「いつもはケーキに至福の時を感じる私だけど、たまにはあんこの素朴な甘さも……。
うふふっ♪ いただきまーす」
ここは、人里の、とある美味しい甘味処。
ピンク頭が特徴的な仙人が、白玉あんみつを美味しそうに、笑顔で頬張っている。
「ん~……! この味! ケーキにはない、ゆったりとした、優しい味わい!
洋菓子も素晴らしいけど和菓子もいいわね! というか、両方とも、たまに味わうから素晴らしいのであって、毎日毎日、口にしていたらありがたみも薄れてしまうもの。
あ、そうだ! 次からは、洋菓子と和菓子、ローテーションにしましょう! そうしましょう!」
甘いもの大好き仙人は、ありがたみがあるんだかないんだかわからないことを勝手に言いながら、あんこと緑茶を味わっている。
その笑顔の幸せそうなことと言ったら。
思わず通りすがるおじいちゃんおばあちゃんが、『これでわしも、平穏にあの世にいけそうじゃのぅ』『いえいえ、おじいさん。まだまだ、あたしらは長生きできますよ』と会話を交わすほどである。
もちろん、お店の店主にも、そんな風に美味しそうに食べてくれるお客様は大歓迎であり、いつも店の暖簾をくぐるたびに歓迎される始末であった。
なお、言うまでもないが、仙人とは節制を尊び、俗世の穢れから離れた存在である。
「あら」
「……」
と、そこで。
ピンク仙人――茨木歌仙、通称華扇ちゃんの手が止まった。
「華扇さまではございませんか。
ごきげんよう」
「……霍……青娥……」
その彼女の前を通りかかるのは、青い意匠が特徴の邪仙、霍青娥。
ちなみに彼女は、人里では、『幻想郷少女愛同盟会長』として広く信仰を集めている。
「……また、本当に、あなたはどうしてこういつもいつも……」
「このような天下の往来ですもの。誰が歩いていても不思議ではございません」
「…………確かに」
言われてみればその通り。
これは、華扇の一本負けといったところだ。
「ところで、あなたは何をしにきたのですか」
「お買い物です」
と、片手に何やら色々提げているその姿は、何というか、『主婦』のようでもあったりする。
その見た目から行くと『若奥様』というやつか。彼女の実年齢はさておいて。
「廟の者たちの、健康と栄養管理はわたくしの仕事ですもの」
「まあ、それについては何も言いませんけど」
ところで、と今度、切り出してくるのは青娥だった。
青娥は華扇の顔をじっと見つめて、
「ふっくらされましたね」
「……へっ?」
「以前、お会いした頃よりも、こう、ほっぺたのあたりがぷくっと。血色がよくなった感じで」
うふふ、と笑う青娥。
言われて、華扇はほっぺたをぷにぷに触る。
……確かに、以前の自分と比べて、お肉のボリュームがアップしているような気がせんでもなかった。
「女性は、少しぽっちゃりしている方がかわいらしいと言われております。
確かに世の中、ダイエットと言うのは至上の命題。どんな女性も体重と言う悪魔と戦い続けているわけですが、あまりにもそれに没頭しすぎてしまって、手段と目的を履き違えている方が多いのも事実。
そもそも、ダイエットと言うのは単なる減量ではなく、いわゆる体調管理でございます。
食事、運動、睡眠。それぞれの要素のうち、乱れたものを見つめなおし、もって正常に戻す――それがダイエットの本来の意味。
なのに、世の女性はそれを忘れて、とにかく体重を落とさねば、と躍起になることも多々」
嘆かわしい限りです、と青娥。
「まぁ、わたくしの射程範囲である見た目5~12歳の少女にとってはあまり関係のないことですが、時にわたくしとして、妙齢の女性と話をすることもございます。
そんな折によく言われるのが、『仙人さまの、見た目を維持する秘訣を教えてください』と言う言葉。
それに、わたくしはこう答えます。
『心身ともに健康な生活を心がけなさい』と。
ですわよね? 茨華仙さま」
「へっ? え、ええ、そうですね!」
何やら青娥がやたら真面目に語りかけてくる。
