「へへっ、じゃあなパチュリー! この本は借りていくぜ!」
紅魔館の地下図書館から勢いよく箒にまたがって出た私はだだっ広い廊下を飛ぶ。
ほぼ日課になりつつある地下図書館からの本のレンタル。今日の収穫はとても大きい。私がその本を手にした途端にあのジト目で無表情のパチュリーが顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら「魔理沙……それ……。」なんて言う物だからこれはとても興味深い魔道書に違いない。
運良くメイド長に厄介になる前に外に出れた。魔法の森の自分の家に戻ってからじっくりと読むのも良いのだが好奇心の方が押し勝ち、そこらの岩に着陸する。
岩に腰掛け、お目当ての本をパラパラとめくる。そこには衝撃的な事が書いてあったのだった。
「こ……これは……?」
━━━━━
魔法の森にひっそりと建っている洋館がある。普通の人間は立ち入れないような場所だが、この魔法の森に住み始めてそれなりになる私にとってはなんてことはない。
ドアをノックする。いつもなら遠慮なしに入るのだが今回は少し訳が違うので慎重に行かねばならない。
「はい、どちら様?……って魔理沙じゃない。」
「よう、アリス。ご機嫌いかが?だぜ。」
「ドアから入ってくる魔理沙なんて不気味ね。新しい趣向?」
「失礼だな。人を泥棒のように……。」
あなたがやってるのは泥棒まがいのことじゃないと言いつつも私を家に招きいれてくれるあたりアリスも私とのこの手やり取りは慣れている。
私は空いたいすに座る。アリスは人形に指示させながらお茶の用意をしてくれている。
「それで今日はどういう用なの、魔理沙? いつもどおりふらっと立ち寄っただけ?」
「そうだな……あると言えばあるんだが……。」
「? 珍しいわね。そんな遠慮しなくても私が出来る範囲なら力になるわよ?」
アリスの心遣いは素直に嬉しい。だがこの気持ちは遠慮なのではなく躊躇なのだと何となく分かっていた。一時の恥を捨て勝負に出るかいつも通りに振る舞い保守に走るか。英断を下すことが求められた。
「……アリス。」
「な……何よ。」
「驚かないでくれよ?」
「……あなたうちで何するつもりなの?」
すーはーと深呼吸をする。うん、まだドキドキはするが何とかなりそうだ。どこからか大丈夫大丈夫できるできる気持ちの問題だってって聞こえてくるし
「アリス……。」
「……。」
沈黙が続く。だが私はやる。いや、やらねばならんのだ!
「……キャルン☆!」
「……。」
「……。」
もう駄目だ……。果てしなく帰りたい気持ちになってきた。結局はパチモンかあの魔道書…!
『上目遣いで艶やかな目をしながらキャルン☆!と唱えれば愛しのあの子はイチコロ!』って書いてあったのに……。私には女の子らしい魅力なんて普段の行動からは感じられないのだろうと自分で理解していたのにこんなものに惑わされた結果がこれだというのなら私は自分で自分にマスタースパークを放ちたい。
「は、はは。やだなぁアリス。冗談だって。悪いが急用を今、思いついたから帰るぜ!」
早く帰りたいという気持ちが早口に、そして論理的破綻している言葉を平気で吐き出す。
「じゃあな、アリス!」
「え、ちょっと魔理沙!」
私は一目散に逃げるように箒にまたがって全速力を出した。今度アリスの所に行く時はお詫びの品でも持っていこうと柄にもなく思いながら。
━━━━━
「……何なのよあの子は……。」
いきなり訪れてすぐに去って行く。まるで流れ星のような彼女。止まることなんてことを知らない。見えているのに掴めないなんて陳腐な表現ではあるが彼女にぴったりではないだろうか。
私が抱いているこの気持ちも遠い遠いあの子には届かないのかなとか思ってしまう。
今日の彼女はいつもと雰囲気が違ったし体調でも悪かったんだろう。あの焦りようは尋常ではなかったし……。今度会ったときにはいつも通りの対応をしようと決めた。
ジャムでもこぼしたのかぽつぽつと赤い斑点に気がついた。掃除しないとなぁと思った矢先違和感を覚えた。
「……! これ、私の鼻血……?」
ぽたりぽたりと血が出てくるのが止まらない。一体なんだというのか、鼻をつまんでも何をしても止まらない。気味が悪くなったアリスは急いで永遠亭に向かった。
正しい鼻血の止め方を教えてもらい、大事にはならなかったことと魔法の森に続く赤い斑点が幻想郷四十九不思議に追加されたことはまた別のお話。
紅魔館の地下図書館から勢いよく箒にまたがって出た私はだだっ広い廊下を飛ぶ。
