「レミリアー、いるかー?」
ノック無しに開かれる扉。黒白の魔法使い、霧雨 魔理沙である。
彼女がこの紅魔館にやって来る事は珍しくない…というか、しょっちゅうだ。知識と日陰の少女の元を訪ねては本を強奪している。
しかし、今日の彼女は違った。紅魔館の主である、レミリア・スカーレットを訪ねてきたのだ。
突然の来訪者に、しかしレミリアは動じず、応じる。
「れみりゃだよ?」
魔理沙は慌てて部屋の外へ出て、扉を閉めた。
危なかった。あのまま部屋の中にいたら、あのテンプテーションの魔法にやられていたことだろう。
レミリアも魔法が使えたのか。今度からはそれも気をつけようなどと魔理沙は考えた。
――色々と間違っているが。
「あら、魔理沙じゃない。どうしたの、お嬢様なら…」
「いやいい。皆まで言うな。見た」
「ああそう。それは話が早い」
モップ片手に現れたのは完全で瀟洒なメイド、十六夜 咲夜だった。
この広大な紅魔館を取り仕切るメイド長にして、紅魔館内で唯一の人間である(いささか化け物じみてはいるが)。
「で、どうしたの一体。あなたがパチュリー様以外を訪ねるなんて珍しい。明日は雨かしら。お嬢様が残念がるわ」
咲夜が嫌味を混ぜ込みながら尋ねる。
「ちょっと気になることがあってな。スペルカードのヒントになるかも知れないから、聞きに来たんだ」
「ふうん…訊かせて貰っても構わない?」
あまり期待はしていない。彼女の主の友人、パチュリーは、自らの研究内容を他人に話したりしないのだ。
パチュリー曰く『魔法使いはみんなそんなもの』だそうだから、魔理沙も教えてはくれないだろうと考えたのだ。
しかし、魔理沙は事も無げに答えた。
「別に大したことじゃないぜ。萃香や天子が異変を起こしたときの話なんだけど、レミリアも居たよな?」
そういえばそんなこともあったなぁ、と、咲夜は思い返す。
その時咲夜は紅魔館でお留守番をしていた。やって来た霊夢を追い返そうとして返り討ちにされた思い出が蘇る。
「ええ。それがどうかした?」
「おかしいよな?レミリアのダッシュ」
「――はぁ?」
魔理沙はたまに訳の分からないことを言う。
そして、彼女は自分の話を皆が理解していると思いこんでいるため、なおさらタチが悪い。
「ねぇ魔理沙。意味が分からないんだけど」
「どう考えても物理法則無視しすぎだろう、あれは」
…あぁ。なんだ、そういうことか。それは紅魔館内ではあまりに常識すぎた。
「簡単よ。あれ、カリスマ使って方向転換してるの」
「…はぁ?」
「いや、だから、カリスマ。使いすぎるとああなるけどね」
そういって、咲夜はレミリアの部屋の扉を指し示す。――つまり、レミリアはカリスマを使いすぎるとれみりゃになるらしい。
魔理沙は大層驚いていた。カリスマってレベルじゃねーぞ!とか、幼女!幼女!など、よく分からない考えが頭の中を駆けめぐる。
「そうだったのか…?でもなんでああなってるんだ?」
「昨日妹様と紅魔館内大かけっこ…鬼ごっこ?してたわ。お嬢様が妹様のおやつ食べちゃったのよ」
…不夜城レッドやスピアザグングニル、スターボウブレイクやレーヴァテインが飛び交いまくる状況が、かけっこだの鬼ごっこだのと呼べるのなら、その説明で正しい。
紅魔館内の感覚で言うと、そんな酸鼻きわまる阿鼻叫喚の地獄絵図がかけっこだの鬼ごっこだのに該当するのだ。無論魔理沙は知るはずもない。
ちなみに、壊れた紅魔館は『マジカル☆咲夜ちゃんぱわぁ』で修復したそうな。その辺りは『ご都合主義』なる決して気にしてはならない何かの力が働いているので割愛。触れたら…消される。物理的に。
魔理沙の脳裏には、萃夢想や緋想天の時のようなビョンビョンビョンビョン飛び回るダッシュで、レミリアがはね回っているシュールな絵が浮かんでいた。
そして普通に飛んでいるフランにすぐ追いつかれるのだ。
「そういえば、フランはどういうダッシュをするんだ?レミリアみたいな感じか?」
「いや、妹様は…そうね、『ぎゅいーん』みたいな効果音といっしょに、猛烈に回転しながら走るわね。で、状況によっては金色のリングが集まったりするわ」
「はぁ?」
違うぞ!決してあの青色ハリネズミなんかじゃないぞ!
