天下一武道会という一大イベントを終えた幻想郷。しかしその余波は至る所に影響を残していった。
「大会参加者全員の願いを叶える」という魔理沙の願いで、様々な事が同時に起こったのだ。
~ 冥界コンサート会場にて ~
ルナサ 「まさか私達三人共が同じ事を願っちゃうなんてね」
リリカ 「もったいないな~」
メルラン「いいじゃない。みんなが願った事なんだから。きっと願い事も三倍叶ってるわよ」
リリカ 「『コンサート会場の客席を満員御礼にして欲しい』。満員の三倍ってどういう事?」
メルラン「三回続けて満員になるんでしょ」
ルナサ 「幽霊でね」
リリカ 「え、三回しか満員にならないの?ずっとじゃないの?」
メルラン「どうなるでしょうね~。四回目が楽しみね」
ルナサ 「さあ、もう時間だ。客席を満員にしたのは願いの力。その客席を沸かせるのは私達の力だ」
~ 鈴蘭畑にて ~
リリー 「大妖精、小悪魔、やったわよ!私達にもついに立ち絵がもらえるのよ!」
大妖精 「やりましたね!リリー先生!」
小悪魔 「それで、いつ?いつもらえるんですか?」
リリー 「さ・・・さあ・・・?次回登場作品でもらえるんじゃないかしら・・・?」
大妖精 「え・・・次回登場作品って・・・」
小悪魔 「そんな予定ありましたっけ・・・?」
レティ 「バカねぇ、次回STGにボスとして出演したいとか言っておけば良かったのに」
リリー 「ダメよそんなの!!その願い方じゃ大妖精と小悪魔が出られないじゃない!!」
小悪魔 「せ、先生!!!ひしっ!」
大妖精 「ひしっ!」
メディスン「人の畑で何熱血ドラマやってんのよ」
レティ 「ほっといてあげなさいよ。せっかく叶いそうだった願いがご破算になって、感情をどこかにぶつけたいのよ」
メディスン「なら私の感情はどこにぶつければ良いの?」
レティ 「ん?あなたは何を願ったの?」
メディスン「もちろん人形達の解放よ。この鈴蘭畑に野心のある人形達を集めたかったんだけど・・・」
レティ 「・・・どこにも人形なんて来てないわね」
メディスン「そうなの。意志を持ってる人形なんていないみたいで・・・この感情はどこにぶつければ!!」
レティ 「・・・おいで」
メディスン「レティ先生!!!ひしっ!」
リリー 「で、レティ先生はどうしてこんな所に?」
レティ 「『友達が欲しい』って願ったらいつの間にかここに・・・」
大妖精 「じゃあメディスンがその友達ってこと?」
メディスン「影の薄い方はちょっと^^;」
レティ 「アッー!!」
~ 霧の湖にて ~
慧音 「・・・で、あるからしてこの時Yの値は・・・」
ルーミア 「(何で私達がこんな所で授業を受けなきゃならないのよ!)」
リグル 「(あの先生の願いが『無学な妖怪達に青空教室を開きたい』だったらしいけど)」
ミスティア「(何というはた迷惑な願い・・・)」
チルノ 「あたい達の学力は既にパーフェクトだっていうのに!」
リグル 「(バカ、声がでかい!!)」
慧音 「そこっ!何しゃべってるの!!」
チルノ 「のごっ!!」
ルーミア 「(チルノちゃん、本日4本目のチョーク直撃・・・)」
ミスティア「(こういう時、彼女のバカは特別なんだなって思うわ・・・)」
萃香 「やあやあ苦学生諸君、勉強しとるかね」
慧音 「ちょっ、何ですかあなたは!授業の邪魔です!あっちへ行って下さい!」
萃香 「そういう訳には行かないねぇ。私はしばらくこの湖に住むことになるからね」
チルノ 「え、何で?それは本当に邪魔なんですけど」
萃香 「私の願いが叶って、この湖の水が全部酒になったのさ。はっはっは」
ルーミア 「あ、私も飲みたい」
慧音 「コラ、授業中にどこ行くの!」
ルーミア 「痛っ!・・・不覚・・・」
萃香 「学生は勉強が本分だろう。しっかり勉強したまえよ。はっはっは。さあ、酒浴びしてこよう!!」
