【ビギンズナイト】
「……お、ねえ……ちゃん…………?」
私の呼び掛けも虚しく、お姉ちゃん――古明地さとりの肉体が床の上に崩れ落ちる。
床に形作られる朱色の水溜りはお姉ちゃんの血溜まり。
鼻腔を刺激する鮮烈な血の臭いが、これでもかと己を主張をしていた。
「お姉ちゃん……? ねぇ、お姉ちゃん……お姉ちゃん……お姉ちゃんってばぁ! 嘘でしょ? お姉ちゃんッ!」
呼びかけても、その肩を揺すっても、お姉ちゃんは私の声に応えてくれない。
ただ、ひゅぅひゅぅと途切れかけた息を必死にしているだけ。
その小さな背中には、銀色に輝く大きなナイフが一本。
あいつだ……この館――紅魔館の従者が放った悪魔祓いのナイフ。
真っ赤な瞳で私を睨み付ける、白銀色をした悪魔の狗。
そいつが、私のお姉ちゃんの命をあっけなく奪い取ってしまった。
「終わりですわ」
タン――と廊下の向かいに着地したメイドの手には、お姉ちゃんの背に突き立てられたのと同じナイフが合計四本握られている。
殺すつもりなんだ。紅魔館の秘密を暴こうとした、私達姉妹を。
「……こ……い、し…………逃げ、て…………」
「――! お姉ちゃん、意識が――……」
血溜まりにうつぶせになったお姉ちゃんが、ぽつりと声を漏らす。
良かった。まだ生きていたんだ。
反射的に私はお姉ちゃんの身体を抱えようとして、
「良いから、逃げなさい!」
きっと、最後の力を振り絞ったのだろう。
あの優しいお姉ちゃんが発したとは思えない怒声で私に命じると、そのまま震える足を強引に立たせ、あのメイドに対峙する。
お洋服は血で真っ黒。顔は血が抜けて青白くなっている。それに、もう息もあまりしていない。
「逃げなさいって、お姉ちゃんは――わぷっ!?」
無言で、帽子を被せられる。
お姉ちゃんの愛用の帽子だ。
"一人前になるまでは、帽子はお預け"なんて言って、ずうっと私から取り上げていた帽子。
「……地霊殿の事は任せたわよ」
そして、お姉ちゃんは最後の想起を放つ。
私は、もう何が何だか分からなくて。
それでも、お姉ちゃんの言葉を信じるしかなくて。
お姉ちゃんの犠牲を無駄にしたくないと思ったその時には、涙で顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら走っていて。
これが、全ての始まった夜。
――貴女、悪魔の妹と相乗りする勇気はあるのかしら?――
――ッ! お前ッ!――
――やるなら手を貸してあげる。貴女と私、二人で力を合わせればこの場を逃げる事だって可能なのだから――
――……やってやろうじゃない。旧都を守れるなら、悪魔とでも相乗りしてあげるわ!――
古明地こいしと、フランドール・スカーレット。
二人で一人の妖怪探偵少女が生まれた夜――ビギンズナイト。
【EXの検索/二人で一人の探偵少女】
「さぁて、検索を始めようかしら?」
ヴワル魔法図書館――フランの脳内に移植されたそれの、膨大な蔵書が空中に乱舞する。
洋書。和書。メモ書き。巻物。石版。その他、ありとあらゆる情報が記録された蔵書が幾億冊。
膨大な知識と情報を纏めたデータベース。
幻想郷で起こった森羅万象を纏めた、唯一無二の超巨大図書館だ。
「で、こいしちゃん。今回の検索のキーワードは?」
「キーワードは三つ。"兎"・"薬剤師"・"竹"……以上だよ」
「はぁい! まずは、"兎"っと! んでもって次は"薬剤師"ッ!」
軽快な合図と共に、フランの手が握られた刹那。
空中を舞う蔵書の七割が消滅――次いで、残った蔵書の半分が消滅していた。
「最後は、"竹"だぁっ!」
最後には一枚のメモを残し、その他全てが塵へと化す。
これがフランが最も得意とする検索アルゴリズム。
無尽蔵の蔵書から、無関係な物を全て破壊し、消去法で求める情報を得る検索技術だ。
「……ふふふっ。見つかったよ、こいしちゃん」
求める情報の閲覧を終えたのだろう。
フランは満面の笑みで相棒――古明地こいしに向けて、語りかけていた。
【さらばSよ/奇跡は風と共に】
「あははっ……幻想郷は、良い風が吹くんだなぁ……」
紅魔館の幹部・十六夜咲夜のナイフをその身に受けながらも、東風谷早苗は笑顔だった。
思い返せばろくな人生――神だから神生だろうか? とにもかくにも、まともな生涯ではなかった。
外の世界を追われ、幻想郷に逃げ込み、そこでは覇権争いに巻き込まれた。
それでも……それでも、きっと、
「御終いよ。早苗」
「はい。きっちりと、殺して下さい――せめて、私がこの幻想郷の風になれる様に」
「発動――"殺人ドール"ッ!!」
早苗にとって、この街は愛すべき故郷だったのだろう。
迫り来る無尽のナイフは死の具現。
それでも、最後の瞬間を迎えるまで、早苗は笑顔のままだった。
【歩く完全東方図鑑+α】
「貴様ァ……何者だ!?」
「通りすがりの正体不明さ! 覚えておきな!」
「おのれぇ……ぬえイドォォォォォォォォ――――ッ!!
