紅魔館の門の前は思っている以上に日当たりが良い
これが吸血鬼の屋敷と言うのは最高の皮肉であろう
だから、門の前で構えるだけで日光浴が出来ると言う訳じゃが……
「雨ですね~」
「雨じゃのう」
うむ、今日は悲しい事に雨
幾ら日当たりが良くでも雨が降れば日光浴が出来ない
つまり、門番の嬢ちゃんも居眠りしないという事じゃな、ありがたい事じゃ
「門番隊の皆、誰も門に居ませんしね~」
「こんな日に外に立たせるほどお主の主は極悪ではあるまい?」
ついでに言うと、流石にこの日ばかりは門番業務は一時御休み
門番隊の皆も、他のメイド達に混ざって仕事をするが
一応門番長である嬢ちゃんは門の近くの小屋で
誰か来ないかを気で探る仕事に付く事になって居るそうな
「ところでナマズ先生」
「ん?なんじゃ」
欠伸を噛み殺しつつ暇そうに外を見ていた嬢ちゃんが
わしの方を向いて声をかけてきおった
「……何してるんですか?」
「ん、編み物を作っておる」
だから、わしの背中に乗りかかるな
手元……否、髭元が狂うじゃろうが
・・・
「よし、大体こんなもんじゃろ」
「でしたら、丁度御茶入りましたから休憩にしてください」
「お?気が利くのう……ではありがたく」
わしの編み物がある程度できあがったので
門番の嬢ちゃんが用意してくれた御茶で一息入れる
外は雨、暖かいお茶は実にありがたい
「ところで、嬢ちゃんの方はどうじゃ?」
入れてもらったお茶を手の代わりに髭で持ち口に含むとホッと一息つくと
わしの座っている場所の反対の机で
編み物をしている嬢ちゃんに声をかけた
「う~ん、苦戦してますけどなんとか形になってますよ」
「ほう?なかなかうまいと思うがな」
「あはは、褒めたって何も出ませんよ~」
わしが編み物をしているとわかった嬢ちゃんも
暇つぶしとしてわしと同じように編み物を始めたのだ
やや照れながらも、中々器用に何かを編んでいく嬢ちゃん
……うむ、なかなかどうして……結構器用じゃないか
わしも負けれおられんな
「さあ『ラストスパートで一気に完成じゃ』」
嬢ちゃんがゆっくりと編んでいる中
わしは自慢の髭で製作スピードを上げる
「あ、ナマズ先生ずるい!?……くっ!だけど私だって『編み物を愛する妖怪なんです』からね!?」
むっ!?嬢ちゃんの編むスピードが上がりおった
「ぬおぉぉぉ!」
「はあぁぁぁ!」
しとしとと雨が降る中、暇つぶしに始まった編み物が
何時も間にか早編み競争になってしまった
・・・
「これで完成じゃ」
「私も完成しました」
わしと嬢ちゃんが編み物をほぼ同時に完成させると
お互いにニヤリと笑う
「ふふふっ、わしの作品を見て驚くなよ?」
「それはこっちのセリフですよ」
「……」
「……」
わしと嬢ちゃんがしばしにらみ合っていたら
「ところで提案があるんですが……」
「何じゃ?」
何時もの様に嬢ちゃんが笑って提案してきた
「交換しませんか?」
ふむ、出来上がった作品の出来にもよるが……まあいいわい
それに、作った編み物もそれの方が喜ぶじゃろうしな
「いいじゃろう、では行くぞ?」
わしがそう言って頷くと
『せーの!』
お互いが背中に隠した完成作品を机の上に置いた
「おおっ?」
嬢ちゃんが自慢げに出した物は大き目のクッションサイズの……
「わ、わし?」
「どうです!?特大大ナマズ様ヌイグルミです」
いや、これは予想外じゃった
あんな短時間で、此処までの物を作るとは……
驚いているわしに対して、嬢ちゃんがヌイグルミを手渡す
「はい、これはナマズ様に」
「よしよし、有効活用させて貰おう」
うむ、今度からは嬢ちゃんに抱き枕にされそうになった時に使う事にしよ
「次はナマズ様のばんですね」
「うむ、見て驚くが良いわ」
わしがそう言って机の上に置いたものは
「フード着きセーター(大ナマズ仕様)じゃ!」
「うわ?これは暖かそうですね」
手渡したセーターを早速着る嬢ちゃん……
って、まだわし渡しておらんぞ?……まあ、良いか
「あっ?これフードの部分がナマズの口になってます!」
早速それを来た嬢ちゃんが驚いた様子で鏡を見ていた
うむ、わしの口から嬢ちゃんが顔を出しているような感じだと思えば良い
「夜に首元を冷やさぬようにと考えてつくったからのう」
「ありがとうございます!ナマズ先生」
そう言って、嬢ちゃんがわしに抱きついてきた時じゃった
(ぐ~~)
「むっ?」
「あ、あはは……」
嬢ちゃんの御腹から情けなさそうな御腹の音が聞こえて来たのは
そして、その音で気が付いた
外の雨は既に止み、綺麗な夕焼けが出ている事に
「……そういえば、もう夕方みたいじゃしな」
「お昼も忘れてましたしね」
そう言って嬢ちゃんとわしが顔を見合わせると
「さあ、食堂に急ぎますよナマズ先生!」
「だあ~!?だからわしを抱きかかえて走るなと言うとろうが~!」
嬢ちゃんに抱きかかえられて小屋の中から飛び出していった
後に残されたのは静かになった小屋と
その中でぽつんと窓から夕焼けを見つめるわしのヌイグルミだけじゃった
編み物できるなんてw
「めーりんがムベンベに食べられたー!」
って言う所まで幻視した。
やばいナマズ様を書きたくなってきもうした
でもこれ以上すばらしいナマズ様は……くっ!
ナマメーもっと増えろ