Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

早苗「ええ。私が狙っているのは正妻、それだけです。」

2009/12/05 12:43:12
最終更新
サイズ
6.98KB
ページ数
1

分類タグ


 久々に博麗神社に来て見たら、霊夢が修行をしていた。

 私は我が目を疑った。

「…………お前! さては霊夢じゃないな!?」

「行き成り現れて失礼ね! 私が霊夢以外の誰だって言うのよ!」

 そん筈は無い。真面目に修行なんかして、その上よく見たら普段より艶の良い肌をしているなんて、決して霊夢なんかじゃない。
 そう……決して。

「なっ……なによ! 人のこと疑わしげな目でじろじろ見たりして……!?」

「まぁまぁまぁ。」

 とりあえず、偽者から事情聴取をすることにしよう。
 私は、偽霊夢の背中を押して神社に上がる事にした。



「やい、偽者! とりあえずお茶を出せ。」

 居間に通された私は開口一番に、そう要求した。
 当然の要求だ。私は何処に行っても必ずそういう事にしている。

「あんたまだ疑ってるの……?」

「当然だぜ。健康そうに修行している霊夢なんて、霊夢じゃない。」

「…………うふふ?」

「すいません、霊夢さん。今日は平素より顔色が宜しいようですが、何があったんでしょうか?」

 容赦なく人の忘れたい過去を引っ張り出してくるこの腹黒さは、間違いなく霊夢本人だ。
 しかしまだ、納得はしていない。

「それは……ちょっとした事情があんのよ。」

 ちょっとどころではないだろう。
 まずはあの人間とは思えないほどの食文化の低さを何とかしないと、今の霊夢の肌の艶は出せない。
 それには異変クラスの劇的変化が必要だ。

「そうだ。丁度あんたに相談に乗って欲しかったのよ……。」

「相談? この私にか?」

 本当に今日は珍しいこと尽くめだな。

 しかしその相談とやらに乗ってやれば、この異変の解決への糸口も掴めるかもしれない。
 そう思って、私は興味本位のもと聞いてやる事にした。

「ほら……あんたって女の子いっぱい誑かしてるじゃない? きっと女の子の気持ちとか良く分ってるんだろうなぁ~と思って。」

 なんとも失礼な物言いだ。
 私はただ、ハーレムを作ろうとしているだけだぜ。

「女の気持ち? そんなもん知ってどうするんだ?」

 お前だって女だろうとか、そんな野暮なことは言わない。
 こいつは半分男みたいなもんだ。

「今、凄く失礼なこと考えなかった?」

 全く相変わらずの勘の良さだぜ。

「おいおい、話が進まないぜ? 結局お前は私に女の子の何が聞きたいんだ?」

「そ、そうね……実は──」

「待った!」

「……何よ?」

 ちゃぶ台の前へと腰を下ろし、話を始めようとした霊夢を、私は止めた。
 なんせ霊夢の前にはお茶が用意されてるのに、私の前には無いと来た。
 これは差別といっても良い。

「私は最初に言ったはずだぜ。お茶を出せと。」

「……分ったわよ。淹れて上げるから、湯飲み持ってきなさい。」

「おいおい客を使うのかよ。」

「嫌なら良いのよ、お茶が飲めないだけだから。」

「全く、それが相談しようって奴の態度かよ……仕方ないな。」

 私ぐらいの常連ともなると、自分でお茶が用意できるようになる。
 ここには私専用の湯飲みが用意させてる位だからな。
 台所の配置も粗方把握している。

(ん……? こんな湯飲みあったか?)

 そんな常連たる私だから気付いたのだが、食器棚には見かけない湯飲みが一つ、私のより手前に置いてあった。

「なぁ~霊夢~? この新しい湯飲みは──」

 居間にいる霊夢に話し掛けるのに、ちょっと振り返って大きめに声を出したが、その時目に入った物に驚いて私の口は塞がらなくなってしまった。

「湯飲み?」

「──ひょっとしなくても早苗のだな?」

「ああ、その湯飲みのこと。ええ、そうよ。良く分ったわね。」

 わからいでか。
 私が見たもの、それは食器棚と反対側に立て掛けてあった割烹着。
 その割烹着の真ん中に堂々と刺繍された『さなえ』の文字……。
 これで気付かない方がおかしい。


(でもこれ……霊夢のだよな。)

 そのくたびれ加減から見ても、以前から此処にあった霊夢の割烹着で間違いない筈なのだが……。

 謎は深まるばかり──いや、これこそが答えか。

 そう、この異変の正体……霊夢の言う“女の子”とは早苗のことに間違いないだろう。

 これは面白くなってきた。と、小躍りしたいほどのテンションで居間に戻ると、霊夢は待ちくたびれたのか先にお茶を啜っていた。

「……それで、早苗とはどこまでいったんだ?」

「ぶっ……!!!」

 おうおう、盛大に噴いてくれちゃってぇ。
 こんなに動揺する霊夢なんてめったに見られないぜ。

「どうやら、当たりの様だな?」

 霊夢の反応を見れば、火を見るより明らかだが、一応聞いてやろう。
 勿論、からかっているのだが。

「言っとくけど! アンタが疑うような事、私は何にもしてないからね!?」

「…………キスもか?」

 ボッ!

