「キャアアアァァァァァァァァァァッ!!」
時刻は昼下がり。特に何事もなく穏やかに流れていた博麗神社の空気は、一つの甲高い悲鳴によって霧散した。
「んあ?」
その博麗神社の縁側で晴れた空を見上げて茶が出てくるのを待っていた霧雨魔理沙は、突如として上がった悲鳴を聞いて首を振り向かせた。
ドタドタというけたたましい音が次第に大きく耳に届くようになり、奥の廊下から茶を汲みに行っていたはずの博麗霊夢が、湯呑も何も持たずにひどく困惑した様子で姿を現した。
「どうした? こんな昼間からお化けでも出たか?」
「~~~~~~~~~~っ!」
からかうように言った魔理沙だったが、霊夢の尋常ならざる様子に少し表情をこわばらせる。霊夢がここまで錯乱しているというのも珍しいものだ。
「でっ、でっ、ででで出たッ! 出たッ! 出たッ!」
「やっぱりお化けか?」
「ああああアレよアレアレ!」
「お化けか?」
「ちっげーよこんドアホゥ!」
「落ち着け、キャラ変わってるぞ」
「とととにかくここっち! こっち!」
霊夢は魔理沙の後ろに回って盾のように扱いながらぐいぐいと背を押して前へと進める。状況がイマイチ理解できない魔理沙だったが、とりあえずは行けば分かるのだろうと抵抗せずにされるがまま歩を進めた。
そして、辿り着いた先は台所。
床には割れた湯呑の破片と沸かしたてであろうお茶がこぼれていた。それらは霊夢が先の悲鳴の際に落としたからなのであろうが、それ以外にこの場所で別段驚くようなものなど何一つ見当たらない。
「なんだよ霊夢、別に何もいないじゃないか」
拍子抜けしたかのようにハハッ、と魔理沙が笑い声を上げた瞬間。
――そいつは現れた。
黒光りするボディ。ウネウネと動く触覚。カサカサと擬音が聞こえてきそうな動き。
主に台所などに生息するそいつは別名油虫ともいい、世の中の方々にアンケートを取ってみれば、おそらく嫌いな生物BEST3には軽くランクインできるであろう実力の持ち主である。
「…………」
その姿を視認した瞬間、魔理沙はピタッと硬直して。
「キャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!」
普段の口振りからは考えられないような、なんとも女の子らしい悲鳴を上げたのだった。
まぁ仕方ない、女の子だもの。
さて、戦術的撤退を遂げて場所は移り、先程まで魔理沙が平和に過ごしていた台所の隣に位置する居間の中。
障子は完全に密閉され、何人もこの場に入れるものかという強い心意気が見て取れる。
「まずいわ……」
「まずいな……」
「まさかヤツが現れるなんて……」
「あぁ……奴等といったらやたらと俊敏な動きでこっちを翻弄して、見ただけで精神的なダメージを与えてくる。さらには飛ぶことすら出来てその際の恐怖は三割増だぜ。やっかいだな……」
「おまけに台所という人が生活するうえで欠かせない環境に潜み、気を計って奇襲をしかけてくる……向こうの思惑通り、先手は確実に取られたわね。どうにか流れを変えないと……」
どれだけ害虫を過大評価しているのだろうこの二人は。
「こ、これはこのまま待機が得策なんじゃないか?」
冷や汗だらだらで魔理沙が言う。その表情には、弾幕ごっこの際の余裕さなど欠片もない。なにしろ先の存在の映像が一瞬でもフラッシュバックしただけで、全身鳥肌立ちまくりなのである。
「何言ってるのよ! 私ここに住んでるのよ? ここで見逃したら、またいつ奴等が襲ってくるか分からない恐怖に包まれた生活を送らなきゃならないのよ? そんな環境じゃおちおち寝てもいられないわよ!」
「だ、だけどどうするってんだ? 奴等を排除するには、姿を見ずに排除できるような地雷式の罠を使った方法がベストだってことはお前も分かってるだろ? 既にアイツが姿を見せている時点で、私達は絶対的に不利なんだぜ……?」
「分かってるわよそんなの! 家にはちょうどゴ○ジェット、ゴ○パオはおろか代用中距離兵器なりうるクイッ○ルワイパーさえないし、武器の無い状態で奴等に挑んだところで勝率がコンマの域を出ないことくらい! けど、それでも今殺らなきゃ、今後安息の日々はないのよ……!」
