レミリア・スカーレットは静かに怒っている。見上げる空に、満月。そこから妖怪には
心地よい魔力が落ちてくるはず。だが、見上げたそれは虚ろな光を放つ、贋物。
「咲夜」
「は」
忠実な僕の名を呼べば、すぐ足元に跪く。これからやろうとすることに、彼女の能力は
必須だ。
「出かけるわよ。この夜の時を止めなさい」
「は。……理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「うん? あぁ、そうか。お前は人間だったわね」
妖怪なら誰でもこの月に気付いているはずだが、咲夜はそうはいかない。もう一度
忌々しげに空を見上げながらレミリアは言う。
「この私から、この素晴らしい夜を奪った奴にちょっとお礼を言いにね」
そこに浮かぶ笑みは、獰猛な悪魔そのもの。主の怒りを抑える必要もない。咲夜は
時間を止めようとした。
「お出かけ?」
そこに投げかけられた声。レミリアと咲夜が振り返る先にはパチュリー。更にその後ろ
から美鈴とフランドールの姿も見える。レミリアの怒りの気配を知ってか、あるいは今夜の
月の異変を知ってか。皆人ならざる身、月の光の心地よさを奪われれば憤慨もするだろう。
さて、いつも眠そうな目の友人から声をかけられたレミリア。自信満々にこう言う。
「ええ。期待して待ってるといいわ。シンイチ・ホシのショートショートでも読んでたら?
一作読み終わるまでには帰ってこれるかも」
くくく、と喉を鳴らして笑うレミリアに、パチュリーは少しだけ呆れたような、しかし信頼を
寄せた微笑みを返す。
「お嬢様直々に犯人を成敗しに行くんですかー。あれですあれ、あれしましょう。出かける
前に火打石でカチカチってやるあれ」
のほほん、とした雰囲気で美鈴が語りかける。その言葉に、今度はレミリア自身が呆れた
ような笑顔だ。
「まぁたマンガの影響受けてるわよねあなた?」
図星だったのだろう。てへへ、と苦笑いしながら頭を掻く美鈴。もっとも、そのマンガを
貸したのはレミリアそのひとであるが。
「うーん」
そんな美鈴の後ろで可愛らしい悩み声。誰もがそこに目をやれば、フランドールが空に
手をかざしていた。
「うん、確かに全然魔力が感じられない。いったい何なんだろうね、お姉さま」
その破壊能力に隠されあまり語られる事はないが、フランドールは正真正銘魔法少女。
霊力を魔力変換して行う魔法技術に関しては姉のレミリアを凌駕する。おそらくは姉より
敏感に今日の異変を感じているフランドールが、当然の疑問を口にした。
「さぁ……? でも、こんな事を起こした奴をブチのめせば分かるんじゃない? この、夜を
支配する私達から月を奪った愚か者に鉄槌を……」
「いやいやお姉さま、そうじゃなくてさ」
若干熱の入りかけたレミリアの口上が遮られる。視線の先のフランドールはすまし顔の
まま。
「結局、月が偽物なのがいけないんでしょ?」
「まぁそりゃそうだけど」
「それじゃわざわざお姉さまの手を煩わす事もないわね」
「あ」
くすりとフランドールが小悪魔的な笑みを見せ、レミリアは呆気にとられたような声。
フランドールが月目掛けて掲げるのは、右手。
「ぎゅっとして、どかーん!」
偽りの月は、粉々に爆ぜる。光の粒が夜空を飾った。
「わぁ……」
「見事ね」
「ははは! 凄ーい!」
三者三様に上がる歓声。その中で、きらきらとまばゆく光る空に照らされながら、美しく
