Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ぺたぺた

2013/01/30 01:41:02
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 フランの手が私の顔を撫でる。鼻、頬、唇、額。
 あちらこちらに触れてくる、細くて冷たい指がこそばゆい。
 彼女の指が瞼に触れたところで声をかける。

「あっ、目は止めてね。痛いから」
「えっ…………うん、分かった……!」

 フランが必要以上に元気よく答える。その反応に、少しだけ体が震える。
 時々、彼女のことを怖く感じることがある。
 フランドール・スカーレットは、人の痛みがよく分かっていない。
 495年間もの歳月を地下に幽閉されていた彼女は、姉以外の人物とほとんど接していなかったという。
 だから、こんな風に触れ合っているときに思わず力が入りすぎて、相手が痛い思いをしてしまうことがある。
 まぁ、わたしならば滅多なことでは壊れないから、実験台にはちょうどいいのかもしれないけど。

「ルーミア」
「ん?」

 フランが私の名前を呼ぶ。満足したのか、もう手はわたしの顔から離れている。

「やっぱり、わたし達って似てるの?」
「触っただけじゃ分からなかった?」
「うん。正直、自分の顔形なんて未だによく分からないし。普段から鏡を見る生活を心がければ良かったわ」
「いやいや、吸血鬼は鏡に映らない、っていうから、触って確かめようとしたんでしょうが」

 おっと、そうだね。と、フランはクスクス笑う。
 わたしとフランは似ている。
 金色の髪。白い肌。そして紅い瞳。
 かたや、野に生きる宵闇妖怪。
 かたや、高貴な血筋の吸血鬼。
 力も立場も何もかも違うのに、わたし達はこんなにも似ている。

「ねぇ、具体的にはどの辺りが似ているの?」

 フランの顔が近付く。濃い血の匂いを感じて、人食い妖怪としての本性と、別の何かが疼きそうになる。

「え、えーとねー……」

 わたしとフランは似ている。
 けれども、何から何まで瓜二つというわけではない。
 わたしの髪は彼女みたいに綺麗にカールしていないし、彼女の人形のような肌に比べれば、わたしなんて大根みたいな物だ。
 答えに窮していると、フランが不安げに首を傾げる。

「例えばさ、目とかどうなのかな?」
「目? うーん、そこはあんまり似てないかな。フランのほうがもっと綺麗な紅色だよ」

 わたしがそう言うと、フランはパッと顔を輝かせる。

「そう!! この目はね、お姉様が、自分と似ている唯一の部分だって教えてくれたところなの。へぇ~、そうなんだぁ……」

 精いっぱいの親しみを込めて、フランは姉の名を呼ぶ。
 彼女の姉、レミリアのことはよく知らないけど、きっとそうなんだろうなと思う。
 だって、そこが彼女の中で一番恐ろしい部分だから。
 何となしに、フランの頬に手を伸ばす。

「どうかした?」
「ううん、何でもないの。ただ、フランは綺麗だなーと思って」
「えー何それ」

 わたしの瞳はほおずきみたいだと言われる。
 暗闇にぼうっ、と浮かんでは人々を恐怖させる、赤い果実だ。
 だが、それが何だと言う。
 吸血鬼の瞳は真紅だ。何の混じり気もない純粋な紅がわたしを見つめてくる。
 赤よりも紅くて、この美しい少女との儚い夢を見せてくれる、素敵で蠱惑的な瞳。
 そんなわたしを魅了する、恐ろしい宝石を前にして、人肉の味がするだけの果実に何の意味があるというのか。

「でも、わたしはルーミアの目好きだよ」

 不意に彼女が口を開く。
 目と目が合い、真紅の中にわたしが見える。

「あったかくて、優しい気がする」

 彼女はわたしから目を逸らさない。
 彼女の瞳の中のわたしは、目を丸くして、言葉を探している。

「……そーなのかー」 

 結局言葉は見つからなかった。
 すると、彼女は楽しそうにクスクスと笑う。

「そーなのよ?」

 その笑い声に、わたしの心は蕩けていった。
吸血鬼はほとんどの妖怪に慕われているが、それは種族の持つ強大な力への畏怖。

というような設定から思いついたお話。
割と一夜漬けクオリティー。

そんなこんなで、お読みいただきありがとうございました。
レイカス
http://twitter.com/kusakuuraykasu
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
良し
2.奇声を発する程度の能力削除
良いですね
3.名前が無い程度の能力削除
ベネ!るみふら流行れ!