「………」
地下と地上を結ぶ深い穴の中にある
小さな一軒家の主が半目の状態で目を覚ます
寝ぼけ眼で、暫くぼーっとしてから
「……もうそろそろ時間のようね」
暖かい布団から渋々起き上がり
「全く……朝から仕事なんて妬ましいわ」
地底と言う場所に朝と言う概念が有ることがおかしいが
枕元に置いてある時計を止めると
「くしゅん……」
寝巻き代わりの下着だけの姿である事に気が付いて
「まずは服を着ないといけないわね」
水橋パルスィはグッと背伸びをしてから服を着替え始めた
・・・
「さて、妬ましいあいつらが来る前に準備をしておかないと」
着替えを終えて軽い朝食をとった後
パルスィは仕事の準備を始める
「毎日毎日、朝に来るあの二人を追い返す為に必要な物……」
パルスィがそう呟きながら、仕事道具を手にする
「……まずはこれね」
そう言ってパルスィが用意したのは
「この棍棒が無いと『あれ』をあの二人に食らわせてやれないもの」
大きな木の棒を両手に構える
「そうそう、熱くしたこれも要るわね」
次に用意したのは、熱すると中々冷めない物だった
それを火にかけてじっくりと暖める
「……ふふふっ……これを食らわされた二人の姿が目に浮かぶようだわ」
暫くの間は時間がかかるが二人がどんな顔をするのかを想像すると
パルスィが笑みを零した
・・・
「さて、朝に来るあの二人の準備はこのままで良いとして次は昼に来る奴らの分ね」
朝の準備はこのままでも大丈夫であると判断して
次は今日の昼に襲来する者の為の準備をする
「……そうそう、この日の為に新調してきたこれの出番ね」
パルスィがそう言って取り出したのは
工具である鋸と金槌の姿であった
「うふふふっ……あの子達はどんな顔で恐れるのかしらね?」
パルスィが楽しそうにそう呟くと
「妬ましい~♪妬ましい~♪」
手にした金槌を試す為か、一枚の鉄板を叩き始めた
暫くの間、地下と地上を結ぶ縦穴から調子が外れた鼻歌と
金属を叩く音が響いた
・・・
「ふぅ……大体こんな物で良いわね?」
パルスィがそう呟くと額にかいた汗を首に巻いたタオルで拭った
「御昼が楽しみね♪」
そして、御昼に起こるであろう出来事を想像して頬を緩めた
「さあ……最後は……」
そして、最後の相手の事を思い出して
「夜にやってくるあの馬鹿鬼に対しての準備……」
緩んでいた顔が一気に真剣に変わる
そして、仕事場の中で正座をすると
「……見てなさいよ……」
丁寧に新聞紙に包まれた物の中から取り出す
中から取り出されたのはやや大きめの出刃包丁
「……言った言葉を後悔させてやるわ……覚悟してなさいよ?馬鹿鬼」
パルスィが真剣な顔でそう呟くと
出刃包丁を無言のままひたすら砥石で研ぎ始めた
・・・
「ふぅ……これで準備が整ったわね、全く……仕事なんて妬ましいわ」
包丁を綺麗に研ぎ終えたパルスィがそう呟いた
全ての仕事の下ごしらえを終えた事でホッとしていたが
「あっ!?大変!もうこんな時間!」
そろそろ会戦の時間であった
「急いで着替えないと」
パルスィが急いで今来ていた作業着を脱ぎ捨てて下着姿になると
これから行われる戦いの為の戦装束に着替える
(準備はよし……さあ!仕事の時間ね)
鏡の前で仕事着に着替え終えると
パルスィが家の外に出る
そして、戦いを告げる為の旗を家の前に構えた
『地下⇔地上間サービスエリア『妬益し屋』現在開店中!』
『朝限定、暖かいネタマシ団子あります』
『御土産工芸品「ネタマシ時計」新作できました!』
それと同時にパルスィの元に大量の人物が集まる
(さあ……かかってらっしゃい!)
