「蓮子。聞きたい事があるんだけど」
「ん、何?」
「蓮子って料理作れる?」
無理。
....というのは簡単だけど、それじゃ恥ずかしい。言えないわよねぇ、毎日コンビニ弁当だなんて。
「ま、まあ一応ね」
「ふーん....じゃあ得意料理は?」
得意料理と申したか。得意.....料理.......ねぇ.....
「ほら、なんだっけ。あれよ、あれ」
「あれと言われても分からないわよ」
「えーっと.....オムレツとか」
「へぇ~....他には?」
他と申されましても。あと何か......
「あれよ、あれ。だし巻き卵」
「へぇ。じゃあ作り方は?」
「つ、作り方?」
「ええ。作り方」
「な、なんでそんな事聞くのよ」
「私も作ってみようとか思って。得意料理なんだから勿論、言えるわよね?」
困った。非常に困った。これは人生最大のピンチ。知らないわよだし巻き卵の作り方なんて。
「えー.....まず卵を溶きまして」
「溶きまして」
「えー.....フライパンをですね」
「ほうほう。フライパンを?」
「こう、火にかけて熱するわけですよ」
「本格的ですね、蓮子さん」
「で、油をひきまして、卵をフライパンに」
「だばーっと全部入れるわけですね?」
「そしてこう、だしをだばーと入れて、それを卵で包むと」
「そしたら出来上がりと」
「出来上がりです」
「じゃあ実演してもらいたいと思うのですが、如何でしょうか蓮子さん」
「えー....ちょっと私これから用事が.....」
「さっき電話で『暇だから一緒にお茶でも飲みながら話さない?』と言っていたのはどこの誰?」
「ぐ......」
「さ、蓮子の家に行きましょう?私、蓮子のだし巻き卵食べてみたいわ」
「いや、多分メリーの口には合わないと思うなー....」
「そんなの食べてみなきゃ分からないじゃない」
「いやー....私のだし巻き卵はちょっと特別で....」
「尚更食べてみたくなったわ」
......諦めるしかないか。
「....実はですねメリーさん」
「なんでしょうか蓮子さん」
「えー.....今更非常に言い難いんですが」
「はい」
「私、料理作れないのよね.....」
「うん、知ってたわよ。最初から」
「へ?」
「楽しかったわよ、蓮子。もー蓮子のだし巻き卵の作り方なんて笑い堪えるので大変だったわよ」
「........」
「それじゃ、私はこれで帰るわ。じゃあね、蓮子。また明日....って、何、この手」
「.....このまま帰すとでも?」
「.....三十六計逃げるに如かずって知ってる?」
「ええ。知ってるわ」
「.....逃げるが勝ち!!」
「あ、逃がさないわよ!!メリー!!」
逃げるメリーを追う私は、まさに獣のように。
喫茶店から出る時に店員が何か言ってたような気がするけど.....そんなの後回し!!
「待てメリー!!」
「料理できない蓮子が悪いんじゃない!!」
「五月蝿い!!」
今日も今日とて、秘封倶楽部の二人は仲良しだったのでした まる
秘封を書く人が増えてなにより。
不躾ながら、点は…(3点リーダー)を使うのがよろしいかと。
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