大掃除しよ。
朝、目がさめてまず思ったのはその事。
今日はもう大晦日、普段からきれいにしてるとは言え、明日は（比較的）人が多く来る日。
ちょっと気合を入れて神社をいつも以上にきれいにしよう。
おはようと布団から抜け出して、いつもの服に手早く着替える。
その上から三角巾と割烹着を身につけ準備は万端。
さあ今年の残った汚れ共よ、手加減はしてやらないけどかかってきなさい。
がらがらと部屋の戸を開けて飛び込んできたのは、とてもやる気を削いでくれる風景でした。
おいちょっと待て。
誰よ人の家の裏に要石を置いたのは！？
そしてその要石の上で雷を鳴らしながら踊らない！併せて演奏もしない！歌わない！！
いい感じに明かりの明滅をつけない！！
審査して白黒付けようともしない！！
そんでもって、この状況でも何故アンタは眠れるの！？
とりあえず喧しい連中を夢想封印でとっちめて、言い訳を聞いてみる。
なになに、年末に紅白の居る所で歌ったり踊ったりするのは基本？
それにもうウチは済ませたから暇だったって？やかましいわ！！
じゃあウチの掃除を手伝いなさいよ、普段汚してばっかなんだから。
こらそこ！何で今さら慌ててやってんのよ、とか言わない！
ほらほらぶつぶつ言ってないでさっさと動く！箒はむこう！雑巾こっち！！
明るいところ苦手なのは床下よ。
アンタらは屋根の掃除、案内するから飛んできて。
さあここよ、結構広いから気合入れて
……ってまたか…
おらおら！人んちの上で喧嘩しない！
なに？年末に格闘技をするのはお約束？
アンタらが徒手空拳でやりあってると、キャッ○ファイトにしか見えないから止めなさい。
でもって、そっちは本当に猫同士で喧嘩しない！！
こらセコンド！心読まない！！強さの境界弄らない！！
そこ！客を集めて見物料を取ろうとしない！！
あ！逃げようとするなこのサボり魔！！
五月蝿いので封魔陣で一まとめにしてやった。
例に漏れず掃除を手伝わせる。
そっちのは出てきたゴミをどんどん燃やす！燃やしたヤツはスキマを開けて地面へ埋める！
黒猫の一匹は屋根裏！もう一匹は床下の手伝い！一緒にしたらまた喧嘩するから！
残ったのは炊事場よ！ごちゃごちゃ言わない！！
炊事場の位置が分からない？仕方ないなぁこっちよ。
がらがらっ、炊事場の勝手口が開いた。
あらおはよう、えっ？ウチのコがここに来てませんかって？
丁度いいや手伝って。
何でかって？その猫も今ウチの掃除を手伝ってんのよ。ついでにアンタのご主人も。
いや、何でそういう状況にって聞かれても私が困る。
とりあえず猫でも狐でも手が要るの、炊事場は任せたわ！
それじゃ私は張り切って本殿の掃除でもしようかな。
あー忙し。
がらりと本殿の扉を開けるとそこに居たのは暇を持て余した神々。
ってこらー！！人んトコの本殿に勝手に入ってんじゃないわよ！！
博霊アミュレットの代わりに雑巾を投げつける。
暇ならそれ持ってここの掃除！！
だいたいアンタらも明日忙しいでしょうに！何しに来たのよ！！
年末の挨拶ぅ？じゃあ勝手に中に上がり込むな！！
神を使う巫女なんて初めて見た？
今年最初で最後の事よ、いいことじゃない。
また来年も利用させて頂くわ、ご利用は計画的に～っと。
分かったら手を動かす！
さてそれじゃ鳥居でも掃除しよっかな。
あら？鳥居の上に誰か居る。天狗だ。
おーい、ぱんつ見えてるよ～！
あ、落ちた。
それでもカメラを死守するとは流石は記者と言うところかしら？
ほらほら、そっちの狼もそんな心配しなくていいって。
それがむちゃくちゃ丈夫なのはよく知ってるでしょ？
起きたら鳥居の掃除をお願いね。
あーあー「なんで？」とかもう聞き飽きたわ。いいから働く！
向こうからもう一羽カラスが飛んできたから、一緒に高いトコと燈籠もお願い。
言う事聞かなかったら私に言って、シメて上げるわ。
じゃ、宜しく。
むぅ～でもこうなってくると段々やる事無くなってきたなぁ。
あれ、後ろから声？
あ、いらっしゃい。
年末の挨拶？あら、どうもありがとう。
えっ、わざわざ庭の剪定をしに来てくれるの？嬉しいなぁ。
ん、違う？
ところがこれが違わない。
ほらほら周りを見てみなさいよ、みーんな何かやってくれてるのよ？
こういう状況で一人帰ったり……しないよね、うん。
折角来たんだし、得意の剣さばきを披露して♪
ご主人様がうんと言わない？
でもほら、たった今ご主人様からの了承を得たわ、じゃあお願いね～
それじゃあご主人様は部屋でおみくじ作ってね。
書道なんてお手の物でしょ？
吉とか凶とか好きなの書いといて、小吉は駄目よ。