気を取り直し、魔理沙は尋ねる。
「フランもダッシュの燃料にカリスマを使うのか?」
「いえ、妹様のダッシュの燃料は狂気よ。使いすぎると…あ、ちょうど良いところに」
咲夜の視線の先には、ぎゅっとしてどかーんで有名な悪魔が居た。今までのエキストラで唯一会えてないんだよチックショー。
魔理沙は無意識ながら身構える。いつも『魔理沙~』などと言いつつ抱きついてくるのだ。
しかしそれはフラン側の感覚であり、ただの人間に過ぎない魔理沙からすればそれは、『超高速で飛行してくる人間型ロケットによるショルダータックル』なのだ。まさしく命がけである。
しかし、今日のフランは違った。ゆっくりと魔理沙に歩み寄ってきて、こう言うのだ。
「あら、魔理沙さん。こんにちは。日差しが心地良いですね」
!?
日差しが心地良いって…灰になるぞお前。
魔理沙の心に浮かんだつっこみの一つだ。
「よ、よおフラン。今日も弾幕ごっこか?」
ぎこちないながらも、必死になって返事を返す。
えぇぇぇぇ!とか言ったら負けだ。負けなんだ。頑張れ魔理沙。
しかし、フランによるジェノサイドはまだ終了していない。
「…弾幕ごっこ?もう、魔理沙さんったら何を言っているんですか。もう私だって子供じゃないんですよ?…一応、魔理沙さんよりは年上なんですから。魔理沙さんこそ、いつまでもパチュリーから本を盗んでいないで、恋の一つでもしてみたらどうです?…私とかに…」
なんぞこのフラン。いつもの姿、いつもの声な分更に違和感がある。
しかも、え、何?最後のはあれだろうか。KOKUHAKUという奴だろうか。あぁしかも頬染めてやがる確実に確信犯だこれ。
魔理沙の頭が混乱のるつぼに叩き込まれる。つっこみが間に合わないなんて状況が本当にあるだなんて、魔理沙は知らなかった。今知った。
「…あ、そうだ。魔理沙さん、パチュリーの図書館で見かけた本で、どうしても分からない所があって。教えていただけませんか?」
そういって、フランは一冊の本を差し出し、付箋の貼られたページを開く。そのページには…。
3 以上の自然数 n について、xのn乗 + yのn乗 = zのn乗 となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせがない。
魔理沙のつっこみ脳が限界を超えた。
視界がブラックアウト。
「はっ!?わ、私は何を!?」
寝汗びっしょりで跳ね起きた。そして辺りを見渡す。
見慣れた自分の部屋。何一つ、変わらない
…どうやら、夢だったようだ。何というカオスな夢だ。大丈夫なのか私。
見慣れた自分の部屋。何一つ、変わらない…。
「あ、魔理沙さん、目が覚めたんですね」
妹。
「フラン、なんでここに」
「魔理沙さんが急に倒れるから、咲夜に手伝って貰ってここまで運んだんです。大変だったんですからね?」
「そうか。それはありがとう。で、なんで私に近づいてきてるんだ」
「やだなぁ魔理沙さん、言ったじゃないですか。『恋の一つでもしてみたらどうです?私とかに』って」
「あ、ちょ、やめ、アッー!」
そしてフラ様は淑女と言う名の変態へと開花する……っ!
>慧音塾生徒様
コメントありがとうございます。ああん悶える。
というかその塾にはどうしたら入れますか。
>名前が無い程度の能力様コメントありがとうございます。うはあ悶える。
紅魔館の面子全員がふらんちゃんにうふふされちゃうわけですね、わかります。
>名前が無い程度の能力様
コメントありがとうございます。ひぐう悶える。
なんとそれは素晴らしい。ていうかうらやましい。
授業中なのにマメにレスしてくる作者さんにうふふ
>過酸化水素ストリキニーネ様
コメントありがとうございます。フランちゃんのハーレムを想像して萌え悶えました。ひうう。
ピンク魔館いいよピンク魔館。
>名前が無い程度の能力様
コメントありがとうございます。淑女フランちゃんがれみりゃさまのお守りをしているのが目に浮かびつつ悶えます。んああ。
何とこの淑女フランちゃん、ぶっ飛んだキャラのため何をやらせてもネチョになるという驚異のスペック。いやあ動かしづらいの何のって。
ダッシュしまくれば淑女フランの登場だ!ひゃっほう!!
