今宵もまた博麗神社の広間では、人妖入り混じった大宴会が行われていた。
題目なんてどうでもいい。とにかく酒が楽しく飲めればいいのだ。
その意味では、今日の宴は大成功。
いつも以上に大勢の幻想郷の住人たちが集まって、あちらこちらで盛り上がっていた。
「ウーン、ちょっと調子に乗って飲みすぎたみたいだ……気分わる……」
「ちょっと大丈夫、魔理沙? なんだったら家まで送っていくけど」
「いや、ちょっと休めば治るだろ。平気だぜ」
「それならいいけど……キツかったら遠慮しないで言ってね」
「わざわざすまんな、アリス」
酔った魔理沙を、優しく気遣うアリス。
そんなふたりを目聡く見つけた周囲の者たちが、「ヒューヒュー」と喚声をあげながら、ここぞとばかりに囃し立てた。
「妬けちゃうわね~、おふたりさん!」
「マリアリは俺のジャスティス!」
「いや、そこはアリマリでしょう!」
「アリーヴェデルチ!(どちらもアリだ)」
――またこのパターンか。
魔理沙とアリスは、ひどく辟易した様子でため息をつき合った。
「……あのなぁ、ガキじゃないんだから、ちょっと仲良くしただけでヘンに茶化すのやめてくれないか?」
「おかげで結構迷惑してるのよ、わたしたち。なんか里の人たちには同性愛者だと勘違いされてるし」
ふたりはラブラブ! しかもツンデレ!
……というどこから派生したやも知れぬ風評――っていうか二次設定。
常日頃から謂れのない疑いをかけられている魔理沙とアリスは「いい加減ウンザリ」といった様子だった。
「そうだそうだ! すこしは言われる側の気持ちも考えろ!」
そう声をあげたのは、藤原妹紅。
「わたしも輝夜とカップリングされたときは正直驚いたよ」
「そうそう、わたしたち殺し合うほど仲が悪いのにね?」
「「ネー?」」
――いや、めちゃくちゃ仲良しさんじゃないですか。
小首をかしげて見事にハモったふたりに、誰もが心のなかでツッコミを入れた。
「でもそういう、勝手なイメージ持たれることって結構あるわよね」
神社の巫女、博麗霊夢は語る。
「なぜかわたし、貧乏だと思われてるらしくって、よく食べ物を恵まれるのよねぇ。たしかにお賽銭はあんまり入らないけど、こちとら食い逸れるほど困ってないわよ。あと『夢をあきらめるな』とか書かれたサッカーボールを大量に送ってくるのも止めてほしい。南米かっつーの!」
「やれやれだ。その程度で被害者面はよしてくれないか?」
古道具屋「香霖堂」の主人、森近霖之助がため息を吐く。
「僕なんて、どういうわけか褌一丁で幻想郷を駆け回る変態漢のように思われている節がある。おかげで客が寄り付かずに商売あがったりだよ。そもそも僕は褌派じゃなくブリーフ派だ!」
「イヤ……いまはお前の下着の話はどうでもいいだろう……」
「女だらけの飲み会でそんなことカミングアウトする時点で十分変態漢よね……」
――だからこんな飲み会来たくなかったんだ!
女性陣の冷ややかな視線に晒されて、森近霖之助はしんしんと泣いた。
「これは酷い……」
「――酷いと言ったら、わたしも負けていないわ」
衆目のまえに躍り出たのは妖怪の賢者、八雲紫である。
「このわたしをつかまえてババア呼ばわりする人がいるけれど、こう見えてもわたし、みんなが思ってるほど年寄りじゃないのよ?」
『……………………』
途端に、一同が静まりかえる。
「え、なにこの反応!? ……ま、まあ……じゅっ、十七歳とか言われるのも、逆にそれはそれで照れくさいものがありますけどもね……」
『……………………は?』
――コイツは何を言っているんだ?