リグル 「あの小鬼が今回の願い事ラッシュで一番の勝ち組かも知れない・・・」
萃香 「ああ、これだけ酒があってもつまみがないのが寂しいねぇ。焼き鳥でもないもんかねぇ」
ミスティア「残念ながら、もう幻想郷から『焼き鳥』という概念は消えたわよ。くっくっく・・・」
萃香 「!!・・・貴様という奴はあぁぁぁ!!!」
慧音 「うるさい!!!」
萃香 「いてっ!」
~ 紅魔館にて ~
咲夜 「お嬢様、お茶が入りました」
レミリア 「お、サンキュー。今日も晴れ間が見えない良い天気だねぇ」
パチュリー 「あれ、ティーカップ変えた?」
咲夜 「はい。先日の願い事でもらったティーセットです」
レミリア 「せっかくの願いをそんな事に使ったの?欲がないね」
咲夜 「何を仰るんですか!これは幻想郷では手に入らない柄なんですよ!落としても割れないし、茶渋もこびり付かないスグレモノなんです!」
パチュリー 「あなた、損な性格ね・・・」
咲夜 「ところでお嬢様、美鈴はあれでいいんですか?敷地内に勝手にあんなもの建てさせて・・・」
レミリア 「んー、別にいいんじゃない?守衛所一つで景観が悪くなる訳でもなし」
パチュリー 「冬は寒いだろうしね」
咲夜 「でもさっき見に行ったら、布団まで運び込んで完全に睡眠体勢でしたよ?」
美鈴 「いて、いててて、離して下さいフランドール様!」
フランドール「貴様というお方は、お仕事の途中で惰眠を貪るだなんて、けしかりありませんわ!!」
咲夜 「・・・。」
パチュリー 「・・・。」
レミリア 「フラン・・・それ、何語・・・?」
フランドール「あら姉者、ごきげんよう。いかがですの?小生が入手したこのカリスマ性」
咲夜 「カリ・・・スマ?」
レミリア 「あは、あははは、あはは・・・」
パチュリー 「願いを叶えた人って、結構いい加減なのね・・・」
~ 白玉楼にて ~
幽々子「いらっしゃい。よく来たわね」
幽香 「お邪魔するわね。・・・本当にこのお屋敷は桜が綺麗だわ」
幽々子「あなたがわざわざ花を見に来たいだなんて、どういう風の吹き回しなの?」
幽香 「ちょっとね。幻想郷中の花々を巡って歩いているの。最近、私は花と向き合えていないんじゃないかと思って。それと、『フラワーマスター』だなんて言って、花を支配している気になっていた自分とも向き合いたくて」
妖夢 「どうぞ、粗茶ですが」
幽香 「あら、お構いなく」
幽々子「・・・妖夢」
妖夢 「はい、何でしょう?」
幽々子「お茶って熱いものなのねぇ」
妖夢 「そりゃ入れ立てですから」
幽々子「はぁ、困ったわねぇ」
妖夢 「・・・何がですか?」
幽々子「今は熱いお茶の気分じゃないのよ。でもわがままを言って妖夢を困らせたくはないし・・・」
妖夢 「・・・。」
幽々子「ああ、喉が乾いて死にそうだわ。でも熱いお茶の気分じゃない。妖夢に冷ましてだなんてわがままは言えない。ああ、困ったわ」
妖夢 「もう、分かりましたよ!適当に氷の妖精を捕まえて冷まして来ます!」
幽々子「あら、いいの?ちょうど冷まして欲しいと思っていた所なのよ。本当に妖夢はよく気のつくいい子ねぇ」
幽香 「・・・あの、今の不毛なやり取りは一体・・・?」
幽々子「あ、見てた?妖夢の願いがね、『幽々子様のわがままを治して欲しい』だったのよ」
幽香 「ええ、確か試合中にそう言っていたわね」
幽々子「それで、私の願いが『妖夢にもっと気の利く子になって欲しい』」
幽香 「そ、それって・・・」
幽々子「おかげで妖夢は、私が何もわがままを言わなくてもよく働いてくれるいい子になったわ、うふふ」
幽香 「結局、妖夢の気苦労が増えただけなのね。気の毒に・・・」
~ 永遠亭にて ~
鈴仙「今更なんですけど、お師匠様の願いってあれで良かったんですか?」
永琳「どうして?良いに決まってるじゃない」
