「寝すぎた」
気持ちよく目覚めてすぐ気がついた。部屋のようすはどこも変わっていないけれども、寝すぎた。
多分1000年くらい経ってるわこれ。
みんなもういないことがわかった。直感。
大好きな妹も、大事な親友も、頼りになる門番も、もちろん、愛するかわいいメイドも。
もう、みんないない。
悲しくなりながら、ふらりと起き上がると窓を開けた。
世界は無機質な色に染まっていて、大地は空さえほとんど見えないほどの、高く大きな建物で埋まっている。僅かに見える空も見知った深い藍ではなく、霞んでいた。
世界はこんなにも変わってしまったのだと思うと喉の奥がつまったように苦しくなって、その場にへたりこんだ。
ふと背後に先ほどまでなかったはずの気配を感じて振り返ると、みどりの髪の少女がいた。
髪は肩くらいで切り揃えられていて、その色は風祝よりも薄く透き通るようだった。真っ白な膝までのワンピースを着ている。肌は私のように青みかかっているわけでも、咲夜のような薄桃でもなく、ただただ白く磁器のような硬質さを感じた。
少女が口を開く。
「長い時間が過ぎました」
高く、澄んだ声。人間味を感じられない、ベルのような声で平坦に話す。
「あなたにとっては短いかも知れませんが、人間にとっては長い時間です」
ついてきてください。それだけ言うと部屋の扉を開けて、すたすたと歩いて行ってしまう。こんな誰もいない、いても知らない人ばかりのところに放置されてはかなわないと慌てて後を追う。
外へ出ると、勝手に動く道や色とりどりの建造物に圧倒される。少女はそれらには目もくれずまっすぐにどこかを目指していってしまう。
そこらを歩く人々はかなり違った服装をしている私にも目を止めず、せかせかと動く道を歩いている。歩くなら動く道は要らないんじゃないの。なんて思いながらも少女を見失わないようについて歩く。
しばらく歩くと開けた場所に出た。色とりどりななへんな形のものがいくつかあって、人工的な自然で埋められていた。
ひらがなの「へ」に似た形をしたものを潜ると、無機質にカラフルに輝くどこかの街らしいものが小さく見えた。
思わず見惚れていた。そこには人工的な美しさがあった。弾幕ごっこのような、華やかな色彩、光。私にとってはつい昨日の、世界にとっては何年も前の光景が鮮明に蘇る。
「お嬢様」
聞き覚えのある声にはっと顔を上げると、そこには見慣れたシルバーブロンドの髪の従者がいた。
名前を呼んで抱きつくと、手がすり抜ける。
ああ、やっぱり死んでしまったのかと呆然といとおしき従者の顔を見つめる。
頬に流水に焼ける感触がした。
彼女は一瞬驚いたようだったが、すぐ優しく微笑むと私の頭に触れた。
世界は暗転する。
目が覚めるといつもの部屋で、ねぼうは多分していないと感じた。
まだ薄明かるくいつもなら起きていない時間帯。
カーテンの隅からは光が漏れており、覗くことは出来そうにない。
目覚めたことに気が付いた咲夜がやって来ることを待ってみるも待てど暮らせどやってこない。実際はまだ日が沈まない程度の時間しか経っていないはずだが、もう何日も待たされている気持ちで、落ち着かなかった。
枕元のベルを手に取り、恐る恐るそれを鳴らす。
リンッ
綺麗な、高く澄んだ音が鳴り響く、あれ、どこかで聞いたような……。
私の視界はまた暗転した。
気持ちよく目覚めてすぐ気がついた。部屋のようすはどこも変わっていないけれども、寝すぎた。
多分1000年くらい経ってるわこれ。
みんなもういないことがわかった。直感。
大好きな妹も、大事な親友も、頼りになる門番も、もちろん、愛するかわいいメイドも。
もう、みんないない。
悲しくなりながら、ふらりと起き上がると窓を開けた。
世界は無機質な色に染まっていて、大地は空さえほとんど見えないほどの、高く大きな建物で埋まっている。僅かに見える空も見知った深い藍ではなく、霞んでいた。
世界はこんなにも変わってしまったのだと思うと喉の奥がつまったように苦しくなって、その場にへたりこんだ。
ふと背後に先ほどまでなかったはずの気配を感じて振り返ると、みどりの髪の少女がいた。
髪は肩くらいで切り揃えられていて、その色は風祝よりも薄く透き通るようだった。真っ白な膝までのワンピースを着ている。肌は私のように青みかかっているわけでも、咲夜のような薄桃でもなく、ただただ白く磁器のような硬質さを感じた。
少女が口を開く。
「長い時間が過ぎました」
高く、澄んだ声。人間味を感じられない、ベルのような声で平坦に話す。
「あなたにとっては短いかも知れませんが、人間にとっては長い時間です」
ついてきてください。それだけ言うと部屋の扉を開けて、すたすたと歩いて行ってしまう。こんな誰もいない、いても知らない人ばかりのところに放置されてはかなわないと慌てて後を追う。
外へ出ると、勝手に動く道や色とりどりの建造物に圧倒される。少女はそれらには目もくれずまっすぐにどこかを目指していってしまう。
そこらを歩く人々はかなり違った服装をしている私にも目を止めず、せかせかと動く道を歩いている。歩くなら動く道は要らないんじゃないの。なんて思いながらも少女を見失わないようについて歩く。
しばらく歩くと開けた場所に出た。色とりどりななへんな形のものがいくつかあって、人工的な自然で埋められていた。
ひらがなの「へ」に似た形をしたものを潜ると、無機質にカラフルに輝くどこかの街らしいものが小さく見えた。
思わず見惚れていた。そこには人工的な美しさがあった。弾幕ごっこのような、華やかな色彩、光。私にとってはつい昨日の、世界にとっては何年も前の光景が鮮明に蘇る。
「お嬢様」
聞き覚えのある声にはっと顔を上げると、そこには見慣れたシルバーブロンドの髪の従者がいた。
名前を呼んで抱きつくと、手がすり抜ける。
ああ、やっぱり死んでしまったのかと呆然といとおしき従者の顔を見つめる。
頬に流水に焼ける感触がした。
彼女は一瞬驚いたようだったが、すぐ優しく微笑むと私の頭に触れた。
世界は暗転する。
目が覚めるといつもの部屋で、ねぼうは多分していないと感じた。
まだ薄明かるくいつもなら起きていない時間帯。
カーテンの隅からは光が漏れており、覗くことは出来そうにない。
目覚めたことに気が付いた咲夜がやって来ることを待ってみるも待てど暮らせどやってこない。実際はまだ日が沈まない程度の時間しか経っていないはずだが、もう何日も待たされている気持ちで、落ち着かなかった。
枕元のベルを手に取り、恐る恐るそれを鳴らす。
リンッ
綺麗な、高く澄んだ音が鳴り響く、あれ、どこかで聞いたような……。
私の視界はまた暗転した。
いろんなものが見えました。
読み返してすこしわかった