカレーがついてるようふふ。
>こアッー!!がマイブームな程度の能力さん
もっと2828できるお話を投稿していきたい限りですね。
八雲一家は家族愛、これが僕のジャスティスだ!
おやおやらんちゃんニンジン残してるようふふ。