誰もがそう言いたげな表情をしていた。
「いやいやいや! べ、別に自分で言ってるわけじゃないからっ! なんか周りが勝手に! 勝手にっ!!」
「……紫さま、旗色が悪うございます。この場はおとなしく引き下がりましょう」
哀れむような眼をした藍に肩を借りて、スキマ妖怪の少女はすごすごと撤退していった。
その姿を見送るのは、八坂神奈子や風見幽香や八意永琳といった面々。
皆、悲しい目をしていた。
「ふふ、いい気味! ザマみてみやがれだわ。あんたがババアなのはもはや公式だっつーの」
ババアイヤーは地獄耳。
比那名居天子のその呟きを、彼女たちは聞き漏らさなかった。
次の刹那、永琳の月面パンチが天子の腹にめり込む。
「ぐぇッ!? い、イキナリなにすんのよ!」
「これは挨拶代わりよ。あなたが重度のマゾヒストと聞いていたものだから」
「それは二次設定よっ!」
「じゃあ、公式設定にしてあげるわ……」
永琳の背後にゆらり浮かぶ影は、八坂神奈子と風見幽香。
「『オンバシラコース』と――」
「『アンブレラコース』!」
「さあ、好きなほうを選びなさい」
「え…………わたし、なにをされるの!?」
その問いに返ってきたのは、三人の妙に優しい笑顔だった。
――同朋(とも)の悲しみを嘲笑う者は許さない。
天子の絹を裂くような悲鳴があがった。
美しい友情の唄が、そこにはあった。
「……まぁ、二次設定がいつの間にか一次設定になってることって、わりとあることよね」
「例えば?」
霊夢が無言で指差した先には――チルノの姿があった。
「ああ、なるほどね」
「納得だわ」
「むっ!? なんかあたい、注目の的になってる! なんで?」
「なんでもない。なんでもないのよ……」
なにもわからずキョトンとしている小さなチルノを、レティ・ホワイトロックが優しく抱きしめた。
そのオカン級の包容力は当たり判定の広さからくるものであって、決して「ふとましい」からではない。
「んー、この流れに河童も乗ってみるかねぇ」
「なんだ? お前も誤解されてることあるのか」
「うん、実はさ……」
河童の河城にとりに、皆の視線が集まる。
「なんかわたし人間好きみたいに思われてるけど、ぶっちゃけ人間なんて虫ケラ同然だと思う」
「嘘!? 河童怖ッ!」
「つーかあんたの人間好きは一次設定でしょ!?」
「えっ、そうだっけ? じゃあ、いまのナシで」
「じゃあ、ってなんだよ!?」
「『河城にとりは昆虫がめちゃくちゃ好き』ってことにして今のなんとか誤魔化せないかなぁ」
「誤魔化せねーよ!」
火のないところに煙は立たず。
なるほど、こうやって二次設定は増えていくんだね。
「そうねぇ、ほんのはずみで言ったことが誇大解釈されることってあるわよねぇ」
悩ましげに呟いたのは、西行寺幽々子。
「たしかにわたし、わりと食いしん坊さんなところあるわよ? でも、どこぞのピンクボールみたいになんでもかんでも食べるわけじゃないのよ?」
しゃべりながらも、酒の肴に箸を伸ばしているところが説得力に欠ける。
「……そう言われるようになったのって、思い返せば永夜異変がきっかけだったわねぇ。夜雀戦での掛け合いの印象が強烈だったのかしら? でもああいうのって、プロレスの試合前の挑発合戦みたいなものじゃない? なにも本気にしなくってもいいわよねぇ」
「えっ、でも幽々子さま、戦いの後に明らかに気にしていらっしゃいましたよね? ……小骨を」
幸せそうに唐揚げを頬張る幽々子に、そのとき現場に居合わせた妖夢が不思議そうに尋ねた。
「だったらここにいるミスティアは幽霊なのかしら?」
「ちんちん!」
ミスティア・ローレライは元気に鳴いている。
とてもじゃないが、幽霊には見えなかった。
「あっ、さては幽々子さま、わたしをからかってたんですね!?」
「うふふ、今頃になって気付くなんて妖夢ったら鈍いにも程があるわよ」
どっ、と笑いが起こり、妖夢が顔を恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「…………」