鈴仙「だって、わざわざ願わなくたって自分で仕え続ければ済む話じゃないですか」
永琳「うどんげ、『言霊』って知っているかしら?」
鈴仙「ま、まぁ言葉くらいは・・・」
永琳「私は、私の決意を口に出したかった。それだけよ」
鈴仙「うーん・・・」
てゐ「もったいないうさ」
鈴仙「ところで、てゐは何を願ったの?」
てゐ「そ、そりゃ永遠亭のみんなのご多幸とご繁栄うそ」
永琳「『うそ』?」
てゐ「へ?あれ?みんなが幸せになれば、それ以外何にもいらないうそ」
鈴仙「むっふっふ、どうやら私の願いが叶ったようね」
永琳「うどんげ、一体何を?」
鈴仙「てゐが嘘をつくとき、語尾に『うそ』と言ってしまいますように」
てゐ「な、なんじゃいそりゃあ!うさ」
鈴仙「普通の時は『うさ』になるのね」
てゐ「これじゃあもう二度と嘘をつけないうそ・・・」
永琳「・・・それでもまだ何とかして嘘をつくつもりなのね・・・」
鈴仙「ところで姫様、大丈夫なんですかね?妹紅さんの願いが叶って死んでしまって・・・」
永琳「一応決まりだから冥界とかを一巡して来るって言って死んでしまってきり、音沙汰がないわね。まあ、死にはしないから大丈夫よ」
てゐ「でも心配うそ」
鈴仙「てゐ、しばらく黙っておいた方が身の為よ」
てゐ「うさ・・・」
~ 三途の川にて ~
輝夜「何でアンタなんかと一緒に舟に乗らなきゃいけないのよ!降りなさいよ!」
妹紅「それはこっちのセリフよ!アンタが降りればいいでしょ!」
小町「コラ暴れるんじゃないよ!まったく、呉越同舟とはこの事だね・・・」
輝夜「アンタがくだらない事を願うから私が死んじゃったじゃないの!」
妹紅「アンタだって一緒でしょ!どうしてくれんのよ!」
小町「ああ、うるさいねぇ。あたいの願いはこういう意味じゃなかったんだけどねぇ」
輝夜「何を願ったの?」
小町「仕事が楽になりますようにって・・・」
妹紅「そしたらどうなったの?」
小町「支給品の舟が少し大きくなって、一度に二人まで運べるようになった。そりゃ往復回数は半減するんだけど・・・」
輝夜「そのせいで私がこのネクラバカと同じ舟に乗ることになった訳?」
妹紅「バカはあんたでしょうが、尻軽女!!」
輝夜「何ようるさいわね、こないだの試合で私に負けた癖に!」
妹紅「あら、何なら今ここでもう一戦してもいいのよ?」
輝夜「ふっ、いい度胸ね・・・覚悟!!」
小町「暴れるなって言ってんだろ?この川には絶滅した海竜やら何やらが棲んでいて、落ちて食われたら転生どころじゃないよ!」
輝夜「!!つまり今こいつを落とせば、転生もなく本当の意味で死なせる事ができるのね!?」
妹紅「ふんっ、できるつもり?勝負!!」
小町「だからこんな狭い舟の上で勝負なんかしたら舟がひっくり返ってみんな落ちるからやめろって言って・・・う、うわぁ!」
~ 八雲邸にて ~
藍「ちょっと橙!どうすんのよこんな大量のにぼし!!家中にぼしだらけじゃない!」
橙「す、すみません、まさかここまでたくさんとは・・・」
藍「『すみません』と思ってるなら口元を締めなさい!ヨダレも垂らさない!」
紫「ふぁ~あ、よく寝た。・・・ちょっと藍、何なのこの家の散らかりようは!」
藍「ゆ、紫様!もう起きたんですか!?」
紫「あら、かなり寝たつもりなんだけど。やっぱりあれね、あなたが私の睡眠時間が短くなるよう願ったから」
藍「お、叶ったってことですね。これで私の仕事が少し減る・・・」
紫「その話はいいからさっさと家を片づけなさい!じゃないとこのにぼし全部異界に送るわよ!」
橙「そ、それだけはご勘弁を!!藍様、早く片づけて下さい!!」
藍「あなたのにぼしでしょう!何で私が片づけるのよ!」
紫「あら、片づけないつもりなの?私の命令に背くのね。随分と反抗的になったじゃないの。やっぱり試合でのお仕置きが足りなかったようね・・・」
