一月一日。一年の初めである。
幻想の妖精たちはこんな日には否が応にも昂揚して踊りだしてしまう…
いや、踊り狂うというのが正しいだろうか。
そんな幻想郷の一角、お馴染みの博麗神社。
そこには「普段どおりに」縁側でお茶をぐいぐいやりながら不貞腐れる巫女の姿があった…
「おー、霊夢。明けましておめでとう、だな」
「あら、魔理沙にアリスじゃない。賽銭箱はあっちね」
ほら行った、という具合に霊夢は目の前の見飽きた人妖コンビに手を振ってみせる。
「ずいぶんご機嫌斜めじゃないか。やっぱ見た目だけお祭りな妖怪を連れてきたのが」
「年中無休で頭までお祭りのあんたに言われたくない」
これまた見飽きた掛け合いが霊夢の前で繰り広げられる。
やれやれ、と肩を落として急須を傾けるが、お茶は出ない。
「で?霊夢。なんでそんなに…」
「あら、魔理沙にアリスじゃない。賽銭箱はあっちね」
「大事なことなので2回言ったのね」
まぁ、2人には霊夢の不機嫌の理由など聞くまでもなく分かっているのだが…
「はぁ、せめてこういう日くらい人間に参拝に来てもらわないとホントにやっていけないわ。」
いいかげん、お茶にうんざりした霊夢は魔理沙の持ってきたカップケーキに手を出している。
「なんか毎年…いや毎日そうだよな。どう考えてもお前らの所為だぜ」
「…少なくとも人間相手に興行してる私は対象外だわ」
「確かにお前はそうだが…ほら、他にも色々いるじゃないか」
さすがに妖怪の所為じゃないとは言い切れず、アリスは目を逸らせつつケーキに手を伸ばす。
「食べないの?あんたが持ってきたやつだけど」
魔理沙に言い返せないのが腹立たしいのか、アリスは柄にも無く彼女に気を回して話を逸らせたいようだ。
「私は、遠慮しておきます。」「???」
何故か丁寧語な魔理沙を不審に思いながら、アリスは霊夢を見やる。
「まあいつものことなんだから諦めて宴会でもやればいいん…え?」
視線の先の霊夢は肩を震わせながらアリスの後方を指差している。
「そう…こういうのがいるからなのよ、いつもいつも…」
「明けましておめでたいから遊びに来たわ」
「…あんたはいっつもおめでたいでしょうが!!」
アリスの後方にはいつの間にやら幼い少女が立っていた― 紅魔館の主、レミリアである。
霊夢はと言えば彼女の姿を見るなりイライラ爆発、悪霊退散モードになっている。
「あんたねえ、正月くらい自分の館でお祝いでもしてなさいよ!仮にも一城主でしょ?」
「館のことは咲夜に任せてあるってば。今頃は台所で御節と御神酒の準備よ」
「お前んとこ、ずいぶんと和風なんだな。似合わないぜ」
くっくっ、と魔理沙は笑う。ゴスロリの西洋妖怪が御節。おまけに料理するのはメイド。なんともミスマッチである。
「ええい、だったらなおさら帰れ」
「ああ、どうせ後から咲夜がお料理持って来るから問題ないわ」
「結局ここでやるんかい!!!」
普段あまり笑うことのないアリスも、魔理沙と一緒になって腹を抱えている。
さっきまで「普段どおり」を最も嫌っていた巫女が一番「普段どおり」であったからだろう。
お祭り好きな魔理沙に至っては縁側で横になりながらその「漫才」を囃し立てる始末である。
しかし、(見た目と性格だけ)幼き吸血鬼の無邪気な一言が魔理沙のその表情を一瞬にして凍りつかせることになる…
「あれ?…ねえ霊夢?そのカップケーキは?」
「は?ああ、これ?魔理沙が持ってきたのよ。あんたもこういうの食べるわけ?」
「いやこれ、 私 が 今朝お茶受けに食べたのとおんなじ。咲夜のお手製よ?」
「…はい?…ねえ魔理沙?このケーキどこから持ってきたの…?」
霊夢の表情は怒りから魔理沙への疑心へと変わっている。
「ああ!すまん霊夢!私まだ部屋の掃除が終わってな…ひいっ!!」
魔理沙は踵を返して走り去ろうとしたが、いったいいつ巻きついたのか、大量のテグス付き人形が手足に絡まっていて動けない。
テグスを辿っていくとその先には今までに見たことのないような、したり顔のアリスがいた。
「お、落ち着け、な?霊夢!ただ私は咲夜がうまそうなお菓子を作ってたから、ほら…普通に食えるのかなーと…」
「あああ…どいつもこいつも…っ!!」
「のわあああああ!!!」
こうしてまた「普段どおりの」日が始まっていくのだった。
というか神社に人が寄らないのは案外こうした常識外れな人間たちの所為でもあるのかもしれない…
「…咲夜も食べてたんだけどね」
とかではなくて安心。おいしかったです
黒豆だったら笑えるww
こわいぜこわいぜこわくてしぬぜ
虎と馬が開けちゃいけない扉の向こうでタップダンスを踊っているゥゥゥゥ!
普段通り、つまりこれからも頻p(ry