笑むフランドール。
「……ね? これでいいでしょ、お姉さま」
「フラン……」
自らの為そうとした事をいとも簡単に為し終えた妹に、ふらりと歩み寄るレミリア。
「わ!?」
「さすがよ、さすが私の妹。さすが私の愛する妹よ!!」
思いっきり抱きしめられたフランドールに、本当に嬉しいのだろう、感極まってさすが
さすがと連呼するレミリア。あまりの熱烈っぷりと、三人分の暖かな視線を感じて頬が熱く
なるのを感じるフランドール。
「ちょ、お姉さま……。ちょっと苦しいよ」
ぎゅう、と抱きしめられてか。いやいやそうではない。同じ吸血鬼、多少の力が入った
ところでどうこうなりはしない。照れ隠しである。
「あぁ、ごめんなさい、フラン」
そう謝ってその身を離すレミリア。そうして数秒、姉妹で見つめあって、
「わっ!?」
耐え切れずにまたレミリアは妹を抱きしめる。自らの名を愛しげに紡ぎ続けられ、諦めて
抱かれるままフランドール。もちろん、決して嫌がっているわけではないのは頬の赤さを
見れば一目瞭然だ。しばしそうやって時が過ぎ、レミリアが名残惜しそうにかき抱く手を
緩めた。
「咲夜!」
「は」
「時を止めるのも出かけるのも中止よ! パーティの準備を行いなさい、今すぐ!」
「かしこまりました」
空に現れた本物の満月よりもなお輝く笑顔と共に、レミリアは宣言する。忠実な僕も
微笑んで意を汲み取る。
「では、妹様。あなたが一番大好きなケーキを一つ。私の得意の手品で一瞬でご用意
いたしますわ」
「手品でもなんでもないじゃん。でもいいわ、私が大好きなのはベリーのたっくさん乗った
甘い甘いやつ!」
「はい、かしこまりました、では!」
ぽん、とテーブルに前触れもなくケーキが現れて、異変を解決したフランドールのために
宴が始まる。この騒ぎを聞きつけて魔理沙や霊夢もやってくるだろう。その中心で、はにかむ
ように、そして楽しそうに笑うフランドールの未来を祝福するかのごとく、偽りの月の欠片は
紙吹雪のように降り注ぐのであった。
心地よい魔力が落ちてくるはず。だが、見上げたそれは虚ろな光を放つ、贋物。
「咲夜」
「は」
忠実な僕の名を呼べば、すぐ足元に跪く。これからやろうとすることに、彼女の能力は
必須だ。
「出かけるわよ。この夜の時を止めなさい」
「は。……理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「うん? あぁ、そうか。お前は人間だったわね」
妖怪なら誰でもこの月に気付いているはずだが、咲夜はそうはいかない。もう一度
忌々しげに空を見上げながらレミリアは言う。
「この私から、この素晴らしい夜を奪った奴にちょっとお礼を言いにね」
そこに浮かぶ笑みは、獰猛な悪魔そのもの。主の怒りを抑える必要もない。咲夜は
時間を止めようとした。
「お出かけ?」
そこに投げかけられた声。レミリアと咲夜が振り返る先にはパチュリー。更にその後ろ
から美鈴とフランドールの姿も見える。レミリアの怒りの気配を知ってか、あるいは今夜の
月の異変を知ってか。皆人ならざる身、月の光の心地よさを奪われれば憤慨もするだろう。
さて、いつも眠そうな目の友人から声をかけられたレミリア。自信満々にこう言う。
「ええ。期待して待ってるといいわ。シンイチ・ホシのショートショートでも読んでたら?