大勢の笑い声のなか、ミスティアがそっと呟く。
――多分、わたしは三人目だから……
その声は、幸いにも妖夢の耳には届くことはなかった。
――妖怪は人間より肉体が頑丈であり、五体がバラバラになる様なことがあってもすぐに治癒する。
そう『幻想郷縁起』に記されているが、これもまた幸い、妖夢の知るところではなかった。
元々題目なんてなかった宴会だが、こうなってくると、もはや不幸自慢大会ならぬ二次設定自慢大会といった様相を呈してきた。
「座薬? こう見えても銃弾ですよ!? この誤解のせいで、わたしがどんなキャラ付けされたか知ってます!?」
「わたしも、詐欺師扱いとかされてるけど、本当はびっくりするほど正直者なんだウサ!」
「その語尾も含めて何からなにまで嘘じゃないですか! そう、貴方は少し嘘をつきすぎる。……ついでに言うと、わたしは幼く見られることが多すぎる!」
「わたしだってそうだよ! こう見えてもわたし、子どもだって産んだことあるんだからね!」
「だったらそんな子どもっぽい服装じゃなくって、それらしい格好をすればいいじゃないですか。わたしなんて、どうにかミステリアスな雰囲気を醸し出そうがんばったのに、小五ロリ扱いされているのですよ!?」
「2Pカラー呼ばわりされるよりマシですよ!」
「「いやいや、オリジナルキャラ呼ばわりされるわたしたちのほうが!!」」
皆、ここぞとばかりに口々に己の二次設定を披露して、日頃の鬱憤を晴らしている。
まさに宴もたけなわ。神社の広間も、いまや最高潮の盛り上がりによる熱気で満ちていた。
「――フフッ、さえずるのも程々になさい」
そんな熱をクールダウンさせるかのような、冷ややかな一声。
それは吸血鬼レミリア・スカーレットによって発せられたものだった。
「二次設定の多さにおいて、わたしたちの右に出る者はいないと断言させてもらうわ!」
ここにきて、静観を保っていた紅魔館組がはじめて動いた。
レミリアが合図をすると、まるで学芸会の出し物を思わせる雰囲気で、紅魔館の住人たちが衆目の前に揃い踏みする。
「まずわたしなんて、ほとんど二次設定の塊みたいなもんですからね。界隈では小悪魔なんて呼ばれているみたいですけど、本当の名前は……「ホン・メイリンです!」
小悪魔(仮名)を押しのけるようにして身を乗り出したのは、中華風の妖怪・紅美鈴である。
「我的名字紅美鈴! 否中国! だいたい発想が安直すぎますよ、見た目が中国人ぽいからって愛称が『中国』だなんて。これなんてヘタリア!? それに『美鈴オチ』って言葉、アレ、なんですか!? あまりにも不条理すぎて笑えませんよ! むしろ悲しくなってきませんか? あとコッペパンのことは特別好きでも嫌いでもありません!」
次に飛び出したのは、パチュリー・ノーレッジ。
「なんか、わたしもアリスみたく魔理沙との関係疑われてるけど、別にそんなんじゃないから。普通の友人関係だから。あと、本盗まれるの普通に嫌だから! ……それに『むきゅー!』とか言った覚えないのに口癖みたいになってるし。健康になりたいとは思ってはいるけど、筋肉隆々の肉体やターミネーターじみたメタルボディに憧れたりなんかしていないわ!」
なんとも得体の知れない物体を握り締めたフランドールの言葉は短かった。
「レーヴァテインが杖なのか剣なのか、もう自分でもわかんなくなってきちゃった……」
まだまだ甘いわ、と言わんばかりにレミリアが「チッチッ」と指をふる。
「その程度どうってことないわよ、フラン。わたしなんてね、もう自分で自分のことがわからなくなってきてるんだから! 新月の夜は幼女化? れみ☆りあ☆うー? そりゃあねーよ! ……と思いつつも、なんだか最近カリスマを保つのがバカバカしく感じられてきちゃって、ついうっかり公式でモケーレ・ムベンベっちゃったじゃないの! あれ、実際のところかなり後悔してるのよ!? 特に新月の夜なんかはだしぬけにそのこと思い出して、その度に枕に顔うずめてうーうー悶絶させられる始末よ!」