貴様のせいで、この世界も破壊されてしまったァァァァ!!!!!」
「その命、竜神様に返しなさい!」
「歴史の運行を守るのが私の使命。参りますわよ、皆さん」
「あ゛ぁ? 誰がお前の命令なんか」
「ほうほう。それなら我が稗田家の権限で求聞史紀にモコタロスさんの恥ずかしい写真を貼り付けて永久保z」
「ごめんなさ――――――いっ!!」
「法の道を行き、全てを許しましょうッ!」
「あははッ。確かにまあ、鬼だけに鍛えているしねぇ」
「私は、太陽の仔ッ! 霊烏路空・RXッ!!」
「ユユゴザァバ,オンドゥルルラギッタンディスカ!?」
「……お、ねえ……ちゃん…………?」
私の呼び掛けも虚しく、お姉ちゃん――古明地さとりの肉体が床の上に崩れ落ちる。
床に形作られる朱色の水溜りはお姉ちゃんの血溜まり。
鼻腔を刺激する鮮烈な血の臭いが、これでもかと己を主張をしていた。
「お姉ちゃん……? ねぇ、お姉ちゃん……お姉ちゃん……お姉ちゃんってばぁ! 嘘でしょ? お姉ちゃんッ!」
呼びかけても、その肩を揺すっても、お姉ちゃんは私の声に応えてくれない。
ただ、ひゅぅひゅぅと途切れかけた息を必死にしているだけ。
その小さな背中には、銀色に輝く大きなナイフが一本。
あいつだ……この館――紅魔館の従者が放った悪魔祓いのナイフ。
真っ赤な瞳で私を睨み付ける、白銀色をした悪魔の狗。
そいつが、私のお姉ちゃんの命をあっけなく奪い取ってしまった。
「終わりですわ」
タン――と廊下の向かいに着地したメイドの手には、お姉ちゃんの背に突き立てられたのと同じナイフが合計四本握られている。
殺すつもりなんだ。紅魔館の秘密を暴こうとした、私達姉妹を。
「……こ……い、し…………逃げ、て…………」
「――! お姉ちゃん、意識が――……」
血溜まりにうつぶせになったお姉ちゃんが、ぽつりと声を漏らす。
良かった。まだ生きていたんだ。
反射的に私はお姉ちゃんの身体を抱えようとして、
「良いから、逃げなさい!」
きっと、最後の力を振り絞ったのだろう。
あの優しいお姉ちゃんが発したとは思えない怒声で私に命じると、そのまま震える足を強引に立たせ、あのメイドに対峙する。
お洋服は血で真っ黒。顔は血が抜けて青白くなっている。それに、もう息もあまりしていない。
「逃げなさいって、お姉ちゃんは――わぷっ!?」
無言で、帽子を被せられる。
お姉ちゃんの愛用の帽子だ。
"一人前になるまでは、帽子はお預け"なんて言って、ずうっと私から取り上げていた帽子。
「……地霊殿の事は任せたわよ」
そして、お姉ちゃんは最後の想起を放つ。
私は、もう何が何だか分からなくて。
それでも、お姉ちゃんの言葉を信じるしかなくて。
お姉ちゃんの犠牲を無駄にしたくないと思ったその時には、涙で顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら走っていて。
これが、全ての始まった夜。
――貴女、悪魔の妹と相乗りする勇気はあるのかしら?――
――ッ! お前ッ!――
――やるなら手を貸してあげる。貴女と私、二人で力を合わせればこの場を逃げる事だって可能なのだから――
――……やってやろうじゃない。旧都を守れるなら、悪魔とでも相乗りしてあげるわ!――
古明地こいしと、フランドール・スカーレット。
二人で一人の妖怪探偵少女が生まれた夜――ビギンズナイト。
