「『あいらぶゆー』を霊夢さんなりにどうぞ!」
薄く雪が降り積もる中、部屋の戸をがらがらと開け放ち、いつもの服装で頬を染めた天狗が仁王立ちになっていた。霊夢は濃い赤の半纏を着て炬燵布団に入り、顎を机に乗せていた。
「さむい、しめろ」
「『この寒さで巫女は上手く喋れなくなるほど退化した』っと」
「適当なこと書くんじゃないわよ。閉めて。寒いから。あんたもさむいでしょ」
はいはいさむいさむいと部屋の戸を閉めると、小さくおじゃましますーと囁き、炬燵に侵入する。霊夢と同じく顎をおいて暖かさから頬を緩ませる。
「で、何の用?」
「取材です取材」
「こんな寒いのによくやるわねぇ」
「子どもは風の子って言うじゃないですか!」
「私の何十倍と生きてるくせになに言ってんのよ」
「その理屈ですと霊夢さんは子どもですし風の子ですよ?」
「いいのよ。巫女だから」
炬燵に伏せってじゃれあっていると、文が急に思い出したようにばっと顔を上げる。
「そうだ!取材ですよ、取材。霊夢さんなりの『あいらぶゆー』を教えてください」
「外の文豪と呼ばれる人が『I love you.』をあなたといると月が綺麗だとか訳したとかという話をきいたので、みなさんならどう言うのかをまとめようかと思いまして」
「ふーん、まどろっこしいことするわね。好きって伝えりゃいいのに。よくわかんないわね」
「それが風流ってものなんですよ。人間なのにわからないんですか」
「あんたは妖怪なのにわかるのね」
「まぁ、長く生きてますからね」
「で、他の奴らはなんて?」
「えっと、魔理沙さんは『大好きだ!』」
「そのままね」
「アリスさんは『あなたといると時間を忘れる』」
「ふうん」
「咲夜さんは、外の言葉で何やら囁いてましたが、私には意味がわかりませんでしたね。訊いても教えてくれませんでした」
「…………
「……
「…
「それぞれだれを想像して答えたのかしらね」
「さあ、………霊夢さんはだれを想像しますか」
「……さぁてね」
「霊夢さん!教えてくださいよ」
「今は言えないわ」
「…………」
黙って俯いていると、布ずれの音。横へと霊夢が回ってきていた。
「しんじてみてよ」と囁かれた名前。「文」
名前を耳元で囁かれ、頬を染め見上げると、真剣に、しかし柔らかく微笑む霊夢。
「は、はい。霊夢さんのことならいつでも」
「今のが、わたしのあいらぶゆー。ね」
くすりと意地悪そうに微笑むとふわりと立ち上がり、お茶を入れてくると、台所へ消えた。
文はしばらく考えた様子だったが、ひとつ頷くと炬燵の上に小さな箱を置いた。そしてすこし声を張り上げる。
「霊夢さん!今日はちょっと用事を思い出したのでおいとまさせてもらいますねー!」
引き戸をきちんと閉めて、大きく冷たい息を吸い込む。体の芯から冷たくなりそうだったが、体の中には先程の熱がまだ残っていた。
「冷めるまえに、帰らないとね」
+++
「………普通に渡してくれればよかったのに」
炬燵の上に残された紅白の包装紙に包まれた小さな箱。
リボンに挟まれた白いカードの中央に、小さな字で。
『霊夢』
薄く雪が降り積もる中、部屋の戸をがらがらと開け放ち、いつもの服装で頬を染めた天狗が仁王立ちになっていた。霊夢は濃い赤の半纏を着て炬燵布団に入り、顎を机に乗せていた。
「さむい、しめろ」
「『この寒さで巫女は上手く喋れなくなるほど退化した』っと」
「適当なこと書くんじゃないわよ。閉めて。寒いから。あんたもさむいでしょ」
はいはいさむいさむいと部屋の戸を閉めると、小さくおじゃましますーと囁き、炬燵に侵入する。霊夢と同じく顎をおいて暖かさから頬を緩ませる。
「で、何の用?」
「取材です取材」
「こんな寒いのによくやるわねぇ」
「子どもは風の子って言うじゃないですか!」
「私の何十倍と生きてるくせになに言ってんのよ」
「その理屈ですと霊夢さんは子どもですし風の子ですよ?」
「いいのよ。巫女だから」
炬燵に伏せってじゃれあっていると、文が急に思い出したようにばっと顔を上げる。
「そうだ!取材ですよ、取材。霊夢さんなりの『あいらぶゆー』を教えてください」
「外の文豪と呼ばれる人が『I love you.』をあなたといると月が綺麗だとか訳したとかという話をきいたので、みなさんならどう言うのかをまとめようかと思いまして」
「ふーん、まどろっこしいことするわね。好きって伝えりゃいいのに。よくわかんないわね」
「それが風流ってものなんですよ。人間なのにわからないんですか」
「あんたは妖怪なのにわかるのね」
「まぁ、長く生きてますからね」
「で、他の奴らはなんて?」
「えっと、魔理沙さんは『大好きだ!』」
「そのままね」
「アリスさんは『あなたといると時間を忘れる』」
「ふうん」
「咲夜さんは、外の言葉で何やら囁いてましたが、私には意味がわかりませんでしたね。訊いても教えてくれませんでした」
「…………
「……
「…
「それぞれだれを想像して答えたのかしらね」
「さあ、………霊夢さんはだれを想像しますか」
「……さぁてね」
「霊夢さん!教えてくださいよ」
「今は言えないわ」
「…………」
黙って俯いていると、布ずれの音。横へと霊夢が回ってきていた。
「しんじてみてよ」と囁かれた名前。「文」
名前を耳元で囁かれ、頬を染め見上げると、真剣に、しかし柔らかく微笑む霊夢。
「は、はい。霊夢さんのことならいつでも」
「今のが、わたしのあいらぶゆー。ね」
くすりと意地悪そうに微笑むとふわりと立ち上がり、お茶を入れてくると、台所へ消えた。
文はしばらく考えた様子だったが、ひとつ頷くと炬燵の上に小さな箱を置いた。そしてすこし声を張り上げる。
「霊夢さん!今日はちょっと用事を思い出したのでおいとまさせてもらいますねー!」
引き戸をきちんと閉めて、大きく冷たい息を吸い込む。体の芯から冷たくなりそうだったが、体の中には先程の熱がまだ残っていた。
「冷めるまえに、帰らないとね」
+++
「………普通に渡してくれればよかったのに」
炬燵の上に残された紅白の包装紙に包まれた小さな箱。
リボンに挟まれた白いカードの中央に、小さな字で。
『霊夢』
しんじてみてよとかギャップ萌えですね!