一瞬、『あれ? こいつ、こんなにまともな奴だったっけ?』と過去の記憶を総ざらいしていた華扇は、いきなり自分に話が戻ってきたことで、慌てて返事をする。
「美味しい食べ物をお腹一杯食べることができると言うのは、何よりの幸せです。そして、何よりも素晴らしいことです。
飢えと貧困と言うものは唾棄すべきものであり、同時に、とても悲しいもの。それを知らず、毎日を過ごすことが出来る。なんと素晴らしい人生でしょう。
ですが、それには罠もございます。
得てして、『美味しい食事』と言うのはお腹にたまりやすいものですから」
ぐっ、となった華扇ちゃん。
慌てて、自分のお腹周りを触ってみる。
……つまめた。
「それをコントロールするのが、日々の生活で必要なのです。
一日の必要なカロリーを計算し、自分が食べてきた食べ物のカロリーを全て表にします。これを一覧として資料にまとめておくと共に、一日に、そして一週間、一ヶ月に、『何をどれくらい食べてもいいのか』を割り出します。
この範囲内で、食事をやりくりするのです。
かといって、『今日はご飯一杯だけ。でも、明日は美味しいケーキお腹一杯!』などというのは、まぁ、一ヶ月に一度くらいならいいかもしれませんが、繰り返しては言語道断、本末転倒。栄養のバランスもきっちり考えないといけません。
お野菜、お肉、お魚、その他諸々。これらをバランスよく摂取します。
一番いいのは、お野菜を多めに、お肉とお魚は、少し少なめに、ですわね。全く食べないとか、『○○ダイエット』みたいな偏食は長続きしませんし、何より、たとえそれで体重を減らせたとして、元の食生活に戻れば、100%元通りですわ。
そんなの、苦労が報われないでしょう」
「た、確かに……!」
言われてみれば全くその通り。
華扇は、普段なら、青娥に対して『お前は頭の中身を少し入れ替えて来い』ということしか言わないのだが、今回ばかりは全く同意であった。
というか、今更ながら、そんな当たり前のことを思い出して、うんうん、とうなずいている。
「それから運動。
これも、ひたすら激しい運動をすればいいというものではありません。
確かに、激しい運動は消費カロリーも多く、効率的といえば効率的です。しかし、激しい運動は繰り返すのが辛く、大抵の方が、一日、運動をすれば諦めてしまうでしょう。
そうではなく、継続することが大切なのです。
たとえば、早歩きで1時間歩くと、大体、150kcalの消費が出来ます。ご飯をおわんに、軽く一杯分ですわね。
これで、『たったそれだけ?』と思ってしまうようではまだまだです。
これを一ヶ月続けて御覧なさい。一ヶ月で4500kcal、二ヶ月で9000kcal、三ヶ月で13500kcalです。
二ヶ月目には体重も減り始めます。それとは別に、運動をしたことで下半身、ちょうど太ももからふくらはぎにかけてのラインが美しくなりますし、腕を振って歩くことで肩周りの筋肉もほぐされ、肩こりも軽減します。
さらには、心肺機能の向上、そして、これらに伴う基礎代謝の改善で、太りづらくやせやすい体質に変わることでしょう」
「確かに、その通り!」
思わず、声を上げます華扇ちゃん。
「これらを総合すると共に、一日の終わりに、今日の運動の内容、食事の内容、それから体重を量って記録したものを残します。
これを毎日、毎週、毎月、続けるのです。
そして、理想の体型を手に入れたとしても中断したりせぬように。ずっと続けていくことが大切なのです。
一日の合間、少しの隙間を縫って、継続する努力。意思。これこそが大切ですわ」
「なるほど……確かに……」
うんうん、とうなずきながらの華扇ちゃん。
心なしか、目の色が変わっている。
視線を落として、椅子の上で、ちょっぴりお洋服の内側で自己主張している太ももや、以前よりもほんのちょっと柔らかくなった二の腕などが、とっても気になるらしい。
「――と、いかがでしょうか。茨華仙さま。