【EXの検索/二人で一人の探偵少女】
「さぁて、検索を始めようかしら?」
ヴワル魔法図書館――フランの脳内に移植されたそれの、膨大な蔵書が空中に乱舞する。
洋書。和書。メモ書き。巻物。石版。その他、ありとあらゆる情報が記録された蔵書が幾億冊。
膨大な知識と情報を纏めたデータベース。
幻想郷で起こった森羅万象を纏めた、唯一無二の超巨大図書館だ。
「で、こいしちゃん。今回の検索のキーワードは?」
「キーワードは三つ。"兎"・"薬剤師"・"竹"……以上だよ」
「はぁい! まずは、"兎"っと! んでもって次は"薬剤師"ッ!」
軽快な合図と共に、フランの手が握られた刹那。
空中を舞う蔵書の七割が消滅――次いで、残った蔵書の半分が消滅していた。
「最後は、"竹"だぁっ!」
最後には一枚のメモを残し、その他全てが塵へと化す。
これがフランが最も得意とする検索アルゴリズム。
無尽蔵の蔵書から、無関係な物を全て破壊し、消去法で求める情報を得る検索技術だ。
「……ふふふっ。見つかったよ、こいしちゃん」
求める情報の閲覧を終えたのだろう。
フランは満面の笑みで相棒――古明地こいしに向けて、語りかけていた。
【さらばSよ/奇跡は風と共に】
「あははっ……幻想郷は、良い風が吹くんだなぁ……」
紅魔館の幹部・十六夜咲夜のナイフをその身に受けながらも、東風谷早苗は笑顔だった。
思い返せばろくな人生――神だから神生だろうか? とにもかくにも、まともな生涯ではなかった。
外の世界を追われ、幻想郷に逃げ込み、そこでは覇権争いに巻き込まれた。
それでも……それでも、きっと、
「御終いよ。早苗」
「はい。きっちりと、殺して下さい――せめて、私がこの幻想郷の風になれる様に」
「発動――"殺人ドール"ッ!!」
早苗にとって、この街は愛すべき故郷だったのだろう。
迫り来る無尽のナイフは死の具現。
それでも、最後の瞬間を迎えるまで、早苗は笑顔のままだった。
【歩く完全東方図鑑+α】
「貴様ァ……何者だ!?」
「通りすがりの正体不明さ! 覚えておきな!」
「おのれぇ……ぬえイドォォォォォォォォ――――ッ!!
貴様のせいで、この世界も破壊されてしまったァァァァ!!!!!」
「その命、竜神様に返しなさい!」
「歴史の運行を守るのが私の使命。参りますわよ、皆さん」
「あ゛ぁ? 誰がお前の命令なんか」
「ほうほう。それなら我が稗田家の権限で求聞史紀にモコタロスさんの恥ずかしい写真を貼り付けて永久保z」
「ごめんなさ――――――いっ!!」
「法の道を行き、全てを許しましょうッ!」
「あははッ。確かにまあ、鬼だけに鍛えているしねぇ」
「私は、太陽の仔ッ! 霊烏路空・RXッ!!」
「ユユゴザァバ,オンドゥルルラギッタンディスカ!?」
>見所は、お尻を晒す早苗さん
マジで!?wwww
それとも、平成にやってたライダーって意味なのかな?だったら納得。
マスクドライダーヒジリの続きを書きたくなってきたじゃないかどうしてくれる!(笑)
早咲とか天咲とかさとり様の渾身のバラードとか黒巫女より強そうには見えない金黒巫女とかそれを圧倒するルーミアとかこいしちゃんをスリッパで引っぱたくのは誰かとかこいしったら帽子被ってて妬ましいなちくしょうとか。
……おかしいな、検索しても出てこないんですが。
この地球のどこに眠っているんでしょうか