なんという紅魔館。
話を聞かされている者たちは、ただ、ただ圧倒されるしかない。
「フフ、それにウチにはとっておきの最終兵器がいるのよ! さあ、あなたの出番よ……咲夜!」
レミリアがその名を呼ぶと、紅魔館のメイド長・十六夜咲夜の姿が突如出現した。
時空を超えたイリュージョンに、はからずともその場のテンションが跳ねあがる。
「メイド! ニーソ! パッド長!」
「メイド! ニーソ! パッド長!」
「メイド! ニーソ! パッド長!」
「メイド! ニーソ! パッド長!」
「――その掛け声はやめろッ!!」
そのとき、咲夜が吼えた。
普段の瀟洒っぷりからは想像もできない荒みきった口調に、一同が沈黙する。
「だいたい何年引っ張るつもりなの、そのパッドネタ? もういい加減飽きてもいいでしょうに!? そもそも本当に面白いと思って言ってるの? まぁ……仮にわたしが胸にパッドを入れていたとしましょう! 悲しい嘘で塗り固められたバストの持ち主だとしましょう! そんなわたしに面と向かって平然と『PAD』と言ってのけるその腐った神経はなに!? 言葉のナイフは時として本物以上に人を傷つけるの! わたしに胸が足りないというのなら、あなたたちに足りないのは思いやりの心よ! あくまでも仮の話だけど! ……とにかくこの十六夜咲夜は、そういうことを皆様に問いたい! 問い詰めたい! 時間を止めて問い詰めたい!!」
某独裁者の演説さながらの身振り手振りを交えて語る十六夜咲夜は、かつてないほど憤っていた。
その激しい興奮状態により、彼女の鼻からひとすじの赤が流れる。……鼻血だった。
「ひっ!?」
それを見た途端、突然しゃがみガードの体勢をとってガチガチと震えだすレミリアおぜうさま。
いったい何事かと、周りの者たちがざわめく。
「うー」
「ご覧ください! この可哀相なお嬢様のお姿を! そう、これも二次設定のもたらす悲劇のひとつ!! わたしが『変態ロリコンメイド』なんて不当かつ不名誉なレッテルを貼られたばっかりに、うっかり鼻血を出そうものならご覧の有様なのよ!? 頭ではわかっていても、体が勝手に反応してしまう! 本能的に恐れてしまうの! 吸血鬼なのに鼻血を怖がるなんて信じられる!? この忌々しいロリコン設定のせいで、わたしは鼻血を出すたびに邪な感情を抱いていると疑われるの! たしかにお嬢様のコウモリを一匹捕まえてお部屋でこっそり飼育したいなぁ、とか、日光を浴びて灰になったお嬢様を身体中にまぶしたい、なんてことは考えたことはありますけども……神に誓ってイヤラシイ妄想を抱いたことはありません!」
「あーうー!? そんなことわたしたちに誓われても困るよ!」
「つーかその妄想、猟奇的な匂いがして逆に怖いわ!」
「うーっ!?(ガードブレイク)」
さすが紅魔館は格が違った。
WIN版の初期から積み重ねてきた二次設定の多さは、他の追随を許さなかった。
それは、場のムードが『なんだかよくわからんが紅魔館組が優勝!』っぽい雰囲気になりつつあったときのことだ。
「ちょっと待った!」
大声を張りあげて、その空気を吹き飛ばした者がいた。
博麗霊夢である。
「甘いわね! 『紅魔郷』の時代から歪んだイメージを築き上げられてきたのは、あんたたちだけじゃあないわ」
「ハァ? まさかこの期に及んで『自分は腋巫女じゃなくて肩巫女だ!』なんて言い出すつもりじゃないでしょうね?」
「んなわけないでしょ!? わたしじゃなくって――彼女のことよ!」
霊夢の指し示すその先に、皆の視線が一斉に向けられる。
そこにはある一匹の妖精の姿があった。
『…………!!』
薄く透き通った羽根を持ち、グリーンの髪をひとつ結びにした、一見すると控えめな印象の妖精。