準備は私がするからその後はよろしく～
あら、もうお昼ご飯？もうそんな時間なのね。
みんなーお昼よーー！手を洗って集合ーー！！
出てきた料理は結構豪勢。
何か一人だけどんぶりバチにご飯を入れてるけど気にしないことにしよう。
いただきまーす。
もぐもぐ……うん、おいし。
嘘つきだけど健康にはうるさいのが居るし、心を読むお目付け役も居るから味も栄養もばっちり（のハズ）流石私！
ご飯も沢山あるから昼からも頑張ってね！
ぼそっとこれはウチのご飯だ、とか言わないでよ……折角いい気分だったのにぃ。
さーて、ご飯も食べたし作業再開！きりきり働く！
仕事が終わった人は終わってない人の仕事手伝ってね。
私も昼からは働くわよ！
でもこれからやるぞーって時って、案外誰かが訪ねて来たりするのよね。
ほーら来た来た、いらっしゃーい。
アンタんトコの姫様と嘘つきウサギは来てるけど、そういや師匠は見てないわ。
ここに居ればそのうち来るかもよ？
まぁ麺類打つの上手いんでしょ？名前の通り。
今日はちょっと趣向を変えてソバでも作りながら待ってなさいな。
うーん、何だか分からないけど場の雰囲気に流されるコっていいわぁ。
こっちの話だから気にしないで。
こらこらそこ、縁を拭いてから梁を拭かない！
もう一回下を拭かなきゃなんないじゃない。
掃除は上から下、中から外が基本。
ん、床の中が暗くて見えにくい？
ちょっと待ってねもうじき明かりが来るから。
ほらきた、お子様ご一行さまご案内～
はいはいいらっしゃい、蛍は床下をお願いね。
ああ大丈夫、先に何人か入っているから。
冷たい妖精と大きい妖精はこっち、誰かいい目付け役居ないかなぁ。
と思ってたら来るのよね。
先生お待ちしておりました。
もうウチが最後の挨拶でしょ？
このコらの相手に手を焼いてたの、一緒に障子らの貼替えお願いね。相方も裏でゴミ焼いてるわ。
さぁ遠慮は要らないわ、ビリビリやっちゃいなさい！でも襖に穴は開けないでね。
うーん、子供の元気な姿はいいものね。
木の剪定はどんなものかな？
おお、流石職人芸、見事なものね。
でも部分的に花が咲いてたり、枯れてたりするのはどうして？
向こうに原因？何があったのかしら。
……おいおい揃いも揃って何やってんの。
明日から新春だから私の出番？いやまだ寒いから私が優先？
何訳のわかんない事いってんの。
そっちの暗いコンビは時期的にしんどいんだから無理して出てこない！
何にも関係ないのに夏の花を咲かせない！！
あーもうめちゃくちゃだ。
庭の四季がめちゃくちゃになるって青狸のマンガ、どっかで見た事あったわね。ってそんなの関係ねぇ。
とりあえず喰らえ、夢想天生♪
まだ掃除しなきゃなんない細かいところは沢山あるのよ。
箒に雑巾、はたきに布団たたきと何でもござれ。
お好きなのを選んだら作業開始！
さてと、私は何を～しよっかな～♪
～と～思っていたら～また誰か来た～♪
はい保護者お二人は東方…、もとい当方が身柄をしっかり確保しておりますよ。
明日は忙しいんだから連れて帰って準備しなさいな。
えっ？もう準備終わってるの？
いいなぁいいなぁ手が早いなぁ。それじゃあこっちを手伝って。
まだ白羽の矢も絵馬も、お守りだってろくに出来てないのよ。
はいはい、ここじゃそんな非常識もあるのよ、多分。
後で助っ人寄こすから宜しく、今おみくじもじゃんじゃん作ってる所だから。
作業場は入ってそこを曲がったところよ。
妖怪そのほかが一杯居るから邪魔しないであげてね。
うーん、５ボスにハズレは居ないわ。
黒猫？知らないなぁ……
と、そんな事を思っていたら助っ人が人形背負ってやってきたわ！
いっらっしゃいませカモネギ様～
ああ、こっちの話。
また今年も雑事の手伝いお願い。
何でこんなにも人が居るのかとかは聞かないでね。
とりあえず、部屋に行ったら何をするかは分かるから。
部屋に助っ人を送り込んだ後、またまたやってきた来訪者。
ここまできたら、来た人全員を巻き込もう。
そう意気込んだ私の前に現れたのは毒人形とお師匠さん。
出て行って帰って来ない連中を迎えに来る途中、たまたま会ったので一緒に来たとか。
やっぱり言った通りだったでしょ？
ううん、こっちの話だから気にしないで。
しかしこれまた扱いづらいのが来てしまった。
水周りに向かわせて毒物混入とかは勘弁して頂きたい。
お師匠さんも一般的なことは皆無とか聞くしなぁ……
しかし私は意志を貫くオンナ、ここからが腕の魅せ所！
よぉし！！そっちの人形は障子貼替えを手伝って！