 まるでライターで火をつけたときのような分りやすい音を立てて、顔を真っ赤にする霊夢。

 ──マジかよ。

「まさかお前がそんな奥手な奴だとは思わなかったぜ。」

「だって別に私たち付き合ってるわけでも無いのよ?」

「付き合ってもいないのに家に湯飲みやら割烹着まで用意するか!?」

 そうか、霊夢の肌色がやけに健康そうなのは、早苗に料理させてるからか……。
 しかし案外がっかりだな。もっとネチョイ話が聞けると思ったのに。

「な、なによ……それくらいで怒鳴らないでよ……。」

 何故か弱気な霊夢……ホントどうしちまったんだ、こいつ。
 恋は女を変えるという事か……ん? “そのくらいで”ってなんだ?

 まさか──

「まさか……まだなんか置いてあんのか? 早苗の?」

「え……ええ。えっと食器は粗方……それと歯ブラシと寝巻きと布団と……着替えもいくつか。」

「なっ……!? 泊まってるのか、早苗の奴!?」

「ま、まぁ……。」

 呆れた……それで良く付き合ってないなんて言えたな、こいつ。

「頻度は?」

「…………大体、週1かな?」

 多いな……よく早苗は我慢しているもんだ。
 早苗よ、いっそお前から付き合えと言っちまえば良いものを……。

 ここまで優柔不断だと、ちょっと早苗が不憫に思えてくるな。 

「週1で泊まってるのか……もはや通い妻だな。」

「そうじゃなくて……その……」

「ん?」

 この話題になってからずっとらしくない霊夢だったが、此処に来て更に歯切れが悪くなった。
 一体どうしたというのか……。

「週1ってのは、その……週に1回はあっち(守矢神社)に帰ってるって意味で……。」

「はぁ!? そりゃお前、殆ど此処で生活してるって事じゃないか!?」

 通い妻なんかじゃない……そいつは正真正銘の“押しかけ女房”だ。
 霊夢が付き合いを切り出せないで要るんじゃない……早苗が付き合いを押し迫っているんだ。
 早苗め……食えない野郎だ……。
 ちくしょう、私の同情を返せ!

「お前な……そりゃもう同棲って言うんだよ……もう良いよ……お前ら早く結婚しちまえよ……。」

「けけけけけ、結婚!?」

 動揺しすぎだよ……お前。

「なんか不都合でもあるのか……?」

 ──好きなんだろう?
 と言おうと思ったが止めて置いた。また話が進まなくなる。

「……そ、そうね。責任とらないとよね……。ま、まずはその健全なお付き合いから……。」

 責任ってなんだとか、もうそういう段階はとっくに超えちまってるだろうとか、全部あえてスルーの方向で。

 私はもう突っ込み疲れたんだ……察してくれ。

「それでね──」

「まだ何かあるのか……?」

 正直私はウンザリしていたのだが、どうやら霊夢はまだ許してくれないらしい。

「何言ってるのよ、私まだあんたに何も相談してないじゃない。」

 いや、まぁ確かに……これまでのは全部、私が一方的に聞き出しただけだ。

 まずったな。まさか他人のコイバナが、こんなにも鬱陶しいものだとは思わなかったぜ……。
 人の恋路を邪魔する奴はってか? 笑い話にもならないぜ。

「告白ってどうしたらいいのかしら……ほら、あの子ってあれで結構泣き虫なところあるから。刺激の強すぎるのとか、
 遠まわしなこと言って傷つけても可愛そうだなぁ……て。あっでもそういうところも可愛いのよ? ほら、こう守って
 あげたくなるっていうか──あんた人の話ちゃんと聞いてる?」

「ああ、聞いてるんだぜ……」

「それでこの間なんて──」

 遂には惚気話にまで発展し始めた霊夢。


 やれやれだぜ。
パート4をお送りしておりますヘルツです。

今回は霊夢さんに決意を固めていただきました。
次回ようやく告白、と相成ります。

いつも皆さんの暖かい言葉に励まされ、ここまで来る事が出来ました。
ぜひ最後までお付き合いいただきますようお願い申し上げます!


>8の方
ご指摘ありがとうございます!
すいません、何だか最近誤字脱字が多くて……気をつけます。
こんなんですけど、また読んでくれると嬉しいです!
ヘルツ
コメント



1.ぺ・四潤削除
お待ちしておりました。あなたが来てくれるから私は明日に希望が持てる。
どんな結末になるか楽しみにしております。

「もう良いよ……お前ら早く結婚しちまえよ……。」同じ言葉しかでてこない。
結婚しても相変わらずもじもじしてる霊夢想像して悶えた。ニヤニヤしすぎて涎垂らしてしまいました。いけね。
2.奇声を発する程度の能力削除
口から砂糖が…。
1さんと同じくもう、早く結婚しちまえよ!としか言えないw
3.名前が無い程度の能力削除
語り手によって惚気はニヤニヤにもイライラにもなる不思議
4.名前が無い程度の能力削除
幻想郷に新婚ミコミコ夫婦が誕生するまで、あと一歩

ぬふふ
5.名前が無い程度の能力削除
次が楽しみです。ニヤニヤ
6.名前が無い程度の能力削除
女同士とかいうのはもはや野暮なんだろうな。
7.名前が無い程度の能力削除
素敵すぎる。霊夢かわいい。
しかし早苗さん流石だな…
8.名前が無い程度の能力削除
きっと女の子気持ちとか→きっと女の子の気持ちとか

ほんともう早く結婚しちゃえばいいのに