しかし大勢の人妖たちの視線に晒されていながらも、傍らに三月精たちを侍らせ、まったく動じる様子もなく酒を呷るその姿は、いかにも只者ではないといった貫禄があった。
彼女の名は――大妖精。
あるいは妖精たちには、首領妖精(ドン・フェアリー)と呼ばれている。
だが、いずれもただの呼び名にすぎず、本名を含めた何から何までもが多くの謎に包まれた存在だった。
「……そうね、さすがのわたしたちも、あなたには敵わないわ」
さすがのレミリアも、大妖精を前にしては認めざるを得なかった。
彼女こそが、この幻想郷でもっとも二次設定において過小評価されている人物である、と。
おとなしくて面倒見の良い優しい性格の持ち主で、いつもお友だちのチルノちゃんに振り回されている幸の薄い子――二次設定が描く大妖精の虚像は、概ねこんなものである。
しかしその実像は、チルノに振り回されるどころか、自身が幻想郷全土を振り回すほどの影響力の持ち主であった。
「『恐るべきイタズラっ子たち計画』……いま思い出しただけでも怖気立つわ」
「なんですか、それ?」
幻想郷に来て日が浅い早苗にとっては、初めて耳にする言葉だ。
「彼女がまだビッグ中ボスと呼ばれていた時代の話よ。……これ以上のことは語りたくないわ」
「なにその中途半端に大物っぽい名前!?」
「最近だと『あたいチルノ買占め異変』も忘れられないわね」
「それにあの髪型、噂によると魔界神と義兄弟ならぬ義姉妹の契りを交わした証という話もあるわ」
「なんだかよくわかりませんが、あの子ってそんなに凄い子だったんですか!?」
レミリア、幽々子、輝夜、そして霊夢といった指折りの実力者たちが、口をそろえてそう言っているのが早苗には信じられなかった。
それに、妖精はそんなに強い力を持つ種族ではなかったはずだ。
「大妖精の脅威は、単純な力の強さではないんだよ」
「八坂さま!? それはいったい、どういうことでしょうか?」
「ほら、わたしたちがこの神社をのっとろうとしたときがあったでしょう。そのときに戦力のザコ妖精たちを斡旋してくれたのが彼女なんだよ。一匹一匹の力は弱くても、その数の暴力は馬鹿にはできないからねぇ」
「ええっ? ……ということは、まさか異変の度に彼女が裏で一枚噛んでいるということですか?」
「そのとおり。基本的に自由奔放な妖精たちを統制できるのは、彼女しかいないからね」
「組織の大きさだけなら、幻想郷のどの勢力にも負けないんじゃないかな? カリスマを信仰にたとえるなら、わたしたちに匹敵するほどだと思うよ」
「諏訪子さままで!?」
神々も認めた大妖精。その発言に、ざわめく一同。
ところが、当の本人はスターサファイアに酌をされつつ、そんなものは何処吹く風といった涼しい顔をしていた。
おそらく、二次創作における『おとなしくて面倒見が良い子』というイメージは、こういった『何事にも動じない性格で部下に慕われている』姿を曲解して築かれたのだろう。
「ねぇ、ここであなたにひとつ、提案があるのだけど」
「……?」
おもむろにレミリアが歩み寄り、目の前に立つと、大妖精は酒のグラスを手にしたまま無言で顔をあげた。
「わたしたちは、二次設定のせいで歪んだ認識を持たれている。そこで、いまこそ連中に我々の恐ろしさを思い知らせる必要があると思うの」
「ちょ、イキナリなに言いだすのよ!」
「霊夢は黙ってて! これは沽券に係わる問題なのよ! ……大妖精、共に手を取り合って、栄光を取り戻すための戦いをはじめましょう。わたしたちが力を合わせればできないことはないわ!」
「…………」
カリスマ復古を目的とした異変の提案。
その話を持ちかけられた大妖精は、静かにグラスを置くと、チルノを招き寄せるような仕種をとった。
呼ばれたチルノが、とててちょこん、と隣に座ると、大妖精はそっとなにやらチルノに耳打ちをした。
「大妖精はなんと言ったの?」
「えっとね、『お断りします』だってさ」
「なんですって!?」
チルノが通訳して大妖精の言葉を伝えると、レミリアはわけがわからないといった顔をした。
