「ねぇ大ちゃん! お宝を探しに行こう!」
朝っぱらからチルノちゃんが丸めたボロボロの紙を持ちながら目を輝かして言った。
チルノちゃんが言うにはそのボロボロの紙は宝の地図らしい。
もしかしたらそれは勘違いなのでは? とは思えない。むしろ、絶対に勘違いだろうと私は思っている。
いつものことか。
ただその紙からは宝の地図の雰囲気は出ている
隅の方はだいぶ欠けており、雨や土が染み込んで出来たと思われるシミがいい味を出している。
「早く行こう!」そう言ってチルノちゃんは私の手をとって空へ引っ張っていった。
空を飛んでいる間、チルノちゃんは宝の地図を片手に真剣な眼差しで「ロマンだよ、大ちゃん。ロマンが私を呼んでいるよ」と熱弁をふるっている。
何故だろう。そこには私に話かけることを許さない何かがあった。
と更にチルノちゃんが付け加えて言っていた。謎だね。
いつものことか。
そのため、私はその宝の地図を見れない。
話によるとその宝の地図の上に一本の長い矢印が書かれているらしく、それを辿っていくと宝にありつけるとのこと。
だったら最初から矢印の一番先に行けよ。と思うのが普通。
でもそういうわけにはいかない。
矢印の途中に幾つかのポイントがあり、そこに寄って鍵を手に入れないといけないらしく。
その鍵がどうやら次のポイントの鍵を手に入れる鍵らしい。
そうやって進んでいって宝箱を開ける鍵を手に入れる。
あとは宝箱へGOである。
これは面倒な感じがする。
いつものことか。
やっぱり面倒だった。
一番、面倒だったのはチルノちゃんのロマンだった。
矢印に従い、川沿いを行って下流へ向かうとき、
「川下りはイカダでなくちゃ。そしてイカダはロマン」
空を飛べるのに。
……ロマンを説く人に何を言っても無駄か。
でも私たちは木を縛れるようなロープを持っていなかった。
「大丈夫! アタイの氷で木をお互いに括れば!」
氷を木工用ボンドの要領でいくということか。
なるほど。
無理だろうね。
でもチルノちゃんのやる気は無駄にあってそれをすぐに完成させてしまった。
私たちはそれで川の流れに乗った。
イカダからはパチパチという音が響いていて、それは氷だけが入ったグラスに飲み物を入れたときの音である。ようするに溶けている音であった。
だがそんな音を気にせずチルノちゃんは太陽を浴び、陽気にギターを弾くまねをして歌っていた。
その歌は聞いたこともない言葉だったけど愉快な曲であることにちがいない、そう思わせるくらい楽しげな雰囲気があった。
でもイカダに乗っていて“サブマリン”という言葉の連発には首を傾げたくなる。
そして歌い終わって静かになり、パチパチという溶ける音だけになると、狙い澄ましたかと思わせるタイミングでイカダが分裂した。
私達は空に飛びあがり分裂して丸太になったイカダを眺めていた。
あるものは川に飲まれ、あるものは岸に乗り上げたりとそれぞれの行く末があった。
こういうとき、
チルノちゃんは本当に残念そうな顔をする。悔しい、というより失くしたものに対する申し訳なさみたいな。
私はチルノちゃんと遊ぶのは好きだけど、こういう顔を時折、見かける。
だからあまり無茶な遊びを考えてほしくないと思ってしまう。
いつものことか。というわけにはこればかりはいかない。
そんなこんなでそのあとも色々なロマンが現れた。
無人島はロマン。
カブトムシはロマン。
仏像はロマン。
……
といった無理なものを無理に再現してやっと最後の鍵を手に入れた。
面倒だった。
ただここで正直な話をすると最後の鍵を手に入れられるとは思ってもみなかった。
私の経験上、チルノちゃんが地図とにらめっこして正しい方向を選び続けるとはとても考えられなかった。
また私はチルノちゃんが大きなミスをしているときに放つ独特のオーラを感じることが出来る。
それが今回の宝探しではチルノちゃんが真剣になればなるほど大きくなっていき私を不安にさせた。
だが実際には迷う場面はひとつもなく、順調に鍵は見つかっていった。
こういう場合、宝がおぞましいものという話があるから困る。
さすがにそれはないか。
「もう少しで宝箱があるところだよ。どんなのだろうね」
そうだね。
片時も宝の地図を離すことなく凄くうれしそうな声を聞いたら私にも期待が生まれた。
宝はくだらないものかもしれないけど、発見をすることへの興奮もそこにはあった。
私たちは少し呆然としている。
宝があるとされる場所が湖だったのだ。
しかもチルノちゃんの寝床と私の寝床の中間あたりという近場
私が湖に着いてからチルノちゃんに、そんなところに宝箱があれば私たちがその存在にすでに気付いているはずだよ。と指摘すると「えっ? ロマンは……ロマンはどこ?」と悔しそうに宝の地図を握りしめて繰り返していた。
なるほど。
最終的にはたどりつけないといことですか。
ようするに嘘。
さすがにそれは酷すぎる。鍵だけ用意して宝なし、
チルノちゃんの興奮と嬉しそうだった声を返せと言いたくなる。
悔しくなった私は宝の地図を拝借した。
初めて宝の地図を見たが、そんなに難しい要素がなかった。
そのことに余計に焦ったが一からしっかりと確かめることにした。
テストが悪い点で採点ミスを探す生徒みたいな気持ちで
このときほど、チルノちゃんのミスを期待したことはないだろう。
矢印をたどればたどるほど焦り、悔しい気持ちで一杯になった。
結局、矢印は湖のあの場所に通じていた。
二人とも泣きはしなかったが、少し、いや、でも泣きそうかもしれない。
あぁ、最初から私がチルノちゃんの変な一言に気を取られないで地図を見ていればこんなことにはならなかったろうに。
あきらめの悪い私はがむしゃらという表現が似合うように見回った。
矢印だけでなく、地図の端もやけくそで見た……?