華扇さまを見習って、少し、説教を覚えてみました。まだまだ、わたくしは華扇さまには届かない、至らぬ邪仙でございますが、日々の精進を続けているつもりでございます」
にっこり笑い、恭しく頭を下げる青娥。
そんな彼女に、
「感銘を受けました、仙人さま!」
「わたし、頑張ります! 年末までに、目指せ、マイナス5キロ!」
「自分の生活が、いかにだらけたものであったか、それを痛感させられました! ありがとうございます、仙人さま!」
と、いつの間にか、青娥の周りに人垣(ほぼ女の子)が出来ていた。
彼女たちは涙を流しながら青娥に握手を求め、サインを求め、ついでに『私も小さい女の子を愛してるんです!』と青娥の元に入信していたりした。
最後の奴はちょっと後で説教しとこう、とその微笑ましい光景を見て、華扇は思った。
「けれど、やせすぎはNGですわ。お肌も汚くなりますし、髪も傷みますし。適正体重がベストです」
華扇の視線は、手元の白玉あんみつに向かった。
まだおわんに残っているそれを、大切に、味わって食べた後、『しばらく、あなた達の元から離れます。けれど、あなた達のことを嫌いになったわけでも、忘れるわけでもありません。すぐにまた帰ってきます。それまで、少しの間、待っていてね』と心の中で涙流しながら、華扇ちゃんは「ごちそうさま」を告げた。
人々でごった返す人里。
そこを離れ、華扇は一人、家へと戻る。
「……まずは滝行からね!」
ここに、『茨木歌仙のいっしょにだいえっと!』がスタートするのであった。
「なー、霊夢」
「何、魔理沙」
「人里でこんな本売ってた」
やってきた白黒魔法使いが取り出したのは、『ダイエット指南書』(著:霍青娥)である。
「……あの仙人、こんな本も出してたっていうか……」
「魔理沙さん」
「お? 何だ、さな……」
「言い値で買います」
「……いや、定価でいいよ」
目が真剣な緑色の巫女の言葉に、真夏の日差しの下、彼女の背中に冷たいものが伝ったと言う。
うふふっ♪ いただきまーす」
ここは、人里の、とある美味しい甘味処。
ピンク頭が特徴的な仙人が、白玉あんみつを美味しそうに、笑顔で頬張っている。
「ん~……! この味! ケーキにはない、ゆったりとした、優しい味わい!
洋菓子も素晴らしいけど和菓子もいいわね! というか、両方とも、たまに味わうから素晴らしいのであって、毎日毎日、口にしていたらありがたみも薄れてしまうもの。
あ、そうだ! 次からは、洋菓子と和菓子、ローテーションにしましょう! そうしましょう!」
甘いもの大好き仙人は、ありがたみがあるんだかないんだかわからないことを勝手に言いながら、あんこと緑茶を味わっている。
その笑顔の幸せそうなことと言ったら。
思わず通りすがるおじいちゃんおばあちゃんが、『これでわしも、平穏にあの世にいけそうじゃのぅ』『いえいえ、おじいさん。まだまだ、あたしらは長生きできますよ』と会話を交わすほどである。
もちろん、お店の店主にも、そんな風に美味しそうに食べてくれるお客様は大歓迎であり、いつも店の暖簾をくぐるたびに歓迎される始末であった。
なお、言うまでもないが、仙人とは節制を尊び、俗世の穢れから離れた存在である。
「あら」
「……」
と、そこで。
ピンク仙人――茨木歌仙、通称華扇ちゃんの手が止まった。
「華扇さまではございませんか。
ごきげんよう」
「……霍……青娥……」
その彼女の前を通りかかるのは、青い意匠が特徴の邪仙、霍青娥。
ちなみに彼女は、人里では、『幻想郷少女愛同盟会長』として広く信仰を集めている。
「……また、本当に、あなたはどうしてこういつもいつも……」
「このような天下の往来ですもの。誰が歩いていても不思議ではございません」
「…………確かに」
言われてみればその通り。
これは、華扇の一本負けといったところだ。
「ところで、あなたは何をしにきたのですか」
「お買い物です」
と、片手に何やら色々提げているその姿は、何というか、『主婦』のようでもあったりする。