「霊夢……」
震える身体を押さえつけて自身を奮い立たせる霊夢の姿を見て、弱気になり身の安全を優先しようとした自分の不甲斐無さに下唇を噛む魔理沙。なんだろう、このやたら無駄にシリアス。
「……分かった。私も覚悟を決めよう。人間の底力ってやつを見せてやるぜ」
「魔理沙……協力してくれるの?」
「あぁ、当然だろう?」
「死ぬかも、しれないわよ?」
アレに死の危険性が潜んでいたとは初耳だ。
「分かってるさ。だけどお前一人を戦場に旅立たせるわけにはいかないぜ。一緒に行けば、一パーセントぐらい勝率は上がるかもしれないしな。こうなったら、私も腹をくくってやるぜ」
「魔理沙……ありがとう」
「気にするな、私はのどが渇いてるんだ。さっさとヤツを片づけないと、お前のくそ熱い茶すら飲めやしない」
「あら、私の淹れるお茶気に入ってくれてるのね」
「そういうことにしといてやるぜ」
二人は顔を見合せて笑い合った。それは、人間が覚悟を決めた際に浮かべることのできるとても清々しい笑顔だった。どう間違ってもアレ一匹出ただけで見る笑顔ではなかった。
「よし、行くわよ!」
「おう!」
パァン、と手を叩き合い、戦地へ旅立とうと障子に手をかける霊夢。
「ん……?」
――そこで、二人はある気付いてはいけない事実に気付いてしまった。
二人が注視したのは自分の足元の障子。その一端。
そこにはちょうど縦十ミリほどの穴が開いていたのだった。
ちょっとここらで一つ、アレの習性について話しておこうかと思う。
アレは基本的に夜行性である。そしてあまり平面的な道を歩かず、ほとんど何かに伝って移動するそうだ。例えるなら床と壁の間のような。さらに狭く温かい場所を好み、自身の背と腹が付くような隙間にエデンを掴むのだと。
さて、障子を締め切ったせいで外からの光が大きく遮られ、それでいて風通しも悪くなったため室内温度も上昇し、言うまでもなく廊下と障子は繋がっているのだから移動に何の問題もなく、その先にちょうど“自身の腹と背が付くような”穴が開いていたらどうなるか。
「…………」
冷や汗がだらだら流れだす両名。その量は先程までの比ではない。心なしか、どこかでダダンダンダダンとかいうメロディが流れているような気がする。
いやいやまさかそんな馬鹿なことが、と思って苦笑した瞬間。
ヒョコッ。
――死神様が顔をのぞかせました。
「イヤアアァアァァァァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァァッッ!!」
二人して大絶叫しながらとんでもない速度でバックステップする。今一瞬だけ幻想郷最速の名は彼女達に与えられた。
「ききき奇襲! 紀州ーっ! くぁwせdrftgyふじこlp!」
「おおお落ち着きなさい魔理沙っ! こんなときはアレよアレ! そう、深呼吸深呼吸! スウゥーゲッホッゲホッゲッホゴェッホ!」
「お前が落ち着けええぇぇっ!? こう言うときはそ、素数! 素数を数えるんだ! 一二三五七九十一十三十五」
「途中からただの奇数になってるわよっ! 素数はアレよ、一十百千万丈目」
「お前のその数値は何表わしてんの!?」
そんな風に二人がパニックに陥っている中、死神様は気に入ったのか室内にご入場なされました。
「ひゃあああぁっ! こっ、恋符『マスター――』」
「ストーップ! 室内でそんなもんぶっ放したら天人の時の二の舞ーっ!」
カサカサ。
「きゃあああああぁぁっ! ししし神霊『夢想――』」
「人に言っといて二秒も経たずに自分がやんなああぁぁぁぁーっ!!」
と、そこでカオスと化したこの場に後ろの襖を開けて足を踏み入れた人物が一人。
「霊夢、ここにいるのかしら? 何かドタバタうるさいけど……」
「さ、咲夜っ!」
霊夢と魔理沙は同時に振り返って、救世主を見るような眼差しを向けた。後光もいい感じに射して、その姿は真にメシアのよう。敵がアレじゃメシアに申しわけない気分になるが。