藍「片づけます!片づけますからそのスキマを閉じて下さい!」
橙「ん、藍様どうしたんですか?複雑そうな顔して」
藍「紫様が起きていると私に『命令に従う』という仕事が増える・・・。私の願いはあれで正しかったのかしら・・・」
紫「藍!ぶつぶつ言ってないでさっさと片づけなさい!捨てるわよ!」
橙「嫌だ~藍様捨てさせないで~」
藍「くっ・・・これが中間管理職の辛さか・・・」
~ 博麗神社にて ~
霊夢 「商売繁盛で笹持ってこ~い」
魔理沙「お、霊夢えらくご機嫌だな」
霊夢 「見てよこの賽銭箱、もういっぱいであふれ出しそうだわ」
魔理沙「一円と五円ばっかだな」
霊夢 「いつもの無限倍よ。魔理沙様々ね」
魔理沙「えへ、照れるな」
アリス「おーい、霊夢ー、魔理沙ー」
魔理沙「何だぁ?その荷車いっぱいのにぼしは?」
霊夢 「あなたほど荷車が似合わない人もそういないわね・・・」
アリス「私にも分からないの。一回戦までは覚えているんだけど・・・気付いたら大会が終わってて、家の中がにぼしでいっぱいになってたのよ!だからおすそ分け」
霊夢 「あなた、本当に『にぼしたくさん』の願いを叶えてもらったのね・・・」
アリス「『にぼしたくさん』?何それ?」
魔理沙「ああ、あの時のお前はニャリスだったからな」
アリス「??」
魔理沙「その後はエロスになって大変だったぜ」
アリス「?????」
霊夢 「簡単に言うと、あの時のあなたは性格をころころ変えるちょっとイタイ娘だったってことよ」
アリス「性格を・・・かえる・・・ケロ?」
魔理沙「おま!!!」
霊夢 「あなたって人は既に埋まっているキャラ枠ばかり・・・」
幻想郷の住人は大事なことを一つ忘れている。チルノの願いが叶って、みんな少しずつバカになっているのだ。
だからもちろん、みんながバカになったおかげで幻想郷全体がちょっとだけ平和になった事にも、誰も気付いていない。
了
「大会参加者全員の願いを叶える」という魔理沙の願いで、様々な事が同時に起こったのだ。
~ 冥界コンサート会場にて ~
ルナサ 「まさか私達三人共が同じ事を願っちゃうなんてね」
リリカ 「もったいないな~」
メルラン「いいじゃない。みんなが願った事なんだから。きっと願い事も三倍叶ってるわよ」
リリカ 「『コンサート会場の客席を満員御礼にして欲しい』。満員の三倍ってどういう事?」
メルラン「三回続けて満員になるんでしょ」
ルナサ 「幽霊でね」
リリカ 「え、三回しか満員にならないの?ずっとじゃないの?」
メルラン「どうなるでしょうね~。四回目が楽しみね」
ルナサ 「さあ、もう時間だ。客席を満員にしたのは願いの力。その客席を沸かせるのは私達の力だ」
~ 鈴蘭畑にて ~
リリー 「大妖精、小悪魔、やったわよ!私達にもついに立ち絵がもらえるのよ!」
大妖精 「やりましたね!リリー先生!」
小悪魔 「それで、いつ?いつもらえるんですか?」
リリー 「さ・・・さあ・・・?次回登場作品でもらえるんじゃないかしら・・・?」
大妖精 「え・・・次回登場作品って・・・」
小悪魔 「そんな予定ありましたっけ・・・?」
レティ 「バカねぇ、次回STGにボスとして出演したいとか言っておけば良かったのに」
リリー 「ダメよそんなの!!その願い方じゃ大妖精と小悪魔が出られないじゃない!!」
小悪魔 「せ、先生!!!ひしっ!」
大妖精 「ひしっ!」
メディスン「人の畑で何熱血ドラマやってんのよ」
レティ 「ほっといてあげなさいよ。せっかく叶いそうだった願いがご破算になって、感情をどこかにぶつけたいのよ」
メディスン「なら私の感情はどこにぶつければ良いの?」
レティ 「ん?あなたは何を願ったの?」
メディスン「もちろん人形達の解放よ。この鈴蘭畑に野心のある人形達を集めたかったんだけど・・・」
レティ 「・・・どこにも人形なんて来てないわね」
