いつもそうだった・・・
いつも私はあいつに敵わなかった・・・
必死に努力して追いついても、涼しい顔をしてあいつはすぐにまた引き離していく・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「・・・夢・・・か」
どうやら魔法の研究中に寝てしまっていたらしい。
机の上に数滴の雫が零れている。・・・ああそうか、これは私の涙か・・・
「いよいよ・・・だな」
私はありったけのスペルカードを持ち、箒に跨ってその場所へと向かった。
これから何があるか?簡単な話だ。いつものように私と霊夢の弾幕勝負・・・
ただ、今日のは特別な意味があるんだがな。
・・・私の引退をかけた弾幕勝負だ・・・
次の勝負で通算1000回目の弾幕勝負になる。現在の成績はという999戦999敗。
今まで一度だってあいつに勝てたことはなかった。いや、かつて永夜の異変の時に勝ったことはあった。
だけどそれはアリスと二人で勝ったもので、私が一人で勝てたものじゃない。
そこで私は次の弾幕勝負に全てを賭けることにした・・・
・・・もし、次の弾幕勝負で私が負けたら、今後一切弾幕をしない。ただの人間として生きていく・・・と。
私の決意は固い。すでに天狗の新聞記者にもそのことを伝えた。おかげで私と霊夢の勝負を見るために、大勢、博麗神社に集まってきている。
「来たわね・・・魔理沙」
「あぁ・・・今日こそ私は・・・お前に勝つ!」
互いに身構える・・・とそこに
「待って!」
と、人ごみの中から私達を制止する声が聞こえた。声の方を向くと、そこにはアリスの姿がある。
「少し魔理沙と話をさせて」
アリスが霊夢にそう頼んだ。霊夢は「別にいいわよ」といった感じで頷いた。
「一体どうしたんだ?アリス」
「弾幕勝負が始まる前に・・・これをあなたに渡したかったのよ」
そう言って紙袋を私に渡した。
「これは・・・ドロワーズ・・・?」
「あなたと霊夢の真剣勝負・・・私達は見守るくらいしかできないから・・・そのドロワを私達だと思って穿いて戦って欲しいの」
私はその要望に従い、茂みの方でそのドロワーズに穿き替えた。
そして・・・私達の勝負は幕をあげた。
「行くぜ・・・霊夢!スターダストレヴァリエ!」
「今日であなたとのこの関係、終わらせてあげるわ!夢想封印!!」
互いのスペルが激しくぶつかる。それを合図に私達は次のスペルを放つ・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
~少女弾幕中~
・・・
・・・・・
・・・・・・・
「ハァ・・・ハァ・・・いい加減・・・バテたんじゃないか・・・?息があがってるぜ・・・霊夢」
「ゼェ・・・ゼェ・・・あんたこそ・・・もう限界じゃないの?魔理沙」
数時間にわたる弾幕勝負の末、私達は互いにボロボロになっていた。
直撃こそしていないが、かなりきわどくかすり、互いの上半身は裸。私達は片手で胸を隠しながら弾幕勝負を続けていた。
弾幕を出し辛いが、それはあいつも同じ。私達は一歩も引かず、ただ相手に弾幕を当てることだけ考えて撃ち続けた。
・・・勝負が動いたのはその時だった。互いに放った弾幕がそれぞれの下着をかすっていった。
「「!!」」
霊夢の下着が破れた。霊夢は慌ててもう片方の手で隠した。
私も見えないようにと慌てて胸を隠していない方の手で隠そうとした・・・が、
「破れて・・・ない?」
私の穿いていたドロワーズは破れていなかった。いや、それどころか綻びの一つもなかった。
「これは一体・・・」
戸惑う私に、皆と一緒に見物していたアリスが私に向かって声をあげた。
「魔理沙!それは、あなたが今まで戦った人達の下着の繊維を一本ずつ集めて紡いだドロワ・・・私達全員の想いがそのドロワに込められているのよ!」
「皆の・・・想い・・・!」
今までの弾幕勝負の記憶が私の中を駆け巡った。私はどんな相手に何度やられようと諦めずに何度も何度も挑み、やがて勝利を掴んできた・・・
努力はいつか・・・天才を超える・・・
そうだ・・・私はいつだって真正面から相手にぶつかっていってた・・・
「・・・魔理沙、あなたはいつも言ってたわよね!弾幕に大事なことは何かを!」
あぁ、そうだ。これが私の弾幕なんだ・・・
「・・・弾幕は・・・」
私はミニ八卦炉を取り出し霊夢に照準をあわせた。
「弾幕はパワーだぜ!!!」
恋符「マスタースパーク」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「私の負けね・・・」
そう言って霊夢は私に微笑んできた。私はそんな霊夢にそっと毛布をかけてやった。
「・・・いや、今の勝負・・・やっぱり私は皆に助けられたんだ・・・」
「そう・・・じゃあやっぱり引退するの・・・?」
「いいや、勝ちは勝ちだ。・・・私はこれからもお前を倒すまで挑み続けるぜ」
そう言って私は霊夢に思いっきり笑顔を見せてやった。
「あーあ・・・折角面倒事が減ると思ったのに」
そう言って霊夢も私に笑ってみせた。
そして最後に私は、ずっと私を見守っていてくれた皆に、とびっきりの笑顔をみせてやった。
~END~