ほぼ日課になりつつある地下図書館からの本のレンタル。今日の収穫はとても大きい。私がその本を手にした途端にあのジト目で無表情のパチュリーが顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら「魔理沙……それ……。」なんて言う物だからこれはとても興味深い魔道書に違いない。
運良くメイド長に厄介になる前に外に出れた。魔法の森の自分の家に戻ってからじっくりと読むのも良いのだが好奇心の方が押し勝ち、そこらの岩に着陸する。
岩に腰掛け、お目当ての本をパラパラとめくる。そこには衝撃的な事が書いてあったのだった。
「こ……これは……?」
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魔法の森にひっそりと建っている洋館がある。普通の人間は立ち入れないような場所だが、この魔法の森に住み始めてそれなりになる私にとってはなんてことはない。
ドアをノックする。いつもなら遠慮なしに入るのだが今回は少し訳が違うので慎重に行かねばならない。
「はい、どちら様?……って魔理沙じゃない。」
「よう、アリス。ご機嫌いかが?だぜ。」
「ドアから入ってくる魔理沙なんて不気味ね。新しい趣向?」
「失礼だな。人を泥棒のように……。」
あなたがやってるのは泥棒まがいのことじゃないと言いつつも私を家に招きいれてくれるあたりアリスも私とのこの手やり取りは慣れている。
私は空いたいすに座る。アリスは人形に指示させながらお茶の用意をしてくれている。
「それで今日はどういう用なの、魔理沙? いつもどおりふらっと立ち寄っただけ?」
「そうだな……あると言えばあるんだが……。」
「? 珍しいわね。そんな遠慮しなくても私が出来る範囲なら力になるわよ?」
アリスの心遣いは素直に嬉しい。だがこの気持ちは遠慮なのではなく躊躇なのだと何となく分かっていた。一時の恥を捨て勝負に出るかいつも通りに振る舞い保守に走るか。英断を下すことが求められた。
「……アリス。」
「な……何よ。」
「驚かないでくれよ?」
「……あなたうちで何するつもりなの?」
すーはーと深呼吸をする。うん、まだドキドキはするが何とかなりそうだ。どこからか大丈夫大丈夫できるできる気持ちの問題だってって聞こえてくるし
「アリス……。」
「……。」
沈黙が続く。だが私はやる。いや、やらねばならんのだ!
「……キャルン☆!」
「……。」
「……。」
もう駄目だ……。果てしなく帰りたい気持ちになってきた。結局はパチモンかあの魔道書…!
『上目遣いで艶やかな目をしながらキャルン☆!と唱えれば愛しのあの子はイチコロ!』って書いてあったのに……。私には女の子らしい魅力なんて普段の行動からは感じられないのだろうと自分で理解していたのにこんなものに惑わされた結果がこれだというのなら私は自分で自分にマスタースパークを放ちたい。
「は、はは。やだなぁアリス。冗談だって。悪いが急用を今、思いついたから帰るぜ!」
早く帰りたいという気持ちが早口に、そして論理的破綻している言葉を平気で吐き出す。
「じゃあな、アリス!」
「え、ちょっと魔理沙!」
私は一目散に逃げるように箒にまたがって全速力を出した。今度アリスの所に行く時はお詫びの品でも持っていこうと柄にもなく思いながら。
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「……何なのよあの子は……。」
いきなり訪れてすぐに去って行く。まるで流れ星のような彼女。止まることなんてことを知らない。見えているのに掴めないなんて陳腐な表現ではあるが彼女にぴったりではないだろうか。
私が抱いているこの気持ちも遠い遠いあの子には届かないのかなとか思ってしまう。
今日の彼女はいつもと雰囲気が違ったし体調でも悪かったんだろう。あの焦りようは尋常ではなかったし……。今度会ったときにはいつも通りの対応をしようと決めた。
ジャムでもこぼしたのかぽつぽつと赤い斑点に気がついた。掃除しないとなぁと思った矢先違和感を覚えた。
「……! これ、私の鼻血……?」
ぽたりぽたりと血が出てくるのが止まらない。一体なんだというのか、鼻をつまんでも何をしても止まらない。気味が悪くなったアリスは急いで永遠亭に向かった。
正しい鼻血の止め方を教えてもらい、大事にはならなかったことと魔法の森に続く赤い斑点が幻想郷四十九不思議に追加されたことはまた別のお話。
これで私もアリスと一緒!
…それはともかく、永琳の暇つぶしまで置いてある図書館、さすがですねぇw
おかげでこんな素晴らしいお話が読めました!