メディスン「そうなの。意志を持ってる人形なんていないみたいで・・・この感情はどこにぶつければ!!」
レティ 「・・・おいで」
メディスン「レティ先生!!!ひしっ!」
リリー 「で、レティ先生はどうしてこんな所に?」
レティ 「『友達が欲しい』って願ったらいつの間にかここに・・・」
大妖精 「じゃあメディスンがその友達ってこと?」
メディスン「影の薄い方はちょっと^^;」
レティ 「アッー!!」
~ 霧の湖にて ~
慧音 「・・・で、あるからしてこの時Yの値は・・・」
ルーミア 「(何で私達がこんな所で授業を受けなきゃならないのよ!)」
リグル 「(あの先生の願いが『無学な妖怪達に青空教室を開きたい』だったらしいけど)」
ミスティア「(何というはた迷惑な願い・・・)」
チルノ 「あたい達の学力は既にパーフェクトだっていうのに!」
リグル 「(バカ、声がでかい!!)」
慧音 「そこっ!何しゃべってるの!!」
チルノ 「のごっ!!」
ルーミア 「(チルノちゃん、本日4本目のチョーク直撃・・・)」
ミスティア「(こういう時、彼女のバカは特別なんだなって思うわ・・・)」
萃香 「やあやあ苦学生諸君、勉強しとるかね」
慧音 「ちょっ、何ですかあなたは!授業の邪魔です!あっちへ行って下さい!」
萃香 「そういう訳には行かないねぇ。私はしばらくこの湖に住むことになるからね」
チルノ 「え、何で?それは本当に邪魔なんですけど」
萃香 「私の願いが叶って、この湖の水が全部酒になったのさ。はっはっは」
ルーミア 「あ、私も飲みたい」
慧音 「コラ、授業中にどこ行くの!」
ルーミア 「痛っ!・・・不覚・・・」
萃香 「学生は勉強が本分だろう。しっかり勉強したまえよ。はっはっは。さあ、酒浴びしてこよう!!」
リグル 「あの小鬼が今回の願い事ラッシュで一番の勝ち組かも知れない・・・」
萃香 「ああ、これだけ酒があってもつまみがないのが寂しいねぇ。焼き鳥でもないもんかねぇ」
ミスティア「残念ながら、もう幻想郷から『焼き鳥』という概念は消えたわよ。くっくっく・・・」
萃香 「!!・・・貴様という奴はあぁぁぁ!!!」
慧音 「うるさい!!!」
萃香 「いてっ!」
~ 紅魔館にて ~
咲夜 「お嬢様、お茶が入りました」
レミリア 「お、サンキュー。今日も晴れ間が見えない良い天気だねぇ」
パチュリー 「あれ、ティーカップ変えた?」
咲夜 「はい。先日の願い事でもらったティーセットです」
レミリア 「せっかくの願いをそんな事に使ったの?欲がないね」
咲夜 「何を仰るんですか!これは幻想郷では手に入らない柄なんですよ!落としても割れないし、茶渋もこびり付かないスグレモノなんです!」
パチュリー 「あなた、損な性格ね・・・」
咲夜 「ところでお嬢様、美鈴はあれでいいんですか?敷地内に勝手にあんなもの建てさせて・・・」
レミリア 「んー、別にいいんじゃない?守衛所一つで景観が悪くなる訳でもなし」
パチュリー 「冬は寒いだろうしね」
咲夜 「でもさっき見に行ったら、布団まで運び込んで完全に睡眠体勢でしたよ?」
美鈴 「いて、いててて、離して下さいフランドール様!」
フランドール「貴様というお方は、お仕事の途中で惰眠を貪るだなんて、けしかりありませんわ!!」
咲夜 「・・・。」
パチュリー 「・・・。」
レミリア 「フラン・・・それ、何語・・・?」
フランドール「あら姉者、ごきげんよう。いかがですの?小生が入手したこのカリスマ性」
咲夜 「カリ・・・スマ?」
レミリア 「あは、あははは、あはは・・・」
パチュリー 「願いを叶えた人って、結構いい加減なのね・・・」
~ 白玉楼にて ~
幽々子「いらっしゃい。よく来たわね」
幽香 「お邪魔するわね。・・・本当にこのお屋敷は桜が綺麗だわ」