今日も一日、水橋パルスィの長い戦いが始まった
(ネタマシ団子……一つくださいなの♪)
「パルスィのこのネタマシ団子食べないと、朝だって実感がわかなくって」
「はいはい、全く……仲良さそうに団子食べて……妬ましいわね」
朝やってきたキスメとヤマメに笑顔でそう言いながら
出来立ての『ネタマシ団子』を少しサービスして二人に手渡す
「やっほ~!パルスィ~♪」
「うにゅ!新しい時計だって!?見せて見せて」
「ええ、良いわよ?……貴方達の主の力を借りてできた寝タマシ時計だけどね……」
「「えっ?」」
「ふふ……どんな人でも、目を覚ます『トラウマ想起機能』着きよ?」
「うにゃあ!?」
「うにゅ~!?」
涙目になったおりんと空の二人が
瞬く間にその場に頭を抱え込んで震えだした
「やだ……来ないで……それは止めて……尻尾を掴まないで!」
「うにゅ……あいつ怖い……畑にある大きな目が……やだ~!こっち見ないで!」
「効果抜群ね……突貫で作った甲斐があったけど……悪い事したかしら?」
覿面の効果にパルスィがちょっとだけ悪い事したかな?と苦笑した
・・・
そして夜……
「さて、そろそろ看板を下ろして…っと」
「おーい!待ってくれ」
そろそろ御客も来なくなってきたので、パルスィがお店の看板を降ろそうとした頃
大声を上げて御店に突貫してくる者がやってきた
そして、閉まろうとしている御店の中に入ると
「間に合った!」
「残念ね、完璧に遅刻よ勇儀」
「いや~悪い悪い!この通り」
星熊勇儀が豪快な笑顔で両手を合わせて頭を下げた
(全く……どうしてこの馬鹿鬼は旧都の総取りなのにこんな簡単に頭を下げるのかしら)
パルスィが優しい笑顔でため息を吐く
そして、諦めたように声をかけた
「それで?何を注文するのかしら?」
注文する物は決まっているがいつものやり取りでパルスィが声をかけると
勇儀が何時もの様に声を上げた
「挑戦メニューのネタ増し鍋一つ!」
「了解……今回も残すつもりかしら?」
毎回毎回、勇儀はこのメニューを頼んで料理を残す
「当然だろう?残ったらパルスィが一緒に食べてくれるんだから」
「はぁ……せっかく作った料理が貴方を妬むわよ?」
パルスィがため息を吐きながら
綺麗に磨いだ包丁で大量の野菜と肉を切って鍋の中に入れていく
「さて……今日の仕事はこれでおしまいね」
パルスィがそう言うと、十分に火が通った鍋を持って
勇儀の居る御店の奥に向かった
(さて、今日はどうやって勇儀に甘えようかしら?)
此処から先は水橋パルスィのプライベートな時間なので
この御話は此処でおしまい
借り手できた → 借りてできた
なにこのかわいい生物。寝タマシ時計一つ下さいな。
ネタ増し鍋一緒につつきたい
こんな素敵な作品がかける脇役さんが妬ましい
これは一緒にネタ増し鍋をつっついてくれないと許されないぞよ?
私も頑張れそうです。
あと、お仕事頑張ってください!
パルスィの声で「何時までも寝ていられて妬ましい~」とか言って起こしてくれるんだろうか。
もっとすっきりあまーく起こされたいなあ。
なんだかお腹がすきました(*´Д`)
...えと、おかみすちーで8のコメントをした者ですが、
先程こえ部の方に「痛みを伴う愛情表現」として投稿させて頂きました。
こちらにリンクを貼るのは控えさせて頂きますが、
もしもお暇がありましたなら覗いてやって下さい。
今回は本当にありがとうございましたm(_ _)m
可愛すぎて悶えます悶えます!
パルスィも(ピチューン