シュンッ、とすぐさまそのメシア様の背中に隠れる二人。速っ。
「ちょっと何、二人とも? 私はお嬢様からの頼まれごとで来たんだけど――」
「そんなこと後で好きなだけ聞いてあげるから! 今はアレ! アレなんとかして!」
「アレ……?」
霊夢が切羽詰まった様子で指差す先には、カサカ散歩を楽しむあの御方。
それを視認すると、咲夜は次の瞬間に大きく溜め息を吐いた。
「……何を騒いでいるのかと思ったらそんなこと? 害虫程度に異変解決の達人であるあなた達が何を恐れているの? 全く、とんだ茶番ね」
そう言う咲夜と二人の距離は軽く十メートルオーバー。一瞬のうちに時止めて逃げてやがりました。なんという瞬間判断力。人間の生理的嫌悪の限界を見た気がする。
「ってお前も駄目なのかよっ!」
「何を言っているのかしら。私が害虫ごときに恐れをなすわけがないじゃない。ただちょっとバニシングエブリシングって↓↓射撃で合っているか確認したかっただけよ」
「そう。じゃあ咲夜の世界使ってアイツ抹殺してきてね」
さらにいつの間にかその後ろに回り込んでいた霊夢がその背を押す。
「あ、ちょっと押さないでやだってねぇ私そろそろお屋敷に戻らないと」
「レミリアの頼まれごとで来たんでしょ? だったらそれ聞くまでは帰れない(帰せない)じゃない。ねぇ?」
「あ、霊夢の頭に黒いの」
「えぇっ!?」
「時符『プライべート――』」
「させるかぁっ!」
霊夢が頭を確認している間に咲夜が取り出したカードを魔理沙が箒ではたき落とした。この間わずか一秒。皆めっちゃ必死。
「一人だけ逃げようったってそうはいかないぞ咲夜ぁ…」
「な、何を言っているのかしら。私はただアレを倒すために……」
「え、スペルなんてなくていい? 勇敢ねぇ、咲夜」
「一言も言ってないから! ちょっ、私のスペルカード返して!」
「ナイフさえあればアレどころか神様だって殺してみせる? そりゃ凄いな、ぜひやってみせてくれ」
「私はどこの殺人鬼ぃ!? 至って普通の眼しか持ってませんけど!?」
と、三人でぎゃあぎゃあ言い争っている間に。
ブゥゥーン。
死神様は地上の散歩に飽いたのか、空中遊泳なんぞを楽しみ始めたようです。
「ギィヤャアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーッッ!!」
三人とも大絶叫。まぁ仕方ない、女の子だもの。
「ちょっ、無理無理無理無理無理無理無理無理っ!! 無理だってそれ来ないでって!」
「ははは八卦炉八卦炉っ! もも燃やさなきゃもう燃やさなきゃ! ってあれ、八卦炉は!? ねぇ八卦炉どこぉっ!? ちょ待って! 八卦炉見つけるまでこっち来ないで! 来んなって燃やすぞお前! ごめん嘘嘘燃やさないからあっち行って!!」
いや虫に日本語とか通じないから。
「とと、とっ、時っ、時符『プライベート――』」
と、そんな中、咲夜が必死に勇気を振り絞って、涙ながらどもりながらスペルカードを霊夢から奪い取り唱えようとした直後。
ピタッ。
死神様着地。
ちなみに空港はとある人物の頭のすぐ下の部分というか、額縁って字から一文字取ったとこというか、ぶっちゃけ咲夜の額というか。
「…………」
自分の額にしがみついている物体を認識した直後、咲夜は顔を真っ青に染め、全身鳥肌だらけになり、ビクビクと割とヤバい感じの痙攣をしてから声にならない悲鳴を上げてぶっ倒れた。仕方ない、女の子だもの。いや、これは女の子じゃなくても卒倒もんだろうが。
「咲夜? 咲夜っ?」
霊夢が必死に呼びかけるも反応なし。というか、痙攣続いているから早く永琳呼んだ方がよさげ。
あの御方は倒れた咲夜から降りて、再び日の当たらないところを目指して駆け出した。太陽光反射で黒光りが増し、そのキモさは当社比二倍。
「畜生……よくも咲夜を!」
魔理沙が怒りに満ちた目を明後日の方向に向けながら叫ぶ。直視する勇気なんて無いようです。
「くっ、かくなる上は……最後の手段!」
霊夢は静かに瞳を閉じて大きく息を吸い込むと、できうる限りの声を張り上げてその名を呼んだ。