幽々子「あなたがわざわざ花を見に来たいだなんて、どういう風の吹き回しなの?」
幽香 「ちょっとね。幻想郷中の花々を巡って歩いているの。最近、私は花と向き合えていないんじゃないかと思って。それと、『フラワーマスター』だなんて言って、花を支配している気になっていた自分とも向き合いたくて」
妖夢 「どうぞ、粗茶ですが」
幽香 「あら、お構いなく」
幽々子「・・・妖夢」
妖夢 「はい、何でしょう?」
幽々子「お茶って熱いものなのねぇ」
妖夢 「そりゃ入れ立てですから」
幽々子「はぁ、困ったわねぇ」
妖夢 「・・・何がですか?」
幽々子「今は熱いお茶の気分じゃないのよ。でもわがままを言って妖夢を困らせたくはないし・・・」
妖夢 「・・・。」
幽々子「ああ、喉が乾いて死にそうだわ。でも熱いお茶の気分じゃない。妖夢に冷ましてだなんてわがままは言えない。ああ、困ったわ」
妖夢 「もう、分かりましたよ!適当に氷の妖精を捕まえて冷まして来ます!」
幽々子「あら、いいの?ちょうど冷まして欲しいと思っていた所なのよ。本当に妖夢はよく気のつくいい子ねぇ」
幽香 「・・・あの、今の不毛なやり取りは一体・・・?」
幽々子「あ、見てた?妖夢の願いがね、『幽々子様のわがままを治して欲しい』だったのよ」
幽香 「ええ、確か試合中にそう言っていたわね」
幽々子「それで、私の願いが『妖夢にもっと気の利く子になって欲しい』」
幽香 「そ、それって・・・」
幽々子「おかげで妖夢は、私が何もわがままを言わなくてもよく働いてくれるいい子になったわ、うふふ」
幽香 「結局、妖夢の気苦労が増えただけなのね。気の毒に・・・」
~ 永遠亭にて ~
鈴仙「今更なんですけど、お師匠様の願いってあれで良かったんですか?」
永琳「どうして?良いに決まってるじゃない」
鈴仙「だって、わざわざ願わなくたって自分で仕え続ければ済む話じゃないですか」
永琳「うどんげ、『言霊』って知っているかしら?」
鈴仙「ま、まぁ言葉くらいは・・・」
永琳「私は、私の決意を口に出したかった。それだけよ」
鈴仙「うーん・・・」
てゐ「もったいないうさ」
鈴仙「ところで、てゐは何を願ったの?」
てゐ「そ、そりゃ永遠亭のみんなのご多幸とご繁栄うそ」
永琳「『うそ』?」
てゐ「へ?あれ?みんなが幸せになれば、それ以外何にもいらないうそ」
鈴仙「むっふっふ、どうやら私の願いが叶ったようね」
永琳「うどんげ、一体何を?」
鈴仙「てゐが嘘をつくとき、語尾に『うそ』と言ってしまいますように」
てゐ「な、なんじゃいそりゃあ!うさ」
鈴仙「普通の時は『うさ』になるのね」
てゐ「これじゃあもう二度と嘘をつけないうそ・・・」
永琳「・・・それでもまだ何とかして嘘をつくつもりなのね・・・」
鈴仙「ところで姫様、大丈夫なんですかね?妹紅さんの願いが叶って死んでしまって・・・」
永琳「一応決まりだから冥界とかを一巡して来るって言って死んでしまってきり、音沙汰がないわね。まあ、死にはしないから大丈夫よ」
てゐ「でも心配うそ」
鈴仙「てゐ、しばらく黙っておいた方が身の為よ」
てゐ「うさ・・・」
~ 三途の川にて ~
輝夜「何でアンタなんかと一緒に舟に乗らなきゃいけないのよ!降りなさいよ!」
妹紅「それはこっちのセリフよ!アンタが降りればいいでしょ!」
小町「コラ暴れるんじゃないよ!まったく、呉越同舟とはこの事だね・・・」
輝夜「アンタがくだらない事を願うから私が死んじゃったじゃないの!」
妹紅「アンタだって一緒でしょ!どうしてくれんのよ!」
小町「ああ、うるさいねぇ。あたいの願いはこういう意味じゃなかったんだけどねぇ」
輝夜「何を願ったの?」
小町「仕事が楽になりますようにって・・・」
妹紅「そしたらどうなったの?」
小町「支給品の舟が少し大きくなって、一度に二人まで運べるようになった。そりゃ往復回数は半減するんだけど・・・」