「ねぇ、チルノちゃんこの宝の地図どこで見つけた?」
「家」
右下の端は少し切れていて一番最後の文字が削れてしまっているが私には意味がわかった。そこには
さくチル
と書かれていた。
あぁ、泣きそうだった私達は何だったのだか。おかしな気分だ。
それを知ると、何でチルノちゃんが迷わなかったのか。
それはこの地図を作ったのがチルノちゃんで鍵を置いたのもチルノちゃんで宝箱を用意したのもチルノちゃんということだ。
見覚えのある風景だから迷わなかった。それだけ。
そして自分で作ったのを忘れたのだろう。
そんな大事なこと忘れるなよ、チルノちゃん。
まぁ、そんなグダグダな感じだったわけだが
自分の宝箱ということを知り
知り? なんか変な感じがする表現だ。
思い出したと言ったほうが適しているのだろうけど、でもこっちの方がしっくりくる。
もちろんチルノちゃんは嫌がっていたが、一日付き合わされて何もないのはというのは無いだろう。
無理やり宝箱を開けさせたわけだが
その宝の中身というのが私とチルノちゃんが二人で映っている写真だった。
二人の寝床の間、
真剣な表情をしたチルノちゃん
そういうのを考慮すると
私は一体、どういう顔しているのだろうか。
朝っぱらからチルノちゃんが丸めたボロボロの紙を持ちながら目を輝かして言った。
チルノちゃんが言うにはそのボロボロの紙は宝の地図らしい。
もしかしたらそれは勘違いなのでは? とは思えない。むしろ、絶対に勘違いだろうと私は思っている。
いつものことか。
ただその紙からは宝の地図の雰囲気は出ている
隅の方はだいぶ欠けており、雨や土が染み込んで出来たと思われるシミがいい味を出している。
「早く行こう!」そう言ってチルノちゃんは私の手をとって空へ引っ張っていった。
空を飛んでいる間、チルノちゃんは宝の地図を片手に真剣な眼差しで「ロマンだよ、大ちゃん。ロマンが私を呼んでいるよ」と熱弁をふるっている。
何故だろう。そこには私に話かけることを許さない何かがあった。
と更にチルノちゃんが付け加えて言っていた。謎だね。
いつものことか。
そのため、私はその宝の地図を見れない。
話によるとその宝の地図の上に一本の長い矢印が書かれているらしく、それを辿っていくと宝にありつけるとのこと。
だったら最初から矢印の一番先に行けよ。と思うのが普通。
でもそういうわけにはいかない。
矢印の途中に幾つかのポイントがあり、そこに寄って鍵を手に入れないといけないらしく。
その鍵がどうやら次のポイントの鍵を手に入れる鍵らしい。
そうやって進んでいって宝箱を開ける鍵を手に入れる。
あとは宝箱へGOである。
これは面倒な感じがする。
いつものことか。
やっぱり面倒だった。
一番、面倒だったのはチルノちゃんのロマンだった。
矢印に従い、川沿いを行って下流へ向かうとき、
「川下りはイカダでなくちゃ。そしてイカダはロマン」
空を飛べるのに。
……ロマンを説く人に何を言っても無駄か。
でも私たちは木を縛れるようなロープを持っていなかった。
「大丈夫! アタイの氷で木をお互いに括れば!」
氷を木工用ボンドの要領でいくということか。
なるほど。
無理だろうね。
でもチルノちゃんのやる気は無駄にあってそれをすぐに完成させてしまった。
私たちはそれで川の流れに乗った。
イカダからはパチパチという音が響いていて、それは氷だけが入ったグラスに飲み物を入れたときの音である。ようするに溶けている音であった。
だがそんな音を気にせずチルノちゃんは太陽を浴び、陽気にギターを弾くまねをして歌っていた。
その歌は聞いたこともない言葉だったけど愉快な曲であることにちがいない、そう思わせるくらい楽しげな雰囲気があった。
でもイカダに乗っていて“サブマリン”という言葉の連発には首を傾げたくなる。
そして歌い終わって静かになり、パチパチという溶ける音だけになると、狙い澄ましたかと思わせるタイミングでイカダが分裂した。
私達は空に飛びあがり分裂して丸太になったイカダを眺めていた。
あるものは川に飲まれ、あるものは岸に乗り上げたりとそれぞれの行く末があった。
こういうとき、
チルノちゃんは本当に残念そうな顔をする。悔しい、というより失くしたものに対する申し訳なさみたいな。
私はチルノちゃんと遊ぶのは好きだけど、こういう顔を時折、見かける。