「紫いぃーっ!!」
「はぁい、何かしら?」
霊夢が叫んだ直後、空中に裂け目ができてスキマ妖怪、八雲紫が姿を現した。その手にはいつもの日傘ではなく霊夢の巫女服とか握られたりしていたっていうかお前いままでどこいた。
「頼みがあるの」
「あら、ツッコミなしなんて相当切羽詰まっているようね。ふふ、いいけれど当然何か代償は」
「いくらでも払ってあげるから! とにかくアイツスキマに放り込むなりなんとかしてっ!」
「いくらでもだなんて、サービス旺盛ねぇ。さて……それじゃあその霊夢を困らせている輩とやらを早々に叩き潰して――」
霊夢の指差した先には、とりあえず見つけた縁側の下の影でくつろいでいるあの御方。
それを見た紫はクスリ、と笑みをこぼしてから霊夢たちに振り返って一言。
「……ごめん無理☆」
「「ってお前もダメなんかいいいいいいぃぃぃぃぃぃーっ!!」」
引きつった笑みを浮かべながら滝のように汗を流している紫に対して、二人のツッコミが木霊した。
結局、里まで行って駆除専門の人を呼んだそうな。
まぁ仕方ない、女の子だもの。
「…………フッ」
偶然通りすがったリグルがその一部始終を見て不敵に微笑んでいたのは余談である。
それにゴキジェットを持って闘うこと
なお、そのさい敵が死力をつくし万歳アタックしてくることもあるので警戒を怠らない!最後に一人暮らしの際周りのものは誰も助けてくれないものと知るべし
戦う際の心構えです
私も黒い悪魔は大っ嫌いです
死神には効かなかったようですがw
きっと痛んだ紅色(スカーレット)な悪魔が助けに来てくれるんですね。
霊夢「あ、あんたは・・・あんたは死んだはずよ!」
レミ「いや、私は灰から全回復できるから。」
黒光りG強いですよねぇ…二重の意味で
まさか「黒光りするG」の話だったとは……。上のコメ見るまでは気付かなかった!Gなんて、シンクロしなければ怖くなぞない!!
現実的な回答としては、一匹見つけたら10匹は存在する恐ろしさが!自分は見つけたら戦う派なので、逃げられたときこそが一番怖い。
事後にリグルが大変な事にされそう。
なんと共通点の多いことか
想像したら破裂しました。本当にありg(パアァッン)
基本は恐いです。
ただ神経が逆撫でされた時は殲滅します。
でも未だに素手で潰した事は無いですねぇ……。
初見の恐怖は忘れられない。
死闘の末、1メートル定規で真二つに裂いてやった。
これでは我がエースであるドラグニティナイト達が封じられてしまうではないか…
じつはいるよ
おたるにはいたよ
いたったらいたよ
潰すと毒が飛び散るから注意なんだぜ
夏でもくそ寒い地方に住んでいるからかな…。
友人ドン引きしてましたけどw
tk遊戯プレイヤー多くて吹いたww
室内で見つけた時は神経破壊して呼吸と心臓を停止させた上でトイレにぶち込んで処刑してますが、外で見かけた時は見逃してあげてます。
叩 き 殺 し て も 中 か ら 卵 が 四 散 し ま す よ
tk遊戯王プレイヤーが多すぎることにフイタww
そして、タグ・・・・・・自重しろwww
まさか、気が付かないうちに、真横に超接近されているとは思いもしませんでした…
アレ最強だろぉ・・・・
ちなみに実際は充分な高度を取った上で滑空する程度の飛行能力しか持ち合わせていないが
そこはそれ、妖怪の楽園に居て飛べもしないような貧弱インセクトではなかったと…
ちょwwwwwwおまwwwwww
やつらは、何度でも蘇る…
それ以来その本はさわってない。
ニ○動に奴の卵ばっかりの動画があった記憶がある。
式wwwwwwwww
この幻想郷にかの 粘着! という掛け声と共に変身する某ヒーローが幻想入りしたらどんな光景が広がるのか凄く気になるw
飲み物の自販機の中に居たりドリンクバーの機械の中に居たり家電の中に居たり
死んだら死んだで仲間を呼んだり卵を噴出したり汚れをこびりつかせたり
なんであんな生物兵器が存在するのかと小一時間
怯える女の子かわいいよ
お役にたつかもよ。