>名前が無い程度の能力様
コメントありがとうございます。ふわあ悶える。
パッチさえあれば萃夢想にも緋想天にもふらんちゃんがうぎぎ!
ぎゅっとしてどかーんの力で敵を瞬殺!
アーケードモード中に合計1000000000000回ダッシュすれば淑女フランちゃんの登場だ!
その持ち前の淑女パワーとネチョ力で相手を圧倒するぞ!ベッドの上的な意味で!
>名前が無い程度の能力様
コメントありがとうございます。やあん悶える。
レベルが高いだなんて恐縮極まりないです。これからも精進していきたいと思います。
嘘だよ!!言ってみたかっただけ!!
おもしれぇよ!!!
>名前が無い程度の能力様
こ、これがツンデレかッ…!
コメントありがとうございます。一行目で思わず悶えました。Mですので。
>#15様
コメントありがとう御座います。はふぅ悶える。
正直ネタ被ってないかとドキドキしてたので『斬新』とか『独創的』と言われるともうはしゃぎ回ってすっぱてんこーします。
貰ったコメントは返さないとむずむずするんです。何故か。
間違えなく「咲夜さん」だと思うwwww
こういう作品があるからやめられないw次回作も期待してます!
………いや、
さくしゃだよ?
>時空や空間を翔る程度の能力様
コメントありがとうございます。どはあ悶える。
残念ながら、れみりゃさまと淑女フランちゃんが登場すると、咲夜さんは殆ど部屋から出なくなります。出血多量で死にますから。
しかし僭越ながら申し上げますと、美咲こそがジャスティスなのです
>魔理沙ちゃんうふふ様
コメントありがとうございます。きゃん悶える。
ネチョい部分の公開は10000000000年後になります。楽しみにお待ちください。
ああ、やはり誉めていただくと嬉し悶えますねぇ。
>回転魔様
コメントありがとうございます。なまら悶える。
そうなんだよ!カリスマってすげえんだよ!愛なんかより余程世界を救うんだよ!
いいぞもっとやれ
>名前が無い程度の能力様
コメントありがとうございます。テラ悶える。
わかったもっとやる
悶え過ぎな作者に一番萌えたwwwww
れみりゃ様放置プレイwwwww
最初から誤字があって(誤字じゃないかも)突っ込もうかと思ったけど後書き見て確信犯だと思いました
訪ねた→尋ねたかと
>どえすこあー→パチェ様
な、何という素晴らしいハンドルネームッ…!!
そこにしびれるあこがれるゥ!
…多分使い方違うんでしょうね。これ。
違うんだよ!れみりゃ様放置プレイしてるわけじゃないんだよ!
存在するだけで周りが血だらけ(鼻血)になるから誰も近づけないんだよ!
作者である私を含めて!それぐらいれみりゃ様の幼女ぱわぁ☆は危険なんだ!
いや、確信犯じゃないんだが…誤字だって!?
悔しい、でも悶えちゃう(ビクビクッ)修正しました。ありがとうございます。
続きはどこかね?
>名前が無い程度の能力様
コメントありがとうございます。ぐはあ悶える。
続きならすでにありますよ、貴方の心のなかに……
>名前が無い程度の能力様
コメントありがとうございます。ぬはあ悶える。
この後フランちゃんは見事にこれを証明してパチュリーをむきゅーってさせたらしいですよ。
(読む前)時間の無駄だな
(とか言いつつ読む)
(読んだ後)まぁ、アリじゃないか?貴様・・・
大事な事なので二回言いました。
>オッツダルヴァ(ACの人)様
コメントありがとうございます。悶えけむ。
アリですか。それはモハメドですか?それとも昆虫ですか?
とまあ、冗談はこれくらいにして・・・
「マジカル☆咲夜ちゃんぱわぁ」を是非目の当たりにしたいと思う私は人としてどこか軸がぶれてますか?
<魔理沙のつっこみ脳が限界を超えた。
知恵熱ですね。分かります。
だが本文以上に作者のコメントに吹いてしまった。
タイトルを見ただけでは中身が想像できなかった
このフランは間違いなく眼鏡
全然見たくないですよ。ホントですよ。
…ちょっとアーケードで一兆回ダッシュする練習してきますね。