だからあまり無茶な遊びを考えてほしくないと思ってしまう。
いつものことか。というわけにはこればかりはいかない。
そんなこんなでそのあとも色々なロマンが現れた。
無人島はロマン。
カブトムシはロマン。
仏像はロマン。
……
といった無理なものを無理に再現してやっと最後の鍵を手に入れた。
面倒だった。
ただここで正直な話をすると最後の鍵を手に入れられるとは思ってもみなかった。
私の経験上、チルノちゃんが地図とにらめっこして正しい方向を選び続けるとはとても考えられなかった。
また私はチルノちゃんが大きなミスをしているときに放つ独特のオーラを感じることが出来る。
それが今回の宝探しではチルノちゃんが真剣になればなるほど大きくなっていき私を不安にさせた。
だが実際には迷う場面はひとつもなく、順調に鍵は見つかっていった。
こういう場合、宝がおぞましいものという話があるから困る。
さすがにそれはないか。
「もう少しで宝箱があるところだよ。どんなのだろうね」
そうだね。
片時も宝の地図を離すことなく凄くうれしそうな声を聞いたら私にも期待が生まれた。
宝はくだらないものかもしれないけど、発見をすることへの興奮もそこにはあった。
私たちは少し呆然としている。
宝があるとされる場所が湖だったのだ。
しかもチルノちゃんの寝床と私の寝床の中間あたりという近場
私が湖に着いてからチルノちゃんに、そんなところに宝箱があれば私たちがその存在にすでに気付いているはずだよ。と指摘すると「えっ? ロマンは……ロマンはどこ?」と悔しそうに宝の地図を握りしめて繰り返していた。
なるほど。
最終的にはたどりつけないといことですか。
ようするに嘘。
さすがにそれは酷すぎる。鍵だけ用意して宝なし、
チルノちゃんの興奮と嬉しそうだった声を返せと言いたくなる。
悔しくなった私は宝の地図を拝借した。
初めて宝の地図を見たが、そんなに難しい要素がなかった。
そのことに余計に焦ったが一からしっかりと確かめることにした。
テストが悪い点で採点ミスを探す生徒みたいな気持ちで
このときほど、チルノちゃんのミスを期待したことはないだろう。
矢印をたどればたどるほど焦り、悔しい気持ちで一杯になった。
結局、矢印は湖のあの場所に通じていた。
二人とも泣きはしなかったが、少し、いや、でも泣きそうかもしれない。
あぁ、最初から私がチルノちゃんの変な一言に気を取られないで地図を見ていればこんなことにはならなかったろうに。
あきらめの悪い私はがむしゃらという表現が似合うように見回った。
矢印だけでなく、地図の端もやけくそで見た……?
「ねぇ、チルノちゃんこの宝の地図どこで見つけた?」
「家」
右下の端は少し切れていて一番最後の文字が削れてしまっているが私には意味がわかった。そこには
さくチル
と書かれていた。
あぁ、泣きそうだった私達は何だったのだか。おかしな気分だ。
それを知ると、何でチルノちゃんが迷わなかったのか。
それはこの地図を作ったのがチルノちゃんで鍵を置いたのもチルノちゃんで宝箱を用意したのもチルノちゃんということだ。
見覚えのある風景だから迷わなかった。それだけ。
そして自分で作ったのを忘れたのだろう。
そんな大事なこと忘れるなよ、チルノちゃん。
まぁ、そんなグダグダな感じだったわけだが
自分の宝箱ということを知り
知り? なんか変な感じがする表現だ。
思い出したと言ったほうが適しているのだろうけど、でもこっちの方がしっくりくる。
もちろんチルノちゃんは嫌がっていたが、一日付き合わされて何もないのはというのは無いだろう。
無理やり宝箱を開けさせたわけだが
その宝の中身というのが私とチルノちゃんが二人で映っている写真だった。
二人の寝床の間、
真剣な表情をしたチルノちゃん
そういうのを考慮すると
私は一体、どういう顔しているのだろうか。
まさに大チルの王道
ところで“サブマリン”連発の歌というのは、まさかとは思いますが『音頭』の方ではないでしょうね?
お空を探しに行こう!に見えた私の目はもう末期orz
大チルは和みますねぇ。
4行後で気づきましたけど。
タグがさくチルだったら多分最後のほうまで騙されてた。
やはりチルノは良い冒険家だ。そして自分の「宝」ってのもちゃんとわかってるんだなぁ。