その見た目から行くと『若奥様』というやつか。彼女の実年齢はさておいて。
「廟の者たちの、健康と栄養管理はわたくしの仕事ですもの」
「まあ、それについては何も言いませんけど」
ところで、と今度、切り出してくるのは青娥だった。
青娥は華扇の顔をじっと見つめて、
「ふっくらされましたね」
「……へっ?」
「以前、お会いした頃よりも、こう、ほっぺたのあたりがぷくっと。血色がよくなった感じで」
うふふ、と笑う青娥。
言われて、華扇はほっぺたをぷにぷに触る。
……確かに、以前の自分と比べて、お肉のボリュームがアップしているような気がせんでもなかった。
「女性は、少しぽっちゃりしている方がかわいらしいと言われております。
確かに世の中、ダイエットと言うのは至上の命題。どんな女性も体重と言う悪魔と戦い続けているわけですが、あまりにもそれに没頭しすぎてしまって、手段と目的を履き違えている方が多いのも事実。
そもそも、ダイエットと言うのは単なる減量ではなく、いわゆる体調管理でございます。
食事、運動、睡眠。それぞれの要素のうち、乱れたものを見つめなおし、もって正常に戻す――それがダイエットの本来の意味。
なのに、世の女性はそれを忘れて、とにかく体重を落とさねば、と躍起になることも多々」
嘆かわしい限りです、と青娥。
「まぁ、わたくしの射程範囲である見た目5~12歳の少女にとってはあまり関係のないことですが、時にわたくしとして、妙齢の女性と話をすることもございます。
そんな折によく言われるのが、『仙人さまの、見た目を維持する秘訣を教えてください』と言う言葉。
それに、わたくしはこう答えます。
『心身ともに健康な生活を心がけなさい』と。
ですわよね? 茨華仙さま」
「へっ? え、ええ、そうですね!」
何やら青娥がやたら真面目に語りかけてくる。
一瞬、『あれ? こいつ、こんなにまともな奴だったっけ?』と過去の記憶を総ざらいしていた華扇は、いきなり自分に話が戻ってきたことで、慌てて返事をする。
「美味しい食べ物をお腹一杯食べることができると言うのは、何よりの幸せです。そして、何よりも素晴らしいことです。
飢えと貧困と言うものは唾棄すべきものであり、同時に、とても悲しいもの。それを知らず、毎日を過ごすことが出来る。なんと素晴らしい人生でしょう。
ですが、それには罠もございます。
得てして、『美味しい食事』と言うのはお腹にたまりやすいものですから」
ぐっ、となった華扇ちゃん。
慌てて、自分のお腹周りを触ってみる。
……つまめた。
「それをコントロールするのが、日々の生活で必要なのです。
一日の必要なカロリーを計算し、自分が食べてきた食べ物のカロリーを全て表にします。これを一覧として資料にまとめておくと共に、一日に、そして一週間、一ヶ月に、『何をどれくらい食べてもいいのか』を割り出します。
この範囲内で、食事をやりくりするのです。
かといって、『今日はご飯一杯だけ。でも、明日は美味しいケーキお腹一杯!』などというのは、まぁ、一ヶ月に一度くらいならいいかもしれませんが、繰り返しては言語道断、本末転倒。栄養のバランスもきっちり考えないといけません。
お野菜、お肉、お魚、その他諸々。これらをバランスよく摂取します。
一番いいのは、お野菜を多めに、お肉とお魚は、少し少なめに、ですわね。全く食べないとか、『○○ダイエット』みたいな偏食は長続きしませんし、何より、たとえそれで体重を減らせたとして、元の食生活に戻れば、100%元通りですわ。
そんなの、苦労が報われないでしょう」
「た、確かに……!」
言われてみれば全くその通り。
華扇は、普段なら、青娥に対して『お前は頭の中身を少し入れ替えて来い』ということしか言わないのだが、今回ばかりは全く同意であった。
というか、今更ながら、そんな当たり前のことを思い出して、うんうん、とうなずいている。
「それから運動。