輝夜「そのせいで私がこのネクラバカと同じ舟に乗ることになった訳?」
妹紅「バカはあんたでしょうが、尻軽女!!」
輝夜「何ようるさいわね、こないだの試合で私に負けた癖に!」
妹紅「あら、何なら今ここでもう一戦してもいいのよ?」
輝夜「ふっ、いい度胸ね・・・覚悟!!」
小町「暴れるなって言ってんだろ?この川には絶滅した海竜やら何やらが棲んでいて、落ちて食われたら転生どころじゃないよ!」
輝夜「!!つまり今こいつを落とせば、転生もなく本当の意味で死なせる事ができるのね!?」
妹紅「ふんっ、できるつもり?勝負!!」
小町「だからこんな狭い舟の上で勝負なんかしたら舟がひっくり返ってみんな落ちるからやめろって言って・・・う、うわぁ!」
~ 八雲邸にて ~
藍「ちょっと橙!どうすんのよこんな大量のにぼし!!家中にぼしだらけじゃない!」
橙「す、すみません、まさかここまでたくさんとは・・・」
藍「『すみません』と思ってるなら口元を締めなさい!ヨダレも垂らさない!」
紫「ふぁ~あ、よく寝た。・・・ちょっと藍、何なのこの家の散らかりようは!」
藍「ゆ、紫様!もう起きたんですか!?」
紫「あら、かなり寝たつもりなんだけど。やっぱりあれね、あなたが私の睡眠時間が短くなるよう願ったから」
藍「お、叶ったってことですね。これで私の仕事が少し減る・・・」
紫「その話はいいからさっさと家を片づけなさい!じゃないとこのにぼし全部異界に送るわよ!」
橙「そ、それだけはご勘弁を!!藍様、早く片づけて下さい!!」
藍「あなたのにぼしでしょう!何で私が片づけるのよ!」
紫「あら、片づけないつもりなの?私の命令に背くのね。随分と反抗的になったじゃないの。やっぱり試合でのお仕置きが足りなかったようね・・・」
藍「片づけます!片づけますからそのスキマを閉じて下さい!」
橙「ん、藍様どうしたんですか?複雑そうな顔して」
藍「紫様が起きていると私に『命令に従う』という仕事が増える・・・。私の願いはあれで正しかったのかしら・・・」
紫「藍!ぶつぶつ言ってないでさっさと片づけなさい!捨てるわよ!」
橙「嫌だ~藍様捨てさせないで~」
藍「くっ・・・これが中間管理職の辛さか・・・」
~ 博麗神社にて ~
霊夢 「商売繁盛で笹持ってこ~い」
魔理沙「お、霊夢えらくご機嫌だな」
霊夢 「見てよこの賽銭箱、もういっぱいであふれ出しそうだわ」
魔理沙「一円と五円ばっかだな」
霊夢 「いつもの無限倍よ。魔理沙様々ね」
魔理沙「えへ、照れるな」
アリス「おーい、霊夢ー、魔理沙ー」
魔理沙「何だぁ?その荷車いっぱいのにぼしは?」
霊夢 「あなたほど荷車が似合わない人もそういないわね・・・」
アリス「私にも分からないの。一回戦までは覚えているんだけど・・・気付いたら大会が終わってて、家の中がにぼしでいっぱいになってたのよ!だからおすそ分け」
霊夢 「あなた、本当に『にぼしたくさん』の願いを叶えてもらったのね・・・」
アリス「『にぼしたくさん』?何それ?」
魔理沙「ああ、あの時のお前はニャリスだったからな」
アリス「??」
魔理沙「その後はエロスになって大変だったぜ」
アリス「?????」
霊夢 「簡単に言うと、あの時のあなたは性格をころころ変えるちょっとイタイ娘だったってことよ」
アリス「性格を・・・かえる・・・ケロ?」
魔理沙「おま!!!」
霊夢 「あなたって人は既に埋まっているキャラ枠ばかり・・・」
幻想郷の住人は大事なことを一つ忘れている。チルノの願いが叶って、みんな少しずつバカになっているのだ。
だからもちろん、みんながバカになったおかげで幻想郷全体がちょっとだけ平和になった事にも、誰も気付いていない。
了
自分が最強だと思ってるから自分の頭をよくするという発想は無かったんだなww
他力本願はいかんですよww