向こうの部屋にセンセと友達が居るから、お師匠さんも一緒にお願いね。センセが一人じゃ大変だと思うわ。
怖がらない怖がらない、誰だって最初は初めてなのよ。
井戸の裏手で隠れてる土蜘蛛と、その中に隠れてる桶も一緒にやっちゃって。
昼からやってるからちょっと人手が足りないのよ～
隠れてるといやそこの河童！
沢山集まったからってびくびくしない！！アンタも出てきて手伝って。
そこの鈴と手水舎は誰も手を付けてないのよ。
金物の細かい掃除と水周りは河童の独壇場でしょ？宜しくお願いね。
ぼちぼち誰か手が余ってくるから、そっちにどんどん回していくわ。
ところで私が気づいてないと思ってる？
アンタも隠れて離れた所で厄吸わない！
私はこの位置で充分…みたいな顔してんじゃないわよ。
ほらほら、お守り作るから厄吸いお願い。
んあ？厄除けは出来ない？
大丈夫大丈夫、今の時点で厄を思いっきり吸ってあげたら、お守りの厄吸いもよくなるはずだから。
真空凍結乾燥技術の発想？そういう訳分かんない事はそこの河童に言ってあげて。
まぁそんなのどうでもいいわ、神様と違って人間は時間が限られてるんだからさっさとやって！！
何故か蜘蛛に食べられそうになっていた蛍を救出している時。
背中に抱きつくちょっと冷たい小さな体。
これまた使いどころに困るのがやってきた……
しかしコイツが来たという事は、やっぱり一緒に居た頼りになる人！
ここは一つ、「メイドチェーック！！」をお願いしよう。
厳しいプロの目で、終盤に差し掛かったこの大掃除を完璧・完全なものにして下さいな。
やっぱり５ボスにハズレなし！
あなたのご主人はこちらが責任を持って預かりますから～
さて預かったはいいものの、このお嬢様は先に言ったとおり非常に扱いに困る。
日の当たる場所には出せないし水周りもさせられない。
と言うより、何か出来る家庭的な事ってあるんだろうか？
色々と思案を巡らしているところに再び抱きつく小さな体。
なんだ今度は妹か、あら日陰と司書と門番も。館空けて大丈夫なの？
まぁいいやウチじゃないし、とりあえず門番は井戸で水汲みお願い、体力勝負だから頑張って！
図書館組は帳面の整理をお願いね。
何も書いてないのにって？放っといてよ……
妹様と姉様は私が責任を持って預かります。
あら、大分翳って来たわね。これなら大丈夫そう。
それじゃ二人であそこの訳分かんない要石を粉々にして、地面に敷いといて。
神社に石はつき物なのよ。
何でこんなに小石の数が減ってるかって？
アンタらがここで弾幕ごっこするからでしょうが！！
補充しても補充してもすぐ吹き飛ぶのよ！！
小石と言えば、いつの間にやらふらっと入ってきたもう一人の妹様。
お姉さんの手伝いで炊事場に行っちゃったみたいね。
炊事場は今まさに戦場だから手伝いが一人でも欲しい所。助かるわぁ～
そこで朝からじーっと嫉妬してる人もそろそろ手伝ってよ。
ずっと同じところ握ってるから、もう木に指先がめり込んでるじゃない。
よぉし、こうなったら私は素敵な賽銭箱の手入れをしようっと！
あら、意外ときれいじゃない……って酒臭いわね。
がばっと箱を開けてみたら中で鬼が二人で寝てた。
力を使い過ぎたのか、完全に無防備な感じで眠ってた。
どっかに居るんだろうな～って思ってたけど、こんな所に居たのね。
ほらほらさっさと起きる！！もうじき掃除は終わりよ！
賽銭箱から鬼を出して雑巾でしっかり箱を拭く。
ふぅ、今日はホントにありがと。
炊事場の方を見るとものすごい勢いで湯気が上がっていた。
この人数は大変だろうなぁ……
長かった一日も終わり、年越しソバの準備も出来た。
さぁそろそろって時にやって来たのは腐れ縁、保護者も一緒にやってきた。
アンタ今まで何やってたのよ、どこに行ってもコイツ以外誰も居なかった？
なーに言ってんのよ、神隠しじゃあるまいし。
ソバ食べるからさっさと手を洗って座んなさい。
手伝ってないのに悪いなぁ？ガラにも無い事言ってんじゃないの。
稗田んトコのも、じきに来るわ。
いただきまーす。
この後宴会に雪崩れ込むと勢いだったのだが三が日は忙しいと言う理由から、
ちょっと日を置いてからと言う事で場を納めた。
鬼なんぞはとても悔しそうだったがそこは諦めてもらう。
一応私も巫女なのよ。
はー、なんだかんだで今日は楽しかったな。
もぞもぞ…
ん？コタツに誰か居る。
あら、まだ帰ってなかったの？
年末はやっぱり紅白を見るもの？
ばーか。
（良いお年を）
最後はゆかりんに一票。いえ只の趣味です、ハイ。
その雛のお守り全部くださいｗ。