一作読み終わるまでには帰ってこれるかも」
くくく、と喉を鳴らして笑うレミリアに、パチュリーは少しだけ呆れたような、しかし信頼を
寄せた微笑みを返す。
「お嬢様直々に犯人を成敗しに行くんですかー。あれですあれ、あれしましょう。出かける
前に火打石でカチカチってやるあれ」
のほほん、とした雰囲気で美鈴が語りかける。その言葉に、今度はレミリア自身が呆れた
ような笑顔だ。
「まぁたマンガの影響受けてるわよねあなた?」
図星だったのだろう。てへへ、と苦笑いしながら頭を掻く美鈴。もっとも、そのマンガを
貸したのはレミリアそのひとであるが。
「うーん」
そんな美鈴の後ろで可愛らしい悩み声。誰もがそこに目をやれば、フランドールが空に
手をかざしていた。
「うん、確かに全然魔力が感じられない。いったい何なんだろうね、お姉さま」
その破壊能力に隠されあまり語られる事はないが、フランドールは正真正銘魔法少女。
霊力を魔力変換して行う魔法技術に関しては姉のレミリアを凌駕する。おそらくは姉より
敏感に今日の異変を感じているフランドールが、当然の疑問を口にした。
「さぁ……? でも、こんな事を起こした奴をブチのめせば分かるんじゃない? この、夜を
支配する私達から月を奪った愚か者に鉄槌を……」
「いやいやお姉さま、そうじゃなくてさ」
若干熱の入りかけたレミリアの口上が遮られる。視線の先のフランドールはすまし顔の
まま。
「結局、月が偽物なのがいけないんでしょ?」
「まぁそりゃそうだけど」
「それじゃわざわざお姉さまの手を煩わす事もないわね」
「あ」
くすりとフランドールが小悪魔的な笑みを見せ、レミリアは呆気にとられたような声。
フランドールが月目掛けて掲げるのは、右手。
「ぎゅっとして、どかーん!」
偽りの月は、粉々に爆ぜる。光の粒が夜空を飾った。
「わぁ……」
「見事ね」
「ははは! 凄ーい!」
三者三様に上がる歓声。その中で、きらきらとまばゆく光る空に照らされながら、美しく
笑むフランドール。
「……ね? これでいいでしょ、お姉さま」
「フラン……」
自らの為そうとした事をいとも簡単に為し終えた妹に、ふらりと歩み寄るレミリア。
「わ!?」
「さすがよ、さすが私の妹。さすが私の愛する妹よ!!」
思いっきり抱きしめられたフランドールに、本当に嬉しいのだろう、感極まってさすが
さすがと連呼するレミリア。あまりの熱烈っぷりと、三人分の暖かな視線を感じて頬が熱く
なるのを感じるフランドール。
「ちょ、お姉さま……。ちょっと苦しいよ」
ぎゅう、と抱きしめられてか。いやいやそうではない。同じ吸血鬼、多少の力が入った
ところでどうこうなりはしない。照れ隠しである。
「あぁ、ごめんなさい、フラン」
そう謝ってその身を離すレミリア。そうして数秒、姉妹で見つめあって、
「わっ!?」
耐え切れずにまたレミリアは妹を抱きしめる。自らの名を愛しげに紡ぎ続けられ、諦めて
抱かれるままフランドール。もちろん、決して嫌がっているわけではないのは頬の赤さを
見れば一目瞭然だ。しばしそうやって時が過ぎ、レミリアが名残惜しそうにかき抱く手を
緩めた。
「咲夜!」
「は」
「時を止めるのも出かけるのも中止よ! パーティの準備を行いなさい、今すぐ!」
「かしこまりました」
空に現れた本物の満月よりもなお輝く笑顔と共に、レミリアは宣言する。忠実な僕も
微笑んで意を汲み取る。
「では、妹様。あなたが一番大好きなケーキを一つ。私の得意の手品で一瞬でご用意
いたしますわ」
「手品でもなんでもないじゃん。でもいいわ、私が大好きなのはベリーのたっくさん乗った
甘い甘いやつ!」
「はい、かしこまりました、では!」
ぽん、とテーブルに前触れもなくケーキが現れて、異変を解決したフランドールのために
宴が始まる。この騒ぎを聞きつけて魔理沙や霊夢もやってくるだろう。その中心で、はにかむ
ように、そして楽しそうに笑うフランドールの未来を祝福するかのごとく、偽りの月の欠片は
紙吹雪のように降り注ぐのであった。
お嬢様のカリスマが7割減ってるwww
話がはじまったと思ったら気付かない内におわってたんですけど
これはバグですか?
紅魔館の皆さんが幸せそうなのでそんな瑣末なことはどうでも良くなったのであった。
タイトルまんまだった。
何を言っているのか判らないと(ry
ゲーム的にならキャラ選択の時点でクリアかw
Ex編を期待してもいいのかね?