「どうして? 理由を聞かせなさい!」
「……ごにょごにょ」
「首領はこう言ってるわ。『本当に大切なことは、どう思われるべきか、ではない。自分自身がどうあるべきか。それを見失わない限り、我々を象る幻想が揺らぐことはない』と」
「あなた、それで悔しくないの?!」
「……ごにょごにょ」
「首領はこう言ってるわ。『我々のような幻想的な存在にとって、どんなカタチであろうと想いを抱かれることは愛されていることの証。むしろ幸せなことだ』と」
「……」
レミリアは、やれやれといった様子でため息をついた。
大妖精の言い方だと、紅魔館の住人たちは相当歪な愛され方をされているということになる。
おめでたい考え方だ。だが、悪くはない。
「ふん……幻想郷はすべてを受け入れる、というわけね」
レミリアの言葉に、大妖精が静かに頷いた。
「首領はこう言ってるわ。『うん』と」
「いや、それ通訳しなくてもわかるから」
「……ではお嬢様、いかがなされますか」
瀟洒なメイドに戻った咲夜が、レミリアに尋ねた。
答えは決まっている。
「異変を起こすのはやめたわ。一時の気の迷いよ。……それによく考えたら、カリスマを取り戻すために異変を起こすなんて、かえって情けないような気がするものね」
当面の厄介ごとが自然消滅してくれたようで、霊夢がほっと胸を撫で下ろす。
いままで二次設定に愚痴を言い合っていた他の者たちも、レミリアと大妖精のやりとりを聞いていたらなんだか馬鹿らしく思えてきたらしく、神社にいつものゆる~い空気が戻ってきた。
「それじゃあ、仕切りなおしといきましょうか!」
霊夢の一声で、幻想郷中の人妖たちが、それぞれ酒を注いだグラスを手にした。
いろいろあったけど、そのおかげでこの宴の題目も決まった。
「では、すべての幻想に乾杯を……って、アレ? 魔理沙はどこいった!?」
素っ頓狂な声をあげる霊夢。
「あらら、いつの間にかアリスもいなくなってるわ!」
「これってもしかして……」
「もしかするかもっ!!」
魔理沙とアリスが揃って姿を消したという事件に、一気に場のテンションが高まり、わいわいと盛り上がり始めた。
なんだかんだ言っておきながらも、皆こうやって騒ぐのが楽しかったりするのだ。
その喧騒のなか、大妖精が小さく囁き、チルノが元気いっぱいの声で叫んだ。
「首領がこう言ってるわ! 『マリアリに乾杯!!』」
(了)
幽々子様はホントはあんな大食いじゃないんだぞ~!………きっと…
大ちゃんは実はすごいんだぞ~!
それにしても首領すげぇ!花映塚の9割9分9厘は首領主動だったんですね!
いやはや、大妖精は本当に地獄だぜえ・・・
東方キャラで一番酷い扱いを受けたキャラは間違いなく冴月麟だと思う俺
存在すらしないという前代未聞のこの扱いは・・・
大ちゃん…恐ろしい子ッ!!
まあ、二次創作に出れるほどの公式設定が無いし、独自解釈や独自設定をある程度しなくちゃならないから二次設定の統一がまず出来ないし、何より知名度がない。
要は扱いが難しいんだろうね。
旧作キャラにも酷いレッテル貼り付けられてる人いるよね。魔界神とか、サッカー関係で教授とか。やっぱ不憫だ…。
でも、本編で名前すら出させてもらえないまま霊夢ルートであえなく撲殺され、もはや何がしたかったのか、何で出てきたのかすら解らない名無し妖怪オレンジの右に出る者はいないと思う。
けど輝夜はどうしようもないくらいニートネタが多いうえに人気も下の方(6ボスなのに)。
個人的に輝夜が一番の被害者だと思う。
おとなしくて優しいお姉さんでいて欲しいんだよっっっっ!!!!!
どこまで異常者にされていくんだろうなぁ……彼女……。
沈静化してきたと思ったらまた某所で再燃しまくってるし。
最近のだと「うにゅ」には流石に噴いた。
うにゅーうにゅー。
まあ大妖精、小悪魔、椛、キスメとかに関しては妄想するしかないよなぁ。
まあ輝夜とか扱いかなりひどいよなwww