これも、ひたすら激しい運動をすればいいというものではありません。
確かに、激しい運動は消費カロリーも多く、効率的といえば効率的です。しかし、激しい運動は繰り返すのが辛く、大抵の方が、一日、運動をすれば諦めてしまうでしょう。
そうではなく、継続することが大切なのです。
たとえば、早歩きで1時間歩くと、大体、150kcalの消費が出来ます。ご飯をおわんに、軽く一杯分ですわね。
これで、『たったそれだけ?』と思ってしまうようではまだまだです。
これを一ヶ月続けて御覧なさい。一ヶ月で4500kcal、二ヶ月で9000kcal、三ヶ月で13500kcalです。
二ヶ月目には体重も減り始めます。それとは別に、運動をしたことで下半身、ちょうど太ももからふくらはぎにかけてのラインが美しくなりますし、腕を振って歩くことで肩周りの筋肉もほぐされ、肩こりも軽減します。
さらには、心肺機能の向上、そして、これらに伴う基礎代謝の改善で、太りづらくやせやすい体質に変わることでしょう」
「確かに、その通り!」
思わず、声を上げます華扇ちゃん。
「これらを総合すると共に、一日の終わりに、今日の運動の内容、食事の内容、それから体重を量って記録したものを残します。
これを毎日、毎週、毎月、続けるのです。
そして、理想の体型を手に入れたとしても中断したりせぬように。ずっと続けていくことが大切なのです。
一日の合間、少しの隙間を縫って、継続する努力。意思。これこそが大切ですわ」
「なるほど……確かに……」
うんうん、とうなずきながらの華扇ちゃん。
心なしか、目の色が変わっている。
視線を落として、椅子の上で、ちょっぴりお洋服の内側で自己主張している太ももや、以前よりもほんのちょっと柔らかくなった二の腕などが、とっても気になるらしい。
「――と、いかがでしょうか。茨華仙さま。
華扇さまを見習って、少し、説教を覚えてみました。まだまだ、わたくしは華扇さまには届かない、至らぬ邪仙でございますが、日々の精進を続けているつもりでございます」
にっこり笑い、恭しく頭を下げる青娥。
そんな彼女に、
「感銘を受けました、仙人さま!」
「わたし、頑張ります! 年末までに、目指せ、マイナス5キロ!」
「自分の生活が、いかにだらけたものであったか、それを痛感させられました! ありがとうございます、仙人さま!」
と、いつの間にか、青娥の周りに人垣(ほぼ女の子)が出来ていた。
彼女たちは涙を流しながら青娥に握手を求め、サインを求め、ついでに『私も小さい女の子を愛してるんです!』と青娥の元に入信していたりした。
最後の奴はちょっと後で説教しとこう、とその微笑ましい光景を見て、華扇は思った。
「けれど、やせすぎはNGですわ。お肌も汚くなりますし、髪も傷みますし。適正体重がベストです」
華扇の視線は、手元の白玉あんみつに向かった。
まだおわんに残っているそれを、大切に、味わって食べた後、『しばらく、あなた達の元から離れます。けれど、あなた達のことを嫌いになったわけでも、忘れるわけでもありません。すぐにまた帰ってきます。それまで、少しの間、待っていてね』と心の中で涙流しながら、華扇ちゃんは「ごちそうさま」を告げた。
人々でごった返す人里。
そこを離れ、華扇は一人、家へと戻る。
「……まずは滝行からね!」
ここに、『茨木歌仙のいっしょにだいえっと!』がスタートするのであった。
「なー、霊夢」
「何、魔理沙」
「人里でこんな本売ってた」
やってきた白黒魔法使いが取り出したのは、『ダイエット指南書』(著:霍青娥)である。
「……あの仙人、こんな本も出してたっていうか……」
「魔理沙さん」
「お? 何だ、さな……」
「言い値で買います」
「……いや、定価でいいよ」
目が真剣な緑色の巫女の言葉に、真夏の日差しの下、彼女の背中に冷たいものが伝ったと言う。
にゃんにゃんがまともに見えるだと…?
私もそちらに参ります!
で、華仙ちゃんの孤独のスイーツはまだですか?